【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
うちの名前はみく……荒木村重の娘や。
今は津田又兵衛様の屋敷で保護してもらってる。
理由を話すと長くなるんやけど、まぁ親父と兄様がトチった。
家臣を纏めきれずに反乱を起こされて親父の更に上司である信長様や織田家全体に迷惑をかけて、親父と兄様は戦死。
保護してくれていた叔父さんも戦死して荒木家家中を纏められる者が居なくなってしまって、結果改易という処分を受けることに決まった。
うちとしても覚悟はしていたが、最初は織田領内から追放処分という話も出ていたらしいが、津田又兵衛様が信長様に意見を言って、うちら荒木一族は津田又兵衛預かり……という形で落ち着いた。
織田領内から追放だったらうちら行ける先殆ど無いし、うちまだ17歳なのにもう尼寺に押し込まれるかもしれなかった……いや、移動の最中に襲われて命を失っていた可能性すらある。
それに津田又兵衛様の活躍で摂津の反乱も鎮圧に向かったし、うちの体で一族保護……いや、荒木一族を家臣にしてはくれないだろうか……。
ちょっと高望みし過ぎたか。
一応荒木一族にはまだ男子や成人している男性も居るのであるが、分家も分家。
本家の荒木村重の血筋はまだ幼い男子が2人と女子だけでとても取りまとめることはできんし、分家の取りまとめをしていた叔父さんが亡くなって、一応その息子の渡辺四郎と荒木新之丞(しんのじょう)の2人が奔走してくれているんよな。
渡辺四郎は荒木から渡辺家に婿養子でもう渡辺家になっているのに、荒木家が大変だからと京から駆けつけてくれたし、新之丞も若年ながら兄と協力して越前まで荒木一族を取りまとめてくれた。
まぁあとの荒木家臣達の殆どは中川様に吸収されるか、摂津争乱に加担したとして処刑されるかでほんとバラバラ。
そんなこんなで越前に屋敷を貰ってようやく腰を落ち着かせることができたのであった。
「やっぱりうちが津田又兵衛様の側室に入って子供を産むのが一番丸いよな」
荒木一族会議で女ではあるが弟達はまだ幼少で状況をよく飲み込めてないし、母も武家の会合に出席できる立場ではない。
母は謀反を起こした池田家の血筋の娘なので、本来であれば連座で処刑されていても不思議では無いので、針の筵の為、会合にも出席できない。
なので長女である私が出席して発言しているが……。
「姫から言っていただけると助かります」
「四郎や新之丞も付き合わせて悪いね。荒木の血に縛られてしまって」
「私の立場的に荒木に肩入れするのは渡辺家的にはまずいのですが、津田殿に近づけるならばと渡辺家からも了承されたまでで」
「建前は良いから、渡辺家に行っても実家が気になるんでしょ」
「……まぁ、そうだな」
「やっと四郎兄さんっぽくなってきたね」
「でも良いのか本当に津田殿に嫁ぐのは。側室の数は多いし、荒木の娘故にだいぶ家中でも低い位置に置かれるのではないか?」
「それは仕方がないでしょ。それを踏まえて嫁ぐってうちは言ってるんやけど」
「みく姉さんの覚悟を無下にはできないよ四郎兄さん。みく姉さん辛かったら借り物だけどこの屋敷に逃げてきても良いからね……正直今後の荒木家はみく姉さんの活躍次第で待遇が変わるから」
「任せなさい!」
新之丞にはそんな事を言ったけど、正直不安。
とりあえず津田又兵衛様は忙しい身なので数週間越前入りは遅れると聞いていたので、まずは奥方に相談してみることにする。
「ふーん、又兵衛の側室入りしたいねぇ」
「あらあら」
目の前にいるのは又兵衛様の正室の雫さんと側室のお市様。
お市様と又兵衛様が結ばれた話はうちも何度も聞かされていたし、血筋も信長様の同腹の妹……正直うちとは立場が全然違う。
津田家で津田の苗字を名乗ってよいのは又兵衛様とお市様のご子息だけ。
正室である雫さんは毛受という分家の苗字しか名乗ることを許されない複雑さがある。
(奥の院でやっぱり派閥とかあるんやろか……できればどちらかに取り入って立場を固めたいんやけど……)
「打算的な目をしているわね。まぁ小娘1人入った程度で津田家は揺るがないけど」
「側室入りは構いませんよ。最近の又兵衛は性欲が今まで以上になっていて、正直嫁全員でかかっても負けちゃうからね」
又兵衛様って奥方が10人以上居たはず……なのに負けるん? 女性側が?
というか女性複数人で交わるのが普通なのここ?
普通は旦那と奥方1対1で寝ずの番をする侍女が部屋の前で待機するものだと……。
「とてもじゃないけど、又兵衛の性欲だとそんな優しい状態じゃないわよ。又兵衛射精すると樽並々に精子だせるから」
「う、うわぁ……」
凄い赤裸々に語ってくれる。
2人からしたらうちが混じっても構わない感じかね?
「津田家……というか毛受家には1つ約束があるわ。それが守れるのであれば、私はみくのことも歓迎する」
「そうね〜、確かに1つ皆守っていることがあるわね」
「な、なんですか?」
ゴクリと生唾を飲み込む。
「うちの約束として家督継承に奥方は関与しないこと。皆仲良くは人数的に無理ってのは分かるんだけど、子供達は基本新しい家を立ち上げる、自分で家計を支えられるようになれ! っていうのが基本なのよ。だから家督を奪い合うような動きがあれば又兵衛が黙ってないから」
「そもそも私の兄である信長兄様が関与してくるから私達の意見なんてあってないようなものだからね」
「そ、そうなんですね……」
うちとしては荒木家を再興したいのだけど……家臣筋として復興するのは許してくれないだろうか?
「荒木家の再興だけど、分家や弟さん達が居るんだから自分の息子を家長に押し込もうとするのはうちの約束に引っかかるわね」
「絶対に後々揉めるわ。特に家長になろうとすると」
雫さんとお市様の2人から言われてしまった。
ただ又兵衛様は荒木家を保護すると決めたため、弟達や従兄弟達は家臣としては厚遇するし、家臣達を育成する学び舎に入らせて一人前には育ててくれるだろうと言ってくれた。
「みくは保護してくれる保証が欲しいんでしょ。別に無理して側室に入らなくても又兵衛は厚遇してくれると思うわよ」
「それは確かに……又兵衛優しいから」
「……それでも又兵衛様の役に立てるのであれば! うちは側室に入ります! 弟達が荒木家を継いでくれることを約束してくれるのであれば、うちの子供達は荒木でなくても構いません!」
「……わかったわ。とりあえずみくは家で生活してみましょう。それで徐々に慣らしていってから又兵衛と本当に側室になるか考えましょうか」
「はい!」
こうしてうちは津田家の屋敷で生活するようになるのだった。