【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「はえ~この子が亀の玄武ですか。本当に大きいですね」
昼食後、はじめさんに連れられて庭に面する軒下で焼き栗を食べながら、亀の玄武を見ていた。
最初は池の中央にある岩の上で日向ぼっこをしていたが、こちらに気がついたのか、池を泳いではじめさんに近づいてきた。
犬並みに素早いんだけど……。
うさぎと亀の競争のお話があるけど、多分この玄武なら勝てるんじゃないかな?
キューキューと鳴いて口をパクパクさせているため、餌を求めているっぽい?
「はいはい、玄武にもご飯あるよー」
はじめさんは玄武に玉菜(キャベツ)という葉野菜を与えると、玄武は前足で転がらないように押さえつけながら丸々1個を食べ始めた。
「体の大きさもそうですけど、すごい食べっぷりですね」
「この子結構色々食べるからね。流石に泳いでいる鯉は食べないけど、僕たちが与える野菜だったり又兵衛や子ども達がミミズをあげたりしているよ」
「へぇ……」
玉菜をあっという間に食べ終わった玄武は軒下に登ってくると、そこで日向ぼっこを再開してしまった。
「こうしてみると猫みたいで可愛いですね」
「そうだね」
玄武の紹介と食休憩が終わった後、はじめさんは午後出かけないといけないらしく、案内役を奈々さんという貴族の女性に交代し、奈々さんに付いていく事に。
「あはは、緊張してる?」
「は、はい!」
「楽にしていいよ。今日は白と珠子と一緒に機織りするだけだから」
「機織りですか?」
「やったことは?」
「いえ……無いです」
「了解。一から教えてあげるからね」
奈々さんと一緒に部屋に入ると、大きな機織りの機械が何個も置かれている部屋に到着した。
「まるで工房ですね」
「まー確かにね。ここで子ども達の着るものを作ったり、布を織って小遣いを稼いでいるんですよ。又兵衛様からある程度自由に使えるお金を貰っているのですが、稼げるならそれに越した事はないのでね」
「なるほど……」
すると戸が開き他の方々も入ってきた。
「あ、みくちゃんだ! さっきぶり!」
「こんにちはみくさん」
「ど、どうも」
珠子ちゃんに白さん。
(うひゃーはじめさんも胸が大きかったけど、白さんは凄いな。ここまで大きいのは初めて見たわー)
うちは白さんの爆乳っぷりに驚きながらも、午後はよろしくお願いしますと3人に教えを乞うた。
機織りに糸を配置して、奈々さんが織り始めるが、一定間隔で、淀みなく、綺麗に布が織られていく。
「はじめのうちは一色で織っていくと綺麗になるけど、慣れてくると」
奈々さんが織った布には津田家の家紋が模様として織り込まれていた。
「おお!」
「慣れてくれば柄を出すこともできるように成るからね。さて、じゃあ機織り機の使い方だけど」
手取り足取り奈々さんに機織りのやり方を教えてもらった。
1日で手ぬぐい1枚を織るのがやっとだったし、うちは集中して間違えないように布を織っていたけど、慣れている他3人は世間話をしながら織れているので凄いと思った。
あっという間に夕方となり、夕食の時間。
台所に行くとまた玉さんが台所衆の人達と料理を作っていて、どんどん料理が出来上がっていた。
「あ、みくちゃん! ちょうどいい所に!」
料理を運んで欲しいと玉さんに言われ、箱膳を運んでいく。
数十人……いや、百人分の料理を手分けして広間へと運び、うちも席に着く。
ご飯とみそ汁、それに味噌を塗られた肉(豚肉の味噌漬け)、千切りにされた玉菜、それに漬物が少々。
箱膳には以上であるが、机の上には他にも葉野菜のお浸しだったり、肉じゃがと呼ばれる色々な野菜や肉が入った料理が置かれていた。
「それではいただきます」
「「「「いただきます」」」」
雫さんの号令で食事を開始するが、うちの席の隣に居るマリアさんと銀子さん……凄い髪色と日本人とは思えない異国の容姿をしているけど、又兵衛さんの側室の2人は酒盛りを始めてしまった。
「んん? お主は荒木の……みくじゃったか?」
「は、はい」
「せっかくじゃ酒飲むか?」
「え? 良いんですか?」
「ええ、酒は1人で飲むのも、大勢で飲むのもどちらも美味しいですからね」
「じ、じゃあ少々……」
器に入れられたのは真っ赤な酒だった。
「ワインと言ってな、少々渋い酒じゃ。肉料理と合うぞ」
「なるほど」
食事を再開するが、確かに肉料理とこのワインという酒は相性が良いように感じる。
白米とは合わない気もするけど。
「お、結構飲める口か?」
銀子さんが空になった器に継ぎ足してくれる。
うちはありがたくおかわりするが、気分がポカポカしてきた。
「はれ……」
食べ終わった辺りで意識が遠のいてしまった。
「……うちどうしたんやっけ?」
気がつくと、与えられた部屋で布団に寝かせられていた。
ふかふかの布団で再び意識が遠のきそうになるが、堪えて目を開けると、そこには雫さんが座っていた。
「目が覚めたか?」
「し、雫さん」
シュバっと布団から起き上がって正座するが、まだ酔っぱらっているのか、転がってしまう。
「無理しちゃだめ。あの酒好き2人は叱っておいたから」
「い、いえ……流されて飲んだうちも悪いので……」
「どうだった津田家での1日は?」
「凄い賑やかで……子ども達も多くて、奥方の皆さんも優しくて……やっていけそうだと思いました!」
「そう……私から見てもみくはうちに合っていると思った。あんまり難しく考えないこと。不安だったら私や市、他の嫁達に相談すること。皆真剣に悩みを聞いてくれるから」
「……はい!」
こうして私は津田家の仲間になっていくのであった。