【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
大陸にて津田家と交易をしている商人達が集まり、会合が開かれていた。
「津田家との交易は笑いが止まらないアルネ。密貿易様々ネ」
「そうネ、津田家には大陸が欲している物が山のようにアルヨ」
大陸からは薬草や漢書等の書物、大陸産の馬、大陸産の工芸品を売る代わりに、津田家からは椎茸、蜂蜜、銀、様々な宝石、刀剣や着物、越前で作られる工芸品、各種乾物の数々を輸出入して儲けていた。
特に商人達は津田家は銀の支払いが気前が良いと言っていた。
「かの国は今分裂状態であるけれど、織田信長なる人物が統一を進めているらしいネ」
「石見銀山を有している毛利も金払いは良かったけど、あの国は衰退に入っていると聞くネ」
「毛利は大内を転覆させた勢力を潰して成り上がった家だけど、守勢に立たされているからなぁ……銀山があるから手切れしてなかったけど、津田家の方が金払いが良いネ」
彼ら商人達からすれば金を多く支払い、稼がせてくれる人物こそ正義である。
しかも彼らは密貿易を行う明国の法では良くない事をしているため、時勢を読む能力は特に長けていた。
「津田家との取引は確かに美味しいが、その親玉である織田家との取引は正直渋いと言わざる得ないヨ」
「然り、然り」
織田家も南蛮貿易や明との密貿易をしていたが、信長は明政府との勘合貿易復活を目論んでいた。
信長としては全国の勢力に信長こそが日ノ本を統べる者であると認めさせるために、朝廷と明政府に政治工作を行っていたが、朝廷は高い官位を与えることを了承しつつも、他の勢力との兼ね合いと征夷大将軍の地位を与えた足利義昭がまだ朝廷に地位を返上せずに逃げ回っているため、信長に武家の棟梁である征夷大将軍の地位を与えられずにいた。
あと織田家が源平の平氏方から連なる一族の為、源氏もしくは藤原氏に連なる者しか与えられていなかった征夷大将軍を信長に与えるのは逆に失礼に当たるのではないか……という声も上がっており、右近衛大将という征夷大将軍と同等……いや、やや右近衛大将の方が高い役職が与えられていたり……。
自国の朝廷で扱いが揉めているのに、他国である明では日本国王の称号を与えた足利義満並みに国内の統治ができていないとして、国王の称号を送り、勘合貿易復活……というのは見送られていた。
そもそも明側としては信長は幕府を転覆させた大罪人であるという見方もできるため、継続的な繋がりを重要視する明側は慎重にならざる得なかった。
密貿易を続けている商人達からしたら、明政府と本格的国交が復活し、勘合貿易が復活したほうが損になるため、中々難しい状態が続いていた。
「南蛮人の商人達も中々強かネ。日ノ本の販路の一部を持っていかれたヨ」
「津田家との貿易にも食い込んできて……まぁおかしな宗教が産まれたと聞いていたから、キリスト教の派閥とは相性が悪いらしいヨ」
それを踏まえても津田家との貿易で莫大な富を稼いでいる商人達は次の手を考える。
「明政府に津田家が産み出す富については秘匿しなければならないネ。南蛮人は本国に報告しているかもしれないけど、明政府が欲を出さないとも限らないヨ」
時の皇帝が欲を出して外征し、国が傾いたというのは中華の歴史からしたらよくある事であり、更に海を隔てる日ノ本へ外征となれば船を持つ商人達も徴発されたり、臨時の税金を支払えと恐喝され、大赤字を出す可能性すらある。
特に明の国体は緩やかな衰退期に入っており、商人達は国が動乱となれば没落する危険がある為、より慎重になっていた。
「長生きするコツは身の丈にあったほどほどの欲で留めること。強欲は身を滅ぼすネ」
明の商人達が身の丈にあった商売をしている中、宣教師を派遣してアジア各地に植民地を広げていたスペインは日ノ本の状況を国王であるフェリペ2世の耳にも入っていた。
フェリペ2世……スペイン帝国の皇帝であり、ヨーロッパ1の大国としての地位を確立している最中であった。
スペイン帝国は強力なオスマン帝国軍を海戦で打倒し、ヨーロッパの守護者として持て囃され、カトリック教会との繋がりも深くローマ法皇との関係もある。
そんな野心あふれる王は植民地獲得に熱心であり、日ノ本で莫大な銀が産出することや、海を渡って届けられた質のよい宝石や工芸品の数々等アフリカの国々を占領するよりも利益が高いと考えられていた。
「所詮極東の猿共だ。大軍を送り込めば、直ぐに占領することができよう。カリブ海の国々の様に」
事実スペインはメキシコのアステカ帝国を少人数の兵士で崩壊させ、広大な植民地を手に入れていたし、同じく莫大な銀山があるというのもメキシコの状況に似ていたのである。
「ただジャパンは鉄砲の複製に成功していたり、年がら年中内戦をしている戦闘民族とも聞く……兵数は結構な数必要になるだろうか……となると前哨基地が必要になるな」
フェリペ2世は世界地図を眺め、ちょうどフィリピンに小さいながら植民地があることに目をつける。
「ふむ……フィリピンの港の規模を拡大化させるか。いや、ジャパンを狙うのはもうしばらく後。今はポルトガルの政情不安につけ込み、同君連合化して吸収できないか模索することにしよう」
こうして又兵衛が知らない場所でも新たな敵が生まれようとしていたのだった。