【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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越後の特産品 1 又兵衛の白い草

「うーん、越後……越後……」

 

「また何か良からぬことを考えておるな又兵衛」

 

「お、マリアじゃん。今日は暇なのか?」

 

「直江兼続と高山右近という若者は面白いのぉ。教えれば色々吸収してな……それで、又兵衛は何を悩んでおったのじゃ」

 

「うーん、越後で特産物になりうる物について色々考えていてな。マリアも一緒に考えてくれないか?」

 

「別によいが、ここは銀子も呼ばんか。地元を知る人物が居たほうが良かろう」

 

「確かにな。銀子を呼ぶか」

 

 というわけで俺は銀子を呼んだ。

 

「越後の特産品?」

 

「ああ、何か無いのか?」

 

「それだと青苧じゃないか? 上杉の資金源だったが……ここ最近値崩れを起こしていたんだが……」

 

「多分俺のせいだわ……」

 

 越前でも育つ木綿を大量に育てたのと、生糸を国産化した結果、糸や布類が値崩れを起こしていたのである。

 

 そして越後の青苧は京でも愛好者が多かった伝統ある繊維……布だったのだが、上杉家が越後で栽培している量が多かったこともあり、上杉産の青苧以外を売らないとする座の独占販売権限を幕府に認めさせた過去があった。

 

 それから織田家と特に揉めてなかった時は京で普通に販売されていたのだが、俺が越前を所領にしてからは良質な木綿が大量に出回ることになり、各所で布の値段が下がっていた。

 

 布が安くなったことで、織田領内の領民達からは凄い感謝されたが、布を特産品にしていた他所の大名からしたらたまったものではなかったらしく、関東の大名がこれで凄い赤字を垂れ流して実質破産状態になった所があるらしい。

 

「青苧かぁ……確かに繊維としては良いんだが、量産には向かねぇんだよな」

 

「青苧が売れなくなった理由は又兵衛だったか……資金繰りが厳しかったんだが……」

 

「悪かったな銀子。でも経済を握った方が戦力を整えたり出来て兵士を整えたりするのは便利でな」

 

「又兵衛なりの戦い方なのだな」

 

 領地を豊かにさせている割には精鋭兵は整えるけど寡兵で戦うことが多かった気がするが……。

 

 とにかく青苧以外に越後で名産になりそうな物について改めて考える。

 

「うーん……種付けおじさん的に何か……床上手……床……畳!?」

 

 悪魔的発想。

 

「又兵衛がまた何かおかしいことを考えたっぽいのぉ」

 

「何を思いついたんだ又兵衛」

 

「床だよ床、畳を越後で育てよう」

 

「畳かぁ……越後でい草は育つのか?」

 

「普通なら育ちにくい。い草は南の比較的暖かい土地で作られる植物なんだが……俺の力を使えば多分越後の寒さにも耐えられるい草が誕生するだろう」

 

「とんでもないことを言っておるが大丈夫か?」

 

「大丈夫、いつも通りだ」

 

 この時代、畳というのは高級品であり、上流階級の武士の居城の一部に使われていたり、茶室といった限られた客間に畳が使われていた。

 

 織田家でも信長様が座る上座に畳が敷かれていたが、下座は木の板が普通に敷かれている状態で、そこの上に正座をしていると、足が痺れる者も少なくない数いたのである。

 

 特に津田家の兵士達や俺の息子達は身長が一気に伸びるので、オスグッドを患っている者……成長痛患者が多く居て、正座が出来ない若者が増えていたのである。

 

 俺も正座で苦労した経験があり、床を畳にできればと思った事があったが、そうか……種付けおじさんは床上手……つまり床を畳にアップグレードさせるって事も恐らく効果が及ぶであろう。

 

「そうと決まれば……い草の採取だな」

 

 俺は直ぐに家臣に命じてい草の種を持ってくるように命じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 い草というのは米を育てるよりも手間暇かけなければならない作物で、戦国時代では種を畑に撒いて、育つのを待つという原始的なやり方が主流であったが、前世で農業をやっていたので噛った程度には知識が俺にはある。

 

 畳に使うい草は現代だと九州の熊本産が国産の殆どであるが、昔は広島の備後表と呼ばれる最高級品が作られていた記憶がある。

 

「確か育て方は……」

 

 まず初年度は畑に種を撒いて苗を作っていく。

 

 この時に種付けおじさんの精液を溶かした肥料を畑に撒いて様子を見る。

 

 すると凄い勢いで種が苗へと育っていき、秋になる前には田んぼに植え替えられるほど大きく育っていた。

 

 で、田んぼは水を張った状態で秋から冬にかけてい草を成長させていくのであるが、い草は本来雪に弱く、雪が降り積もってしまうと苗が成長する日光を浴びることができなくなるのであるが、種付けおじさんの精液を浴びたい草は、そんじょそこらのい草とは全くの別物。

 

 白く、そして雪の降り積もる速度に成長が負けないで、雪以上に苗が成長を続けていく。

 

 そして雪が溶けると、真珠の様に乳白色のい草が数メートルの高さまで成長しており、それを農民達と一緒に収穫していく。

 

 本来だった雪解け頃ではなく、更に後の6月から7月に掛けて……苗作りから考えると1年以上を掛けてい草を収穫していくのであるが、種付けおじさんが育てたい草は緑色ではなく真っ白。

 

 それでいて畳の独特な良い匂いだったり、防寒性にも優れ、そして寝心地も良い。

 

 もちろん布団を上に敷くのは前提ではあるが……。

 

 青苧の買値が暴落して困窮していた農民達に、このい草の苗と育て方、そして織田領内にいた畳職人を越後までスカウトして家内でも作れるように支援を行っていった。

 

 又兵衛の白い草と呼ばれる品種になるが、畑で苗を作っておけば普通の稲作をした後の田んぼでい草を育て、そして雪解けに合わせて収穫して急ぎ田んぼに肥料をやったりして土地を整えれば、米の田植えに間に合う新たな二毛作の作物として越後の民に受け入られていくことになる。

 

 そして作られた白い畳は日本各地に売られていき、畳といえば白色と呼ばれるくらい全国的に普及していくことになる。

 

 困窮していた越後の農民達は新しい農作物の導入によって生活の質がどんどん改善していくことになるのだった。

 




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