【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「「父上!」」
「高貞、近国、よく異変に気づき、軍を動かしてくれた」
「父上もよくご無事で!」
高貞に状況を聞くと、津田軍は京の事変後に守備兵を残して、大半の軍を率いて安土城へと向かい、安土城を奪取せんと動いた塙直政の軍勢を壊滅に追いやった。
ただ気になる人物が軍勢に紛れ込んでいたとのことで……。
「気になる人物?」
「こちらに……」
案内されると、首実検の最中だったのか、首が並べられており、その中に見覚えがある人物がいたのである。
「さ、酒井殿……何故貴方がここに?」
「塙直政の軍の将に何故か酒井殿が居て……この反乱劇に徳川家が関与しているのが浮き彫りになってきました」
「黒幕は家康か? にしてはおかしな点が多いが」
後ろから少女になっている信長様が首を覗いて見ている。
「その少女は?」
「神通力で少女の姿になった信長様本人だ。ご無礼の無いように」
「また父上は女性を増やして……」
近国が呆れていたが、松永久秀と上杉謙信の事があったので、近国と高貞はスルーする。
そうこうしていると、伝令が入り、徳川家が同盟破りで尾張と信濃に侵攻を開始したと報告が入る。
そして尾張の守備を任されていた織田信孝が尾張に侵攻してきている徳川家と内応している動きが見えるとも言われていた。
「信孝がか? 俄に信じられんが……」
これには信長様も衝撃を受けていた。
自身の息子が裏切るというのは考えていたが、勝ち目のない戦に秀才であるとされた信孝がベットしたという思慮の狭さを信長様は嘆いていた。
「やはり後継者は信忠が居ないのであれば信道に代役を任せ、信忠の息子である吉法師が大きくなるまで任せるのが吉か? 甥である津田信澄も居るし……」
津田信澄も俺と共に越前の領地経営を手伝ってもらっていたので無事であり、信道の経験不足は津田信澄が支えれば、織田家の政権運営は可能と信長様は見ていた。
ただ信長様が目指していた中央集権化は既に破綻。
謀反人塙直政を討伐したのは明智と羽柴連合軍であるため、家臣の立場が上昇してしまい、大領を持つ家臣が複数出てくることを意味した。
「信長様、今は徳川への対処を優先しませんと」
「うむ、そうだな」
俺達は安土城へと入っていくのであった。
安土城大広間では織田信広様、織田信道様、そして織田信雄様が上座に座り、明智光秀殿、羽柴秀吉殿、俺こと津田又兵衛が次席として座る。
俺は一応信長様を京から救出した功績と、息子達が塙直政の別働隊を倒したことで、重臣としての格を保つことができたが、謀反人を直接討った明智殿と秀吉殿の功績は大きい。
一方で織田信雄様は塙直政に負けていたってことで格を落としてしまっていた。
この場を仕切るは年齢的にも格的にも明智殿であり、徳川家が暴走を続けている以上、討伐軍を編成しないと行けなかったが、柴田のオヤジ殿をどうするかというので議論は紛糾した。
方針は2つ、独力でなんとかしてもらうというのか、信濃に救援を送り込むか。
信雄は中の悪かった信孝を蹴落とすチャンスとして、全軍で尾張に向かうことを主張したが、今信濃を落とされると、本拠地の美濃も危険に晒されることになり、織田家の求心力が大幅に低下する恐れがあった。
あと信濃に行くとしても第二戦線のため、論功で不利に働く可能性もある。
誰も手を挙げれない状況なので、俺は一息吸うと、手を挙げた。
「柴田のオヤジ殿には恩もある。それに俺の軍が一番機動力があるから、恐らく信濃救援にギリギリ間に合う。俺が行く」
「又兵衛、行ってくれるか」
「ええ、ただ徳川討伐軍の大将は信道様です」
「なんだと!」
信雄が憤るが、年長者の信広様は、
「分かった。信道を討伐軍の総大将にし、織田家家長代理就任にこの場で採決を取る」
反対は信雄のみ。
強行採決の結果、信道様が織田家の全権を一次的に掌握。
津田軍ら信濃救援に向かい、他の織田主力は尾張から徳川本領を急襲する事が決定されるのであった。
一方で不利のはずである柴田勝家は北条軍相手にまさかの無双状態に突入していた。
「これが権六無双なり!」
本拠地信濃に溺愛する息子とおつや様がいるため、それはもう鬼のような気迫で敵軍の中に突っ込み、大暴れ。
柴田軍の家臣達の多くは元武田家臣だったり、織田家でも長年第一線で活躍した武将が多く、更に森可成の息子の森長可などのやべぇ若手も多く在籍していたため、関東で弱小勢力をいじめる事が多かった北条軍(世代交代の最中なので若干弱体化していたのもある)は武蔵国を奪還しに3万の兵で柴田軍を攻撃していたが、いつの間にか攻守逆転。
裏崩れすら起こして数千人の戦死者を出して敗走。
「反転! 目指すは信濃に攻撃をする徳川の首を討ち取れぇ!」
津田又兵衛率いる津田軍が信濃に急行している時と同じく、関東から信濃に柴田軍も反転して急ぐのであった。
そんな信濃では武田でも若き知恵者として武田信玄に可愛がられていた真田昌幸が信濃の国人衆や守備兵をまとめ上げて、徳川軍に対して、地形の有利で遅滞戦術を展開。
3倍近い徳川軍に対して有利に戦っていた。
「堰を切れ!」
お得意の水攻めや夜襲を繰り返すことで、徳川軍にも無視できない損害を与えていたが、真田昌幸は精強と知られ、忍耐深い徳川家康がこのような短絡的な行動に出ているのが不思議でならなかった。
「何故徳川家康はこの様な行動を?」
すると、物陰からシュタッと1人の忍びが昌幸の前に現れる。
「大将、重要情報だ。徳川家康が家臣によって暗殺されていることが分かった。実行犯は水野粛清で被害を受けた水野親族。そして今徳川家の指揮しているのは息子の徳川信康だ」
「なに?」
状況が刻々と変化する。