【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

22 / 202
井戸掘り名人又兵衛

「又兵衛様、新しく領主になった又兵衛様に村人達は従うと申しています」

 

「また我々で隠れて検地を行いましたのでその書類をご確認ください」

 

「張り切ってるねぇ霧丸、虎丸、龍丸」

 

「ええ、又兵衛様のお陰で、我々も武士の階級になれましたので、忍の力を存分に使って主を盛り立てますよ」

 

「そうかそうか、本当に助かる」

 

 彼らの苗字は皆伊賀○○であり、俺が武士になったからには苗字が必要だろうと出身地から苗字を与えた。

 

 別に彼らは親戚同士というわけではなく、ただ同じ苗字を与えただけであった。

 

 俺は纏めて呼ぶ時は伊賀衆と言っていた。

 

 忍びの彼らが加わってくれたお陰で領地経営は一気に楽になった。

 

 忍びとしての技術が豊富にあるし、中忍として部下を纏める経験がある彼らは、持ち前の技量をすぐに活かし、ある者は大工として家を建てたり、ある者は鍛冶師にジョブチェンジして農具の製作を始めたり、またある者は薬学の知識を活かして薬屋を始めたりと俺の家臣として働きながらも専門職の様な役割を担ってくれた。

 

「村人達は何を困っている感じだ?」

 

「一番は水問題があります。農業用水としての川も遠く、山がちで米を作れる箇所が限られているので、1000石の土地ですが、実質は600石程度かと思われます……こちらに詳しく」

 

「うむ……飲水の確保に時間がかかっているか……なら井戸を掘る必要があるな」

 

「井戸掘りですか」

 

「俺は地脈をある程度読むことができる。明日から井戸を掘っていこう。準備をしてくれ」

 

「「「は!」」」

 

 

 

 

 

 

 というわけで翌朝から俺は領民に顔合わせをしながら井戸掘りを始めた。

 

「村の為の井戸であるから占有したりするなよ」

 

「は、はい」

 

 村人達は恐縮しながらも、俺が辺りを見渡し、時折地面に触れると、ここだという場所に特注のスコップを突き刺した。

 

 それから俺が勢いよく掘り進め、袋に土を詰めると、忍びの家臣達に砂袋を引っ張り上げてもらい、地上に出す。

 

 それを繰り返していくこと30分。

 

 俺は30メートルほどの深さの穴を掘り、地面にスコップを突き刺した瞬間にジュバっと水が溢れ出した。

 

「縄を降ろしてくれ」

 

 縄を降ろしてもらい、それをたどって穴から脱出。

 

 村人達は湧き出てきた水に大喜び。

 

「さて村長」

 

「は、はい!」

 

「ここの村の人数は確か約300人だったよな」

 

「はい、子供も合わせるとそれぐらいで」

 

「よし、井戸をあと50カ所掘るぞ」

 

「し、失礼ですが領主様、大丈夫なのですか」

 

「ん? 何がだ」

 

「いえ……井戸1つ掘るのにも重労働でしたのに、そんなに働いては体を壊しかねませんが」

 

「なに、俺は人より頑丈なんだ! この程度の労働で倒れたりせぬわ!」

 

「は、はぁ……」

 

「それに村長期待しておけ、この地より湯源の匂いがする。温泉が湧き出るかもしれないぞ」

 

 そう言って俺は1日10カ所以上の井戸を掘っていき、忍びの家臣達も俺が伊賀の里に居た時に超人ぶりを間近で見ていたが、井戸掘りの仕事量でも俺が化け物であると再認識したらしい。

 

 というか、俺が掘った場所から次々に水源と繋がるので、その嗅覚も化け物と思われた。

 

「さてと、ちょっと深く掘るぞ」

 

 俺がそう言うと、穴をガンガン掘っていき、約50メートル……空気が重くなっても、俺はピンピンしていたので、生命力が段違いなのだろう。

 

 カツンと何かに当たると、熱い熱湯が湧き出し、慌てて地上に脱出すると、乳白色で60度近くの熱湯が湧き出した。

 

「又兵衛様、お、温泉を掘り当てたのですか!?」

 

「結構大きな湯源っぽいな。大工の奴らを集めろ。公衆浴場を作るぞ」

 

「公衆浴場?」

 

「村の皆が湯に浸かる場所だ。皆で楽しもうや」

 

「いいんですか!」

 

「村人にも触れ回ってこい」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 温泉が湧き出た事で、体を洗う習慣が出来ていた嫁達はまた温泉に入れることに大喜び。

 

 湯場を早急に作らせ、来客用の風呂場と領民にも開放する風呂場、それに洗濯物を洗う洗い場と鶏の孵化させるための廃湯を使った孵化場を作っていった。

 

 温泉施設が完成し、井戸を50カ所近く掘った事で、村の水不足も改善し、村人達からも前の領主よりは話を聞いてくれそうであるって思われたようで、村長や家臣の忍び達経由で困り事の相談を言われることが多々あった。

 

 例えば米の代わりに小麦を育てようと言っても利点を理解できないので、まずは小麦粉で作る料理を領民に食べさせた。

 

 今回作ったのはうどんと蒸しパンである。

 

 うどんはどちらかと言えばほうとうの方が近く、小麦粉で作った麺を入れて煮た大鍋を用意し、蒸しパンはベーキングパウダーの代わりに酒麹を入れ、温泉の蒸気で蒸し焼きとした。

 

「小麦は雑穀飯として食うものって思っていたがこんな食い方があるんだな」

 

「粉にするのは手間だが、新しい領主様の毛受様は水車を使った製粉所を作るって言っていただ」

 

「本当前のケチでオラ達の言葉を聞いてくれなかったため領主とは大違いだぎゃ!」

 

 ほうとうと蒸しパンを食べながら村民達は口々に言う。

 

「米も作るが、水田に適さない場所も多いからな。そこは麦やそば、稗や粟を作っていこう。そして鶏を飼うようにしよう」

 

「に、鶏ですか」

 

 村人達は鶏を飼って食べると聞いて仏罰が当たらないか心配になるが

 

「卵は体に良いし美味いんだぞ、卵の殻はよく砕いてたい肥に混ぜ込めば肥料にもなる。まぁ無理にはさせないから、希望者だけやっていこう」

 

 村の方針も決めて、今年は特に手を加えないことを説明し、年貢も例年が取りすぎていたことが発覚したので減税させた。

 

 また養蜂やキノコ栽培も再開し、秋以降に向けた準備をしていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 帰蝶様は無事に男子を出産し、母子共に健康であった。

 

「又兵衛、お主の祈祷が効いた! 諦めていた子供を抱くことが出来た! 感謝しても仕切れない」

 

 赤ん坊を抱きながら帰蝶様が俺に感謝を伝えてきた。

 

「いえ、俺はやるべきことをやったまでです……ただ気になったのが、奇妙様の扱いなのですが……」

 

 信長様には8歳(数え年)になる長男の奇妙丸の他に次男と母親の身分が低い三男の男子が3人居たのである。

 

 奇妙丸は嫡男としての教育を十分に受けており、信長自身も才覚を認めていた。

 

 で、この子供達は正室である帰蝶様の養子になっていたのであるが、直系の男子が産まれた事で、序列の変更を信長様に言い出すのではないかと心配していた。

 

「確かに我が子は可愛いが、それで織田家を割るわけにはいかんからな、ただ私は美濃出身である故に美濃出身の者達はこの子に織田家家督を継がせようと動くであろう」

 

「後継者争いは起こりますか……」

 

「又兵衛、お主はまだ家臣の中では格が低い。もっと出世し、この子の家老を務められるくらい偉くなれ、そして家督争いには参加しないように教育をするのだ」

 

「は、はは!」

 

 とは言うものの、教育係は斎藤道三の遺児で帰蝶様の弟でもある斎藤利治様や織田家重臣の森可成様が適任であると思い、信長様がまた夜を共にしたいと誘われたので、それとなく聞いてみたところ

 

「帰蝶に随分と気に入られておるな……確かに将来的にはその可能性もあり得るが、順序的には利治と森両名を教育係として付けるが筋よ」

 

「ですよね……」

 

「ふむ……まぁ色々と考えてはおく、それまでは領地経営を勉強しておれ」

 

「は!」

 

「あと、お主の領地から温泉が湧き出したのは本当か?」

 

「あ、はい、今客人用の湯場を作っている最中ですが」

 

「余も温泉に行きたいから完成したらすぐに知らせろ! 入りに行く!」

 

「は、はは!」

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