【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

27 / 202
信長様から竹中半兵衛に会いに行けと言われたら、稲葉山城攻めに参加することになった

 冬の間は特にイベントも無く、1565年が始まり、月に1度……いや2週間に1回ペースで信長様が温泉に入りに来るようになり、なんなら俺が前に住んでいた屋敷にも温泉があることを伝えると、その場所を別の家臣に与え、整備させて入浴が出来るようにしてしまった。

 

「うむ、でも余は加茂村の馬が整備した温泉の方が気持ち良いから好きであるがな!」

 

 なお最近ではローションオイルによるオイルマッサージや全身の垢すりもするようになってピカピカもちもち肌の美肌信長様が誕生していた。

 

 これに対して帰蝶様も羨ましいとのことで、夫婦で温泉に浸かりに来ることもしばしば……。

 

 流石に帰蝶様は俺の嫁達や侍女達に体を洗ってもらうが……。

 

「信長様も結構温泉に浸かりに来ますが政務の方は大丈夫なのですか?」

 

「うむ、何も問題は無い。それよりも慢性的な頭痛が酷くてな……温泉に入ったり、蒸し風呂に入ると血の流れが良くなるのであろう? 温泉に入れば1週間程度頭痛に悩まされなくて済むのだ……あ、馬と交わった後も頭痛が治まるな」

 

「た、たまたまだと思いますよ」

 

「そうかのぉ……」

 

 あと最近信長様はチーズハンバーグにハマっていた。

 

 元々牛乳が好きだった信長様は牛の乳から出来る乳製品を凄く気に入り、特にチーズの魅力に取り憑かれてしまっていた。

 

 その中でもチーズハンバーグは特に気に入ったようで、小牧山城でも食べられるようにしろと駄々をこねて、俺が困惑するという事件が発生したりもしていた。

 

 ちなみにその事件後に小牧山城の料理番にレシピを教えたり、俺の家で作っている自家製チーズを持ち込んだりもしていた。

 

 あまりに好き過ぎて、ご飯の上にチーズをふりかけ、味噌と一緒に食べるという正気を疑うような食べ方もしていた。

 

(これには他の家臣達も悪食の類だと言っていたが、信長様に忠言した筆頭家老の佐久間様と口論になったりもしていたのを俺は目撃している)

 

「はい、乾酪(チーズの和名)と挽肉の固め焼き(ハンバーグ)です」

 

「おお! 待っていたぞ! これよこれ!」

 

「信長様は相変わらず好きですねぇ」

 

「帰蝶も好きではないか」

 

「毎回だと流石に飽きます」

 

「帰蝶様にはこちらを用意しました。めんつ(パンの和名)かすてーら(ケーキの代用語)でございます」

 

「めんつかすてーら……ほぉ!」

 

 まぁ出したのはパンケーキである。

 

 薬屋の家臣(忍び)が薬として仕入れてくる重曹を購入し、今回のパンケーキに使って膨らませていた。

 

 それに蜂蜜とバターをかけた一品である。

 

「な、馬! なんだその美味そうな物は! 帰蝶だけではなかろうな!」

 

「はい、信長様の分もございますから安心してください」

 

「そ、そうか! なら許す!」

 

 主君との距離が凄い近くなってしまったが、他の家臣達からの目線が痛いこと痛いこと……。

 

 まぁ佐久間様以外の重臣の方々や祈祷で付き合いが出来ていた家臣の方、事務でよく顔を合わせる中流以下の家臣の皆さんとは仲が良いのだが……小姓連中とはすっかり関係が冷え込んでしまって……。

 

 まぁ掘君とは仲良くしているが……。

 

「うむ、今日も満足だ馬よ……そうだそうだ。馬、主命としてお使いをしてはくれぬか」

 

「お使いですか?」

 

「うむ、竹中半兵衛という男の器量を計ってこい」

 

「竹中半兵衛……ですか?」

 

 俺はキョトンという顔をする。

 

「信長様、私は竹中半兵衛という男をよく知らないのですが、どの様な男ですか?」

 

「うむ、今孔明と呼ばれるほどの知恵者だ。幾らか斎藤家と小競り合いを続けておるが、そやつの計略により小さい負けが込んでいる。大局には影響は無いが、その様な優秀な軍略家を寝返らせる事ができれば後の大局に影響するとは思わんか?」

 

「流石です! 信長様! 先を見据えての1手なのですね!」

 

「あぁ、口が上手い猿に行かせるか迷ったが、武芸にも長ける馬であれば何か起こったとしても生きて帰ってこれると思ってな」

 

「なるほど……上手くいくかは分かりかねますが、頑張ってみます」

 

「うむ、頑張れ、引き抜ければ、また褒美を出すからな」

 

「は!」

 

 

 

 

 

 

 

「一応俺織田家の人間だけど、敵地の武将と密会って大丈夫かな……まぁ何とかなるか」

 

 俺は織田に降った斎藤家の武将の方に竹中半兵衛の家の場所を聞いていき、ある程度の場所を特定した。

 

 菩提山城主らしく、行けば分かると皆さんから言われて、行ってみると、それはもう立派な山城がそびえ立っていた。

 

「こーれ、攻め落とすとなったら被害凄いだろうな。稲葉山城も堅城だけど、規模だけで言えばこの菩提山城の方がデカいかも」

 

 さてどうやって入るかと悩む。

 

 正面から織田家の人間でーすと言って入らせてくれるわけ無いし……ここはやっぱり隠密しながら入るに限る。

 

 俺は気配を消してから、堀を飛び越え、城壁をよじ登って城内に侵入し、適当な足軽を捕まえて、気絶してもらい、武具を拝借して、城内の散策を堂々とし始めた。

 

 明らかに急いで移動してますよって感じを出せば案外どうにでもなる。

 

 ここでキョロキョロと周囲を見渡している方が問題であるし、俺にはとっておきの物を用意していた。

 

 本丸に移動するにはどうしても正門を通らなければならないので、正門を守っている兵に

 

「稲葉山城の者より言葉を預かり、竹中半兵衛様に伝言を伝えたいのであるが」

 

「書状ではなくか?」

 

「至急の知らせにて」

 

「ふむ……ついて来い」

 

 門番は俺に付いてくるように言い、本丸の屋敷に案内された。

 

 すると屋敷の中で書物に埋もれながら寝ている人物がいた。

 

「竹中様、竹中様! 兵が呆れておられます」

 

「んん……あぁ……寝ていたか……で、何用?」

 

「稲葉山城より伝令でございます」

 

「稲葉山城……ふむ」

 

 書物を退かした竹中半兵衛という青年は立ち上がると話を聞こうと言ってきた。

 

 竹中半兵衛の目はこちらを見透かしているように澄んでおり、こりゃバレているなと俺は観念して話し始める。

 

「失礼、竹中半兵衛殿、実は私は織田信長様の家臣……毛受又兵衛という者でございます。ご無礼をどうかお許しください」

 

「お、織田の兵だと!」

 

 門番の兵が槍を向けてくるが、俺は動じること無く竹中半兵衛を見つめる。

 

「ふむ、引き抜きですかな?」

 

「それも考えましたが、目を見れば分かります。多分何を言っても貴方は今織田家に寝返ることは無いと」

 

「ふむ、なるほど……しかし城内に単騎で侵入した胆力に応えて話を聞くだけ聞きましょう。又兵衛殿は将棋を指せますか?」

 

「弱いながらに」

 

「では一局やりましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 何故か竹中半兵衛殿と将棋を一局することになったが、戦国時代の将棋は少しルールが違う。

 

 持ち駒のルールが無く、取った駒を自分の駒として使うことが出来ないのである。

 

 どちらかと言えばチェスに近いルールである。

 

 持ち駒が無いため、将棋の戦術も狭くなり、一局の時間も短めである。

 

 長くても30分程度で決着となる。

 

「信長様は僕をどの様に評価されているのですか?」

 

「そうですね……今孔明と褒めていましたが、将来の大局を動かすために必要とも言っていました」

 

「将来……となると信長様は既に美濃を確保した先のことを見据えておられるのですね」

 

「ええ、美濃は通過点であると考えているようで……信長様は今からどの様に斎藤家を詰ませるかを模索しているかと」

 

「ふむ……終わらせ方を考えていると」

 

「他の重臣の方にも寝返りを誘う行動を進めているようで」

 

「……そんな情報を僕に喋っても良いのですか?」

 

「目を見れば分かりますよ。賢い貴方であればこの情報は他人には言わない……でしょ?」

 

「ふふ、まぁそうですがね。では又兵衛殿は僕のことをどれぐらい知っていますか?」

 

「城下で聞いた話から……斎藤龍興様より邪険に扱われていると……特に斎藤龍興様に取り入る側近の方からは小便をかけられて馬鹿にされたと聞いております」

 

「まぁ噂の通り、龍興様は僕を御せる器ではありません。成長すれば化けるかもしれませんが、今の状態では若すぎますし、奸臣に囲まれ器の成長を阻害している。そう遠からず織田に負けますよ斎藤家は」

 

「言ってよろしいので?」

 

「言ったところで事実ですし……持論ですが物事には生と死が必ずあると僕は考えています」

 

「生と死……ですか?」

 

「ええ、斎藤道三が産み出した美濃斎藤家、成長するために斎藤義龍が家督を奪ったのは良かった……しかし才覚のあった彼が若くして病死したことで斎藤家は死に向かい始めた」

 

「早めに病に気が付き治療をすれば治ったものの、中美濃、東美濃を織田に取られた時点で病は治らぬところまで侵食してしまった。家臣達が纏まっていればまだ立て直せたが、家臣達からの信頼も失っている。これはもう死ぬしかない」

 

「その話であると織田もいつか死ぬと言っていますが……」

 

「死ぬでしょう。それが早いか遅いかの違いですよ」

 

「私は生み出す側で居続けたいものですがね」

 

「それもまた1つ……」

 

 竹中半兵衛殿との将棋は俺の負けで決着した。

 

「参りました」

 

「……まっすぐな打ち方をしていましたね。搦手が得意かと思われましたが……うん、又兵衛殿、もし良ければ付き合ってはくれませんか?」

 

「ええ、なんでしょうか?」

 

「今から僕は城攻めをする予定なのですが、一緒にどうですか?」

 

「城攻め? 織田のですか?」

 

「いや、斎藤家本拠地の稲葉山城を」

 

「はい?」

 

 わけがわからないよ! 

 

 

 




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