【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
稲葉山城攻略戦はっじまっるよー。
というわけで、半兵衛殿は信用できる兵を16人、プラス俺と半兵衛殿の18名で稲葉山城乗っ取りを決行するらしい。
俺も1人での城攻めはしたことがあったが、敵本拠地をやるとなると規模が違う……。
「まずは弟に病気になった体で動いてもらいます。まぁ僕が訪ねれば察してくれてその様に動いてくれるでしょう」
「叔父である安藤守就殿には既に計画は伝えてあり、援軍の約束は取り付けてありますので、あとは実働部隊が動くだけです」
なんか計画を聞いていると、半兵衛は本当に頭の切れる人物なんだなぁって再認識した。
「俺の役目ってなんです?」
「僕に付いてきて貰って、殺して欲しい人物を殺して下さい。あとは薬師の真似事をして貰えれば良いです」
「はぁ……」
というわけで稲葉山城攻略RTA開始です。
「止まれ、何者だ」
「竹中半兵衛です。弟が病気と聞いて薬師や衣服を手配しまして」
この時半兵衛殿の弟は稲葉山城にて人質生活をしていた。
「薬師です、半兵衛殿の弟君である(竹中)重矩殿が流行病を患ったと聞き、居ても立ってもいられずに駆けつけた次第で」
「随分と恰幅の良い薬師であるな」
「薬を調達するために山師の様に山を練り歩く為、自然と恰幅が良くなってしまい……」
「一応荷物の確認をさせてもらう」
パッと見は分からないが、衣服や見舞いの品の中には武器が隠されていた。
それを俺は薬があるので気を付けて扱ってくだされだとか言って注意を引き付ける。
「わかった、わかった煩いな。確認は済んだ。竹中重矩殿も医者を呼んだと言っていたので、早く見舞いに行ってやれ!」
「では半兵衛様、急ぎましょうぞ」
「そうですね、門番ご苦労」
こうして俺達は稲葉山城の中に侵入するのであった。
「なぁあの恰幅の良い薬師……絶対普通じゃないぞ……」
「そんなのわかっているわ……でも口答えしたら殺されそうな殺気だっていたぞ……お前何とかしろよ」
「嫌だよ、何をされるかわかったもんじゃない」
「上には報告するか?」
「いやでも20人にも満たない数だろ、しかも竹中半兵衛様も一緒であったし、何も起こらないと思うけどな」
「見なかった事にするのが一番か」
「んだんだ」
「忍びの類かと思ってましたが、変装は苦手で?」
「そうですね、人畜無害そうに見せることは出来ますが、今回はあえての威圧を選ばせてもらいました。俺に気を取られれば武器の露呈がしないと思いまして」
「なるほど……それは上手かったですね」
本丸に入ると竹中半兵衛殿の部下達が騒ぎを起こし、俺と半兵衛殿が城主部屋に向かって進んでいく。
「な、何事ですか!」
「あ、又兵衛殿、コヤツは奸臣なので殺して下さい」
「はいよ」
勢いよく近づいて、刀を抜かれる前にゴキっと首をへし折る。
後から聞いたが、今殺したのは半兵衛殿に小便をひっかけて馬鹿にした実行犯らしく、恨みを持っていたのだとか……。
ちなみにこの日の城の守衛の責任者が今殺した彼であったので、指揮系統は完全に麻痺。
「ではあそこの部屋で又兵衛殿は暴れてください。奸臣達が控えている部屋なので全員殺しても構いませんよ」
「は、はい」
戦国時代で有能な人って信長様もそうだけど、なんか狂気を孕んでいるのはなんでだ?
そんな事を考えながら部屋に凸し、部屋の中に居た者達の首と胴体を分離させて、あっという間に制圧した。
そうこうしていると、半兵衛殿が援軍の安藤守就殿の部隊を城に入れて詰みにかかる。
斎藤龍興は半兵衛に言われるがまま追放となり、城を追われ、これにて稲葉山城の乗っ取りは完遂することになった。
一応囚われの身となった斎藤龍興に対して竹中半兵衛殿は
「龍興様、これは半兵衛めの忠言でございます」
「ちゅ、忠言? 謀反の間違いでは?」
「まさか、これにて僕は最後の奉公とさせてもらいます」
「いくら稲葉山城が堅城でも色欲や酒に溺れているようでは、この様に策次第で簡単に落城させることが出来るのです」
「家臣達の心が離れぬよう、軍事や政務に励み、民草に平穏を与えなければなりません。城は預かりますので、暫く別の城で反省してください」
「半年後にはお返しします」
「命を取らぬと?」
「取りませぬ」
こんなやり取りがあり、斎藤龍興は別の城にて蟄居し、半年間は竹中半兵衛殿や美濃三人衆の方々が稲葉山城の管理をすることとなった。
「俺はこの事を信長様に報告しなければなりませんので……」
「あ、はい。付き合わせて悪かったですね。又兵衛殿との城取り楽しかったですよ」
「そ、そうですね」
ニコニコしているが、半兵衛殿の策謀が凄まじすぎて、チートを持っている俺以上のことを平然とやってのけることに恐怖を覚えた。
また城攻めは策次第でどんな堅城も落城させられることも学ぶことが出来るのであった。
「何してるの馬よ」
「な、成り行きで……」
信長様に稲葉山城乗っ取りの一件を報告したら、真顔でそう言われた。
半兵衛殿を引き抜いてこいって言ったら城を落としているのだから真顔にもなる。
「半兵衛に稲葉山城を譲るのであれば美濃半国を譲ると伝えてこい」
「その件なのですが……信長様、半兵衛より手紙を預かっています」
「手紙か……見せてみよ」
俺は信長様に手紙を見せると、信長様は爆笑し始めた。
「なるほど、馬も読んでみろ」
投げ渡された手紙を俺も読んでみると、この様な事が書かれていた。
『信長様は恐らく稲葉山城を差し出す代わりに美濃半国を僕に譲る事を言うでしょうが、今回は主君のための忠言として行った行為。城を取りたければ自らの力で奪い取ってみてくだされ。半年間であればお相手いたします』
『それに僕と信長様は相性が良すぎるのです。同じく先が見えるから噛み合うことで人を殺しすぎてしまう。中華の曹操の様に短い天下で終わる結末を迎えるか、別の者に内側から崩されることになるでしょう』
『僕と信長様は距離を少し置いた方が良いと考えています。恐らくなるとしたら陪臣という立場になると思います。又兵衛は駄目ですよ。僕が死を司る能力をしているのに対して彼はとにかく生に繋がる能力をしている。今回は僕が主導しましたが、相性が良くない』
「クク、又兵衛、振られたな」
「半兵衛殿の様な策略家とは相性が悪いかもしれませんね。私自身は搦手も得意ですが……半兵衛殿の策は参考になっても確かに死者が多くなる。城攻めはいかに敵味方の死者を少なくするか……それを今回私は学びましたが」
「ふむ、まぁ相性が悪いと半兵衛が言うのであれば仕方がない。他の者で調略を進めさせるとしよう」
「あ、信長様、今回稲葉山城内に侵入出来て、色々調べることが出来ましたので、これが稲葉山城の見取り図になります」
「ほんと、馬はただでは転ばぬな! そういうところが好きだぞ!」
信長様に稲葉山城の見取り図を渡した俺は家に帰るのであった。