【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「おお、力がみなぎる!」
「奥様にも妊娠しやすくなる祈祷を行いましたので今夜性行為に励んでみてください」
竹取さんの娘が快調に向かった噂話は瞬く間に貴族達に広まり、俺は各家で祈祷を無料で行っていた。
その代わりに貴族達に礼儀作法や家業の類を習うが、俺の学習速度が滅茶苦茶早いことと、俺の出自が武家ではなく、農民よりも酷い生活をしていたことを竹取のおっちゃんにポロッと話したら、何を勘違いしたのか、俺が貴族の落胤(らくいん)……身分の高い人物が産ませた訳ありの子供なのでは無いかという噂が広まっていた。
蹴鞠はサッカーのリフティング、包丁術は普通に料理の技術が元々高かったこともあり、評価は上々、詩や書道も無難、何より楽器と踊り、物語の創作系は貴族達も舌を巻いた。
これらにより貴種の産まれでなければ説明が付かないと、貴族達は口々に言い始めていた。
それに男女問わず活力を与え、病気を癒す力……神通力に通じ、これが農民生まれは無理があると竹取のおっちゃんにも言われた。
「又兵衛、お主貴種になるつもりはあるか?」
「え……何をする気ですか?」
「いや、又兵衛半家の1つに又兵衛の母親に合いそうな女性が書籍上存在したから、その者を母親にし、とある公家のご落胤ということに辻褄合わせが出来そうであるが……」
「いやいや、俺織田家の家臣なので、勝手に身分を作られると……」
「まぁそれもそうであるから、主君に確認してからになるであろうが、又兵衛ならば何時でも貴種に成れる手筈は整えておくぞ」
流石この時代の貴族……家系の捏造が普通に行われる……。
お話はありがたかったが、流石に受けるわけにもいかず、この話は保留にさせてもらった。
ある日の夜、俺は敵意を感じた為に飛び起きると、武装した野盗の類が竹取家を襲撃しに来ていた。
俺はすぐさま、迎撃に出る。
まず俺に襲いかかってきた3人の野盗のうち1人が刀を振り下ろしてきたので、俺は無刀取りを実行し、刀を振り下ろされる前に持ち手部分を掴むと、そのまま手首の関節を曲がらない方向に曲げて粉砕。
これで1人使い物にならなくなったので、そのまま残った2人に回し蹴りを顔面に食らわせると、メキメキと音と共に顔面が陥没していき、顔の穴という穴から真っ赤な体液を噴出していた。
3人を無力化し、まだ気配を感じたので暗闇に潜んでいる者に向かって石を思いっきり投げる。
ガゴっと鈍い音がし、見に行くと野盗姿の男が頭が破裂した状態で見つかった。
「キャー」
「奈々さんの方にも居たか!」
俺は奈々さんの部屋を開けると、奈々さんを羽交い締めにしている野盗がそこには居た。
「毛受っていう祈祷師はお前か」
「奈々さんを放せ!」
奈々さんも必死に抵抗しているが、男の力が強く抜け出せない。
「悪いな、雇い主はお前さんが居ると困るお方でな……死んでもらうぜ!」
すると別の場所から矢が飛んできたが、俺は察知して、手で掴むと、それを奈々さんを羽交い締めにしている男に投げつけた。
男の眉間に矢が突き刺さり、男は血を噴き出して倒れる。
俺は近くにあった皿を手に取ると、矢が放たれた方向に投げつける。
ガッシャーンと音がなると、ドサリと黒い影が落ちる音がした。
気配はもう感じない……どうやらしのぎ切ったらしい。
竹取さんも起きて何事かと俺に聞くが、俺も賊が入り込んだので迎撃したとしか言えない。
奈々さんが
「賊は又兵衛さんを狙っていたらしいわ」
と言い、おそらく俺の祈祷により何か不利益を蒙った人物による嫌がらせではないかと推測出来た。
「竹取さん、俺がここに留まればまた皆さんが襲われるかもしれません。俺はここらで尾張に戻ろうかと」
そう言うと、竹取さんは
「なら娘の奈々も一緒に連れて行ってくれ。奈々は元気になったとはいえ、又兵衛の祈祷がまだ必要だし、お主との繋がりを持っておきたい。奈々を又兵衛の嫁に出す」
「いいのですか?」
「ああ、奈々も良いな」
「はい、お父様」
事前に打ち合わせをしていたかのようにトントン拍子で奈々さんが俺に嫁ぐことになり、また嫁が増えるのであった。
京を出発した俺と奈々さんは近江街道を使って今度は美濃を目指す。
流石に俺1人ではないので、関所を通りながら、奈々さんは俺との新婚旅行を楽しむ。
今まで病弱で、ろくに外に出られなかったので余計に楽しいのだろう、あの花はなんでしょう、あの鳥は、あの食べ物はと色々聞いてくる。
時に野盗が襲いかかってくることもあったが、全て返り討ちにし、そのまま野盗が持っていた物を路銀に換えながら約10日かけて秀吉の居城である美濃の墨俣城にお邪魔するのであった。
「又兵衛、また嫁さんを増やしたのか」
「ああ、秀吉殿、京での偵察で貴族の娘を助けてな、成り行きでそのまま娶ることになった」
「はへぇ~本当女性の扱いは天下一であるな」
「いやいや、そんなことは」
「謙遜はよせ、オイラはねねが2人目を孕んでから更に性欲が強くなったのか、オイラを搾り取るから浮気出来なくて……」
「またこっそり祈祷しようか? ……いや、それよりも精のつく料理の作り方を教えた方が良いか……ねねさんを満足させる技術の方が良いですかね?」
秀吉は少し悩みながら
「全部頼む」
「はいはーい」
俺は秀吉殿との親睦を深めるのであった。
奈々さんも小さいとは言え城に入り、城主と対等に話せる間柄を見て、俺の身分が出任せでないと改めて認識したらしい。
そのまま城の客間を借りて一泊……流石に借りている部屋で性行為するのもあれなのでしなかったが、秀吉殿とねね殿はお盛んだったらしい。
そして俺の領地に到着し、嫁達にまた嫁が増えたことを報告。
雫はグチグチと嫌味を言うが、他の嫁さん達は快く奈々さんを出迎えるのであった。
「貴族の娘を誑し込むとは流石だな馬よ」
「成り行きでして……こちらが京周辺及び大和や伊賀、伊勢、近江の地図でございます」
俺は信長様に目的であった京周辺の地図を渡すと、信長様は少し眺めたあと、小姓の堀に地図を渡し、京や畿内情勢についての話に移る。
「畿内はどうであった」
「まず三好の影響力は京では大幅に減衰しており、町中を野盗の類が蔓延っており、貴族の方々の屋敷が日夜襲われていたり、周りには死者が大量に転がっている有様でした」
俺は京の衰退、比叡山延暦寺の腐敗、松永久秀殿はやっていることは悪人なれど、個人的には好感が持てること等を事細かく報告。
信長様は一考した後に
「馬、今朝倉(越前の大名)に身を寄せている足利義秋……暗殺された足利義輝の弟君から斎藤家と停戦し、両家揃って京にて三好勢を駆逐し、幕府再興を願われた。余はこれを好機と思い、秋前に軍を起こす。馬もしばらく休んだ後に上洛に備えよ」
「は!」
と、信長様から命令を受けた。
また信長様より
「妹の市であるがしばらくしたら浅井長政に輿入れすることが正式に決まった。今しばらくしたら互いに会えなくなる故に、市に会ってやってくれ」
「良いのですか?」
「市はお主に惚れておる。それを家の都合で引き裂くのだ……市の為に時間を作るは家長ではなく兄としての務めよ」
「……では市様に面白い話や京で学んできた歌等を贈りましょう」
「うむ、そうしてやってくれ」
「あ、又兵衛」
「お市様、お久しぶりでございます」
俺は市様に会いに行き、市様は俺を見て満面の笑みを浮かべる。
「京に行ってきたんでしょ。どの様な場所だったの!」
「そうですねぇ……夢の無いことを言いますと尾張の方が栄えていますよ。ただ近江の町は凄かったですね。内海(琵琶湖)は広く、船が多く行き来し、様々な物が集まっていました」
「近江……又兵衛は私が浅井に嫁ぐのは」
「信長様より聞いております」
「……又兵衛、私は貴方と出会うようになって面白い話を沢山聞いたし、楽しくなるような歌も知ったわ……嫁いでしまったらそれも聞けなくなるのよね」
「お市様……」
「……これも武家に娘として産まれた勤めです。浅井に行っても勤めを果たして参ります」
「……」
「お幸せにとは言わないのね」
「出来ることであればお市様と結ばれる様になりたかった次第で……」
「……ふふ、私もよ。又兵衛。今世では難しいけど、来世では夫婦になりましょ」
「……お市様……」
お市様は少し涙ぐみながらも、着物で拭って笑顔を取り繕うと
「さて、私も嫁ぐまで時間が無いわ。限りある時間で色々なお話聞かせてもらえないかしら」
と楽しそうに言われた。
俺は時間が許す限り楽しいお話や歌、踊りを彼女に見せるのであった。