【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
ドロドロドロ……
「ふう、今年は田植えに直接参加出来なかったからな。米が昨年ので品種が変わっていればいいけど、そうじゃなかった場合に備えて……川に精液流して豊作を願いますかね」
俺は村の川の上流にて大量に精液を垂れ流していた。
「全く、これで作物が凄い育つって他の人に言ったら狂人扱いされるわよ」
「確かにな……雫、抜くためのオカズになってくれてありがとう」
「もっと胸の大きい子に頼みなさいよ」
「雫は雫で太くてパンパンの太ももが良いんだよ」
「変態!」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そんな夫婦の会話をしながら、服を着直すと川を見る。
川はうっすら白く濁り、大きく丸々太ったウナギや鯉が口をパクパクさせがら泳いでいる。
「ウナギが化け物みたいに大きくなってるわね……」
雫が言うように、泳いでいるウナギ達は1メートルを超える大きさになっており、普通のウナギ用の罠を設置しても大きすぎて掛からない程度には大きく、そして重くなっていた。
サワガニなんかも小さくて可愛らしいのが普通であるが、毛ガニ並みに大きくなっている化け物サワガニを村の子供達やうちで育てている孤児達が捕まえてくる事もあった。
サワガニと言えども大きくなれば身の部分も大きく肉も付く。
湯がいてカニしゃぶとカニ鍋にした時に、カニの足の争奪戦になった事もつい先日起こっていた。
「でもついに貴族の娘さんを嫁にするなんて……もう毛受の名前は要らないんじゃないのかしら?」
「いやいや、雫。俺が武士になれたのは雫の家名があったからだからな。名前を変えることになっても、毛受の名前は子供達に継がせて必ず残す」
「そう……それならばいいけど……捨てないでよ……又兵衛」
雫は俺に抱きつきながらか細い声で囁く。
「柄でもない。いつもの威勢はどうした雫。安心しろ。嫁にした女はその子供を含めて最後まで面倒みる。それに雫……俺が居ない時に皆を纏めてくれてありがとうな」
「え、いや……私よりも母様が年長者として纏めている気がするけど……」
「望(雫の母親)からも聞いているよ。雫は若いなりに頑張っているって……今年の田植えも村長や家臣の皆を統率したのはお前だったんだろ」
「……出過ぎた真似で怒る?」
俺は首を横に振る。
「とんでもない。よくやってくれたよ。ただ俺はどうしても信長様に呼ばれて戦や任務で家を留守にしてしまうことが多々あると思う。正妻として家臣や家中の統率を今まで以上に任せることになるし、出世して城持ちになれば城代として動いてもらうことになる」
ガシッと雫を抱きしめ
「これからも雫を頼りにしているからな」
「……うん!」
雫もいつものツンデレは鳴りを潜め、デレデレになるのだった。
ある日、俺の屋敷に丹羽長秀様と柴田のオヤジ殿が遊びに来ていた……まぁ実際は温泉に入りに来たのであるが……。
男3人、蒸し風呂の中で密談をする。
普通のサウナより温度が低いので、蒸し風呂の中は結構密談するのに向いていたり……。
「京はそれほど荒れているのか」
ムワッとゴリラの様に毛むくじゃらの柴田のオヤジ殿が俺の話を聞いてそう答えた。
「貴族達に取り入り、調べてみた限りでは、貴族であっても明日を生きる糧を手に入れるので精一杯。娘を質に出し、貴族の娘が娼婦の真似事をして食を得る様な光景が広がっておりました……お二人は信長様が京に向かった時にはご一緒に向かわれなかったので?」
実は信長様は桶狭間の戦いの前年に約80名ほどの側近を率いて上洛し、暗殺された足利義輝に尾張統一の報告をしている。
足利義輝側からは役職に任じられることは無かったが、尾張の実効支配を黙認する形が取られていた。
その時に京を見ていた為に俺から現状の京の様子を聞いた時に、信長様は複雑そうな顔をしていたので、何か思い出があるのだろう。
「私は留守役を任され、権六殿はまだ信行様の一件で謹慎しておりましたからな」
「あぁ……」
オヤジ殿の信行様の一件とは、信長の弟である織田信行が信長に対して家督を奪うために二度に渡り反乱を起こしたり、起こそうとしたのである。
その信行様の守役……教育係が柴田のオヤジ殿であり、信長様に信行様が再び反乱を起こそうとしていると密告したのもオヤジ殿なのである。
オヤジ殿は我が子よりも愛していた信行様を織田家の為に殺すことになり、そしてそれ以前に信長様に一度戦で戦ったという事実がオヤジ殿を曇らせていた。
信長様は桶狭間以降、オヤジ殿の能力の高さを内乱時にこれでもかと理解していた為に、美濃を攻めるようになってから重宝する様になり、今では一緒に温泉に入りに来るくらい関係性は回復したが、桶狭間以前の話をすると度々曇る事がある。
「ただその時京について行った河尻(信長様親衛隊の1人、あと信長様のセフレ)に聞いていたが、屍がそこら中に転がっているとは聞かなかったが……」
「それだけ三好の影響力が低下しているのでしょう。今の京は主が不在です。将軍も居らず、かといって成り代わるような天下人も不在……人口だけが多いため、流民が京という権威につられてやってきて、腐敗した僧侶達の餌食となり、屍を晒す……悪循環に陥っております」
現代で言うところの細マッチョかつ醤油顔と呼ばれる日本人らしい顔立ちをしていた丹羽様からもムワッと身体から蒸気が溢れ出る。
俺は熱源の熱湯を部屋に撒いて更に蒸し暑くし、2人の話を聞く。
「いや、朝廷が弱っているのは将軍が不在であることだけではないだろう」
丹羽様が言うには朝廷が弱っているのは有力公家や貴族の方々が山口の地にて大量虐殺された事件が10年以上前に起こり、それから朝廷の権威だけでなく、京での政務にも影響を及ぼし、そのダメージがまだ回復しきってないところに将軍暗殺で京の治安が崩壊したというのが正しいらしい。
「又兵衛は大寧寺の変というのを知っているか?」
「いえ、知りませんが……」
丹羽様が豆知識を教えてくれた。
「大内氏という殿様が大層男色が好きで家臣達に手を出しまくっていたらしいのだが、その家臣達が殿様を取り合って痴話喧嘩の延長で反乱が発生し、その時に大内の殿様が公家を大量に保護していたから反乱に巻き込まれて虐殺が発生したって話だ」
柴田のオヤジ殿も丹羽様の話に補足をいれる。
「信長様も男色は適度に嗜むが、大内の殿様は女性に種を撒かないから離縁されるという伝説を残しているからな。信長様もその話を聞いてから男色に誘う人物を選別するようになったらしいからな」
「俺……未だに呼ばれるんですけど……」
「それだけ信頼されているってことだ。我々は夜に呼ばれることは無いが、羨ましく思う若者も多いだろうな」
「又兵衛、小姓連中との関係性は大丈夫か?」
オヤジ殿が心配してくれる。
「次世代……といえば良いでしょうか……小姓頭の加藤とその取り巻きの10代後半から20代前半の連中には嫌われてますが、その下の連中……堀とかからは好かれていると思います」
「その上の連中はどうだ?」
「上……母衣衆の皆さんでしょうか?」
母衣衆とは現代で言い換えると親衛隊を意味し、前田利家や先ほど名前の出た河尻、中美濃攻略でMVPを獲得した佐々成政も母衣衆に所属している。
信長様の子飼いの人達で、セフレ関係の人も多い。
小姓が政務の補助をする人物であるなら、母衣衆は戦で信長様を守る盾であり、矛でもある。
「母衣衆の皆さんには凄い好かれていますね……温泉にもよく来ますし」
母衣衆の人達は俺が武芸に長けている事や母衣衆のリーダーである前田利家が他の母衣衆メンバーを誘って温泉に入りに来たり、子作りのための祈祷を依頼されたり、下のテクニックを教えたりしていたので、親友と言えるくらい仲が良かった。
「仲が悪いといえば……申し訳ありませんが佐久間様です」
織田家筆頭家老佐久間信盛……俺がお世話になっていた林秀貞が表向き筆頭家老ということになっていたが、所領の大きさや戦での実績、配下の多さ、初期から信長様を支えていたこと等の理由から、織田家内部では佐久間様を筆頭家老と考える人が多かった。
実際信長様が今尾張と美濃の約75万石を支配しているが、そのうちの尾張東部の5万石を佐久間様は所領として承っていた。
城も小さいの含めて3つ信長様より預けられている。
「佐久間殿かぁ……あの人は欲深いからなぁ」
「有能ではあるが、家臣の手柄を自らの物にする癖がある故に、下からの突き上げを異様に気にするからなぁ。身分が低いが城持ちになった藤吉郎(木下秀吉)や千石を与えられた又兵衛を警戒しているのだろう」
「家老なのですからオヤジ殿の様にどっしり構えて欲しいものです……」
「ガハハ、おだてても何も出んぞ」
そんな会話を男3人……蒸し風呂の中でムワッと汗をかきながらするのであった。