【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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河野島の戦い……お前ら初陣なのに強すぎないか?

 夏……織田家と斎藤家は朝倉家に保護されている足利義秋という足利将軍家の将軍候補の人物より両家京に上り、京の治安回復と足利幕府の復興の為に停戦して協力して欲しいという要請を受け入れ、両者で停戦に合意。

 

 信長様は2万近くの兵を動員し、前に攻め落としていた大垣という城を拠点にして、京に向かう遠征軍を組織、自ら率いて小牧山城を出発した。

 

 もちろん俺も村の衆や家臣約100名を率いて軍に合流し、京目指しての行軍を始めていた。

 

 この頃には浅井家とも同盟に関する取り決めがほぼ決まっていたらしく、お市様の輿入れも時間の問題となっている。

 

「菊……いや、今は元服して菊八になったか……どうだ? 大軍の中を歩くのは」

 

 俺は一応騎乗が許される立場なので馬に乗りながら、緊張している元孤児の菊八に声をかけた。

 

「ひゃ、ひゃい! 皆さん凄い男らしくて……僕ついて行くだけでもやっとで……」

 

 すると周り出歩いている家臣達からも

 

「菊八、そりゃ初陣の者は緊張するわな」

 

「でも上洛するための軍だ、斎藤家とも停戦したらしいから、戦になるとしたら六角家とだな」

 

 と口々に言う。

 

 流石忍び出身の家臣達……情報が回るのが早い。

 

「まぁ気楽にいけ。美濃を出るまで戦は無いと思うからな」

 

 尾張を抜けたところで小休止となる。

 

 ここで夕食となるが、行軍中の野戦食となると本当に腹を満たすだけの食べ物が多い。

 

 うちの家臣達にはなるべく良い食事が食べられるようにと鉄製の陣笠を支給していたが……。

 

「時代劇とかで出てくる鉄製のかぶり物……あれってこの時代だとあまり普及していなかったんだな……」

 

 俺は知らなかったが、俺の部隊の目印として陣笠を被ってもらい、飯の時には陣笠が鍋の代わりになるように工夫している。

 

 一応補給部隊から食料の支給はあるが、干し米だったり、握り飯や味噌玉という味噌に具を詰めた食べ物が配られる。

 

 これを兵士達は持ち寄った鍋に入れて、雑炊にして食べたりするのである。

 

 俺の場合は陣笠に忍び連中が行軍中の道中で取ってきた行者ニンニクやニラをぶち込んだ雑炊を家臣達を囲んで食べていた。

 

「でも又兵衛様、オラ達と飯食うんですね」

 

 家臣の1人がいきなりそんな事を言い出した。

 

「ん? 食べちゃだめか?」

 

「いや、てっきりもっとお偉いさんと一緒に食べるのかと……信長様とかと一緒に風呂入ったりしてますし……」

 

「いや、そういうのは小姓や母衣衆といった者達が囲むからな。直臣とは言え足軽大将程度の身分じゃ本陣にて食事はできんのさ」

 

 俺はそのまま続けて

 

「というか、俺が居なくなったら誰がこの部隊指揮するんだよ。霧丸か? 虎丸か? 龍丸か?」

 

「ま、まぁ、中忍だった御三方が指揮するのが無難ですかねぇ……でも元忍びの我々は良いですが、村人達がついてくるかと言うと……」

 

「だろ? 村人達は俺だから従っている感じがする。俺が居なくなれば逃げるぞ……多分」

 

「でしょうねぇ……」

 

 そんな事を喋っていると、シュタッと霧丸が現れた。

 

「おう、噂をすれば……霧丸どうした?」

 

「稲葉山城より兵が動いております。兵達は武装し、殺気立っているので我々が危ういかもしれません」

 

 虎丸と龍丸も現れ、別方向でも斎藤家の軍がこちらに近づいていると報告が上がる。

 

「早朝より長良川を渡河することになっているが、少し時間を遅らせて俺達は他の部隊が渡河する護衛を買って出よう。部隊長である森(可成)様には今から報告してくる」

 

 俺は部下達に今晩一応警戒する様に指示し、森様の所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、斎藤軍が動いていると」

 

「はい、複数の目撃情報が上がっております。渡河する際に万が一があるとマズイので、我が部隊だけでも森様が渡河する間は守りに就こうかと」

 

「流石に停戦を破って攻撃してくるとは思わないが……わかった。こちらも警戒はしておく」

 

 報告を終えた俺は部隊を2組に分けて片方就寝、片方見張りにし、俺自身は寝ずの番をすることにした。

 

 で、早朝。

 

 斥候を派遣したところ、斎藤軍がこちらに近づいていることをキャッチし、俺は指揮下の兵達を森の中に隠した。

 

 斎藤軍より陣太鼓が鳴り響き、まさかの攻撃が始まった。

 

 警戒していた森隊は即座に迎撃に移り、信長様の本陣は直ぐ様撤退を開始。

 

 俺は部下達に指示を出して森の中から斎藤軍の側面より奇襲を仕掛ける。

 

 織田軍は2万の大軍であったが、斎藤軍は3000程度と数は少ない。

 

 ただ大軍でも油断すれば桶狭間の様に大将が討ち取られて軍が瓦解することもあるので、信長様を逃がすための攻撃が始まる。

 

「俺に続け!」

 

 俺は槍を片手に側面を晒している斎藤軍に突撃し、それはもう盛大に暴れ回った。

 

「でいりゃぁ!」

 

 馬を自分の体のように操り、近くに群がる雑兵を槍で薙ぎ払っていく。

 

 俺の近くでは菊八が太刀をぶん回して無双ゲーみたいな事をしていた。

 

「ハッハッハ! なんだ菊八! お前滅茶苦茶強いじゃん!」

 

「はい! 僕強いみたいです!」

 

 そりゃ元孤児でも毎日飯をたらふく食べて、トレーニングをさせていたら栄養失調でガリガリの雑兵には負けんわな。

 

「あぶねぇ!」

 

 俺は菊八めがけて飛んできた矢を叩き落とし、菊八を守る。

 

「ま、又兵衛様!」

 

「初陣なんだから無理するな。俺の後ろを引っ付いてこい!」

 

 そう言うと、俺は手綱を引いて、馬を前進させる。

 

「オラオラ、死にたい奴から近づいてこい!」

 

 槍を振るう毎に斎藤の兵が吹き飛ばされ、攻め側のハズが、簡単に命を刈り取られる事に恐怖した斎藤家の部隊は壊走を開始。

 

「追わなくて良い。俺達も撤退するぞ」

 

 俺は部下達を纏め、撤退を指示し、森様の部隊と一緒に尾張に帰還するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……村人の小米と五郎左衛門の2人が亡くなってしまったか……」

 

 約100名を指揮していたうち、2名だけの死者だけで済んだのは良かったが、知り合いの者が死ぬというのはやはり応える。

 

 亡くなった2人は幸い既婚者ではなかったので、残された家族が困る……ということは無かったが、それでも親族に見舞金を贈る。

 

 今回の斎藤家による奇襲では名のある武将で死傷者はほぼ居らず、2万の軍勢に対して、数百人死傷しただけで済んだが、信長様はブチギレ。

 

 京上洛は斎藤家を滅ぼさなければ実行不可能と認識し、来年中に攻め落とすと覚悟を決めた。

 

 一方で斎藤家の様子を探ると、当主の斎藤龍興の独断だったらしく、家臣達は正式な停戦を破って攻撃を開始した斎藤龍興にドン引き、織田家への内応や寝返りが続出し、結果斎藤家の命脈を縮める結果となるのだった。

 

「菊八は良いとして……熊部、猿飛、栗犬、高雉の皆は大丈夫だったか?」

 

 元孤児で俺が部下として育てていた面々に声をかける。

 

「問題ないねぇ〜」

 

「あっしはとりあえず兵10人斬り殺してきた」

 

「あらら、俺は8人だったわ」

 

「熊も8人潰してきたよー!」

 

 こいつら初陣だよな? 

 

 滅茶苦茶つよくね? 

 

※そりゃ種付けおじさんの手料理を毎日食べていれば精が付きますし、強靭な肉体に仕上がります。

 

「とりあえず、家臣達から死傷者が出なかったのだけは不幸中の幸いか」

 

 そう思う事にする又兵衛であった。

 

 

 

 

 

 

 これが後世では河野島の戦いと呼ばれる戦いであるのだった。




種付けおじさん量産化計画
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