【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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島清興との一騎打ち

「又兵衛様、生きた心地がしませんでしたぞ」

 

「付き合わせて悪かったな(稲葉)重通」

 

「いえ、でも流石は天狗の妖術……戦場の一部に霧を生み出すとは」

 

「まだ神通力が足りなく、そこまで広範囲とはいかないがな……さて、敵の頭は討ち取った。後は松永久秀殿に任せましょう」

 

 重通と共に生き残った兵を率いて戦場から撤退し、松永久秀の息子の松永久通殿の軍に合流した。

 

「毛受殿、今までどちらに」

 

「大局を動かしに……筒井軍の首脳陣をことごとく討ち果たして参った。今ごろ松永久秀殿の軍は大勝している頃でしょう」

 

「そんな簡単に事が運ぶとは思わんが……」

 

 実は今話している松永久通殿が足利義輝将軍暗殺の実行犯である。

 

 松永久秀殿がコウモリの様な老獪な武将であるとすれば、松永久通殿は自らを駒と言い切る人物であり、父親の松永久秀殿よりも武勇、統率に優れていた。

 

「確かに筒井の軍の動きがおかしい……左翼の軍に攻勢を開始する。毛受殿、今一度お力を借りますぞ」

 

「ええ、ここで大勝しておかなければ大和安定は遠のくのですからな」

 

 俺は愛馬の手綱を緩めると、激戦地に身を投じた。

 

 逃げ惑う筒井の兵に矢を射掛け、近づいてくる気骨のある敵には刀に持ち替え、騎乗しながら切り捨てた。

 

「皆の者逃げよ! 我こ」

 

「遅い!」

 

 叫んでいた武将の首を刎ね飛ばし、周囲の兵に激励を入れる。

 

「皆の者、金精大明神(男根の神様)の加護は我らにあり! 一端の武士として武功を挙げよ!」

 

 巨大な馬に跨り、雑兵を轢き殺しながらそう叫ぶ俺に勇気づけられて松永軍は壊走する筒井軍を呑み込んでいく。

 

「止まれ」

 

 俺が気持ちよく雑兵の首を刀で飛ばしていると、真正面から俺の太刀を受け止める敵兵が現れた。

 

 馬から飛び降りた俺はその兵に名前を問う。

 

「織田家侍大将毛受又兵衛! 貴様の名を問う!」

 

「筒井家武将……島清興」

 

 俺と島は刀を手に持ち相対し、周りの兵達も島が逃げぬように取り囲む。

 

「他の者は手出し無用……いざ」

 

 俺も島も一気に距離を詰め、鍔迫り合いが始まる。

 

「驚いた……お主も柳生新陰流か!」

 

「……」

 

 島は口を開かない。

 

 柳生新陰流は動の剣術……相手の動きに対してこちらも自由自在に動くことで惑わし、隙を作り、一撃を繰り出す。

 

 俺が筋力の差で押してはいるが、隙が一切できない。

 

 俺の全身から汗が吹き出す。

 

 島も汗をかいているが、その量は俺より少ない。

 

(最小限の動きで俺の動きを躱し続けている……技量はあちらが上……)

 

 打ち合う事20振り……剣道の試合であればとっくに延長戦に突入しているほど時間が過ぎていた。

 

 ここで俺は無呼吸運動を続けていた為に、一呼吸入れようと小さく息を吸った。

 

 その僅かな隙を逃さなかった島は俺に一太刀浴びせる。

 

(斬られた!? 全身が熱いが刃こぼれしていて傷は深くない! 動ける!)

 

 ただ斬られた衝撃で刀を持つ手に力が入らない。

 

「うぉぉぉぉぉおお!!」

 

 刀が使えないのならば飛び出したのは拳。

 

 浅く握った拳が俺を斬ったことで油断した島の懐に突き刺さる。

 

 アッパー気味の一撃は島の武具を粉砕し、体を少し浮かび上がらせると島は地面に崩れ落ち、意識を失う。

 

「毛受様! 傷の手当てを!」

 

「問題ない! それよりこの島清興という者を捕らえよ。討ち取ることは許さぬ! 縄を!」

 

「は、はい!」

 

 島は直ぐに縄で縛られ、俺の指示で俺の愛馬の背中に括り付けられる。

 

「毛受様出血が!」

 

 俺は鎧を脱ぎ捨てると水筒を寄越せと言い、兵から水筒を貰い受ける。

 

 水筒に力を込めて、水を油に変化させると、水筒の油を体にぶっかける。

 

 テカテカにローションオイルを塗りたくり、全身に力を込めると、傷口がみるみる塞がっていき、筋肉の一部が露出していたのに、傷跡の様に肉が盛り上がり、薄皮が張っていった。

 

 兵達からは

 

「ひ、人じゃねぇ……」

 

 と恐れられたが、痛みも熱も引いて、肩や腕を回して動けることを確認すると、兵達に筒井軍の追撃を指示。

 

 俺は島を運びながら後方に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 合戦は約一刻(2時間)程度で決着し、松永軍の大勝という結果で終わった。

 

 討ち死にしていた筒井家の重臣や当主である筒井順慶も戦死した為に筒井家は実質崩壊。

 

 松永久秀は追撃もほどほどに、直ぐに首実検に入り、家臣達の前で討ち取った者の確認をしていく。

 

 ちなみに今回俺のリザルトは……

 

 雑兵……数え切れないほど。

 

 足軽大将10名、侍大将6名、武将15名、大将1、敵国人4名と最初の奇襲で大物を大量に討ち取り、武功第一位は俺で確定であった。

 

「兄弟無茶しよるのぉ〜」

 

「こうでもしないと勝てないと思ったのでね」

 

「背後の奇襲もそうだが、柳生の血縁である島を捕らえるとは……傷は本当に大丈夫なのか?」

 

「浅かったのでもう治りかけですよ。ほら」

 

 俺は服を脱いで松永久秀殿に傷跡を見せる。

 

「いや、どう見ても重傷……致命傷にも等しい大怪我に見えるが……」

 

「この程度鍛えている私にとってはかすり傷ですよ」

 

「信長殿は本当に良い人物を援軍として送ってくれた……又兵衛殿だけでも万の兵に匹敵するでしょうなぁ。儂はそう思いますぞ」

 

「言い過ぎですよ」

 

 すると松永久通殿も

 

「いや、あれほどの武芸は足利義輝将軍にも匹敵しますよ。ただ将軍は雑兵に殺されましたが、又兵衛殿は生き延びるだけならず、武功もとんでもない。比べるのもおこがましい。鎮西八郎の生まれ変わりなのではないですかな?」

 

 鎮西八郎……本名は源為朝で鎌倉幕府を作った源頼朝や源義経の叔父に当たる人物であり、俺も歴史的教養を身に着ける過程で知ったが、武士達が日ノ本一の武士は誰かと聞かれたら色々別れる中、個人最強はと聞いたら満場一致で彼の名前が出てくる。

 

 あまりの暴れん坊だったので九州に追放したら、配下90名で九州を統一した、全盛期の平清盛の事を馬鹿にして、他の一族が怒る中、平清盛は彼の馬鹿にしたことを全部認めた上で一族を逆に叱って逃げた、伊豆大島に島流しになり、そこから矢を放ったら鎌倉に矢が突き刺さった等……逸話の数も半端じゃない。

 

 怪力の者や強弓使いが今鎮西と名乗ることもあるが、大抵が周囲から鎮西様に恐れ多いから辞めろと言われるほど数百年経っても恐れられる武士である。

 

 ちなみに竹取さんの家は清和源氏の血筋を引いているので、遠い親戚だったり……。

 

 閑話休題。

 

「いやいや、鎮西様には遠く及びませんよ」

 

「いや、しかし儂らからはそう見える活躍であったぞ」

 

「久秀殿や久通殿に言われるとこそばゆいですな……そう言えば私が捕らえた島清興という将は」

 

「ああ、柳生から助命懇願が来たからな、今は城の牢に入れてある」

 

「もし久秀殿や久通殿が良ければ彼を家臣に引き込みたいのですが……」

 

「こちらとしても斬るつもりは無いが、筒井家の将として動かれると困る。引き取ってくれるのであればありがたいが……」

 

「島殿の気持ちもあると思われますので聞いてからになりますが、あれほどの武将……是非部下にしたいです」

 

 まぁ今回は援軍であったので、領地を獲れる訳では無いが、久秀殿から幾らかの銭と刃こぼれした刀の代わりに新しい刀として村正という刀工名の物を頂いた。

 

 切れ味鋭く、実用的な刀で、ありがたく頂戴することにするのだった。

 

 

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