【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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島「奥方の皆さんに質問です。又兵衛様はどの様な人ですか?」

 家に帰ると嫁達が俺に抱きついてきた。

 

「大丈夫! 本当に大丈夫なの又兵衛様!」

 

「斬られたって聞いたけど! 元気ですか!」

 

 口々に心配されるが、俺は元気であることを皆に伝え、島には新しく家が出来るまで離れで暮らして欲しいと頼んだ。

 

「とりあえずお前ら落ち着け……島、これが俺の嫁達だ」

 

 島は嫁の数の多さに驚きながらもそれだけ男としての器があると判断し、改めて感服したらしい。

 

 昼時だったので飯を作る、と俺は台所に立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 居間に座った私は紹介された又兵衛様の奥方達と話をすることにした。

 

 何人かの奥方は夫である又兵衛様を手伝うために台所に移動しているが、3人ほど居間で座っている。

 

 名前は確か……正室の雫殿、若干衣服を着崩しているはじめ殿、私に麦茶を注いでくれた奈々殿の3人である。

 

「改めまして……家臣になった島清興です。初めに言っておきます……ご主人を斬ったのは私です。罵るなら幾らでも罵って頂いて結構です」

 

 その言葉に奥方達は一瞬目を見開いたが、正室の雫殿が口を開いた。

 

「無事に帰ってきたから別に良いわよ……でもこれからは又兵衛の部下としてしっかり働きなさいよ!」

 

 出来たお方だ。

 

 はじめ殿は頷き、奈々殿は少しオロオロしている。

 

「全く、又兵衛は1人で城を落とすような豪の者よ。負傷した程度で死ぬ玉じゃないわ」

 

 絶対的な信頼関係……正室故に長い付き合いのある彼女だから出る発言だろう。

 

「改めて御三方に聞きます。又兵衛様はあなた達から見てどの様な人ですか?」

 

 3人は目を見合わせるとまずは雫殿から

 

「一言で言うなら性豪ね。こんなに妻がいて、全員で挑んでも負けっぱなしよ……最初の頃はもう少し性欲も落ち着いていたんだけど、年を重ねる毎にどんどん強くなっていって……まぁあとは神に愛されている人ね」

 

「神に愛されている人?」

 

 私は雫殿に聞き返す。

 

「穴掘ったら温泉湧き始める、木箱を作ったと思ったら蜜蜂が住み着く、作物を育てれば毎年大豊作、祈祷で織田家では子沢山の人多数……こんな人が神に愛されてないと?」

 

「確かに……私と合戦をした時にも、戦場に霧がいきなりかかり、奇襲をされて本陣が壊滅しましたからなぁ……」

 

「でしょでしょ……又兵衛の周りには不思議な事が色々起こるのよ……それこそ神通力がある様な……」

 

 雫殿がそう言うと、先程までオロオロしていた奈々殿が落ち着きを取り戻したのか話に混ざる。

 

「雫さんが言うように又兵衛様の神通力はあると思います。私病弱で1年半前は動くことも困難で、ほぼ寝たきりの状態だったのですが、又兵衛様に祈祷されて以来、状態が良くなり、抱かれた後には京から美濃まで歩いて移動できるほどになりました」

 

「今では子供を産み、畑仕事の手伝いができるくらいになったのですよ!」

 

 と興奮気味に語られる。

 

 しかも聞くと、奈々殿は半家ながら貴族の家柄出身で由緒正しい源氏の血を引いているとのこと。

 

 そんな彼女も又兵衛様との奇妙な縁で嫁になったのだとか。

 

「又兵衛様は農民出身であると言われていますが、絶対に貴種の産まれです! 落胤ですよ! 他の貴族の方々も落胤であることを疑っていません!」

 

「落胤……どこの産まれか予想は……」

 

「恐らく京から東に落ち延びていった者の誰か……少なくとも半家よりは上、羽林家辺りの武家と混じった家柄の出ではないかと疑っています」

 

「根拠は?」

 

「祈祷と陰陽道に通じていること、占いの精度、蹴鞠等を含めた貴族の芸の上手さ……それに京の困窮でどうしても多くの落胤が産まれております。寺に預ける子もおり、その中から出てきてもおかしくはありません」

 

「ふむ……」

 

 主が貴種の産まれだろうと私は又兵衛様に忠誠を誓うと決めた。

 

 ただ農民産まれであるより、貴種の産まれであるほうが都合が良いのは確かである。

 

 将来上に立ち、将として軍隊を率いる場合、家臣は家柄のしっかりしている人物の下に付きたいものだ。

 

 嫁経由でも貴族の血が混じるのは大きい。

 

 これを信長様が認めているのは貴族の家に嫁ぐのでは無く、嫁として毛受の家に入れたからであろう。

 

 幾ら周りが又兵衛様を貴種だと騒ぎ立てても、主君である信長様が認めなければそれで済む話。

 

 信長様も時期を間違えなければ、それを利用して色々貴族に工作をすることも出来るからな。

 

「はじめ殿は?」

 

「私は父の身分は地侍……正確には伊賀の忍びの血筋なんだ」

 

 伊賀の忍び……有名な傭兵集団だ。

 

 大和も距離が近く度々雇うことはあった。

 

「又兵衛様は忍びの者にも優しいんだ。差別しない。ここにいる皆も全く差別しないし、居心地が良いんだ。あと伊賀の里では救世主でもある」

 

 詳しく話を聞くと、又兵衛様は伊賀に数年前に立ち寄り、忍びの技術を教えてほしいと頼み込んだらしい。

 

 それで技術を身に着けると、忍びを褒め称え、少ない知行を譲って家臣にし、後々には信長様に有用性を説いて伊賀衆を多く雇うきっかけになったらしい。

 

 なので伊賀の里で又兵衛様は仏様の様な扱いを受けているとのこと。

 

 今回の戦でも、忍び衆による撹乱をされていたが……なるほど。

 

 又兵衛様が雇った伊賀の者達であったか。

 

「はい出来た。ひやむぎだ。わさびと梅干しを溶かした醤油を基にした汁で食べな」

 

 と皿に盛られたひやむぎの麺が出された。

 

 井戸水で冷やされていて、梅雨明けのこの季節にはありがたい。

 

 ひやむぎの他に見たことの無い食べ物が盛り付けられていた。

 

「これは?」

 

「天ぷらだよ。ひやむぎだけだと味気ないと思って作ったんだ。食べてみな……ガキ共、飯出来たぞー」

 

 又兵衛様が呼びかけると別の部屋に居たのか子供達が居間に走ってきた。

 

 小さい子は奥方が胸を出して授乳を始めている。

 

「俺の家の飯はいつもこんな感じだ……お前らひやむぎの他にもいなり寿司もあるからな!」

 

「「「やったー!」」」

 

 子供達が歓声をあげると、大皿にいなり寿司が100個以上並べられてどかっと中央に置かれた。

 

 そしてひやむぎの入った器を周りに並べて各自取るように言われる。

 

 私は呆気に取られたが、試しに食べてみるとこれが美味い。

 

 ひやむぎの汁と言えば味噌であったが、醤油という味噌と同じ大豆で作る黒い液体と出汁で作った汁にひやむぎを付けて食べるとこれが美味い。

 

 ツルッとした滑らかな食感に後からわさびの辛さと梅干しの酸っぱさが食欲をどんどん唆る。

 

 そして一緒に出された天ぷらと呼ばれた料理を食べてみると……中から現れたのは卵。

 

 茹でられた卵に衣を付けて油で揚げるとこの様な料理になるらしい。

 

 他にもキノコや鶏肉、かき揚げと呼ばれる様々な野菜の入った天ぷらをひやむぎの汁で頂くとこれがまた格別に美味い。

 

 料理にこだわった事は今まで無かったが、確かに美味い料理を食べれば気力が湧いてくる。

 

「又兵衛様の料理は素晴らしいですな」

 

 雫殿が嬉しそうに

 

「でしょ〜、又兵衛の料理は本当に美味しいのよ!」

 

 と答える。

 

 こうして俺は又兵衛様の子供達にも囲まれながら美味しい食事を頂くのであった。

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