【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
上洛後、信長様は京を本拠地にすること無く、一部家臣を残して美濃に帰ってしまった。
その残された家臣の代表者が新参の明智光秀殿、俺も京で人気があるからと京での活動を任されたのであった。
種付けおじさん的には京美人を侍らせて乱交プレイをしたい気分ではあったが、今回は任務できているため、性欲を抑えつけ、政務に徹した。
「いやはや、おじさん頑張らないと! 又兵衛君も頑張ろうね!」
一人称おじさんの前頭部がキラリと光る若干白髪交じりの目の前に居る男性が明智光秀。
将来信長様を裏切って討ち取る人だと前世のうっすらとした歴史知識で覚えていたが、どう見ても気の良いおじさんにしか見えない。
「おじさん野心家だから家族の為にガンガン出世したいんだ。うちの奥さんや息子達には苦労かけっぱなしでね」
「わかります! 私も家族の為に出世したいです!」
「お、気が合うねぇ。じゃあおじさんは幕府との繋がりが深いから幕府の連絡役をやるから、又兵衛君は下級貴族や町人に働きかけて織田家の評判を上げてくれるかい?」
「おまかせください!」
評判では自己中という評価を聞いていたが、俺は信長様が10の事を1しか言わないで理解しろという圧縮言語を使った命令をしてくることがあったので、明智光秀殿のやや言葉足らず……いや、ふわっとした命令を俺なりに解釈して行動することが出来るので、やりやすい上司であった。
「さてと、どこでも民衆の人気を掴むと言ったら腹を掴んだ方が良いな……料理番集合」
俺が鍛えている料理番の家臣達を集めて京の町人達の腹を掴む作戦を考えた。
京料理は懐石料理のイメージが強いが、現代でも数多くの老舗料理屋から中華料理、B級グルメなど人が多く集まる場所故に、様々な料理が発展場所で、俺も前世で度々京都を旅行で訪れては食べ歩きをしたものである。
そして京は食料品が集まる堺や石山といった町に近く、色々な食材が手に入る。
それを利用して、俺達毛受隊が借りている陣の場所だけでも人が寄ってくるような催しをしてはどうかと思ったのだ。
ちょうど茶会で堺の商人達と会う機会もある。
織田軍統制下で市を開けば活気も出て人気も出るだろう。
それにはまず計画を家臣達と練る必要があるので料理番達を呼んだのだった。
シャカシャカと茶を点てる音が部屋に響く。
茶を点てるのは堺の豪商である千宗易さん。
この時代では大きめの180センチ近くある大男であるが、茶を点てる動作、目配り、姿勢どれも凛としており、風格が漂っていた。
「結構なお点前で」
出された茶を飲んでいき、出された茶器を鑑賞、そして茶の味や茶器の美しさを称え合う。
この時代の茶道はどちらかと言うとコレクションの見せ合いやカードゲームに近く、際立たせる物を1つとし、それを周りの道具でいかに際立たせる事が出来るかという最新の遊びが茶道なのである。
遊び方も現在進行系で模索されており、現代の様なかしこまった茶道は千利休と呼ばれた人物が作り上げていくのである。
(なお又兵衛は気がついてないが、目の前で茶を点てている千宗易こそ後の千利休その人である)
「宗易殿、実は面白い物を持ってきていまして、皆さんにも見てもらおうかと」
「ほう」
俺は木箱から真っ白な竹の湯呑みを見せた。
「竹で出来た湯呑みですかな?」
同席していた貴族の方が俺に質問してくるが
「青々とした竹の中に1本白く透き通る様な竹が生えておりましたので、それを加工して湯呑みにしたのですが……水を入れた時に本当の姿が現れます」
実際は俺とはじめが青姦した場所一帯の竹が真っ白になって育っていたが、1本だけ白いって言ったほうが喜ばれそうなのでそう言った。
千宗易殿は湯呑みを手に取るとまじまじと観察する。
「確かに塗料で色を塗ったわけでなく、竹自体が白い……水を入れるとどうなるのです?」
「では失礼して」
俺は用意していた急須から水を注ぐと皆湯呑みを見ていく。
すると白く濁りはじめ、数分もすると白濁の液体に変わってしまった。
「体に害はありません……それどころかこれを飲むと体調が良くなるのでお飲みください」
「では」
千宗易殿が湯呑みをぐいっと少し飲むと、カッと目が見開き
「あ、甘い!」
と叫んだ。
他の人達も湯呑みを回し飲みしていくが、皆口々に甘いと言った後に飲んだことのない味であるが実に美味と感動していた。
「千宗易殿の様な茶人であれば、この湯呑みも何か活用できるかと思いお譲り致します」
「……ただで受け取るのは忍びない。何か対価を支払いたいのだが」
「でしたら私が京の町で行おうとしている食道楽に出資しては頂けないでしょうか」
「ほう」
食いついた。
俺は京に将軍が戻ってきた事をお祝いして祭りをしたいと言い、そこで織田家の心象を良くするために食事を振る舞いたいということを伝えた。
対価としては出資者が分かるように陣に立てられるのぼりに千宗易殿の商号を記入したいとも伝える。
「なるほど……これは金のなる話ですね。大きな商売になりますし、私だけで独占したら恨まれそうなので、堺の商人達に話を持っていきましょう」
と出資の約束をしてくださった。
茶会自体も成功し、貴族の人達との交友を深めることが出来るのであった。
お祭り当日。
陣の中には即席の竈が作られ、鉄板が置かれたり、竈の中でパンが焼かれたりしていた。
俺の家臣の兵達が歩き回って催しを開くことを触れ回ったので人が大勢詰めかけていた。
「ほい、異国の料理ピッザァだよ! お値段なんと2文で1枚買えるよー」
「天ぷらの盛り合わせ美味いよ!」
「ツルッとした食べ応えの蕎麦! 蕎麦はいかがかね」
「大福あるよー」
「生八ツ橋はいかがー」
俺が事前に料理番達に仕込んだ料理が次々に売られていく。
調理するのは料理番達であるが、他の兵達も売り子をやったりで手伝ってくれている。
なんなら作り方が簡単な焼きそばとかは少し教えたら作れるようになった者もいた。
美味しい出し物がしていたら酒が飲みたくなる。
酒屋が協力してくれて、酒を格安で売ってもらい、美味い物を食べて酒を飲む。
そして太鼓や笛が鳴り響き踊れ歌えのどんちゃん騒ぎ。
織田家が京に上洛して治安維持をしているから今回みたいな祭りが開けると噂を忍び達やサクラの人々を使って広めれば、民意は織田家に集まるのである。
「ほんま恐ろしい人やな」
その様子を見ていた千宗易は俺に向かってそう呟いた。
手にはちゃっかり焼きそばの入った器が握られている。
「京に活気を取り戻すためには少々テコ入れが必要ですからね。食材を京に運ぶ人、器を作る職人、炭売りや旗作りの職人、箸を作る人……大勢の人が今回の祭りのために働き、金が流れる」
「金は天下の回りもの……でも回るためのきっかけを作らないと回らないでしょ」
「そりゃそうだ。誰に習った? 自己で身につけたんか?」
「信長様に影響されてですね。信長様は同じ様な考えを持っていますよ」
「ほほう、堺に矢銭の要求を突き出した時には身構えたが……なるほど、堺の自治性を投げ捨ててでも織田信長に賭ければ十分な見返りがあるってことやな。いいやないか」
「千宗易殿、茶の湯と口調違いません?」
「商売の時と使い分けちょる。こっちは商人の顔や。こっちも今回の祭りで稼がせてもらいましたからに、又兵衛殿は今度は堺に是非来てくださいな」
「ええ、今度伺うと思いますのでよろしくお願いします」
お祭りは大盛況で、第2回、第3回と定期的に開催され、織田が来てから生活が良くなったと京の民衆に思わせることに成功するのだった。