【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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姉川の戦い 川底をぶち抜く又兵衛

 さて、織田軍が着々と反撃に移るための第一歩として信長様お得意の調略が浅井軍に突き刺さった。

 

 信長様の凄いところは戦で強いところもあるが、戦略視点と戦術視点の両方で物事を考えられるので、相手の急所にダメージを与えるのが得意なのである。

 

 桶狭間の戦いもそうだが、美濃攻めも時間は掛かったが、確実に仕留められるまで調略や各個撃破で弱らせてからトドメを刺した。

 

 これが信長様の相手を弱らせる戦略である。

 

 信長様は秀吉殿に、長比城という城の調略を行わせることにしたのである。

 

 この城は前線城に対して物資を安全に届けるための中継地点。

 

 ここが寝返ると浅井の前線部隊に物資が届かなくなるのである。

 

 信長様的にも難しい調略になると思っていたが、秀吉殿は長比城の城主と後見人の両名が竹中半兵衛と旧知の仲であったのを利用して即落ち二コマ並みの早さで織田に寝返らせて、浅井軍の前線への物資輸送路を遮断。

 

 またそこを利用して浅井軍の本拠地である小谷城近くまで進出できるようになったので、信長様は今動かせる兵を率いて出陣。

 

 約1カ月休んでいた俺や家臣達も信長様についていき、小谷城近くの虎御前山に布陣すると

 

「浅井領内の田畑、村の家屋を全て焼き払え」

 

 という命令が下された。

 

 敵の土地に対しての焦土作戦である。

 

 この時代の価値観だと攻撃している信長様を非難されることは無く、守れなかった浅井側が領民から非難される。

 

 なので、この作戦は相手の生産力や国力にダメージを与えつつ、浅井の民意を削るにはもってこいであった。

 

「やれ」

 

「は!」

 

 言ってしまえば、略奪の許可が出た事にもなる。

 

 敵の領民には悪いが、信長様の命令……田畑を踏み荒らし、家屋を焼いていく。

 

「地面を掘り返すのは辞めておけ、略奪するとしても農具とかにしろ」

 

 織田の大軍が攻めてきたことで、浅井領地の村の人々は逃走し、村は殆どもぬけの殻になっていたが、何かを埋めたように不自然に掘られた場所があったり、巧妙に食料を隠してあったりした。

 

 流石にこれに手を付ければ、領民が飢えてしまうので、俺の部隊には手を出させずに、農具や着物を拝借するに留め、家屋を焼いていった。

 

 俺の部隊は統率が取れていたが、指揮官によっては逃げた村人を探し出して、殺したり、隠された食料も根こそぎ奪う人物もいた。

 

 過剰に恨みを買う行為は逆に浅井家に頼ることになり、結束を高める結果に繋がると俺は思うのだが……。

 

「まぁ、それぞれ将に考えがあるのだろう」

 

「又兵衛様、ここの村の焼き討ちは終わりました」

 

「島、ありがとう。よし、撤退しようか」

 

「は!」

 

 

 

 

 焼き討ち行為をある程度終わらせた織田軍はそのまま横山城を包囲。

 

 織田の他の部隊の集結を待った。

 

 一方で浅井家も指をくわえて村々が焼き討ちされていたのを見ていたのでは無く、朝倉に援軍を要請して織田軍に決戦を挑む準備を進めていた。

 

 梅雨が終わり、蒸し暑くなってきた頃には徳川軍も織田軍に合流し、4万近い兵が姉川付近に布陣する形になった。

 

 一方で浅井朝倉連合軍も2万の軍勢を対岸に布陣して睨み合いの形。

 

 信長様は睨み合いを続けるならと、支城の計を発動。

 

 支城の計とは小さな支城を攻撃することで敵を誘い出し、大きな戦を誘発させる計略である。

 

 小さな城なんか見捨てればいいじゃないかと思うかもしれないが、戦国大名は国人衆や家臣達に支えられて大名家が成り立っているので、小さな城でも見捨てる姿勢を一度でも見せてしまえば、他の家臣達は自分達も不利になったら見捨てられるかもしれないと疑心暗鬼に陥り、結束がガタガタになってしまう。

 

 浅井長政に支城である横山城を助けるか、見捨てるかの非情な二択を信長様は迫ったのであった。

 

「ふむ……少々まずいですね」

 

 俺の陣でうどんを食べていた島がいきなりまずいと口にした。

 

「なんだ? 口に合わなかったか? ゆず塩を入れると美味いぞ」

 

「いえ、そうではなく……織田軍と浅井軍の動きでして」

 

 軍略家の島は地面に織田軍と浅井軍を見立てた駒を置いた。

 

 織田軍と浅井軍の陣形を見るとT字の様になっており、浅井軍が横棒、織田軍が縦棒である。

 

「この姉川付近の地形は大軍を展開するには不向きな地形になっています。そこに4万の大軍を詰めたことで、陣が縦に伸びてしまいました」

 

 姉川を浅井軍が渡河してくれば何重にも構えている織田軍を早々抜ける事は無いと思うが、ここに横から別働隊でも突っ込んでくれば織田軍は一気に瓦解する可能性があると言うのだ。

 

「島的にはどうすれば良いと思う?」

 

「そうですね……信長様の居る本陣近くに陣を敷くのはいかがかと。我々の部隊も千名程度しか居ないので、さすれば敵の奇襲も素早く対応できるかと」

 

「うーん、それだと信長様に怒られちゃうな……霧丸」

 

「は!」

 

「忍び衆を率いて浅井の動きを監視してくれ。不自然な動きがあれば直ぐに報告」

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

「陣払いをしている!?」

 

「はい、浅井、朝倉両軍は撤退する構えかと」

 

 霧丸からの報告に、俺は少し考えた後にこれが罠である可能性を考える。

 

 島が

 

「恐らく逆に織田軍を渡河させる構えかと」

 

 渡河させたところを撤退に偽装していた浅井、朝倉軍が攻撃を仕掛ける。

 

 ありそうな話だ。

 

 ただそれでも織田軍に決定的な打撃を与えるとなるとやはり別働隊が必要になる。

 

 すると虎丸が陣にすっ飛んできた

 

「浅井別働隊を発見。夜のうちに渡河を開始するかと!」

 

「信長様に報告。別地点より浅井軍が別働隊を放った為にこれの迎撃に出ると! よし、浅井の奇襲部隊を逆に奇襲する!」

 

 俺の号令に、部隊は動き出し、虎丸の案内で陣を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 俺は馬から降りて、川の中に降り立つと下流にて渡河を始めている浅井奇襲部隊を感知した。

 

「種付けおじさんは地面から潮を吹かせる! ふんぬぅ!」

 

 俺は思いっきり川底を叩きつけると、グラグラっと地震が起こり、川底から気泡が大量に沸き起こり、ガシャンと底が抜ける。

 

 俺はジャンプして岸に戻ると、底が抜けた川は、栓を抜いた風呂の様に水をどんどん吸い込んだ後に、一気に逆流し、水の柱が噴き出した。

 

 川は氾濫し、濁流となり、下流の物を押し流していく。

 

 それは渡河している最中であった浅井奇襲部隊にも直撃し、兵達が濁流に飲み込まれて溺死していく。

 

 いきなり川が荒れ始めた事に俺の兵達も恐怖を覚えていたが、金精大明神の加護である……と、押し切り、神の加護であるからこの戦は勝てると俺が叫ぶと士気が上がる。

 

 氾濫している地点より上流で俺の部隊は川を渡り、右往左往している浅井奇襲部隊に俺達は襲撃を仕掛けた。

 

 敵兵は俺の部隊より数は多かったものの、指揮官が濁流に飲み込まれてしまっていた為か、指揮系統がグチャグチャになっていたので、突撃した勢いで一気に瓦解。

 

 多くの浅井兵が川に押し込まれて、溺死することになった。

 

「よし、次は敵側面から奇襲を仕掛ける。俺に続け!」

 

 馬に乗って川を駆け上った俺はそのまま織田軍と戦っていた浅井軍の側面に突っ込み大暴れ。

 

 時に鎧ごと真っ二つ、時に5人以上の雑兵の首を一閃し、浅井軍を蹴散らしていく。

 

 浅井軍も織田軍が十三重の陣を敷いていたところの十一陣を突破する気力を見せていたが、同盟軍である朝倉軍が徳川軍に蹴散らされ、俺の部隊に側面から攻撃を受けたことで耐えきれなくなり、崩壊。

 

 大きな犠牲を払いながら本当の撤退をしていき、小谷城に籠もるのであった。

 

 これが後に姉川の戦いと呼ばれるのである。

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