【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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第一次信長包囲網

「あー、どこかに優秀な内政官落ちてないかな……」

 

 一応城持ちということになったので、城……というより領地経営ができる人材が居なければならない。

 

 正直稲葉重通が一番候補で、菊八が次点……だがコイツらは戦場でも十二分に活躍できるし、順調に成長してきているので、将来俺配下の武将として活躍してもらうためにも、まだ島と一緒に戦場で経験を積ませたい。

 

 何処かにそんな人材落ちてないかなーと考えていると、金ケ崎撤退戦でお世話になった徳川家康様と松永久秀殿の2名から家だと扱えないけど、そっちだったら使えるかもしれない人材が居るけどというお話を頂いた。

 

 徳川家康様は完全に、金ケ崎撤退戦で俺が体を張って守ったお礼、松永久秀殿は仲が良いからという理由だろう。

 

「あはは、期待されても特にできることは限られていますよ」

 

 目の前でそう言う男は大蔵長安という男で、甲斐の武田氏に仕えていたのだが、金銭の横領を疑われて出奔し、今川、徳川領内を渡り歩いて、徳川家康様の紹介で美濃まで流れ着いた男である。

 

 身分は元々猿楽師をしていた家系で、とても低く、しかも次男なので家業を就くことできず……更に雇ってもらった武田には疑われて追い出されるし、今川や徳川は身分の不確かな大蔵長安を家臣に加えたい人物も居らず……という具合だった。

 

「できることはやります。ただ槍働きは難しいので、領内の開発等をやらせていただけると幸いです。これでも鉱山経営や領地開発の任には自信がありますので!」

 

 俺は願ってもないと即採用し、広がった領地に俺の領地で実験を繰り返した新しい農法を広めてほしいと農書を渡し、更に今まで働いてくれている内政向きの家臣達に大蔵長安を預けた。

 

 で、松永久秀殿経由で流れてきた人物は武田恵瓊(えけい)という人物であった。

 

「武田と名乗ってはおりますが、出家して僧を長年しておりました。京の東福寺にて毛受様の行いや祭りに感銘を受けて俗世に戻り、働こうと思った次第で」

 

 武田恵瓊は安芸武田家出身で、甲斐の武田家とも親戚関係があるのだが、毛利元就によって安芸武田家は滅亡。

 

 京に逃れていたとのこと。

 

 京で俺の活動でファンになってしまい、知り合いの伝手を辿っていたら松永久秀殿経由で俺に接点を持てたらしい。

 

「是非とも家臣の末席に加えて頂きたく」

 

「世俗を捨てて僧になっていたのに、俺に仕えるために僧の身分を捨てて良かったの?」

 

「未練はございません。ただ僧兵をしていたわけでも無いので、政務はできますが、武芸はからっきしで……」

 

「わかった、これからよろしく頼むよ。恵瓊」

 

「はい!」

 

 物好きは探せばいるものだ。

 

 2人の能力は俺の予想していたよりも遥かに高く、長安は直ぐに領地の村長達と意気投合し、来年から新しい農法に切り替えることや、税についての約束、街道や水路の整備等を行う普請事業に支払う金の計算を俺の鍛えた家臣と同等……それ以上にこなし、高い内務能力を発揮した。

 

 恵瓊は元々教養が高い人物なので、領内の温泉を使った接待係を任せ、温泉で療養する人々を手厚く持て成したり、領内の寺社関係を纏めてくれた。

 

 こうして手の届きにくかった部分をカバーしてくれる家臣を手に入れることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 大蔵長安と武田恵瓊や文官達に領地を任せて、俺達はまた出兵。

 

 摂津にて抵抗する三好三人衆と池田家を踏み潰す為に、信長様は6万の軍勢を集めて大坂とか浪速と呼ばれる地域の野田城、福島城を包囲することとなった。

 

 この頃の大坂(誤字に非ず)は現在の大阪と違い、大きな川が何本も流れて海沿いには幾つもの中州……川中島が形成されており、三好三人衆が籠もる野田城と福島城もそんな中州に作られた城である。

 

 そもそも大坂と現代の大阪は地形が大きく変わっており、前世の知識が全く役に立たなかった。

 

 信長様は四天王寺に本陣を置いて部下達に三好三人衆の攻撃を指示。

 

 今回の戦では傭兵として雑賀衆という鉄砲集団2万人が織田軍に参加し、彼らが持つ船で野田城や福島城に近づいて、鉄砲を毎日数万発両方の城に撃ち込んで、全滅しようと信長様は画策していた。

 

「鉄砲かぁ……金かかるけど良い武器だよなぁ……」

 

「おや! よくわかっているじゃないか!」

 

 俺は今回撃ち込んでいる雑賀衆の弾薬を補充する役割を信長様から任されていたので、雑賀衆の方と話す機会が増えていた。

 

 特に雑賀衆の的場昌長という人物とは数回喋って意気投合し、年齢も近かったので友達になっていた。

 

「又兵衛! 僕を長期契約で雇わないか? 鉄砲だけじゃなくて水軍の知識もあるぞ!」

 

「うーん、鉄砲鍛冶を引っ張って来れるか? 的場の能力は今回の戦いで十分わかったし」

 

「そうだよね! 僕優秀だから! あ、又兵衛も優秀だと思うよ! だから僕は君に仕えようと思ったの!」

 

「的場個人だと100石……いや、200石出せるが」

 

「おやおや! そんなに僕を評価してくれるのかい! いや〜優秀だと困っちゃうねぇ」

 

 自信過剰気味であるが、実力は本物。

 

 初陣から2年間で首を33個も討ち取り、しかもやり方がベトコンみたいなゲリラ戦術が得意と……武士の戦い方ではないが、そういう戦い方を覚えておいても良いだろう。

 

(なお的場の最も適性が高いのが教官みたいに自分の技術を他の人に教えるのが得意だったり……)

 

 そんな感じで、戦場で家臣になってくれそうな人に手を付けながら戦っていると、ゴーンゴーンと除夜の鐘みたいな音が各地の寺から鳴り響いた。

 

「なんだ? 寺で祭りでもやっているのか?」

 

「又兵衛様、あれは寺が挙兵する合図です! 石山本願寺が挙兵しました!」

 

「え!」

 

 石山本願寺……浄土真宗の総本山であり、全国に数百万単位で門徒が居る巨大宗教。

 

 その国力は百万石以上とされ、そこが織田家と敵対した。

 

 これは大変なことである。

 

 三好三人衆をあと一歩のところまで追い込んでいたのに、ここで浅井家の裏切りのようにちゃぶ台返しを信長様は喰らったことになる。

 

 三好三人衆を包囲していた織田軍に石山本願寺配下の僧兵達が突っ込み、乱戦に突入。

 

 前線と後方の中間地点に居た俺は初期の攻撃には巻き込まれなかったが、川の水を調整していた堤が僧兵によって破壊され、周囲は水浸し。

 

 保管していた火薬類も濡れて使い物にならなくなり、いよいよ戦局が怪しくなってくる。

 

 ここに至り、信長様は全軍の撤退を指示し、京への撤退を開始するのであった。

 

 殿は誰もやりたがらないので、再び俺が立候補してやる羽目になり、石山の僧兵達や三好三人衆による攻撃に備えていたが、1日、2日と待てども攻撃してくる様子は無い。

 

 石山本願寺は挙兵した理由が三好三人衆の救援及び、信長様に何回も矢銭を要求されるし、石山からの退去を言われていたので、怒ったぞというポーズを取るための行動であり、大規模な衝突に発展させるつもりはこの時は無かったらしい。

 

 三好三人衆は純粋にボロボロ過ぎて追撃する余力が無かっただけだが……。

 

 なので、特に追撃されることもなく、殿の俺も無事に京に帰還することができた……が、状況は最悪と言って良い状態になっていた。

 

 まず同じ頃に反撃に出た浅井·朝倉連合軍により坂本を守っていた、俺の恩人でもある森可成様が討ち死に。

 

 他にも本拠地尾張の隣である伊勢長島の一向宗が連動して蜂起。

 

 伊勢北部を守っていた滝川一益軍と激突し、滝川一益軍が敗北してしまい、一部領地を奪われる事が起こっていた。

 

 更に本願寺とは敵対関係にある比叡山延暦寺も挙兵。

 

 俗に言う第一次信長包囲網の完成であった。




大蔵長安→大久保長安
武田恵慶→安国寺恵慶

両名この頃の動きが不明かつ、又兵衛の動きで流れ来てもおかしくないと思い、引っ張ってきました。

これで武の島、内務の大蔵、外交の武田の又兵衛三本柱が成立。
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