【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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森部の戦い 与力として配属されましたが、上司ガチャSSR引いたかもしれません

 今回の戦の原因は斎藤義龍が急死したことに始まる。

 

 今年から遡ること5年前。

 

 父親である斎藤道三は信長の才能を見抜き、娘の帰蝶(濃姫)を嫁入りさせて、同盟関係を結んでいたが、息子の斎藤義龍は斎藤道三から疎まれていた。

 

 他の兄弟に比べて能力が劣っているとか、背丈が自身よりも異様に大きいなど、そもそも自身の種の子か疑うことも多かった。

 

 しかし斎藤道三が持ち合わせてない才能を彼は持っていた。

 

 人望である。

 

 能力的にも美濃1国を運営するには不足無い才能を有し、斎藤道三と違い人から好かれる性格をしていた彼は1556年に斎藤道三に謀反を起こし、これに成功させる。

 

 美濃を即座に掌握した斎藤義龍は信長に度々攻撃するが、嫌がらせ程度に留まり、信長も数度美濃国境付近に防衛のため出兵することが多かった。

 

 しかし、ここで斎藤義龍は急死してしまい、美濃は混乱状態に陥ったと見た信長は攻守を逆転させ、斎藤義龍死亡から3日後に美濃へ侵攻を開始したのである。

 

 斎藤家では誰が葬儀の指揮をするか話し合っている時に電撃的な侵攻であった。

 

 さてそんな状況下、我らが毛受又兵衛はと言うと……。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁ!? なんでまた寡兵で大軍に凸ってるんだよ!」

 

 今回の信長軍1500名、対する防衛の斎藤軍は6000である。

 

 信長様、速度を優先させ過ぎて兵が集まる前に侵攻を開始したので1500名しか集まらなかったのである。

 

 俺はそんな中でも刀片手に突撃を行っていた。

 

「あの暴れている奴を止めろ!」

 

「止まれと言われて止まるかよ! 死ぬわ!」

 

 俺は目の前の足軽の胸部を踏みつけると、そのままジャンプして、奥に進む。

 

 すると馬上で指揮をしている者が見えたので、肩当ての隙間に刀を差し込んだ。

 

 バズん

 

 相手の武将の左腕が吹き飛び、俺は落馬した武将に馬乗りになって首をナイフでもぎ取る。

 

「胴突き玄弥様が!」

 

「森部様が!」

 

 と、敵の足軽達が名前を言ってくれたので

 

「森部玄弥を毛受又兵衛が討ち取ったり!」

 

 と叫ぶ。

 

 首を腰に結ぶと、再び突撃し、雑魚をなぎ倒しながら進んでいく。

 

 敵の槍隊が俺めがけて槍を突き刺してくるが、刀の腹で払いのけると、体を捻り、回転しながら、距離を詰める。

 

 零距離になった瞬間に、俺が槍を持っていた足軽の顔面に思いっきり膝蹴りを食らわせると、顔面の穴という穴から体液を撒き散らし、倒れる。

 

 呆気に取られた横の者達は一瞬で首を刎ね飛ばされて、首から血飛沫を上げながらゆらゆらと倒れていった。

 

「ちっ! 倒しても倒しても切りがねぇ……利家殿ともまた逸れたし……」

 

 俺が戦場を彷徨っていると、斎藤軍の兵達が逃げ出し始め、織田の方で勝鬨が上がった。

 

「ええ、あの兵力差でも織田方が勝つのかよ……」

 

 今回戦った戦は森部の戦いと呼ばれ、寡兵であった信長軍が数に勝る斎藤軍を打ち破り、指揮官で斎藤六宿老と言われた長井甲斐守、日比野下野守が戦死。

 

 織田軍の圧勝で幕を降ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「次、足立六兵衛討ち取りし前田利家!」

 

 戦が終われば首実検が始まり、首実検の結果で論功が決められる。

 

 例えば今首実検で呼ばれた利家は首取り足立と呼ばれる猛将を討ち取った事で信長様直々に城1つを攻め落とすに匹敵する武功と褒められ、信長直臣に舞い戻る。

 

 なんなら没収されていた150貫の知行に300貫加増して450貫にもなっていた。

 

 信長様自身も怒ってはいたが、それ以上に放逐しても自身に付いてきた前田利家が可愛くて仕方がないのだろう。

 

「次、森部玄弥を討ち取りし毛受又兵衛」

 

「は!」

 

 俺が呼ばれ、信長様の前に出る。

 

「毛受……と言ったな、年は幾つだ」

 

「13になります」

 

「ほう、若いな……よし、余の直臣として取り立てる。銭で20貫支払おう」

 

「ありがたき幸せ」

 

 所領は増えなかったが、信長様の直臣になれたし、年20貫の給金を得られる褒美を受けた。

 

 これは素直に嬉しい。

 

「よかったではないか! これからは同僚として励もうぞ」

 

 と、性格の良い森可成様からも祝いの言葉を投げかけられ、利家からは

 

「なんだ、又兵衛が直臣じゃなかったら俺の部下として雇おうと思ったんだけどな」

 

 そう言われた。

 

 実際俺の年齢が若すぎるので誰かの与力になって勉強を積むことになると思うが、その時は利家や森様、柴田のオヤジ殿の誰かが良いなぁと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 身分も足軽組頭に昇進し、まず与力ガチャが始まった。

 

 選ばれた勤務先は……下方貞清様(他の人からは左近と呼ばれている)の部下でありました。

 

 いや、誰やねん。

 

 知らないといけないので色々調べてみるが、左近様は小豆坂七本槍と呼ばれる小豆坂の戦いで武名を馳せた人物である。

 

 立場は尾張の上野城城主。

 

 武芸に秀でるだけでなく、早くから信長様の才能を見抜き、多くの重鎮が弟君の織田信行様に加担する中、信長様に一貫して忠義を尽くしてきた。

 

 桶狭間の戦いでも活躍し、信長様から優秀な部隊長として見られている。

 

 性格は温和で、自分の手柄を部下に分け与え、城主としての政務を卒なくこなすと、武の方に比重は大きいが、文の方でも織田家に貢献している人物であった。

 

 情報収集の一環で、柴田のオヤジ殿に左近様の情報を聞きに行くと

 

「左近の与力か、なら悪いようにはされんだろう。儂以上に槍の名人だ。部下思いでもあるからよく学ぶ様に」

 

 そう言われた。

 

 というわけで左近様の城である上野城に挨拶に行く。

 

 城と言っても立派な物では無く、砦を拡張した程度の小さな城である。

 

「おお、よく来たね又兵衛。利家から話は聞いているよ。利家を匿ってくれてありがとうな〜」

 

 ほわほわしたおじさんという感じで、顔が某パン工場のジャムのオジキに凄い似ている。

 

 もう全身から優しさが溢れ出ている。

 

「又兵衛は出世したい〜?」

 

「はい、嫁に側室が複数人居るので子供達を食わせるためにも稼がねば」

 

「そうかそうか、じゃあ頑張って出世出来るようにならないとね。読み書き算術は出来る?」

 

「柴田様の元で勉強しましたので人並みには」

 

「そうか、権六の所で学んでいる熱心な若者は君だったか……なら僕と一緒に城主の仕事も学んでいこうか」

 

「いいのですか?」

 

「又兵衛、13歳だろ? そんな将来有望な若者は鍛えないと損だよ。ただ田畑の手入れも有るだろうから午後からの登城で良いよ〜」

 

「ありがとうございます」

 

 俺、上司ガチャSSR引いたかもしれん……。

 

 

 

 

 

 それから俺はほぼ毎日左近様の城に登城し、勉学や武芸に勤しんだ。

 

「うんうん、権六(柴田勝家)に基礎を叩き込まれているから、基礎は出来ているね。それに体格、肉付きも良い……あとは自然と相手の位置に対応することも出来ている」

 

 褒められているが、俺は左近様に槍や刀(木刀等の練習用の物)でボコボコにされていた。

 

 種付けおじさんとしてのチート全開で肉体強化しても左近様に勝つことが出来ないのである。

 

「又兵衛の筋力は凄まじいよ。でも怪力なだけなんだ。これだと連戦すれば疲れが溜まるし、僕みたいな目が良い人物からは隙を突かれる。じゃあどうするかというと技を磨いて自身の体にあった流れをつくるしかないよね〜」

 

 そのための鍛錬として木刀で丸太の同じ場所を叩く事で木を削っていき、同じところに当てる鍛錬かつ、木刀が木にめり込まない力加減(不要な力を入れない)を覚える鍛錬や、槍の先端に針を取り付け、それを木からぶら下げた1文(お金)の穴に通し、他の場所に触れないようにして、狙った場所を突く鍛錬などをやらされた。

 

 それが終われば政務の勉強。

 

 城の備蓄管理だったり、徴税の計画の立案。

 

 兵達に配る兵糧の配給、日用品の仕入れを商人と交渉なんかもやらされた。

 

 おかげでそろばんを自作して弾くようにもなっていた。

 

「面白い物を作るね又兵衛は」

 

「算盤(そろばん)のことですか?」

 

「うん、作ってもらった算盤を林(織田家家老の1人 内政に定評のある人)に見せたら凄く感心していたよ。よく思いつくね」

 

「あはは、たまたまですよ」

 

「でもそのたまたまが世の中を動かしていくんだよ。合戦は作戦通りいく場合の方が少ないし、直感に頼る場面も多々ある。僕は大軍を指揮する才能が無いんだけど、100人程度の部隊なら直感を頼りにしながら戦っているよ」

 

「だから直感は大切なんだよ! もっと磨いていこうね」

 

「……はい!」

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