【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
引き連れてきたモルゲッソヨ軍団にやらせることはただ1つ……暴れさせること。
モルゲッソヨ達は刀や槍を手に握り、俺がモザイクで隠して武田軍に夜近づくと、一斉に解き放った。
暗闇からいきなり銀色の肉体に被り物をした全裸の男達が武器を持って現れるは凄まじい恐怖だろう。
しかも少数で襲いかかったのが良かった。
モルゲッソヨ達は寝込んでいた武田軍の兵士達に次々に襲いかかり、首を飛ばしていく。
それはまるで作業の様に……。
更に首が無くなった兵にモルゲッソヨが自身の体液をかけると、亡くなった兵もモルゲッソヨに変化して他の兵に襲いかかる。
それはまるでゾンビゲーの様である。
ただ夜襲に気がついた武田軍は態勢を混乱する原因を突き止めようとするが、銀色の男達が襲いかかってくるなんて報告を受けても武田の武将達も混乱してしまう。
そうこうしているとどんどん被害が拡大していき、1つの野営地は完全にモルゲッソヨに支配されてしまった。
ことここに至り、武田信玄も動く。
指示は全殲滅。
武田信玄の号令で混乱は収束し、モルゲッソヨ化の被害も徐々に落ち着いてくる。
「300のモルゲッソヨで1200程度の被害か……これを続ければ勝てるが、外道過ぎるな。兵からの信頼を失いかねない……」
俺は流石にモルゲッソヨ戦術は兵の士気を著しく損なうと判断して停止を決定。
別の戦術を模索することになるのだった。
ゴロゴロとその日は天候が安定しできなかった。
結局、モルゲッソヨ戦術以外効果的な戦術が考えられないまま、時が過ぎ、二俣城は陥落。
戦略的要所であった二俣城の陥落は徳川家康様にとって遠江支配を大きく揺るがす物であり、北部地域から南部の海沿いの城全てにアクセスできるようになったにも等しい。
徳川の防衛がより難しくなり、事実上遠江は失陥したと言って良い。
徳川の兵士達も負けが濃くなってきたと考え、逃亡を企てる兵も出始めていた。
「雷か……」
「どうかされましたか又兵衛様」
「……島、兵達を悪いが広場に集めてくれ」
俺は愛刀の村正を片手に広場に出ると、兵達が集まってくるのを待った。
徳川の家臣達も俺が何かやると聞きつけて外に集まり始める。
「聞け! この戦、神が我らに味方している! 今よりそれを証明する」
ゴロゴロと鳴り響く雷。
俺は村正を天高く掲げると、そこに雷が直撃した。
雷は生命を芽吹かせると言われている。
雷の落ちた畑の作物はよく育ち、雷が近くで鳴っている所ではキノコがよく生える。
雷による雷神の多くは子沢山だったり、一番有名なゼウスも雷を操る神であり、凄まじい性豪である。
そんな雷と種付けおじさんの相性が悪いわけは無く……そして年を重ねてよりおじさんに近づいた俺であれば……。
雷が直撃し、周囲の人々は恐れ慄くが、俺は刀を振るい。
「どうだ、雷を斬ってやったぞ」
雷が直撃したことで、刀は薄紫色の紋様が現れ、それはまるで淫紋の様にも見える。
兵士達からは歓声が上がり、下がりきっていた士気が上がる気がする。
徳川家臣達も雷を斬ったことで武人としての評価が変わる。
三河武士って強い人物に惹かれる性質があるヤンデレだから……。
「お見事。これで我々はまだ戦えます」
「家康様……いえ、士気高揚になればと思った次第で……勝手な真似をしてしまい申し訳ない」
「いや、素晴らしかった。雷神の加護が付いているならば、この戦……勝てるな」
「ええ、勝てますとも」
すると徳川の忍びが情報を持って飛び込んできた。
「武田軍は浜松城を素通りし、三方ヶ原方面に軍を進めた模様。それと武田信玄が血を吐いて倒れたのを目撃!」
「家康様これは!」
「ああ、ようやく天が我らに味方し始めた!」
武田信玄が病気を患っているというのは周知の事実であった。
忍び衆が調べてくれたのもあるが、武田の動きが色々急いでいるのである。
もっと余裕を持って対応することが多いが、無理をしていることが今回の徳川領侵攻では多く、それ故に今回の報告は無理をしていたつけが現れたことになる。
今度は全力で武田軍を倒すために、全兵力で出陣し、兵達にも必勝の前祝いとして、俺の精子入りの酒を振る舞いドーピングして決戦に挑む。
しかも三方ヶ原という地形が良い場所で、大軍を展開するのに丁度よい広さかつ、北に向かって攻めれば山に押し込むことができ、逃げるに不利で殲滅が可能という攻めるにもってこいの場所であった。
浜松城を通過して三河方面に急いでいるのも武田信玄の病気が悪化し、療養するのに勢力圏となっている奥三河経由で信濃に戻るために三方ヶ原を通過しようとしているなら辻褄が合う。
「しかも信玄が倒れているならば軍の指揮統率問題も出てくる……勝った」
徳川·津田連合軍は鶴翼の陣という鶴が羽ばたく様な陣形を取り、両サイドが広がっていることで包囲をしやすい戦術であった。
俺は右翼を担当し、徳川軍は左翼を担当。
中央に徳川家康様の本陣が置かれた。
そして戦場に急行して俺達が見たのは……魚鱗の陣で待ち構えていた武田軍であった。
「しまった! 武田信玄が倒れたは虚報か!」
武田軍は万全の構えで俺達を待ち伏せしており、俺達が不利の状況で戦が始まる。
「的場隊に伝令! 射撃後直ぐに後退しろ!」
「は!」
的場隊は俺の軍で唯一鉄砲を集中運用している部隊であり、待ち伏せであれば、射撃が機能しない危険性が高く、乱戦になれば押し負けてしまう。
「伝令、的場隊被害軽微。後方に撤退成功」
「よしよし、島、俺達は徳川家康様が逃げるまで時間を稼ぐぞ」
「は!」
戦局は厳しいが、俺の部隊が退いたら徳川軍は崩壊してしまうので、逃げるわけにもいかない。
俺が前に出て、状況を打開したいが、島も状況を打開しようと指揮しているし、1万の軍勢は大将である俺が前線指揮できる量では無かった。
「伝令! 武田赤揃え出現!」
「来やがったか」
武田軍最精鋭部隊赤揃え。
赤色に塗られた甲冑を身に着けた部隊で、その技量は一線を画す。
「熊部の部隊を前進させろ! 巨人隊で勢いを止める!」
巨人隊……俺の領民から更に選抜した身長170センチを超え、ラグビー選手の様な筋肉の塊の連中を集めた特殊部隊。
1人1人が怪力無双の豪傑達であり、彼らならば赤揃えと互角の戦いをすることができるだろうと思い、戦線に投入した。
「左翼徳川軍武田軍に飲み込まれていきます!」
「ちぃ! 崩れるのが早い」
馬に立ち乗りして左翼方向を見ると、徳川の旗が次々に倒れ、風林火山の武田軍の旗に飲み込まれていっていた。
「猿飛隊突破されました」
「高雉隊壊滅、高雉様生死不明!」
こちらの方も悲惨な情報が次々に飛び込んでくる。
金ケ崎の撤退戦や姉川で一緒に戦った戦友達の戦死情報が次々に飛び込んでくる。
「くうぅ」
俺は必死に穴を埋めるために指揮をするが、遂に俺の陣にも武田軍がなだれ込んできた。
こうなると指揮どころではない。
俺は村正を手に持ち、雷の力を込めた一撃を武田の諸兵に叩き込む。
バチバチバチ
刀から雷のエネルギーが放たれ、直線上にいた武田兵が焼け焦げる。
焦げた武田兵を踏み潰しながら
「撤退! 撤退だ」
とまだ指揮が届く兵達に命令をする。
「又兵衛退いてください!」
「島! 敗戦の責任は焚きつけた俺が取らなくてはならない! 殿は俺がやる!」
「しかし!」
目の前の武田兵を鎧ごと切断し
「早くしろ!」
俺は激を飛ばした。
100……いや300の兵は殺したか。
俺の周りには武田の兵と味方の兵の亡骸が積み重なり、逃げるために残していた愛馬も矢に当たり動かなくなっていた。
「過去一のピンチだな……はは……死ぬのか……ここで……俺は?」
否。
家族の為にも死ぬわけにはいかない!
俺は近くの亡骸から槍を奪うと思いっきり遠くに投げた。
それは前線で指揮する敵の武将に命中し、兵達に動揺が広がる。
「撤退! 撤退!」
生き残っているかも分からない味方の兵に向けて、俺は叫びながら、全力で浜松城に向けて走っていくのであった。