【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「猿飛、高雉」
俺は村の墓地に来て、武田との戦闘で亡くなった家臣達の墓参りをしていた。
多くの家臣を失った一戦。
俺だけが強くても、戦には勝てない。
集団で戦うための戦術を考案し、戦っていかなければ、これからの戦いには勝てない。
「すまない。皆。武田を滅亡に追いやって、それを供養とするから……必ずお前らの落とした命は無駄にしない」
線香を供えていくと、1人1人の墓標に手を合わせて安らかに眠るように願った。
待っているのは軍の再編。
失った家臣達は戻ってこない。
新しく育てなければならないし、低い身分でも有能な者は上に上げる。
「部隊指揮出来そうな人材は居ないものか……」
「困ってるんですか? 又兵衛殿」
「的場、いや、武田との戦でガッツリ指揮官クラスが吹き飛んだからな。新しい人材を育てるか引っ張ってこないと」
「それならば僕の伝手を使いますか? 雑賀衆には雇い主を探している者が結構居ますし」
それは願ったり叶ったりであるが、雑賀衆は石山本願寺と契約していて、織田と敵対関係になってしまっているハズでは?
俺がその事を的場に聞くと
「結局のところ石山本願寺から多額の契約金を貰っているに過ぎませんよ。僕に任せてください。引っ張ってきますから」
そこまで言うならと、俺は的場に契約金の相場が分からないのでとりあえず直ぐに出せる金額の4千貫と、領土として美濃3000石、越前を貰えた暁には10倍の領地を担保にする契約でお願いすると、的場はそんなに出して大丈夫なのかと心配された。
「他所は不作や凶作が多く、織田家も軍事行動が多いから食糧援助相場が高止まりのところに、俺の領土は今年も豊作だったから高値で売れたんだよねぇ……そういう金勘定が大蔵の奴が上手だし、堺や京、熱田や津島商人とも俺仲良いからお友達価格で色々融通してもらえるし」
「なるほど……ならこの金額と僕の魅力で引っ張ってくるね!」
「おう、頼んだ」
で、戦後処理もだいたい終わり、今年の苗の準備を始めようかと準備をしていた頃、的場が千名くらいを引き連れて帰ってきた。
「思った以上に興味抱かれちゃった」
てへっと、的場は舌を出してごめんなさいと言うが、直臣だった家臣が500名近く減っていたので、千名の加入は正直ありがたい。
でも何でこんなに来たんだ?
「それは俺が説明致す」
なんか偉そうなおじさんがでてきたと思ったら
「実は……政争に負けましたぁ」
一瞬にして泣き崩れた。
情緒大丈夫か……このおじさん。
的場曰くこの泣き崩れた人物は土橋守重という雑賀衆でも有力な国人であったが、雑賀衆は一向宗を信じる者が多い中、他の宗派を信仰している人物であり、それでも周りと同調しようと石山本願寺に援軍として一族の多くを連れて、石山に籠もって織田と戦っていたら、雑賀衆の有力国人である鈴木家に所領を奪われてしまったらしい。
これに石山本願寺経由で抗議したら、石山本願寺側は同じ一向宗の鈴木家に援助を行い、土橋家を攻撃していたのが発覚し、織田と和議が再び結んで、石山から退去すると同時に、一族の者と逃走しようとしていたところを的場が良い雇い主が居るよと教え、こちらに逃げてきたらしい。
「土橋殿には侍大将の地位と500石の領土を用意します。他の皆さんにも相応の知行もしくは給金を用意しますのでいかがでしょうか」
「信長の大天狗と呼ばれる津田又兵衛殿にそれほど評価していただけるのであれば、粉骨砕身で働きましょう!」
「うん、よろしく頼む。鉄砲の方はある程度自前のがありそうだね」
的場が連れてきた兵達はほとんどが火縄銃を装備していた。
「ええ、皆鉄砲の扱いに長ける精鋭達です。馬上からでも鉄砲を撃てる者も幾らか」
「それはそれは……射撃場と弾薬はこちらが調達する。故障した場合も鉄砲の補充は行うから、練度を高めてくれ。恐らく今年中にも活躍の場が訪れると思うから」
「は! よろしくお願います殿!」
こうして俺は雑賀衆の土橋一族を家臣に加えるのであった。
新しく家臣に加わった土橋家でも三男である土橋重房(しげふさ)なる若者が居た。
土橋家では長男は若くして病死し、次男は別の家に養子として出ていたので、三男だった重房が嫡男として育てられ、弟の土橋守国(もりくに)と一緒に土橋家をもり立てていこうとした矢先に土橋本領を失い、途方に暮れていたところを俺に拾われたので気合を入れて働こうと頑張っていた。
「かぁ! うっめぇ! 雑賀の里と比べて料理の質が段違いだ!」
「そうですね兄上」
ガツガツと重房と守国の2人は朝食を食べていた。
「しかもここだと飯が3食も出るし、おかずの量も凄え! 何よりおかわり自由とか天国かここは!」
「ですね! ですね! しかもおかずはご飯が進む物がほとんどですし、何より米が美味い」
「ああ、炊き方が違うのか、米の質が違うのか分からねぇがとにかくうっめぇ!」
「兄上、おかわりですか! 俺もおかわりなのでよそってきますよ」
「おお、わりいな」
飯を食べながら重房は周囲の様子を確認する。
(普通の家臣にも食料を振る舞える経済力、それに仕えている家臣達の技量も高ぇ。オラ達は鉄砲に優れているが、他の家臣達は鉄砲以外全てに優れているな)
(背丈も高く肉の塊みたいなのが俊敏に動いて突っ込んでくるんだから、敵からしたら恐怖だろうな)
(鉄砲を持たせても、彼らなら大筒を運用できるんじゃねぇか? 的場の兄貴、こんなに居心地の良い主を見つけていたんならもっと早くに紹介して欲しかったぜ)
「兄上、持ってきました!」
「おお、わりいな。守国は津田の兵をどう思う」
少し考え込んだ後に口を開く
「そうですねぇ。精強です。ただ個々の強さが高い故の強さであって、連携による強さではないですね。これが集団戦に強くなれるようになれば……」
「化け物みたいな軍団が誕生することになるな。意見は一致している。集団戦の戦い方を津田様も模索しているって話だ。俺達の意見も聞き入れられるかもしれねぇから、意見を纏めてから言いに行くぞ」
「そうですね兄上!」
津田軍の強さは津田又兵衛という圧倒的個による強さであり、大軍だとそれが活かせないのは武田戦で嫌というほど身に沁みてわかった。
それをどうするのか……今後の方針をうちの軍師である島と相談していた際に、土橋守重の子供達が意見があると入ってきた。
彼らが持ってきた戦闘指南書には鉄砲を重視した戦闘方法が色々書かれていた。
鉄砲保有量が多い織田家と本願寺との戦闘を経験してきた彼らにとって、鉄砲を使った集団戦術は得意中の得意。
彼らの意見を交え、体格の良い津田軍の巨人部隊に大筒という大砲を持たせて城壁を破壊したりする攻城戦の方法や鉄砲を使う戦術はどの様にした方が強いのか……その1つとして三段撃ちが考案されるにも至るのであった。
以後更新頻度を水曜と日曜18時の週2回更新に変更します。
作品のクオリティを上げるため歴史資料を読む時間に充てるのでご了承ください。