【書籍化決定】種付けおじさんIN戦国 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
足利義昭を京から追放し、室町幕府を滅亡させ、京にて朝廷工作を終えた信長様は一度岐阜に戻ったが、動員状態は解除せずに次の敵にトドメを刺す準備を進めていた。
その相手が浅井である。
弱体化工作を行い、いよいよ食べる物にも困窮してきている有様であり、流れてきたじゃがいもを城の中で育てているというのを忍びの情報で聞いていた。
しかも浅井の重臣であり、浅井にとって朝倉との連絡のための生命線である、山本山城主阿閉貞征が内通する手紙を秀吉殿に送っていたらしく、信長様はもう浅井は限界であり、損害も少なく浅井を落とせると判断し、8月に入ると軍を再集結させて、3万強の軍勢で浅井の籠る小谷城を包囲した。
俺は自身の領地や京、縁のある大和や伊賀から兵を募ると5千の兵が集まった。
「よく集まってくれた」
「又兵衛様が困ってるとなれば我々京の民は駆けつけますよ!」
「伊賀の民もそうです!」
大和はどちらかと言うと松永久秀の勢力が衰退したことで、道場関係者は次の売り込み先を考えていたらしく、島も居るので俺のところに門下生を送り込んできた。
「で、なんで居るんだ? マリア」
「ホッホッホ……儂が居た方が良いじゃろう。老将の意見は聞くに限るのじゃ!」
「今は異国の娘だろうに……」
甲冑で身を固め、白頭巾で顔を隠していたが声でバレバレである。
「高貞、お前が居ながらなんで連れてきた」
「すみません父上……マリア殿を説得しようとしたら言いくるめられてしまって……」
「まぁ怒るな兄弟。儂が来たくて来たんじゃからな」
「はぁ……来てしまったからには働いてもらうぞ」
「無論じゃ」
松永久秀ことマリアが来てしまったが、来たからには働いてもらうことにしよう。
織田軍約3万5000のうち、俺の兵が約5000で、信長様の直属を除くと一番兵数が多い部隊になる。
なので矢面に立つことが多くなるだろう。
津田軍の軍議の場を開き、どの様に小谷城を攻撃するか、小谷城の城地図を眺めて見ていたが、松永久秀ことマリアが
「今は城攻めの事は考えなくて良いでは無いか?」
と言ってきた。
軍議の場に女性が居ることに他の将達は怪訝そうな顔を向けるが、マリアは涼しい顔をして受け流す。
「城攻めは考えていないとはどういうことだ」
「儂が信長様であるなら……弱りきった浅井で釣りをしているのではないか?」
「釣り……本命は朝倉であると?」
「うむ」
地図を広げ、まず現在織田軍は北西部に陣を構える朝倉軍と小谷城に籠る浅井軍のちょうど間に位置する場所に陣を構えていた。
実質浅井と朝倉の連絡線は遮断しており、忍びの力も使って浅井と朝倉間での手紙のやり取りはほぼ筒抜けになっていて、偽書を混ぜることで真偽が分からなくなっていた。
ただ朝倉は国力以上の兵を今回動員しており、その数2万。
浅井が攻め滅ぼされれば次は朝倉であると強く認識していたので、本来加賀の一向一揆の防衛に充てなければいけない兵をも動員して、浅井の援軍に来ていたのである。
ここで注目すべきは、朝倉は浅井の次に攻撃されると思い込んでいたこと。
もし信長様が朝倉をここで殲滅することが出来れば……朝倉と浅井両者の滅亡は必至になる。
「朝倉はまんまと限界兵数以上の兵を引き連れて釣られてしまったと?」
「ああ、しかしまだ釣り針の周りをうろちょろしている状態じゃな。食いついていない」
「食いつかせるには撒き餌をする必要があるな……信長様に連絡、機を見て津田軍が朝倉を攻めると」
「は!」
伝令の兵は急いで織田本隊に向かい、俺の言葉を信長様に届ける。
となるとどう攻めるかについて議論していると、伝令が信長様より言葉を貰ってきた。
「一当ては信長様が行うそうです。又兵衛様だと食いつく前に逃げてしまうと」
「なるほど……では適切な時を狙いますか」
信長様は全体軍議の場では小谷城攻略の話をしながら、裏では着々と朝倉軍殲滅の作戦が進行していた。
本当は朝倉の領地をよく知っている明智殿を巻き込みたかったが、軍機を知る者が増えるのは危険と島に忠告され、俺の軍だけで動くことが改めて決定された。
そして全体軍議の2日後……その日は大雨が降り、視界不良の状態の中、信長様自らが千の手勢を率いて、朝倉軍が守っていた大嶽砦に奇襲攻撃を実行。
攻められると思っていなかった朝倉軍の守兵は散り散りに逃げ始め、信長様は特に追撃すること無く空になった大嶽砦を後にした。
そのまま俺の陣にやって来て
「舞台は整えた。存分にやれ」
と言われる。
ここで他の部隊にも信長様は主目的が朝倉軍の殲滅であることを伝える。
しかし、浅井を背にして朝倉を攻めるのはどうかという疑念が各軍に浸透しており、即座に動けたのは俺の部隊と信長様の本隊だけであった。
俺の軍は朝倉に圧力をかけるため、丁野砦を攻撃。
ここも大雨の今日攻撃してくると考えてなかったらしく、抵抗もほぼ無く陥落。
主要な砦を2箇所も失った朝倉軍の大将は今回ばかりは当主の朝倉義景が兵を率いていたが、今までろくに兵を率いてこなかった弊害で、自軍が不利になると撤退する癖が彼にはあり、朝倉軍が撤退しようとしているという情報が忍び達により入ってきた。
「機は熟した……全軍! 朝倉の兵を殲滅する! 私に続け」
「「「おぉ!」」」
津田軍の追撃戦が始まった。
素早く撤退に移行できたと思ったと思っていた朝倉軍にとってトラウマとして刻まれていた毛受の旗印が大量に現れたことで軍はたちまち大混乱に陥っていた。
ある者は鎧を脱ぎ捨てて逃げ出し、ある者は草むらに隠れて難を逃れようとし、ある者は集団逃走を試みる。
朝倉の兵達は誰も又兵衛の軍と戦おうとは思えなかったのである。
将達が兵をなんとか前線に戻そうとするが、叫んでいる者から弓や鉄砲によって狙撃されていく。
津田軍が育てた馬上狙撃部隊が巨大な馬に乗り、馬上から敵将を狙撃していったのである。
ここだけモンゴル騎兵みたいな事をやりつつ、馬上狙撃部隊が将を殺し回っている間に、混乱して足が止まった朝倉軍より先の崖上に忍びに引き連れられて移動した的場と土橋一族に率いられた千名以上の鉄砲隊が、崖上から次々に崖下でもがいている朝倉軍を射撃。
雑賀衆直伝の早合と呼ばれる素早く装填する技術で1分間2発が限界だった射撃間隔を4発に増やし、更に連撃と呼ばれる鉄砲隊を射手と装填手の2組に分けるやり方で射撃間隔を更に短縮する。
するとマシンガンの様に切れ目無く射撃されているような状態に陥り、崖下では朝倉兵が射撃されて血の川と肉塊の坂が出来上がっていた。
死体によって余計進むのが困難になり、後ろからは又兵衛率いる斬り込み隊がガンガン敵兵を斬り殺していく。
後方と左右から攻撃を受けた朝倉軍はたちまち崩壊し、刀根坂と呼ばれる地点を通過できた朝倉兵は3千以下であった。
津田軍恐怖の万人殺しと呼ばれる、1万名以上を殺し、数千の敵兵を捕虜とした。
戦国時代基本兵が投降するということは無いのである(そもそも殺されるので)が、将を失った兵達が逃げ場を失い、投降してきたため、捕虜にすることに成功した。
ただその兵達は縄で手錠をさせ、信長様率いる本隊に対応を任せ、俺率いる津田軍は越前の朝倉本拠地に兵を進めるのであった。
活動報告に種付けおじさん書籍化の最新情報を公開いたしました。
良ければ見てください。