「すっげぇな、アイツ金持ちなのか」
「知ってたけど、ここまでとは・・・」
約束通り、八百万百の家へとやって来た道長。八百万家の太さに唖然とする。
ピンポーン。
『お待ちしておりましたわっ!!』
まるでインターホンの前でスタンバっていたかのような速度で返事が来ると、門が開き、家の中に案内される。玄関からすでに豪華な装飾に絵画、美術品がおかれており、貴族のような空間に圧倒される。
「マジのお嬢様なんだな」
「こちらですわ!」
八百万の案内で客間に通される道長達。客間も大きく広く、いったい何人用なんだと思うほどのテーブルに着く。
「お紅茶とお茶菓子を持ってまいりますわ!」
パタパタと走っていく八百万。
(あいつ、何焦ってんだ?)
そんな八百万の様子に少し違和感を持つ道長。八百万の焦り、それが改善される日が来ると良いが。
「お持たせいたしました!!」
豪華な茶器に様々なお茶菓子を持って現れる。紅茶が配られ、勉強会が始まる。各々がわからない分野を八百万に聞きながらなんとか学力の底上げを図っていく。
「やおもも!!ここは!!」
「今参りますわ!」
「こっちも!!」
「少々お待ちを!!」
「やおもも!ちょっといいか?」
「はい!!」
紅茶を飲みながらその様子を見ている道長。やはり、他人の役に立つことをあまりにも意識しすぎているような気がするのだ。まるで自分はなにもできないかのようなそんな焦りが見て取れる。
「あ、お紅茶がなくなってしまいましたわね。すぐに取って参りますわ!」
茶器内の紅茶がなくなってしまったので、キッチンへ紅茶を取りに行く八百万。それを見た道長はその後を追った。
「手伝うぞ」
「道長さん!いいえ、大丈夫ですわ!」
「良いから貸せよ」
道長は半ば強引に茶器を取ると紅茶を準備していく。そして、何気ない会話のように八百万がなぜ焦っているのか聞き始める。
「お前、なんでそんなに焦ってるんだよ」
「へ?」
わかっていなかったのか、不思議な顔をする八百万。
「焦ってるだろなんでかは知らねぇけど」
「そ、そんなつもりは・・・」
困ったような表情で八百万は茶器をカートにのせる。
「もうちょっと気楽に行けよ。なんで焦ってるのかは検討もつかねぇが、人はやれることがそれぞれ違うだろ?焦る必要なんかねぇだろ」
道長はそう言うと、先に客間へと戻った。
「ですが、私には、ヒーローに必要なものが足りていないんです。道長さん・・・」
カートを押しながら八百万はそう呟いた。
その後、勉強会は順調に進み、なんとかメンバーの成績向上に結び付いた。さて、問題は実技試験である。
演習会場中央広場に集まった1-A+道長。A組メンバーはヒーローコスチュームに着替えており、道長だけ制服である。
その前には雄英教師が勢揃いしていた。
「それじゃあ、演習試験を開始する!の前に。道長」
「なんだよ」
「これに着替えてこい」
ケースを渡された道長。
「なんだよこれ」
「お前のヒーローコスチュームだ」
「頼んだ覚えないぞ」
「あぁ、だが、今回の演習試験だけはお前にも受けてもらう。制服じゃできないだろ?」
「なんで俺が・・・」
「ヴィジランテ活動で培ったあなたの実力、調べておきたいしね」
18禁ヒーローミッドナイトがそう言うと、A組生徒達気になるのか、目をキラキラさせて道長を見る。
「はぁ、わかったよ」
そう言うと、道長は更衣室へ向かった。数分すれば、黒と紺のジャケットに、ジャケットと同様のカラーに白いラインが入ったラフなコスチュームを着た道長が現れる。
「道長は変身するからな、できるだけ動きやすい服装が良いだろ」
「まぁな」
「なんか地味だな」
「機能性重視よ、それに、道長君は変身後が一番の目玉!変身前は地味な方が、変身後、突然ヒーローが現れた感があっていいわよ!」
「どうでもいい」
「さて、道長についてはここまでにして、試験を始めるぞ。この試験にも赤点はある。林間合宿行きたけりゃ、みっともねぇヘマはするなよ!
諸君なら、何をするのか、事前に情報を仕入れていると思うが」
すると、上鳴と芦戸のテンションがはね上がる。
「フゥー!!入試みてぇなロボ無双だろぉおおお!!」
「花火!カレー!肝試しぃいい!!」
しかし、そのテンションは一気に叩き下げられる。
「諸事情があって、今回から内容を変更しちゃうのさ!!」
相澤のマフラーから根津校長が現れ、そう告げる。
「「「校長先生!?」」」
「変更とは?」
「これからは、対人戦闘、活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ!というわけで、諸君らには二人一組で、ここにいる教師一人と、戦闘を行ってもらう!!」
それを聞いたA組生徒達は驚きの声を上げる。
「なお、ペアの組と対戦する教師はすでに決定済み、動きの傾向や成績、新密度、もろもろを踏まえて組ませてもらったから、発表していくぞ!
まずは!!轟と八百万がチームで、俺とだ」
「おい」
すると、道長が相澤に声をかける。
「なんだ道長」
「コイツと俺でやらせろ」
そう言って道長は八百万を指差す。
「え!?」
「マジか・・・」
「条件もつける。俺の攻撃はなし、デュアルオンもなし、下半身または上半身のみにしかアーマーは装着しない。サポートのみだ」
道長の出した条件に相澤は道長の意図を汲み取ったのか、面白そうな顔をする。
「なるほどな、どうしますか?根津校長」
「いいじゃないか。彼、生徒達を良く見ているよ」
「許可が出た。道長、出ろ」
「よろしく」
八百万にそう声をかけ、道長はフィールドへと入っていく。八百万は彼の意図が全くわからず首をかしげる。
「道長、轟のテストも頼んだぞ」
「あいよ」
「それじゃあ残りの組みも発表していく」
残りの組みは
緑谷&爆豪VSオールマイト
切島&砂藤VSセメントス
麗日&青山VS13号
峰田&瀬呂VSミッドナイト
蛙吹&常闇VSエクトプラズム
耳郎&口田VSプレゼントマイク
上鳴&芦戸VS根津
障子&葉隠VSスナイプ
飯田&尾白VSパワーローダー
となった。
八百万はあわてて道長の後について、フィールドへと入っていった。
「道長さん、作戦はあるのでしょうか?」
「まずは地形の把握だ。地形把握を相手に上回られたら勝てる試合も勝てん」
そう言ってフィールド内を散策する。道長と八百万のフィールドは住宅街。どうせ住宅への被害の軽減も試験内容に入っているようだろうと予想を立てる道長。
「作戦はどうしましょう?」
「お前が考えろ」
「へ!?」
「確かに俺も作戦があるにはある。アイツは目を潰せばただの人だ、やりようはいくらでも考え付く。だけど、それは今回はやらねぇお前が勝ち筋を見つけろ」
そう言って散策を再開する道長。しかし、八百万は不安そうな顔で道長の後についていく。
その後、なんの作戦も立てられないまま道長と八百万の番となった。
「あ、あの・・・」
「はぁ、とりあえずなんでもいいから出してろ。そうすりゃアイツの襲撃タイミングがすぐにわかる」
未だに道長に頼ろうとしている八百万に呆れた道長はため息をついた後指示を出す。
「は、はい!」
八百万は指示通り創造の個性を発動する。なぜかマトリョーシカを生成しているが。
その後、八百万のマトリョーシカが生成されているかを確認しながら、辺りを歩き回る。すると、突然マトリョーシカの生成が止まる。
「来たか、構えろ」
「はい!」
そう言った次の瞬間、捕縛布が八百万に向かって放たれる。道長は捕縛布と八百万の間に割って入り、ゴッズウォールで捕縛布を無力化する。
「さすがだ道長。だが、いつまでもそうしてられる?」
「こうすれば永遠にできる」
『リボルブオン!』
そう言って道長はリボルブオン。ゾンビアーマーを下半身へ移動させると、エネルギーバリアを生成し、八百万の後ろに展開する。
「どうする?ここからは俺はなにも指示は出さない。自分で考えるしかないぞ?」
「で、でも、私は・・・」
今だ決心の付かない八百万。爆豪、轟、飯田、緑谷のようなセンスと圧倒的な火力を目の当たりにしてしまい、自信を喪失してしまっている。しかし、ヒーローはそんなこと言っていられないのだ。
「そうやって民間人に説明するのか?」
「へ?」
厳しいが言うしかない。
「自分は自信がないから、指示を出せないと助けを求めてるやつらにそう言うのかって聞いてんだ!」
「っ!?」
「お前がアイツらを見てなんで自信を失ってんのか知らねぇが、お前、あるんだろ?アイツらに負けねぇ強いところが」
「わ、私の強いところ」
「お前は知識を吸収するスピードもそれをアウトプットできるようになるスピードも他のやつらよりも秀でてる。だからその強いが難儀な個性を使えてるんだろうが」
八百万の個性、創造はあらゆる元素配列、あらゆる分子構造、物の仕組み、エネルギー源、さまざまな知識が必要だ。知識がないと使い物にならないぐらいには。仕組みさえわかれば、下手すれば核爆弾だって作れてしまうのだ。
「知識がたくさんあるなら、出てくるよな?出て来ちまうよな?戦法が、撃退方法が!失敗したっていいんだよ八百万。失敗がなかったら成功なんか産まれねぇんだから」
道長の言葉を聞いた八百万は不安そうな顔をしながらも決心を固めたのか、道長に指示を出す。
「目眩ましはできますか?」
「任せろ」
『リボルブオン!HIT!!FEVER!!NINJA!!』
バッファはニンジャフォームへとフォームチェンジし、懐から煙玉を取り出し、地面に叩きつける。煙玉から膨大な煙が吹き出し辺り一帯を覆い尽くす。
煙が晴れると、そこに八百万と道長の姿はなかった。
「逃がしたか」
目薬を指しながら相澤は冷静に分析する。
「覚悟を決めたか?八百万」
煙玉の煙に紛れて相澤から逃げたふたりは、路地裏にて八百万の思い付いた作戦を話し合っていた。
「私が思い付いたのは、これを使用した捕縛です」
「こいつは、相澤が使う捕縛布か?」
「見た目は同じですが中身が違います。これは形状記憶合金を編み込んだ私オリジナルの捕縛布ですわ」
形状記憶合金。
一定の温度下の時に変形させたとしても、変形時の温度以上に加熱すると、元の形状へ戻る性質を持つ特殊な金属である。
スマホのカメラや、シャワーの温度調節機などに使われている。
「道長さん、熱は出せますか?」
「任せろ」
そう言うと道長はフィーバースロットを回す。
『BEAT!!HIT!!FEVER、BEAT!!』
道長はフィーバービートフォームへフォームチェンジし、手にビートアックスを持つ。
「いけるぞ」
「了解しましたわ!」
八百万考案の作戦を決行する。
相澤が二人を探していると、道端に布を被ってうずくまっている八百万を発見する。
「フッ、そんな無防備だとすぐ捕まるぞ!」
相澤は捕縛布を投げ、捕縛にかかる。しかし、布がバサリと払われ、中からスピーカーのようなものがついたピンクと水色のカラフルなアーマーと同じカラーリングのギターを持つ道長と相澤が使用している捕縛布に似た形状の布をカタパルトに乗せた八百万が現れる。
「妨害してください!!」
「任せろ」
道長はギターを弾く。
『FUNK!!BLIZZARD!!BEAT!!TACTICALBLIZZARD!!』
ギターから冷気が溢れだし、相澤の左右に振ると氷壁が築かれ、相澤の退路を封じる。
「なに!?」
右に退避しようとした相澤は氷壁にぶつかり、体制を崩す。
「今です!」
八百万がカタパルトの発射紐を操作、しようとしたがからぶる。
「っ!?」
焦りの表情を見せながら相澤の方を警戒する八百万。
バサッ!!
しかし、カタパルトが発射される。
「焦るな、俺がいる」
『ROCK!!FIRE!!BEAT!!TACTICALFIRE!!』
ギターから今度は炎を発生させ、捕縛布擬きに纏わせる。すると、形状記憶合金が反応。
相澤に巻き付くように元の形へ戻っていき、地上に相澤が降りる頃には完全に捕縛布擬きに拘束されていた。
「せ、成功しましたわ・・・」
信じられないような顔で拘束された相澤を見る八百万。そして、道長の手を取るとピョコピョコと跳び跳ねながら喜んだ。
「道長さん!!私、できましたわ!!」
「あぁ、見りゃわかる」
「八百万、なかなか良い策を練ったな。道長も、さすがはヴィランを何度も捕獲してきただけあって、サポートがうまい」
「でも、なぜ成功したのでしょう?」
「何で、くそもねぇんだよ」
「というと?」
「実戦ってのは一かばちかだ、何が起こるかわからねぇ。だから、プランを多く作り出せるやつが有利になる」
「その通りだ道長。戦いにおいては確かに、爆豪、轟、常闇のような火力を出せるものは重宝される。しかしその反面、救助や乱戦においてはその火力は足を引っ張る要因になりかねない。その反面、八百万お前は」
「創造によって、火力を出せる装備を作り出したり、救助用具の創造だって行える。つまり、お前は万能タイプだ。そして、何よりもそのお前の頭の中にある科学知識だ。科学知識ってのは深いところまで知らないやつがほとんどだ。そういうのは搦め手に使える」
「ということだ、八百万。お前はもっと自信をもて、そして、自分を信じろ」
「自分を、信じる・・・。はい!お二人とも、ありがとうございます!!」
二人の言葉を噛みしめ、目の輝きを取り戻した八百万。ヒーローへの道が一歩進んだ瞬間であった。
「それじゃあ、八百万の試験を終了する。道長、轟の試験の準備に入れ」
「はいよ」
道長は、轟が待つ控え室に行き、数分すると試験が開始された。相手は切島と砂藤を担当したセメントスであった。
瓦礫が大量にある災害現場エリアにて、轟と道長が合流する。
「あっと、道長、でいいのか?」
「好きに呼べ」
「そうか・・・。道長、お前はどう見る?」
「あぁ?」
「お前は、ヴィジランテとしてこの中で一番ヴィランと接触してきた。現場経験が一番豊富だ、そんな道長がセメントス先生をどう見るのか知りたい」
轟が道長にそう伝えると、道長はセメントスが恐らく仕掛けてくるであろう戦法を話し始める。
「アイツはおそらく俺を警戒して短期決戦を仕掛けてくる。主に、セメントを使用した拘束。お前さえ拘束すればあっち側の勝ちだからな」
「なるほど」
「アイツの個性は確か、コンクリの粘度を変えられるんだったよな?なら、お前をコンクリに埋めちまえば試合終了、なんだが、コンクリの弱点を知ってるか?」
「そんなのあるのか?」
「コンクリは急激な温度の変化に弱い。急激に冷やされ、また熱せられると、収縮と膨張で壊れる。コンクリの中には水分があるからな」
「そうだったのか・・・」
「お前、熱出せるよな?」
「あぁ、いける」
「ならわざと拘束されるか」
「なるほど、わざと拘束された後にさっきの弱点を利用して脱出して奇襲するのか」
「そういうことだ、行くぞ」
「あぁ」
轟と道長は大まかな作戦を考えた後、隙を見せた状態でセメントス捜索を開始する。外周を一通り見た後、脱出ゲートの方へ向かうと待ち構えるようにセメントスが待っていた。
「作戦通りいくぞ」
「あぁ」
轟が走り始め、道長は脇に逸れ、セメントスの死角に入る。そのままマグナムフォームに変身すると、息をひそめる。
轟は半冷で攻撃を仕掛け、注意を自分に向ける。
「正面突破ですか!舐められたものです!!」
セメントスは地面に両手をつくと、正面のコンクリートを操り、轟の拘束にかかる。
対抗するように氷結攻撃でコンクリートを相殺しようとするが、地面そのものが動いているセメントスのコンクリート攻撃とコンクリート表面を駆ける氷結ではコンクリート攻撃のほうが分がある。
「ぐあっ!!」
コンクリートに巻き取られ、拘束される。
「道長君はどこに?」
「あいつの絶対防御に頼りたくなくて、見てるだけにしてもらったんです」
「なるほど、ですが、使えるものをすべて使うという選択もヒーローには必要ですよ」
「はい、だから・・・」
『RIFLE MODE』
「ちゃんとサポートをお願いしました」
『BEAT!!TACTICAL BLAST!!』
「なに!?」
どこからともなく音符をまとった弾丸が飛んできて轟を拘束していたコンクリートに着弾。コンクリートが一瞬にして凍結。轟が半燃を発動し、その凍結を瞬時に解除、コンクリート全体に補ひびが入る。そこへまた弾丸が飛来し、コンクリートを弾き飛ばす。
「セメントス先生、近くに来てたのが間違いでしたね!」
「うわっ!!」
お返しとばかりにセメントスの体を氷で拘束、手かせを付け、試験合格。
「やりますね、二人とも。この作戦はどちらが?」
「道長です。俺よりも実戦経験があるし、八百万へのアドバイスを見ても俺より策を練るのがうまいと思ったからお願いしました」
「なるほどね、これはしてやられたよ道長君」
「俺はもう行くぞ」
道長はそう言うと訓練場を後にする。轟がその後をついてくる。
「なんだ、まだなんかあるのか?」
「いや、なんでこんなに強いのに、ヒーローやヴィランじゃなくて、ヴィジランテなんかやってたんだろうなって思って」
「やりたくてやってたわけじゃない」
そう言うと、轟を置いて控え室へ消えていった。
ヒロインどうする?
-
いるに決まってんだろ!!
-
ダメだ!許可しない!!