あの後、道長はインゲニウムを見送った現場から少し離れた路地裏で自宅へと転送された。
しかし、自宅には報酬は転送されてきておらず、神に不満をぶつけた。すると、インゲニウムはまだ救われていない。との返信が来た。
何を言っているんだ?という顔をした後、道長は神への交渉を諦め、ベッドに座り、テレビを付けた。ちょうどニュース時であったため、インゲニウム襲撃事件のことが報道されていた。そして、救出したバッファの事も報道されており、賞賛の声とヴィジランテ嫌いのアンチ行為が散見された。
「ま、俺は金もらえりゃそれで良いからな」
道長はそう言うとテレビの内容を無視しながら先程の神の発言を思い出す。
インゲニウムはまだ助かってない。
「確かアイツ、弟いるとか言ってたな」
とある日、インゲニウムがしつこく道長を引き留めていた時に、そんなことを言っていたことを思い出した道長。
「嫌な予感がするな」
道長はため息をつき、弟がとある行動に走る予見しながら、ステインとの再戦がありそうだなとテレビに映るステインの顔を睨み付けた。
そこから数日。
特に何事もなく時が進んだ。時折、声をかけられている雄英生徒を見かけるぐらいで、ヴィラン、ヒーローとの接点もなかった。しかし、そんな平穏は突然壊される。
道長が牛ステーキを食べていると、ヒラヒラとカードが降ってくる。
「あ?今飯食ってるだろ」
文句を言いつつ、カードの内容を見る。
「インゲニウムを救出せよパート2?」
カードの内容を見た道長はやっぱりそうなったかとステーキをラップで包み、水を一杯飲むと、デザイアドライバーを取り出す。
「変身」
『GRAB!!CRASH OUT!!ZOooMBieee・・・ 』
「良いぞ」
バッファのがそう言うと、保須事件の中心地へと転移する。
ドガァアアアンッ!!
「なんだこりゃ!」
転移の光が晴れると同時にあちこちで火の手が上がる保須市の町並みが目に映る。
見ると、ヒーローと最初のミッションの時に撃破した脳無に似たヴィラン達が暴れまわっていた。
「インゲニウム救出どころの話じゃねぇぞ!」
『POISON CHARGE !! TACTICAL BRAKE!!』
ゾンビブレイカーを振るい、脳無の一人を吹き飛ばす。
「バッファ!?」
「敵わねぇなら下がっとけ!」
ヒーローを押し退けて脳無を相手取るバッファ。バーサクローとゾンビブレイカーを活かし、身体の再生速度を上回る火力で脳無の体力を削りきる。
「再生するヤツは本当に厄介だな、ハァ」
脳無の継戦能力に文句を言いながら、一人ずつ着実に脳無を鎮圧していく。
「天哉君!!天哉君!!一体どこに行ってしまったんだ!!」
すると、バッファの耳に、インゲニウムの弟の名前が入ってくる。
振り向くと、魚の背鰭がついたヘルメットを被ったヒーローが、インゲニウムの弟を探しながら、自身の個性を使い、消火活動を行っていた。
「おい!そこのヒーロー!」
「え!?バッファ!?」
「おまえ、インゲニウム知ってんのか?」
「インゲ、ああ!!天哉君の事だね!うちに職場体験に来てたんだけど、はぐれちゃって」
「居場所はわかんねぇってことか」
バッファは舌打ちをすると、フィーバーゾンビフォームに変身し、最後の脳無を鎮圧する。
「おい!コイツらの事任せたぞ!」
ヒーロー達にそう伝えると、路地裏に入る。ステインの行動パターンは読めている。人気のないところでヒーローを襲い、殺す。つまり、事件現場周囲の路地裏のどこかに必ず居る。
「しらみつぶしか」
忌々しげにそう言うと、路地裏を駈ける。数分もすれば、青年の苦しむ声が聞こえてくる。
「見つけた!」
声の聞こえる方へ向かうと、ステインの刀に肩を串刺しにされている天晴に良く似た顔つきの青年とインディアンのようなコスチュームのヒーローが倒れていた。
「やっと見つけたぞ二代目インゲニウム」
『POISON CHARGE !! TACTICAL BRAKE!!』
「とりあえずこいつでも喰らっとけクソ野郎」
タクティカルブレイクをステインに向けて放つも、それに気づき、素早い動作で避ける。
「来たか、バッファ」
「ようクソ自治厨、また会ったな」
「あ、あなたは!?」
「お前か、インゲニウムの弟ってのは」
天哉を一瞥し、またステインを睨み付ける。
「下がっとけ、俺がこいつを倒す」
「っ!?ダメだ!!あなたには関係ない!!」
「そう言うだろうと思ってたっ!!」
バーサクローが装着された方の脚を踏み込むと、インゲニウムを救出した時と同じバーサクロー型のエネルギーがインディアンのようなコスチュームのヒーロー、ネイティブを回収し、自身の後ろへ隠れさせる。
「どけ、バッファ。ソイツはヒーローに相応しくない感情をもっている。復讐心、怨嗟はヒーローが持ってはいけない感情だ!」
「なに言ってんだ、まだガキなんだぞ?判断が早すぎると思うんだが?」
バッファはそう言うと、ステインに向けてタクティカルブレイクを放つ。しかし、また避けられてしまう。
(動くスピードが速い。こいつ、生身でこのスピード出してんのか?バケモンだろ)
ガキンッ!!ガキンッ!!
タクティカルブレイクを威嚇射出し、ステインを遠ざけるバッファ。しかし、ステインはタクティカルブレイクの踏襲を難なく躱し、天哉とネイティブを執拗に狙って攻撃を仕掛けてくる。
バッファは天哉とステインの間に即座に入り、自慢のオートガードで庇う。ネイティブは先程のエネルギーを増やし、完全に覆い隠すことでカバーする。
「やめてくださいバッファ!!あなたには関係ないことだ!!僕が、僕がやらねば!!」
「こいつは重傷だな。二代目インゲニウム!」
バッファはバーサクローが装着された脚をもう一度踏み込むと、天哉の前に小さなバーサクローエネルギーが現れる。
「お前、今自分がどう見える?」
「っ!?」
バッファにそう言われた天哉は、ハッとしてバーサクローエネルギーの映し出された自身の顔を見る。そこには、怒りに飲み込まれ、暴走した一人の子供が映し出されていた。
「アイツは、そんな顔してヒーローなんかやってなかったぞ。インゲニウム名乗るなら、アイツに恥じねぇ顔つきで居ろよ」
ステインの攻撃をさばきながら、天哉にそう語りかけるバッファ。短い付き合いではあるが、インゲニウムのヒーロー活動を間近で見ていたからこそ、そう語る。
「お前は、何でヒーローを目指そうとしたんだよ?」
「ぼ、僕は・・・」
「あるんだよな?お前の原点」
「ぼ、僕の、原点」
「思い出せよ、その原点にいるアイツの顔を」
バッファがそう言うと、涙を流しながら、天哉は叫んだ。
「僕は、兄さんに憧れて!!」
天哉は、とある日の出来事を思い出した。