片田舎の剣聖の一番弟子   作:剣術太郎

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ベリルさんに拾われてから、数年経った

喋れるようになり、身体の自由が利くようになった

素振りも続けてる。ベリルさんやモルデアさんが時間が空いた時、指導してくれたので、ようやく素振りが様になった


そしてついに


「なぁアセム。そろそろウチの道場に入―――」

「入る!!」

「うぉ!即答」


ようやくだ!ようやくベリルさんの道場に入れる!!

その日はワクワクでなかなか眠れなかった。遠足前の子供か!

いや、今は子供か……


「「おはようございまーす!!」」

「はい、皆さんおはようございます。今日は新しい弟子を紹介……と言っても皆知ってるかな。とりあえず自己紹介を」


ベリルさん……いや、師匠から言われ、前に出る


「アセムです!改めまして、皆さんよろしくお願いします!!」




入門、そして弟子たち

 

「「1!……2!……1!……2!……」」

 

 

道場内に弟子たちの声が響く。ベリルは弟子の素振りの様子を見ながら、1人1人に指導する

 

1人には腕の振り方を。1人には木剣の持ち方を

 

そこに、外から声が聞こえて来た。走り込みをさせていたグループが帰って来たのだ

 

 

「はい、おかえり。みんな一息付いてね」

 

「「は……は~い……(疲)」」

 

「ん?……あれ、アセムは?」

 

 

そこに1人の子が、息切れしながら、道場の外のあるところに指を指す。そこには

 

 

「1……2……1……2……」

 

 

木剣を持ち、素振りをするアセムの姿が

 

 

「あ……アセムくん……ぼくたちより……は、はやく走って……素振りしてました……」

 

「オレ、あいつより年上なのに……走り込みで負けるなんて……」

 

「しかもまだまだ元気そうだし……すごくない?」

 

「ははは……なるほど。君たちはもう少し休憩してなさい。水と塩分を取るのを忘れずに」

 

「「は、は~い……(疲)」」

 

 

他の子たちを休憩に行かせ、アセムにも声をかける

 

 

「走り込みお疲れさま。一度休憩したらどうだい?」

 

「あ、師匠。ねぇ、俺の素振りどう?」

 

「うん。最初と比べて腰で振れるようになったね。だけど、もう少し意識した方が良いかな」

 

 

そう言い、後ろからアセムの両腕を持ちながら彼の素振りの指導をする。すると、アセムも十分理解し、素振りを続けようとしたので、なんとか休憩に行かせた

 

 

 

ベリルSide

 

 

アセムの成長は実に速い。身体の成長でなく、剣の方だが

 

例えるなら、カラカラの砂が無限に水分を吸い込むように。教えた事は1つ残らず彼の身体に吸収していった

 

更に才能だけじゃない。努力は人の2倍どころじゃない。100倍はしている

 

道場に入る前から、俺や親父から素振りの指導を積極的に受けた。そして暇さえあれば庭で素振りをしている

 

親父の言う通り、彼はものすごい剣士になるかもしれない

 

心配なのは、周りと上手くやっていけるか……

 

 

 

アセムが道場に入ってしばらく経ったが、どうやら心配は杞憂に終わった。赤子の頃から知っている者が多く、同年代の子達とも仲良くやっている

 

兄弟子、姉弟子達とも仲良くやっている

 

特にランドリドとは本当の兄弟のようになっている。ランドリドも「弟が居るって、良いもんですね」と嬉しそうだった

 

親…兄代わりとして育てた側からしたら、少し寂しい……(涙)

 

だがやはり、道場の誰よりも努力の量は桁違いだ

 

稽古の日はもちろん、休みの日でも、俺と並んで素振りを欠かさない

 

その姿を見てると、なんとかかつての自分の姿と重なる

 

俺も物心着いた頃からの木剣と戯れていて、暇さえあれば、素振りをしていた

 

 

「師匠、前から聞きたかったんだけど、なんで騎士とか冒険者にならなかったの?」

 

 

稽古のないある日

 

隣で素振りをしていたアセムがそんな事を聞いてきた

 

ちなみにだが、他の弟子たちは『先生』と呼ぶのに、アセムだけは『師匠』と呼び、親父の事は『大師匠』と呼んでいる

 

 

「あ〜……まぁ単純に、己の未熟さを痛感したから……かな?」

 

「未熟?師匠が?」

 

「世界は広いし、甘くない。それを思いっきり突き付けられてね。それでこの道場を継いで、君たちに自分の身を守る術を教えることにしただけさ」

 

 

だからこそ―――

 

 

「俺は『師匠』と呼ばれるほど凄くないんだよ」

 

 

 

ベリルSideOut

 

 

 

「(違う――――)」

 

 

ベリルに頭を撫でられながら、アセムはベリルの言葉を否定した。

 

 

「(この人は分かってない。ベリル師匠は、自分が思っている以上に、剣の腕は高みにいる)」

 

 

道場内で掛かり稽古(掛かり(攻撃)側が、元立ち(受ける)側に対して、連続して技をかけ、打ち込みを繰り返す稽古)の時、兄・姉弟子の誰もが、師匠の本気に一本も取れていない。

 

他の道場への出稽古では、相手の師範代との模擬戦でも負け無しだった。

 

何より、ベリルの剣は誰よりも綺麗だった。

 

 

「いいえ。師匠が否定しても、師匠の剣は凄いんです。それは、ずっと見てきた俺たち弟子が自信持って言えます」

 

「それは君たちがまだ世界を見てないからさ。俺以上の剣士なんてザルにいるよ」

 

「……そうですか」

 

 

2人の会話はそれで終わり、素振りを再開した

 

 

 

半年後

 

 

道場に新たに弟子が入門した。

 

なんでも商家の子らしく、綺麗な銀髪の少女が来た。

 

 

「あ、アリューシア・シトラスです……よろしく、お願いします」

 

 

ペコリとお辞儀をするアリューシア。その振る舞いから、育ちの良さを感じさせた。

 

 

「良かったな、アセム。初めての妹弟子だぞ」

 

「ランドリド兄さん、俺まだ入って1年未満ですよ。ギリギリ同期でしょ」

 

「だが、お前の方が数カ月長く居る。お前からも色々教えてあげな」

 

 

そんな訳で、アセムにとって初めて(?)の妹弟子が出来た

 

 

 

アリューシアSide

 

 

ベリル先生の道場に入って半年近く経った

 

まだ基本の身体作りの稽古と素振りしかしていないが、入門した頃よりは強くなっているのを感じる事が出来た

 

先生は丁寧に分かりやすく教えてくれる

 

他の子たちも気軽に接してくれるので、とても楽しい

 

でも、その中で1番目を見張るのは

 

 

「アリューシア、休憩の時には水ばっかじゃなくて塩も少し舐めろよ。熱中症になって倒れるからな」

 

「ありがとうございます、アセムくん」

 

 

名は『アセム』。姓が無いのは、彼が孤児だかららしい。詳しくは聞いていないが、先生が捨てられていた彼を拾ったらしい

 

だが、彼は特に気にしていない。なんなら本人から自分は孤児だと言うのを聞かされたのだ

 

だが、彼の腕はおそらく他の弟子と比べてかなり上の位置にいる

 

他の人が掛かり稽古や模擬戦をしている時、彼はまるで先生のような目線で見て、自分なりに解析をしていた

 

 

ランドリドさんも

 

 

「今はまだ俺たち年長者が上だが、近い内にアイツは俺たちを追い抜かすだろうな」

 

 

と、言っていた。他の兄・姉弟子たちも同意見だった

 

先生も彼を称賛していた

 

 

「アセムは今までの弟子たちの中では、トップクラスに行くだろうね。もしかしたら、この国一の剣士になったりして(笑)」

 

 

正直、ちょっと悔しい。同年代で、彼の方が数カ月先輩だが、入って数カ月で道場の皆にそこまで言わせる程の実力持ち

 

これが才能の差か……

 

 

「いやいや、アセムのは才能だけじゃない。努力の量も道場随一さ。彼の手のマメ、幾つ潰れたかもう分からないくらいに剣を振ってるからね」

 

 

手のマメを幾つも潰すほどの努力……私にそれが出来るのか

 

 

「アリューシアはアリューシアの出来る事をすれば良い。それは必ず、後の君の糧になるからね」

 

 

先生はそう言って私の頭を撫でてくれた

 

だったら、私なりに努力して、彼に追い付いてみせる!

 

 

「なんでアリューシアの頭を師匠が撫でてるんだ?………羨ましい」

 

 

 

アリューシアSideOut

 

 

 

 

 

アセムが道場に入ってもうすぐ2年が経つ

 

 

何人かの兄・姉弟子は旅立ち、何人かの後輩が入れ替わりに入ってくる。

 

アセムはいつの間にか後輩の指導をランドリドと一緒に手伝うようになった。

 

アリューシアの腕も入門の頃と比べてかなり上達した。

 

彼女には剣の才覚がある。その上達振りが早いのだ。数カ月の差があるのに、彼女はアセムと同じ時期に掛かり稽古をするようになった。

 

力だけじゃない、彼女の剣は文字通り速い。

 

ベリルもその事にはとっくに気付いており、速さをベースにした戦い方の指導もしている

 

 

ある日、アセムはベリルにも内緒でモルデアと一緒に山中に来ていた

 

 

「どうしたんじゃアセム?こんな山ん中に来て」

 

「大師匠。ウチの道場には攻めの型が5つ、受けの型が8つあるじゃないですか」

 

 

アセムは木剣を持ち、大きな岩の前に立つ

 

 

「そうじゃな。けどお前さんはまだその型稽古をしてない―――」

 

 

スパンッ―――――

 

 

モルデアの話の途中、アセムは木剣を岩に向かって、真横に振るった。すると

 

 

ゴゴゴ……   ドシンッ!!

 

 

岩の上半分がズレ落ちた。その断面は綺麗に平らだった。そして

 

 

バキンッ!!

 

 

アセムの持っていた木剣が、柄を残して砕けた。

 

 

「今のは………」

 

 

モルデアはそれだけしか言えなかった。今の一太刀には、攻めの型5つの術理を感じさせた

 

 

「コレを6番目に加えられませんかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、奥義にしよう!」

 





Q︰何故『大師匠』と呼ばせてるのですか?

A︰モルデア「なんかカッコいいじゃん!」

Q︰何時捨て子だと教えたのですか?

A︰ベリル「いや、俺も分かんなくてさ。何時気付いたのかな?」
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