片田舎の剣聖の一番弟子   作:剣術太郎

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「先生と試合したのですか!?」

「そう、死合いした。」


免許皆伝の試験後、アセムの身体はアザや打撲やらで道場を休み、しばし休息を取っていた。

その休み明けに、正式に免許皆伝を皆に伝え、道場を出るつもりだ。

ただアセムの方はジッと休む事が出来ず、道場に来て、後輩たちの指導を手伝っていた。

その休憩中、珍しく休んでいるアセムにアリューシアが話しかけ、事の経緯を軽く説明したのだ。


「そ、それで!勝ったのですか!?」


食い気味に聞くアリューシアに、アセムはただ首を横に振る。


「そうですか……見てみたかったです。お二人の()()

「いやいや、辞めといた方が良い。今のアリューシアには色々刺激が強すぎるよ、()()()は」

「刺激って……()()ならよくしてるじゃないですか?」

「え、()()()を?」

「はい。()()を」

「「…………?」」




冒険者アセム

 

 

一ヶ月後 道場

 

 

「ようやく、ですか」

 

「あぁ、これで正式に免許皆伝。ウチを卒業だ」

 

 

怪我も充分良くなり、旅立ちの身支度を終えたアセムに、ベリルは道場へと呼び出した。

 

アセムもいよいよかと、気を引き締め、()()()()()()道場へと来た。

 

 

「ようやく、俺も餞別の剣を受け取れるんですね」

 

「あ〜、それなんだけど………」

 

 

ベリルはいつもの餞別の剣でなく、布に包まれた細長いものを手渡した。

 

餞別の剣を貰えるとばかり思っていたアセムは拍子抜けをしながらも、それを受け取る。そして、布を解くと

 

 

「え……剣?」

 

 

布に包まれたのは、一本の鞘に収められた剣だった。まぁ感触で想像はついたが、なにか違和感を感じる。

 

何故かその剣を知っているかのような。

 

とりあえず鞘から抜くと

 

 

「コレは………(ウソだろ)」

 

 

それは、この世界で初めて見たが、()()()()()()()()()()()()

 

刃が片方しかない。それは斬る動作に特化しているから。

 

反りがあるのは、斬る際に刃が斜めに入り、効率的に威力を発揮できるため。

 

その剣の名は日本刀。または、『刀』

 

 

「師匠、コレって……」

 

「実は、アセムが捨てられていた時に一緒に置いてあったんだ。見たことのない形の剣だったけど、たぶん養育費の充てか、君の御守りとしてか……なんにせよ、いつかアセムに返そうと思ってたんだ」

 

「………」

 

 

自分を捨てた人間の真意など、正直どうでもよかった。だが

 

 

「ありがたく、使わせてもらうよ師匠」

 

「うん。その剣なら、アセム考案のあの技を十全に使えると思うよ」

 

 

アセム考案と言うのは違う。

 

実は前世で見たアニメの技を、道場で習った技を応用して出来た技……なんて事は言えない。

 

 

「……ところで、コレがこの剣の()だと思うんだけど、読めなくてね」

 

 

ベリルの指さす場所、鍔元に小さな短い銘が刻まれていた。

 

 

『天翔』と

 

 

「てんしょう、ね……」

 

「え、アセム読めるのかい!?」

 

「なんとなくだよ」

 

 

アセムはそれだけ答えた。だが、ベリルはそれ以上何も聞かなかった。

 

剣士の間で都市伝説で、こういったものがある。

 

 

『持ち主が剣を選ぶので無し。剣が持ち主を選ぶ。そして相応しき主を得た時、剣は全てを捧ぐ』

 

 

この剣はアセムをずっと待っていた。ようやく持ち主の元に帰ってきたので、全てを彼に託した。そういう事だと考えたのだ。

 

 

「あとさっきからずっと気になってたんだけど、その眼帯、なに?」

 

 

道場に来たときからずっと気になっていたが、アセムの片目には、何故か眼帯がしてあった。

 

この間の試験で痛めたのかと思ったが、両目とも特に痛めたなど、今まで聞いていない。

 

なんなら今朝一緒に素振りをした時も、両目ともバッチリ開いていた。

 

 

「結局試験で師匠には勝てなかったじゃないですか。今まで以上に強くなるためには、何かしらの修行を普段からすべきと思ったんです。そこで、普段から片目だけで過ごして、動体視力や気配の探り方をもっと鍛えようと思って」

 

「なるほど……視界が狭まれば、それだけで不利になるかもだが、それを補うために自然と別の能力を高まる、というわけか……」

 

「えぇ、目標達成には、これくらい必要ですから」

 

「目標?」

 

「はい。俺は、世界一の剣士……いや、剣豪になります!師匠が諦めた剣の頂、そこに辿り着くことです!」

 

「世界一の剣豪、か……」

 

「そのためにも、まずは師匠。貴方を超えます!冒険者となって、世界を廻って、師匠よりも、もっと強く、もっと上手く、もっと綺麗な剣を得てみせますよ!」

 

「俺よりも、か……俺なんて比べるほどでもないけど……そこまで言うなら、中途半端に投げ出すことは、許さいぞ」

 

「当然です!」

 

 

それから、道場内に2人の笑い声が響いた。

 

 

その日の夜、モルデア、フレンの2人からお祝いとして、滅多に食べれないご馳走が振る舞われた。さらに、いつかアセムのためにと用意していたフード付きで、彼が好きな色である蒼に染めたコートを渡された。

 

 

「あのちっちゃかったアセムちゃんが、もうこんな大きく……うぅ……(泣)」

 

「泣くなフレン!泣いたら……儂まで……!(泣)」

 

「いや、もう一生会えないわけじゃないからね!?たまに帰ってくるよ!?」

 

「「え、帰ってくるの!?」」

 

「むしろダメなの!?ここ()()()()でしょ!?」

 

「「…………やっぱり行かないでーーー!!」」

 

 

ぎゃぁ~!?とアセムの悲鳴はモルデアとフレンの泣き声で掻き消された。

 

 

「ま、偶にで良いさ。これからはアセムの人生だ。君の好きなように生きなさい」

 

 

そして、ベリルは両親にしがみつかれているアセムに、一枚の書類を手渡す。

 

それはアセムの身分証だった。そして、名前には『アセム・ガーデナント』と記載されていた。

 

 

「これから冒険者として頑張っていくんだろ?だったら姓は必要だからね。親父がこの間正式に君を養子にしたんだ」

 

「……そっか。ありがとうございます、大師匠」

 

「うぅ……アセムよ(泣)」

 

 

 

 

 

翌朝

 

 

ガーデナント宅の玄関前で、アセムの見送りが行われていた。

 

簡易だが、背中の旅袋に荷を詰め、フレンが用意してくれたコートを着て、腰には刀と剣の二振りを下げている。

 

 

「結局、餞別の剣も受け取るとはね」

 

「やっぱり餞別の剣(コレ)を貰わないと、ここを卒業した気にならないんでね」

 

「アセム、何度も言うが負けない(死なない)事が1番だ。自分の命を第一に考えてくれ」

 

「約束は出来ません……でも、夢を叶えるまでは、絶対に負けません(死にません)

 

「……あぁ。しっかりな」

 

「はい、師匠」

 

 

そして、アセムは歩き出した。

 

その後ろ姿にまたモルデアとフレンが泣き出し、ベリルがなだめた。

 

歩きながら、ふと思いつく。

 

 

「(せっかくだし……)」

 

 

くるっと振り返り、大きな声で叫んだ。

 

 

「行って来ます!モルデア養父さん(とうさん)!フレン養母さん(かあさん)!ベリル義兄さん(にいさん)!」

 

「「っ!……いってらっしゃーい!!」」

 

 

そして、アセムは再び歩き出した。その後ろ姿が見えなくなるまで、3人は見送り続けた。

 

 

「なぁ親父」

 

「なんだ」

 

「俺にもあの技、教えてくれよ。アセムのためにも、俺はまだまだ目標で居続けないとさ」

 

「ベリル……お前も立派になったな」

 

「いまさらかよ(笑)」

 

「あと強いて言えば、はやく嫁さん連れて来い」

 

 

 

 

村の出入り口まで来たアセム。その道中、朝早いにも関わらず、村の人たちや道場の後輩たちが、アセムを見送ってくれた。

 

そして、アリューシアも

 

 

「いよいよですね」

 

「あぁ。俺は先に行く」

 

「私もすぐに追い付きますよ」

 

 

差し出された手に、アセムも手を差し出し、握手を交わす。

 

 

「じゃあな、アリューシア」

 

「お元気で、アセムくん。それと、その眼帯。意外と似合ってますよ」

 

「”意外“は余計だ」

 

 

 

 

 

レベリス王国の首都で街そのものを塀で囲っている城塞都市『バルトレーン』。歩きと途中で食料を運んでいる運送の馬車に乗せて貰い、半日近くでたどり着いた。

 

 

「えっと、冒険者ギルドはっと……」

 

 

先日届いた手紙に同封されていた地図を見ながら、目的地である冒険者ギルドへと向かった。

 

歩きながら、街の風景を見て回った。

 

流石は首都というだけあって、人で賑わっている。

 

店もたくさんあり、この世界に転生して、初めて“都会”というものを感じた。

 

 

「あ、アレか」

 

 

そうしている間に、いつの間にか目的地に着いた。その入り口には、1年以上前に卒業した兄弟子が待っていた。

 

ランドリドが道場を出てから、偶に手紙でやり取りをしていたアセム。卒業試験前に彼に自分もそろそろ道場を出ると送ったのだ。その返信に、ギルドの位置が書かれた地図と、待っているからなとあった。

 

 

「来たな、アセム」

 

「1年と少しぶりです。ランドリド兄さん」

 

「お前も無事に皆伝したんだな」

 

「最後に師匠と本気の死合いをしてもらいましたが、ぜんぜんダメでしたけどね」

 

「ハハハッ!流石のアセムでも、まだ先生には勝てなかったか!」

 

「でも、必ず追い越します。そして、世界一の剣豪になるって、誓ってきましたから!」

 

「世界一、か……(お前ならあるいは……)」

 

「ま、その前に経験値稼ぎですけどね」

 

「そうだな。立ち話もなんだし、冒険者登録をしようか」

 

「それにしても、よく今日来るって分かりましたね?日付まで書いてたっけ……?」

 

「あぁ、それは……」

 

 

これはアセムも知らないことだが、実はアセムが旅立つ前、ランドリドにベリルが手紙を送ったのだ。

 

アセムが旅立つ日付と、暫しの間で構わないから、アセムに冒険者のイロハと教えてやって欲しいというのが書かれていた。

 

故にランドリドは、アセムがバルトレーンに到着する日に、ギルドで待っていたのだ。

 

 

「……ま、兄弟子の感ってヤツかな」

 

「ふ~ん……」

 

 

あっさり流されてしまったが、とりあえず冒険者登録を優先して、この話は終わった。

 

そして待ちに待った冒険者になる瞬間を今か今かとドキドキさせてながら、ギルドへと入って行った。その際、赤髪でポニーテールの女性冒険者とすれ違った。

 

 

「(今の女性……かなり強いな……)」

 

「どうした、アセム?」

 

「いえ、なんでも………」

 

「ところで聞いていいか。その眼帯どうした?」

 

「イメチェンです!(ドヤッ)」

 

 

 

「ん……今の新顔の持っていた剣。何処かで見たような……?」

 

 

アセムが腰にさしていた片方の剣をすれ違い様に見て、何か記憶に引っ掛かりを感じた。

 

だが結局思い出せず、オーシャスランク冒険者の『スレナ・リサンドラ』は、依頼のためにギルドをあとにした。

 

 

 

 

 

 

満を持して、冒険者登録を終えたアセム。そのランクは1番下のホワイトランク

 

冒険者になったからと言って、いきなりモンスター討伐で有名に!……なんて簡単な話は無い。

 

まず初心者や若手冒険者は適時開催される熟練冒険者による講義の参加は必然。

 

受けれる依頼も限られており、簡単な薬草の採集や近辺の店の手伝い(掃除や給仕なんか)、街近辺に近づいた低ランクモンスターの討伐が主だ。

 

大抵の初心者達は面倒くさがったり、嫌がるが、アセムは文句の1つも言わない。なんなら他の冒険者たちより率先して熟した。

 

 

「師匠曰く、何事も初心は大事。面倒くさがってサボるヤツほど腕は上がらない、ランドリド兄さん曰く、これくらい熟さなければ、冒険者としても名乗れない。俺はその通りだと思ってやってるだけさ」

 

 

その姿勢が評価されたのか、冒険者になって僅か1か月半で、先輩冒険者同伴だが、遠方からの依頼を受けれるようになった。

 

内容は逸れゴブリンの群れの討伐。

 

アセムは先輩冒険者の指示と連携によりこれを達成。

 

これを期にアセムはモンスター討伐だけでなく、他の依頼を卒なく熟した。ギルドもその実績と本人の人間性を評価しランクも、ホワイトからブロンズへ。そしてシルバーになっていた。その間、僅か2年弱。

 

 

「おい、アレがアセム・ガーデナントか」

 

「超期待の若手冒険者なんだってな?」

 

「去年ぐらいに冒険者になったのにもうシルバーランクかよ!?」

 

「あのスレナ・リサンドラ以来の快挙だな……」

 

「しかもモンスター討伐だけじゃなくて、地域貢献の依頼も率先して受けてるらしいぜ」

 

「すげー!オレなんて薬草採集とかシルバーになってから受けてねぇよ」

 

「そして、片目不自由なのに強ぇときた」

 

「あのランドリドの弟って話は?」

 

「どうやらそれは違うらしいぜ。なんでも同門の出らしいけど……」

 

「ゴールドランクになったランドリドと、異例のランクアップしたアセム。アイツらが通ってた道場ってすごいのか?」

 

「さぁ?オレは聞いたことねぇな……」

 

「そういえば最近、レベリオ騎士団にも凄腕の新入りが入ったらしいぜ――――」

 

 

 

「すっかり有名人だな、アセム」

 

「出世がたまたま早かっただけですよ。先輩冒険者に比べればまだまだ……」

 

「ハハハ!お前のその謙虚さ、高ランクや冒険者歴の長さにものを言わせてるだけ奴らに分けて欲しいな(笑)」

 

「いっそ、爪の垢でも飲ませますか」

 

「ハハハ、良いなそれ!近ごろ話題になってる”隻眼のアセム“の爪の垢なら、きっと効くぞ(笑)」

 

 

バルトレーンのとある酒場。

 

 

アセムのシルバーランク昇格祝いでランドリド奢りに飲み食いしていた2人。

 

冒険者なりたての頃は、よくランドリドと組み依頼を受けていたが、ランクをあげてからソロで動くようになった。

 

パーティーで活動する冒険者と、ソロで活動する冒険者。その割合は半々だが、アセムは後者を選んだ。

 

剣の頂を目指すためには、集団で動くよりも、好きなように仕事をして、あとは鍛錬に性を入れれるからだ。

 

故にモンスター討伐だけでなく、時間に余裕がもちやすい地域貢献依頼も受けているのだ。

 

 

「ハァ〜……それにしても、なんか歯応えのあるヤツとなかなか会えない……なんかみんな師匠より弱く感じるんですよ」

 

「やっぱりそうだよな……それは俺も感じつつある」

 

「ランドリド兄さんも?」

 

「あぁ……改めてベリル先生の凄さを感じるよ」

 

「師匠……今頃何してるんですかね……?」

 

「さぁ……でも先生のことだ。きっと元気に鍛錬をしているさ」

 

「そうですよね……それじゃ」

 

 

そう言い、コップ(まだ未成年のためジュース)を持ち

 

 

「我らが師匠に」

 

 

それに答えるように、ランドリドもジョッキを持ち上げ

 

 

「ベリル先生に」

 

 

「「乾杯!」」

 

 

カンッ!と、コップとジョッキを鳴らした。

 

 

 

 

 

それから半年後

 

 

アセムの名を、更に高める事件が起きた。

 

 

 

 

 






「あ、そういえばアリューシア。レベリオ騎士団に入ったらしいです。昨日ギルドに会いに来てくれたんですよ」

「そうか!それは朗報だな!今度は3人で飲みに来るか」

「良いですね!」

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