片田舎の剣聖の一番弟子   作:剣術太郎

8 / 10

努力は好きだ。

勉強や料理、裁縫も練習すればなんでも出来た。

なにより両親が褒めてくれる。

剣術だって最初はそうだったが、ベリル先生の剣捌きを見て、前よりもっと剣の世界に引き込まれた。

でも中々先生のようにはいかなかった。

そんな時にアセムと出会った。

彼は先生に近い実力を持っていた。その指導を受け、前より身体を動かせるようになった。

おかげで先生にいっぱい褒めてもらえた。

そのことをアセムに話したら


「そこまで上達出来たのはフィッセルの努力の賜物さ。俺はちょっと手伝っただけ。けど、頑張ったなフィッセル」  


そう言って、頭を撫でて褒めてくれた。

両親や先生に褒めてくれた時とは違い、顔が少し熱くなるのを感じた。

私がその感情を知るのは、まだだいぶ先になる。





療養期間

 

 

ビデン村に帰って来て早くも1か月が経とうとしていた。

 

アセムの怪我も、左腕を除けばもうなんとも無い。

 

隣村の医者の所に適度に診てもらい、ベリルに言われた通り、後輩達と一緒になって体力付けのための走り込みをして、指導を手伝っていた。

 

後輩達も、道場の卒業生であり現役冒険者からの指導を受けられるということで、より一層気合入れて稽古に性を出した。

 

その中でも、フィッセルはアセムから熱心に指導を受けた。

 

道場内や外でも、2人の素振りする姿はあった。

 

その素振りによって、2人とも手のマメを幾つ潰したか分からない。

 

そんな2人を見て、村の人や道場の者たちは皆、口にする。

 

 

「まるでよく似た兄妹だな」

 

 

そう言う通り、2人はまるで本当の兄妹のように接した。一人っ子だったフィッセルもいつしかアセムを兄のように慕うようになった。

 

アセムの方も、口数の少ない可愛い妹を持った気分だった。

 

 

「(シスコンってこんな感じなのかな?)」

 

 

 

 

 

 

それから更に日々が経った

 

アセムが思った通り、フィッセルの理解は早く、身体もそれに付いて行ってる。

 

“才能”

 

それだけ言ってしまえば早いが、そうでは無い。

 

アセムやベリルはよく解っている。

 

 

「(努力型の天才、か……こんな田舎でも偶に居るんだよな、こんな子が)」

 

「どうしたの?顔に何か付いてる?」

 

「いや、フィッセルはスゴいなと思ってな」

 

「ベリル先生も言ってた」

 

「え?」

 

「私って、すごいの?」

 

「少なくとも、この道場の中ではスゴいさ。フィッセルの努力の量は他の誰にも負けない。その努力は、いつか必ず、君を助ける」

 

「……ホント?」

 

「いつか解るさ」

 

 

そう言いながら、フィッセルの頭をなでるアセム。

 

 

「昔からよく言うだろ、『努力は決して裏切らない』って。今こうして積み重ねた努力は絶対にフィッセルの糧になってるからさ」

 

「……そうしたら、先生やアセムの見てる景色も見える?」

 

「う〜ん……実は俺もそれを目指してるんだが、まだまだ師匠には遠く及ばないよ」

 

 

ハハハと笑うアセム。だが

 

 

「だからと言って、諦める気はさらさらないがな」

 

 

続きだ、と言い素振りを再開した。その背中を見つめながら、フィッセルもまた素振りを続けた。

 

 

 

「いや何時間素振りする気だい2人とも!?もう夕方だよ!?」

 

「「あ、師匠(先生)」」

 

 

 

 

 

「う〜〜〜ん………」

 

 

静かな森の中、刀を抜いた状態で座禅を組み物思いにふけるアセム。

 

基礎鍛錬を続けながら、アセムはモルデアとの秘密特訓していた山中でも、鍛錬を行っていた。

 

アセムが前世のアニメや漫画で参考にした2つの技。

 

 

間合いに入ったもの全てを斬り伏せる防御技『凪』

 

刀身に全てをのせた必殺の一太刀『神避』

 

 

道場で学んだ型をベースに、モルデアとの鍛錬で改良に改良を重ねて完成した2つの技。

 

今では道場の奥義として認められ、卒業生の中でモルデアが見込みのあり、かつ認められた者にだけ教える事になった。

 

帰郷してから聞いたのだが、なんとベリルも技の習得が出来たらしい。

 

つまりこれで、ベリル(目標)は更に高くなった事になる。

 

 

ならばどうするか?

 

 

もっと修練を重ねて強くなるだけだ。

 

そう思い、ベリルの目を盗んでは、ここでこっそりと鍛錬を重ねていた。

 

 

「あの2つはまさに必殺技になるからな……使うとなると初っ端か終盤辺り……使い時が限定される……もっと連続で、かつ使い時を選ばない技を考えか。そういえば、ザンアントみたいに、硬い相手にも効く技や戦い方も必要だよな……」

 

 

先日の討伐戦では、たまたま死体を盾代わりに出来たから良かった。しかし、場合によってはその方法を取れない事もあるだろう。

 

その時の為の対策も必要になる。 

 

 

「どうしたもんか……」

 

 

そもそも必殺技に頼った戦いをしなくても、道場で習った技がある。それを鍛えて十全に使いこなせれば……いや、既に出来ている。

 

と言った具合に、座禅を組んでいるのに頭の中は剣の事でいっぱいになっているアセム。

 

そこに風が流れ、草木がササ〜と音が聞こえる。

 

 

「風……揺れ……」

 

 

更にそこへ、上空を一匹の鳥が空高く舞い上がり、そのまま遠くへ飛び立ってしまった。

 

 

「………鳥……そういえば」

 

 

前世で家族が見ていて、自分も一緒になって見ていたアニメ。その敵キャラがよく名前を聞く”あの技“を使っていた。しかも、普通ではあり得ないような現象を起こして。

 

でもここは魔法がある異世界。

 

 

「出来ないかな……次元屈折現象……あと、友達が読んでたあの漫画の技とかも………よし!とりあえず、やってみよう!」

 

 

強くなる方法は1つだけではない。

 

思いつくかぎりをやれば良いのだ。

 

 

「ところで……覗き見が趣味なのか、フィッセル?」

 

 

そう言うと、林の陰からひょっこりフィッセルが顔を出した。

 

 

「最近アセムがコソコソしてるから、モルデアさんにここの場所聞いた」

 

「大師匠め……師匠には黙ってくれるのはヨシとして、それ以外に喋って良いとは言ってないけどな……」

 

「なにしてるの?」

 

「………ま、いいか」

 

 

それから、2人だけの秘密の鍛錬がここで行われた。

 

もちろん、ベリルや他の弟子達には内緒でだ。

 

 

 

 

 

時が経つのは本当にあっという間だ。

 

アセムが療養に帰って来て半年が経った。傷もほとんど完治し、もういつでも復帰可能だった。

 

ベリル達にもその事を話した。

 

モルデア達はもう少し居ても良いと言ってくれたが、アセムは首を横に振った。

 

まだやるべき事があるからだ。

 

ベリルもその事を理解しているから、アセムを支持した。

 

そして、村を出る日に

 

 

 

「(ギュウ〜……)」

 

 

フィッセルがアセムに小さい体でがっちりしがみつき、絶対に離さないと言わんばかりだった。

 

 

「あの〜フィッセル?」

 

「(プイッ)」

 

 

ベリルが話しかけようとしたが、フィッセルはそっぽを向いて、アセムから離れようとしなかった。

 

彼女の両親も、なんとか彼女を引き離そうとしたが、びくともしなかった。

 

 

「フィッセル、離してくれないか?」

 

「ヤダ」

 

 

アセムが声をかけてようやく返事をしたフィッセル。

 

この半年ですっかり懐かれてしまった。

 

 

「まだ一緒に稽古したい」

 

「別にこれで最後じゃないんだ。またいつか帰って来るさ」

 

「いつ?来週?来月?」

 

「あ〜〜………分からないけど、ちゃんと帰って来るさ。この村は俺の大事な故郷だからさ。それに、やらなきゃいけない事がある」

 

 

そう言い、彼女の頭を撫でる。すると、ようやくしがみついていた腕の力が緩んでいく。

 

 

「………分かった」

 

 

そして、ようやくアセムから離れたフィッセル。

 

 

「ありがとう」

 

 

アセムは腰を落とし、フィッセルと視線を合わせる。

 

 

「次帰って来たらいーぱい稽古したり、土産話を聞かせてあげるよ」

 

「ホント?」

 

「ホントホント」

 

「じゃあ、指切り」

 

「分かった。指切りげんまんだ」

 

 

次はいつ帰って来るか分からない。

 

だけど、夢を叶えるまでは絶対死なない(負けない)

 

だから絶対に帰って来る。

 

 

「それじゃ、行ってきます師匠」

 

「あぁ、いってらっしゃい。アセム」

 

「いってらっしゃい」

 

「行ってきます、フィッセル」

 

 

そうして、アセムはビデン村を後にした。

 

余談だが、その日から更にフィッセルは稽古に精を出した。その姿に感化され、他の弟子達もより一層稽古に気合を入れた。

 

 

 

 

 

半年ぶりに王都に帰って来て数日後、アセムはギルドマスターのニダスとの約束通り、プラチナムランク昇格試験のため、試験官役のプラチナムランク冒険者同行の元、とある迷宮(ダンジョン)への迷宮攻略(ダンジョンアタック)と赴いた。

 

この世界のダンジョンは、()()()()()()()。その一言で尽きる。

 

世界のあちこちで確認されており、ランクも存在するが、誰が、どうやって、何のために造ったのか、未だに明確な答えが出てないのだ。

 

冒険者達はそのダンジョンを攻略し、内部から貴重な鉱物や素材、お宝を回収する。

 

未攻略のダンジョンを初めて攻略した冒険者は、ダンジョンのランクによるが、国から特別ボーナスが出ることも多々ある。

 

アセムもランドリドと一緒に迷宮攻略(ダンジョンアタック)の経験はある。ただし攻略済みのダンジョンで、若手の訓練に適したランクのダンジョンだった。

 

今回の試験に選ばれたダンジョンは、西の渓谷の中、岩ヘビやロックオーガ等の頑丈が売りのモンスターが多く生息するダンジョン。

 

攻略には、最低でもゴールドランクの実力が必要。それも複数人のパーティーでだ。

 

しかし今回は、非常時以外は、アセム1人で挑む事になっている。

 

普通なら無茶だと思うが、ザンアントの特異個体の群れと女王を討ち取った彼なら十分だろう。

 

 

「今日は宜しくお願いします!」

 

「こちらこそ(思ったより若いな……)」

 

「俺たちは非常時のみ対応する。あくまで攻略はお前1人で挑むんだ(眼帯してるし、本当に大丈夫なのか?)」

 

「時間制限はないが、時間が掛かり過ぎたら減点になる注意するようにね(私たちがシルバーランクだった頃の歳で昇格なんて、とても強いようには見えないけど……)」

 

 

試験官役の冒険者パーティーは、アセムの実力に疑問を持つ者達の一部。ニダスは敢えてそう言ったメンバーを試験官にしたのだ。

 

不正を疑われないように、実際にその目で見せるべきと判断したのだ。

 

そして、彼らはその事を思い知らされる。

 

 

 

ダンジョン最深部

 

 

「ガアァァァァーーーー!!」

 

「くそ!どうなってんだよ!?」

 

「ここの最深部には、双頭の岩ヘビがいたはずだろ!?」

 

「なんで、ロックオーガキングが居るのよ!?」

 

 

ここのダンジョン最深部には、双頭の岩ヘビが毎度ボス役として居着いていた。

 

だがいつの間にか代替わりしたのだろう。ロックオーガの上位種であるロックオーガキングが待ち構えていた。

 

ロックオーガの主食は岩石。そのため全身が岩のような肌に覆われ、拳は鎧甲冑をペッチャンコにするほどの重さがある。

 

その上位種であるキングは魔力を持ち、周囲の岩石を操り、敵を追い詰め、落盤のような攻撃を繰り出す。

 

倒すには、最低でもプラチナムランクのパーティーで挑む必要がある。それでも勝てるかどうかは五分五分。

 

 

「(さすがにコレはまずい!)お前!試験は中―――」

 

 

試験官が試験中止を言おうとしたが、アセムは既に動いていた。

 

 

「ガアァァァァーーーー!!」

 

 

まっすぐ向かって来るアセムに、キングは両手を地面に叩きつけると、アセムの足元から、岩が槍のように突き出してきた。

 

 

「おっと」 

 

 

だがそれを逆に足場として利用し、岩から岩へとジャンプし、更に距離を詰める。

 

 

「ガアァァァァーーーー!!」

 

 

ならばと言わんばかりに、両腕を振り回し、周囲に岩を殴り飛ばした。

 

試験官の1人が魔法で障壁を作り、他の試験官達を護ったが、アセムの方まで魔法が届かない。

 

 

「君!私の障壁まで下がって!!」

 

「お構いなく!」

 

「「………今なんて言った?」」

 

 

アセムからの予想外の返事に一瞬ポカンとなる試験官たち。

 

そんな事つゆ知らず、飛んで来る岩をスパスパと斬りながら、キングへと走り続ける。

 

 

「おい……ここの岩って、あんなあっさり斬れたっけ……?」

 

「けっこう硬いはずよね……?」

 

「てか、もうキング目の前じゃん」

 

 

「ガアァァァァーーーー!!」

 

 

目の前まで迫るキングは、その頑丈な岩の拳をアセムに振り下ろす。だが

 

 

「図体がデカいだけで――――」

 

 

 

ドォーーーン!!

 

 

「「あ―――!」」

 

「グルル……」

 

「戦い方がなっちゃないんだよ」

 

「ガァッ!?」

 

 

潰したと思ったアセムは、いつの間にか懐まで潜り込んでいた。

 

だがそこから先どうするつもりか。キングは普通のロックオーガよりも頑丈。魔法で強化してない剣などあっさり折れてしま――――

 

 

「受けの型『岩山』」

 

 

ガンッ!と刀をキングに叩きつける。この技は本来、大剣や大斧を受け止める為の防御の技。普通の攻めの技なら刀が保たないと判断したのだろう。

 

だが、やはりと言うべきか、キングの肌には傷1つ付いていない。

 

キングもニヤリと笑う。

 

そんな事、アセムは承知の上。狙いはその先

 

 

「フンッ!」

 

 

刀を肌に当てた状態で、アセムは腕に力を集中させる。

 

 

「ガアァァァァーーーー!!」

 

 

無駄だと言いたいのか、今度こそ狙いを定めてアセムに拳を叩きつけ――――

 

 

    ドクンッ!!

 

 

「ガァッ!?」

 

 

アセムに当たる寸前で、拳が止まる。

 

 

「なんだ!?どうしたんだ!?」

 

 

試験官たちが駆け寄ろうとした瞬間、巨体はゆっくりと背中から倒れた。

 

動かないキングに、アセムは黙って額に刀を突き立てとどめを刺す。

 

 

「よし、これで攻略って事で良いですかね?」

 

「「………はい、合格です」」

 

 

 

 

その後、ギルドに今回の件を報告。想定以上だと喜んだニダスはアセムを正式にプラチナムランクに昇格。

 

倒したキングはギルドの職員たちによって回収、素材にされた。その所有権はアセムに一任された。職員から剣や鎧にするかと聞かれたが

 

 

「剣なら、この2振りあれば充分なんで。それに、義母(はは)から貰ったコレもありますから」

 

 

そう言い、腰にかけてる2振りの剣をポンポンと撫で、コートを見せた。

 

よってキングはギルドへと卸され、相場以上の買取金を受け取った。

 

 

 

その夜

 

アセムの復帰とプラチナム昇格の祝いで、ランドリドと共に酒場に来ていた。

 

 

「改めておめでとう、アセム」

 

「ありがとうございます、ランドリド兄さん」

 

 

カンッと木のコップで乾杯し、中身を一気に飲み干す。

 

やはりこう言った祝いの席での飲み物は格別だった。

 

 

「これで俺と同ランクになったな」

 

「あっという間でした。なんか逆に疑いたくなりますよ」

 

「おいおい、自分の事だろ?」

 

「ベリル師匠なら、もっと早く上のランクに上がれますよ」

 

「確かにな……だが、お前の実力も本物だ。自信を持て!」

 

 

そう言いながら、2人分のおかわりを頼むランドリド。すると、何か思い出したのか、懐から封筒を取り出す。

 

 

「お前が試験に行ってる間に、アリューシアから手紙を預かったんだ」

 

「アリューシアから?」

 

 

封筒を受け取り、じっくり見てみる。紙は上質なものを使っており、騎士団の紋章と、差出人にアリューシアの名前がある。

 

中身を取り出し、手紙の内容を黙読する。

 

一通り読み終え、店員が持ってきた飲み物をまた一気に飲み干す。

 

 

「…………どういうこと?」

 

「ど、どうしたんだ?」

 

 

アセムの様子がおかしく、ランドリドが手紙の中身を読むと

 

 

「なになに………この度アセムくんを、レベリオ騎士団の特務騎士団員に推薦し、無事了承されました。つきましては、騎士団にて任命の手続きと挨拶を………え?」

 

「なに考えてんだ………あのアリューシア(師匠バカ)は……」

 

 

 

 

 





片田舎の剣聖の第二期制作決定、ありがとうございます!
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