適正があるそうなので旧友のスタスクと制空権取りに行きます 作:D-4466
「お待たせ。」
ハルバートは杖をついてアリーナのカタパルトの先端に立った。
そのモノクルが映すのは、数メートル上空に浮かぶセシリアの姿だった。
「あら、逃げずに来ましたのね? ……でも、本当に戦うおつもり?アリーナはお茶会の会場ではなくってよ?」
茶会にでも来たのかとセシリアはハルバートの姿をからかった。
ハルバートが杖をつき、クラシックなスリーピースにロングコートという、どう見ても戦闘とは無縁の装いで立っていたからだ。
「あぁ、失礼。さっきのフリッツ同様、生憎これが僕のスーツでね。――戦う準備は万全さ。
ところで…少し取引をしないかい?」
「取引? ……ふふ、いいですわよ。」
「僕が勝ったら、君がなぜフリッツじゃなく僕に決闘を挑んだのか、その理由を教えてほしい。
あれから考えてもどうにも納得がいかなくてね。気になり出すと止まらないのが僕の悪い癖なんだ。」
「そんなことでしたの? では私からもひとつ。
私が勝ったら―――死ぬまで、永遠に私の奴隷になってもらいますわ!」
明らかに釣り合っていない取引条件…その破格の条件を前にハルバートは…
「フフフ、アーハッハッハッハ。この僕を? 奴隷に? これでもクリーヴランド公爵家の次期当主なんだけどね。」
不敵に、そして高らかに笑っていた。
来るなら来い、このクリーヴランド公爵家の長男の身体は弱いがその心は鋼のように強い、"焦らず臆さず"クリーヴラント公爵家のモットーの体現したような男である。
同年代の小娘のチンケな吹っ掛けに動じるような男ではない。
「そんなこと、百も承知ですわ!」
一方、観覧席では一夏や箒、山田先生までもがポカンと口を開けていたた。
「え、公爵って結構すごいんじゃないのか?」
「いや、イギリスのことはよく分かんねーや……てか俺も初耳だし。」
「「「お前は知っとけよ!」」」
ハルバートの身分について初耳だと言うラッキーに三人はズッコケながらも異口同音に突っ込んだ山田先生にいたっては椅子から転げ落ちそうになっていた。
さて、アリーナでは戦いが始まろうとしていた。
「いいよ。“勝てたら”だけどね。」
ハルバートは淡々とそう告げると、懐から一台の古いノキアを取り出し、空へと放り投げた。
「あははっ! さっきのスタースクリームがF22に変形したから何かと思えば……何ですのそれは!」
セシリアは腹を抱えて笑う。現れたのは、ISでも兵器でもなく、ただのヘリコプターだったのだから。
だが、ハルバートは鼻で笑い返した。
「全く……舐められたものだね。――ブラックアウト、お灸を据えてやろうか。」
次の瞬間――ヘリの外殻が音を立てて崩れ、無数のパーツが蠢き出す。
金属の軋む轟音とともに、それは巨大な人型兵器へと再構成されていった。
鉄の巨人が目を光らせ、胸部が開く。
ハルバートはその掌に乗り込み、ゆっくりと機体内部へと格納された。
一方、セシリアは自分のISより遥かに巨大なその“存在”に一瞬怯んだ。
だが、さすがは代表候補生――すぐに気を持ち直し、レーザー砲を構える。
「的が大きくて助かりますわッ! なんでも大きくすればいいというものではございませんのよ!」
高出力のレーザーがブラックアウトに直撃した。だが、ブラックアウトは一歩も動かなかった。
その巨体が放つ影は、逆にセシリアの攻撃を飲み込むかのようだった。
「ふーん、結構火力出るね、あれ、
さすがにこのまま受け続けるのはマズいか。――よし、打ち合わせ通り行くよ、ブラックアウト。」
『了解した。』
ブラックアウトの右腕のが変形し、ローターブレードが唸りを上げて回転を始める。
背部のメインローターも回り出し、左腕のガトリングが地面に火花を散らした。
瞬く間に砂塵が舞い上がり、アリーナ全体が褐色の靄に覆われる。
「煙幕のつもりでしょうけど……残念でしたわね!
ISには“ハイパーセンサー”というものがございますのよ、素人さん!」
だが、次の瞬間、セシリアの表情が凍った。
センサーが、何も映さない。いや――像が、乱れている。
「ま、まさか……ジャミング!?」
「御名答ッ!」
すでにブラックアウトは背後を取っていた。
「どうかしたか、山田先生?」
「モ、モニターにノイズが走ってるんですけど……!今までこんなこと無かったのに…」
機器の不調に戸惑う山田先生。
まさかこの現象の原因が、目の前で戦っている“それ”だとは、誰も想像していなかった。
「ISなんだから当たり前だけど……あれ、飛べたんだな。」
「私も、あれが飛べるとは思わなかったぞ。」
観覧席の一夏と箒は呑気に感心していた。
そりゃそうだ。もともとブラックアウトはロボットモードでは飛べない個体なのだから。
ウェストバーグ財団がISのパーツを組み込み、強引に飛行可能へと改造した産物――
そらを悠々と飛んでいる。
――脳と思考回路の直結。
それにより、操縦者とトランスフォーマーの思考は別々でありながらも一体化し、その反応速度にタイムラグはほとんど無いと行っていい。
ハルバートは今、ブラックアウトそのものだった。
ちなみに先ほどスタースクリームが突然機能停止したのは余りにもフリッツと同調率が高い弊害で、フリッツが気絶すると同時にスタースクリームの機能も止まってしまったのだ。
ブラックアウトはマシンガンの雨を浴びせた。
だが、セシリアは蝶が舞うようにそれを避ける。
艦載対空砲を思わせる弾幕でも、ISの機動力には追いつけない。
「あははっ! そんな攻撃、目を瞑っていても当たりませんわ!」
勝利を確信したその瞬間――背後から、衝撃。
続け様に数発のミサイルが炸裂し、セシリアは困惑した。
今の攻撃は一体どこからだ?
自分は一度もブラックアウトから目を離していないし、ブラックアウトから何かが発射された素振りもない。
混乱の中、鋼鉄の爪が彼女を捕らえた。
巨大なワイヤーが引き戻され、セシリアの機体は地面に叩きつけられる。
「今のは……!?」
砂塵で何も見えない。センサーも沈黙している。
恐怖に駆られ、セシリアはブルーティアーズを乱射した。
しかし、そこには何もいない。
そしてセシリアはここで最大の過ちを犯した。
ハルバートから目を離してしまったことだ。
爆発音がした、そして後ろから瞬い光が彼女を照らす、もう一つ太陽ができたかのように明るい。
振り返ればすぐそこに青白い稲妻の津波が迫ってきていた。
セシリアはなすすべもなくその津波に飲み込まれ、その意識はブラックアウトした。
そういえばマイケルベイがトランスフォーマーの監督に復帰するそうですね。
ベイバースのデザインとかストーリーとかめちゃくちゃ好きなので期待です。