適正があるそうなので旧友のスタスクと制空権取りに行きます 作:D-4466
キリのいいところで切ったから若干短いけどユルシテ……
街の喧騒の中をとにかく走る。
振り向けば黒服はもう追ってきていない。
馬鹿め、革靴とスーツでは碌に走れないのは分かりきったことだろうに。
「止まれぇッ!」
前から警察が走ってくる。
こんな朝っぱらから大変だなあの人らも、本当にお勤めご苦労様です。
それにしてもテーザー銃の向いちゃいけない方向がこっちに向いてるのは気の所為だろうか?
いや気の所為じゃねぇ!?
紙一重で回避行動をとり路地裏へと走りだす。
「あっコラ待て!」
「誰が待つか、韋駄天フリッツたぁ俺のことだ!あばよぉーとっつぁん!」
俺ってやっぱ天才!
ソレにしてもさすがに疲れてきたな....
アレやるか
「はぁはぁ、そ...そこのお爺さん、さっき少年がここを走って行きませんでしたか?」
「あっちだ」
フリッツを見失った警察は近くのホームレスに聞き取りをし、老人の指差した方向へ走っていった。
すると老人の隣にあった毛布の山が蠢き始める。
「ふぅ、助かったぜ爺さん!ありがとうよ、これはお礼だ。何か美味いもんでも買いな!」
「おお!ありがてぇありがてぇ。」
フリッツは老人にいくらかの金を渡してその場を後にした。
「頼むッ!出ろ出ろ出ろ!」
『はいコチラ〜「おいコラクソアニキ!これは一体どうなってんだ!」』
『フリッツ!?無事だったか!』
「無事もクソもあるか!未来の納税者にテーザーなんてもん撃ちやがって。テメェ一体何してたのんびり朝からパトカーでドーナツでも食ってやがったのか?こっちはさっきまで___」
もう空は赤色に染まり太陽がその姿を地平線に沈めようとしているとき、フリッツは公衆電話の中にいた。
相手は彼の兄である。彼の兄は警察だ。
フリッツは電話の向こうの兄に叫ぶ、先ほどまで自分を追いかけてきた警察への鬱憤を晴らすように。
「はぁはぁ...」
『気は済んだか?』
「いや全く」
『そうかい』
「おいクソアニキ」
『なんだ?』
「お前俺に償いたいとか抜かしてたよな?」
『あぁ...』
「俺をこの地獄から逃がせ。」
『分かった、今日の深夜1時に町外れの墓地に来い。それまでは頑張って逃げてくれ。』
「Danke」
受話器を掛けてからふぅ、とため息をつきフリッツはまた受話器を手に取る。
『はい、もしもし「ラッキーか!?」とってもアンラッキーだよッ!ガチャン』
あの野郎切りやがった!
もう一度電話をかける。
『なんだよしつこいなぁ、『「匿ってくれ」』とかいう願いはナシだぞ。』
「はぁ!?なんだよそりゃ、俺たち友達だろ?」
『いくらなんでも国家まで出張ってくる面倒事に頭突っ込むほど馬鹿じゃないんでね。それじゃ「待て待て待て、まだ切るな!」』
『まだなんかあんのかよ。』
「なぁに簡単なお使いさ___」
ラッキー・マイアグリムは受話器を下ろした。
正直奴の頼みは面倒くさくてたまらないが...幼馴染のよしみってヤツだ、やってやろうじゃないか。
それにしても...アイツはなぜあそこまでIS学園に行くことが嫌なのだろうか?
まぁ他人の考えが分かるほど俺は出来た人間ではない。
ラッキーはそう思い直してフリッツのお使いを果たしに行くのだった。
その夜、ミヒャエルはフォードマスタングのパトカーのボンネットに腰かけて紫煙をくゆらせていた。
月が雲を覆い隠し、周りには街灯もない暗闇をパトカーのライトがただ前方を照らすのみだった。
ガサッ
前方から枯葉を踏み締める足音が聞こえる。
足音の主が一歩、また一歩と近づくたびにライトに照らされて少しずつその姿があらわになる。
帽子を深く被り、フードまでしているためその顔はよく見えない。
しかしそれは歩みを止めた。
「どうした?」
「やっぱり罠じゃねぇかよ兄さん。」
彼を四方八方から3台のパトカー仕様のサバーバンのライトが照らしだす。
「動くな!」
彼の言う通り、ミヒャエルがここに呼び出したのは罠であった。
深夜に呼び出したのも包囲する警官の存在を悟られぬようにするためだったのだ。
「ミッヒ、さすがお前の弟だな!将来が楽しみだ。」
「フリッツ君、私達は君を悪いようにはしない。だからどうか抵抗せず、そこのパトカーに乗ってくれ。」
ミヒャエルの同僚は今まで追跡を振り切り、今回の罠にも気付いて見せた彼を褒め称える。
他の警官も彼がパトカーに乗るように促す。
バレてしまったがもはや袋のネズミである。
深夜まで続いた逃走劇もここで終わり、皆ようやく家に帰れる……そう思っていた。
「お前、フリッツじゃないだろ。」
彼が現れてから無言を貫いていたミヒャエルが唐突にそんなことを言った。
「おいおい何を言ってんだ兄さん。まさか実の弟の声も忘れちまったのか?」
「おいミッヒ、いくらなんでもそりゃ無理があるぜ。」
「そうだぞ、この前BBQしたときに俺らフリッツ君に会ってるんだ。今の声は彼のソレじゃないか。」
「先輩、さっきも言いましたけど弟さんのことを思うのならIS学園に通わせるべきなんです。」
警官達はミヒャエルが弟を想うあまりにハッタリでここから彼を逃がそうとしているのかと思った。
しかし当の弟はこうなることは知らなかったのか動揺している…そう思っていた。
だが違った。
「バレちゃあしょうがないね、まったく…このためにシークレットブーツも履いて体型まで似せたのにどーしてバレたんだか。」
「フリッツは俺のことをクソアニキって呼ぶんだ、惜しかったな…ラッキー・マイアグリム君」
「あり?そこまでバレちまってたか。」
そう言って彼がおもむろに帽子とフードを脱ぐと黒髪で刺青の入った顔が現れた。
「あっ小僧!そういやお前声真似得意だって言ってたな。」
「警部お久しぶり〜、元気してた?」
どうやらラッキーと警察は顔見知りらしい。
「あーそういえば、フリッツからこれ渡せって言われてたんだった。」
そう言ってラッキーは両脇に抱えた鞄をミヒャエルに渡す。
「何が入ってんだ?」
「開けても?」
「どうぞ〜」
ミヒャエルがカバンを開けると紙切れと見覚えのある長方形の箱が目に入る。
それと同時に香ばしくも甘ったるい匂いが鼻腔をくすぐる。
そう、箱の中身は大量のドーナツだった。
紙切れにはこう書かれていた。
『残念釣りでした(^ω^)
眠い目擦ってご苦労さん
血糖値スパイク起こしてねんねしな!』
「小僧に一杯食わされたな。」
「ドーナツもね。」
数分後、深夜の墓地にて笑い声がすると警察に通報が入ったのはまた別のお話。
さて、当のフリッツはどうなったのか?それは…
「結局捕まってたんかい…」
「まぁね…」
「Scheiße!ここから出しやがれ!!」
トランスフォーマーは次回から本格的に登場するのでお楽しみに!
え?今回トランスフォーマー出てねーだろこのグズって?
出てたじゃないですか、あの生死不明芸に定評のあるあの人が。
感想もぜひぜひよろしくお願いします