心の広い人はゆっくり読んでいってね。
突然だが諸君、輪廻転生という言葉を知っているだろうか?
知らない?
まぁそうだろうな。
何せ、オカルティズム的な概念だから信じないどころか知らなくて当然だ。
さて、輪廻転生とは一言で言えば生まれ変わること。
つまりは二度目の人生を歩むことを意味する言葉だ。
私自身が科学者だからか、この概念を知った時はもちろん信じたりはしなかった。
何だったら、何故もう一度人生を歩むのか?と疑問に思ったほどだ。
だが....あの日、あの時、憎きスパイダーマンに倒された末に命を落とした私は.........どういうわけか並行世界、パラレルワールドで暮らすガキに憑依する形で転生したことによって、私は輪廻転生というものが実際にあるのだと思った。
俺の転生先の世界は前世の世界と似ていたが、微妙に違うところがいくつかあった。
まず、この世界では個性と呼ばれるスーパーパワーが当たり前のように存在するため、個性が無い人間....無個性の人間が非常にマイノリティ的な存在であること。
その個性を持った人々はヒーローとしてこの世界観の犯罪者、ヴィランと戦って社会の平和を守っていること。
あとはヒーローが事務所に所属していたり、ヒーロー達のランキングがあったり....などなど、この世界におけるヒーローは皆の憧れであり平和のために必要不可欠な存在。
例えるなら、必要善と言ったところか。
で、そんな私が転生したガキの名前は緑谷出久。
コイツの記憶を観たところ、どうやらスーパーヒーローに憧れを抱くありふれた子供だったようだが....一つだけ、他と違う点を挙げるとするならば奴は無個性だったことだ。
そのため、無個性だと診断された際はガキどころか母親ですら自分を責めていた。
そして、個性が無いがために個性持ちの幼馴染から虐められるようになったが....このガキはその幼馴染を大切な友達として扱っていた。
奴に対してキレてもいいはずなのに、ガキは一向に怒ることはなかった。
......だからお前は虐められるんだよ。
私は彼の記憶を観てはそう思う反面、どういうわけか少しだけ羨ましい気持ちになっていた。
それはきっと、この記憶が子供の頃に周囲に愛されなかった私自身が願った光景なのかもしれない。
そう思いながら記憶を辿るうちに、私はとある記憶を発見した。
その記憶は海外での仕事から一時的に帰ってきた父親と専業主婦の母親と共にドライブに出かけたところ、ヒーローとヴィランの戦闘に巻き込まれたという運が無いにも程がある記憶で、その記憶以降の情報が全く見えなくなり....私は緑谷出久という魂がこの肉体には存在しないことを察した。
そして、彼の全ての記憶を観終わった私が重い瞼を開けた瞬間、私は緑谷出久として蘇った。
結局、両親は咄嗟の判断で一人息子である俺を庇う形で死亡。
しかし、親戚達は無個性の私を引き取ることを嫌がったことによって、私は父親の仕事仲間のアメリカ人に引き取られ、名前も緑谷出久から出久・ギュンター・オクタヴィアスへと変わった。
....出久はともかく、まさかギュンターやオクタヴィアスという名も付いてくるとはな。
それはさておき....私は出久少年に転生してからというもの、アメリカのオクタヴィアス家で暮らしつつもヒーロー・ヴィランに関する情報を集めるる傍らで、オクタヴィアス氏のサポートを受けながら前世と同じように科学者として様々な研究を行い、それを論文として纏めて発表したところ......私は将来有望な若者としてすぐさま注目された。
そして、中学三年生の頃にヒドラカンパニーという会社にスカウトされたことによって、私は中学を中退する形でヒドラカンパニーに入社した。
オクタヴィアス氏はこの決断に驚いていたがすぐに受け入れ、応援してくれた。
そんなこんなで齢15歳で一人暮らしをすることになった私だったが....ちょうどその時、ヒーローに関する情報のことで収穫があった。
その情報とは、出久少年の魂が消えることになった原因であるあの出来事が無かったことにされているという事実で、私はその事実を知った時....どこかでヒーローに憧れていたはずの出久少年の絶望する声が聞こえた。
......私はその事実を知った時、何がヒーローだと叫んだ。
ヒーローの都合の良いように情報操作するなど、ヴィランと一緒ではないか!!
出久少年の記憶を観たことによって、一方的な救われた私としてはそれは許せる事実ではなく....ただただヒーローへの怒りを募らせ、そして決意した。
二度目の人生ではヴィランにならないと決意したが、無個性であるはずの彼が傷つけられる世界ならば私は喜んでヴィランになる。
幸いなことに私の所属している会社....ヒドラカンパニーはヴィランに対してサポートを行う会社だったため、ヒーローへの失望で染まっていた私の行動を彼らがサポートしたのは言うまでもない。
「オクタヴィアスくん、君の活躍は聞いているよ!!何でも、三人のヒーローや数十人の警察官を相手に勝利したそうじゃないか!!」
前世と同じように研究室に篭り、研究を行っている私に対して興奮気味にそう言う男の名はヨハン・シュミット。
......前世ではあのアメリカのケツの敵の中に同姓同名の男が居たが、今はそんなことはどうでもいい。
彼はアメリカという大国の裏で暗躍するヴィランの一族.....シュミット家の当主で、私のヴィランとしての才能を見抜いた上でヒドラ社にスカウトした張本人だ。
「アレはただのアームの実験をしていただけ、ただそれだけです」
「なるほど....つまり、彼らは君の実験の尊い犠牲というわけだな!!」
やるじゃないか!!と言わんばかりの様子でアームを微調整する私に対してバンバンと背中を叩くシュミット社長。
そして、その目線は『謎のヴィラン、三人のヒーローを含めた尊い命を奪う!!』というテロップが出ているモニターを見つめていて
「君、すっかり人気者だな」
彼は茶化すようにそう言った。
「ところで....ここに来たのは私を茶化すためではない、ですよね?」
私がそう言うとシュミット社長はそこまで見抜くとは凄いなと呟いた後、とある写真を見せた。
その写真は顔の原型がほぼほぼ無い大柄の男だったが....その男を見た瞬間、私は彼がサノスに近い存在であることを察した。
「....社長、この男は?」
「彼の名はオール・フォー・ワン。日本におけるヴィラン達の重鎮、と言えば分かるか?」
オール・フォー・ワン....か。
確かに写真越しでも威圧感を感じるな。
例えるなら....あの男が、サノスが目の前にいるような感じだ。
オール・フォー・ワン、この男がヴィランの重鎮と言われても納得できるな。
そう思いながら、コーヒーを飲む私。
「......まさかとは思いますが、彼が私のことをスカウトしたのですが?」
私がそう言うと、シュミット社長は図星だったのか....研究所内にあるコーヒーメーカーでカップにコーヒーを入れた後、そのコーヒーを飲みながらこう言った。
「あぁ、そうだとも!!だから君には我がヒドラカンパニーの日本支店に行って欲しいんだ!!」
シュミット社長の熱意を見て、思わず引く私。
そして、そのまま社長に向けて背中を向けて作業を再開した。
いやだって、いい大人があそこまで興奮して喋っていると....な?
そんな私を見たシュミット社長はデスクの上に貰い物のお菓子を置くと、私の耳元に近づいたかと思えばこんなことを言った。
「実を言うと、オール・フォー・ワンはとっておきの秘蔵っ子用の装備を君に作って欲しいと言っていてね。もちろん、君の意見は尊重するが....どうする?」
ヴィランへの装備支援....か。
緑谷出久という少年なら、真っ先にNOと答えるだろう。
だが......だとしても私は彼が死ぬきっかけとなったこの腐った世界を壊し、作り直す。
例え、緑谷少年からヴィランだと罵られても...私は
「......いつ出発すればいい?」
私は、ドクター・オクトパスとしてこの世界を変えてみせるさ。
出久・ギュンター・オクタヴィアス
ヴィラン名:ドクター・オクトパス
個性:無し