ドクターオクトパス、爆豪の印象を悪くするように仕向ける
そして、エレクトロの転生体と思われる上鳴に対して勧誘する
ヒドラカンパニーは世界的に有名な大企業である。
そのため、たまに科学開発ラボの見学ツアー等を行なっており
「あ〜!!ヒドラカンパニーのラボ見学、マジで面白かったな〜!!」
「それな!!」
その科学開発ラボの見学ツアーに参加した雄英高校一年A組の面々は、移動中のバス内にて今もその興奮が冷めない様子でそんなことを口々に言っていた。
というのも.....ヒドラカンパニーの科学開発ラボはどの会社よりも進んだ研究開発を行うことで有名で、彼ら・彼女らの中には出久のように賞を受賞した研究者も少なくないためか、雄英生達が興奮するのも無理はなかった。
一方、興奮した様子のクラスメイト達を尻目に.....爆豪勝己という少年は不機嫌そうな顔で椅子に座りながら、窓に映る光景をジッと見つめていた。
彼が不機嫌だった理由はただ一つ。
両親を亡くした末にアメリカに行ってしまい、音沙汰無しだった幼馴染が出久・ギュンター・オクタヴィアスという名前でラボの責任者になっていたという衝撃的な事実があったからである。
最も......彼が爆豪に対して連絡しなかったのは、出久の中にいたドクターオクトパスが今まで緑谷出久に対して行ってきたイジメにも等しい行為を見て不信感を抱いていたからなのだが、当の本人はこのことを理解することも反省することもなかった。
けれども、爆豪少年の目の前に現れた出久はあの頃とは大きく変わっていた。
ヒーローの卵として勉強中の爆豪とは裏腹に、彼は研究者としての能力を開花。
その結果、出久はヒドラカンパニーのラボに就職した末に責任者という形で昇格し、日本支店のラボの見学の際に今までのお返しとばかりにディスったことによる、出久の反行に腹が立った爆豪はついうっかりあの頃のように罵倒したのだ。
「.....クソッ!!」
ただ、彼にとっての誤算は出久が社会的に高い地位にいることとあっという間にA組の心を掴んでいたことで
「オクタヴィアスさん.....ひょっとして、爆豪くんに虐められていたんじゃないかしら?」
「それ思った!!」
自らの行いと出久のちょっとした一言によって、今の爆豪は少しだけ孤立に近い状態になっていた。
それと同時に、爆豪は出久に対して違和感を抱いていて.....その違和感が何なのかが分からないため、余計にイラついていた。
そんな爆豪を尻目に、一人の生徒が見学ツアーのとある出来事から続いている頭痛に悩まされていた。
「大丈夫?」
「大丈夫.....じゃねぇ」
「だよね」
彼の名前は上鳴電気。
帯電という電気系の個性を持つ生徒で、一言で言えばムードメーカーのような生徒であった。
彼は、見学先のラボの責任者.....出久から小声でエレクトロという謎の名前を呼ばれた末に、連絡先の書かれたメモをもらったのに加えて、彼からの接触の後に頭痛が起こっていたので、何故自分のことをエレクトロと呼ぶのだろう?と思いながら、頭痛に苦しんでいた。
ただ、その頭痛は普通の頭痛とは違う特殊な頭痛なのだが.........当の本人はそのことに気づくことなく、頭痛が原因でグロッキーな顔になっていた。
(にしても.....オクタヴィアスさん、何で俺のことをエレクトロって呼ぶんだろう?確かに俺の個性は電気系だけど......アレ?)
「オクタヴィアスさんって.....俺の個性のことを知っていったっけ?」
電気がそう呟いた瞬間、頭痛と共に脳内に流れたのは.....アメリカの大都市で暴れる電気系の能力のヴィランと複数のアームを操るヴィランの映像で、その映像を見た電気は自身と同じ能力を持っているヴィランが自身の前世であることに気づき、冷や汗を流した。
─もしかすると、オクタヴィアスさんはドクターオクトパスの転生した姿なのか?
激しい頭痛の中、脳内で情報を整理しながらその結論に至る電気。
ただし、その結論はヒーローを目指していた電気にとっては不都合以外の何でもなかったが.....結局、電気自身がヒーローを目指すと決めていたことによって、この記憶は誰にも言うことなく心のうちに留めておくことにした。
例え、自分の前世がヴィランだったとしても自分はヒーローになる。
その決意を胸に彼はヒーローになる覚悟を改めて決めるが.....彼は知らなかった。
その決意がとある事件を機に粉々になってしまっただけではなく、やがてヴィランにならないと決めたはずの自分自身が再びエレクトロを名乗り、ヴィランとして活動を始めることを。
「というわけで、エレクトロの転生体と思われる人物が雄英にいることが判明したわけだ」
「マジかよ!?」
雄英高校への帰路に就いている雄英生達を尻目に、ラボ内にてエレクトロの転生を報告する出久とそれに驚く瑛人。
二人にとって、エレクトロはシニスターシックスの仲間でありスパイダーマンとの戦いにおける最強の味方だと認知していて、彼ら的にも仲間に入れておいて損はない人物なのだが....出久は彼がまだ記憶を取り戻していないことを瑛人に伝えた後、エレクトロの転生体である彼を....電気を無理矢理という形で自分達の仲間にするよりかは、電気自身の意思に任せてみないか?という意見を聞いた瑛人は、確かになと呟くとラボ内の自販機で売られていたコーンスープ缶を一口飲んだ。
「しっかし.....雄英の奴らもバカだよな。せっかく社会見学に来たかと思ったら、その会社が裏でヴィランで繋がってる会社な上に責任者は今話題のアーム男だし」
「アーム男はやめろ」
そんな会話をした後、テレビを点ける出久。
そのテレビには凶悪なヴィランが脱走したというニュースが流れていて、それを見た二人は一言
「この世界でもヴィランが刑務所から脱走するのか.......」
「まぁ、俺らは刑務所から脱走する側だったもんな」
そう言った後、昔を思い出したのか......ケラケラと笑い始めた。
その顔にはヴィランとしての笑顔が映っていて、懐かしそうな雰囲気を出していた。
「けどまぁ.....これで犠牲者が出たら、きっと市民は警察やヒーローを叩くだろうなぁ」
ニュース映像が映っているテレビを見つめながら、瑛人がそう言うと.....出久はニッと笑ったかと思えば、コーヒーマシンでマグカップにコーヒーを入れながらこう言った。
「いつの時代もどこの世界も、ヒーローを倒すのは無知で無力な一般市民だったと相場が決まっているから当然だろう?」
出久が発した言葉には、前世の頃に一般市民に追い詰められるヒーローの姿を見てきた影響なのか、妙に重さがあり.....それを聞いた瑛人もまた納得していた。
ちょうどその時、出久の携帯に電話が掛かってきたのでその電話に出ると
『やぁ、元気そうだね』
その電話の主がお得意様であるオール・フォー・ワンだったため、彼の口角は自然と上がっていた。
「おや、オール・フォー・ワンではありませんか。どういうご用件ですか?」
『そうだね.....一言で言えば、義爛の見つけてきた子に装備を作って欲しいんだ』
オール・フォー・ワンの言葉を聞き、仕事だと察したのか.....仕事モードになりつつもニッと笑う出久。
それを見た瑛人は電話の相手がオール・フォー・ワンだと察したのか、とりあえずテレビの音を消したのだった。
「なるほど、あの義爛さんが見つけたってっことは......その人は相当強いのですか?」
『あぁ、そうとも。ただ』
「ただ?」
『彼は数年前に僕の息がかかった施設から逃げていてね。最近ようやく連合に入ることを決意したみたいなんだよ』
出久に対し、いつものように愉快な声でそう言うオール・フォー・ワン。
その言葉を聞いた出久は面白そうだなという顔になった後、その人物の特徴をメモしようと思ったのか、メモ用紙を取りにいきながらこう言った。
「ちなみに彼の個性は?」
『【蒼炎】、つまりは炎系の個性さ」
「炎.......」
炎という言葉を聞いたからか、緑谷出久とその両親を殺したエンデヴァーのことを思い出してピクッと反応する出久。
もしかすると、義爛の見つけた人物の正体が分かったかもしれない。
そう思いつつも彼の脳裏にまさかという感情が出てきた後、これ以上ないぐらいに口角をニヤリと上げながら、オール・フォー・ワンにこう尋ねた。
「ということはアレですか?彼の息子ですか?」
出久の質問に対し、オール・フォー・ワンもまた笑うかのような声でこう言った。
『あぁ、君のお察しの通り.....彼はあの男、エンデヴァーの息子さ』
その言葉を聞いた瞬間、出久はメモ用紙を落とすと
「それじゃあ、エンデヴァーよりも素晴らしい装備を作らないといけませんね」
歪んだ笑みを浮かべながら、そう言った。
かくして.....雄英生がラボを後にしたのを尻目に、ヴィラン達は次なる準備を始めるのだった。
とりあえず、電気くんはアメージングスパイダーマン2みたいに心をバッキバキに追った後に闇堕ちさせる予定。
だって作者は曇らせ大好き人間だもの。