ドクターオクトパス、荼毘と出会う。
ついでに言えば気が合っちゃったらしい。
超人血清。
その名の通り、肉体に投与すれば超人的な力を.....それこそオールマイトのような力を得ることが出来る魔法のような薬だ。
だが、どんなモノにも欠点があるように超人血清にも欠点がある。
そう......善と悪のどちらの心に偏っているかによっては善人はより善人となる反面、悪人はより悪人へと化すという欠点が。
故に善寄りの性格だったキャプテンアメリカは正義の味方となり、悪寄りの性格だったレッドスカルは巨悪となった。
それがこの超人血清の欠点なのだ。
そして、どうやらこの超人血清はヒドラカンパニーの本社にある科学開発ラボにて、私が元々所属していたラボで開発されたらしいので社長に直接掛け合った結果、面白そうという理由ですぐさま送ってくれた。
「というわけで、これがその血清.....超人血清です」
そういうわけで.....ラボにて、荼毘に超人血清を投与する準備をしながらそう言う私。
当の荼毘本人は私の説明を寝そべっている台の上で聞いた後、興味津々な様子になっていた。
そりゃそうだ。
何しろ、この血清は代償は大きいけれどもとても魅力的なお薬だからな。
ただ、問題は超人血清によって彼の肉体に何かしらの異常が起きるかどうか。
と言うのも、超人血清を使用した実験はあくまでマウスを使用した実験。
つまりは人間に使用した場合、どうなるのかがまだ分かっていない状態なのだ。
だが......だからこそ、科学者としての興味がより一層強くなるのだがな。
「ブチ込むだけで強くなる薬....ねぇ。そいつは面白そうだなぁ」
「えぇ、あなたの場合ですと精神が悪の方向に増長される可能性が大になるのですが....よろしいですか?」
私がそう言うと、もちろんだと言わんばかりの笑顔になる荼毘。
どうやら、彼は副作用込み超人血清を投与する覚悟が決まったようだ。
.....そうではなくては、ヴィランとして成り立たないからな。
そう思いながら、血清を投与する準備を行う私。
一方、その光景を見ていた死柄木弔と禿鷲くんは
「.....お薬を投与するだけなのにあんな機械を使うのか?」
「文句を言うならアイツじゃなくてヒドラカンパニーに言えよ」
口々にそんなことを言っていた。
まぁ、この実験において彼らは観客だからな。
「.....なぁ」
「ん?何ですか?」
「アンタ、どうしてそこまで狂っちまったんだ?」
どうしてそこまで狂った、か。
元々、前世の頃に狂っていたこともあったが......やはり、私的にはこの世界への絶望と怒り、悲しみがそうさせたのかもしれないな。
それに私の狂った原因の一つを知れば、彼はより一層協力的になる可能性も高い。
そう思った私は彼に向けてこう言った。
「両親が死んだあの時、表向きは交通事故だと処理されていますが........実際は君の父親、エンデヴァーとヴィランとの戦闘に巻き込まれて死んだんですよ」
私がそう言うと....禿鷲くんと死柄木弔はマジで?という顔になり、荼毘自身は口角を上げたかと思えば、狂ったように笑い始めた。
恐らく、自分が執着している対象であるエンデヴァーが私という狂ったヴィランを生み出したのだから、そうなるのも無理はないな。
やれやれ、エンデヴァーは本当に罪深いヒーローだよ。
その所業を世間が知れば、間違いなくバッシングされるのは間違いないだろうね。
......だからお前はNo.2のポジションのままなんだよ。
「さてと、ではそろそろ始めますね」
「おぅ」
そんな会話をした後.....かつてスティーブ・ロジャースがキャプテンアメリカになったように、大きな機械を使って荼毘に血清を流し込む私。
その瞬間、機械の内部は徐々に輝き始めたかと思えば、徐々にその光は収まっていった。
「......死んだのか?」
「さぁ?」
禿鷲くんとそんな軽口を交わすと、すぐさま機械内に居る荼毘を解放する私。
一方、機械の中にいた荼毘はというと.....血清を打たれる前よりも少しだけ筋肉がついていて、彼は一息吸うと一言
「空気がすっごく美味い.......」
ニヤリと笑いながら、そう言った。
この様子だと、実験は成功したらしい。
ついでに言えば、髪も伸びていたがな。
「生まれ変わった気分はどうですか?」
「あぁ、ザ・爽快だぜ!!」
そう言った後、その場でクルクルと回る荼毘。
その姿はまるで悪魔が封印が解かれたような雰囲気で、それを見た私もまたニヤリと笑った。
どんな形であれ、超人血清の実験は成功だな。
「あ、そうだ。試しに炎を出してみたらどうですか?」
私がそう言うと、それもそうだなという顔になる荼毘。
そして私の言葉通り、炎を出してみると.....その炎は大きく激しく燃えていて、明らかに強化前よりかは変わっていることが明白だった。
その炎を見た荼毘はニヤリと笑っていて、ケラケラと笑い始めた。
「スッゲェ......スッゲェよこれ!!前よりかは熱くないし、この様子だと炎も強化されてるし.....これガチでヤベェよ!!」
まるで子供のようにそう喜びつつ、再びグルグルと回りながら笑う荼毘。
その顔には純粋な子供の皮を被った狂気の笑顔が映っていて、私は超人血清の副作用もちゃんと出ていることを確認するのだった。
......彼の反応を見て、分かったことが一つある。
この世界において、超人血清は肉体の強化だけではなく個性ですら強化する危険な代物。
けれども、危険だからこそ我々はこの薬を使用するのだがな。
「それなら良かった」
荼毘に向けてニコッと笑いながら、そう言う私。
その荼毘の姿を見た死柄木弔は、彼が強化される光景をこの目で見たからなのか......静観しているふりをしつつも興奮した様子でこう言った。
「.....超人血清ってヤベェな」
「えぇ、ですがその分貴重なんですよ」
そう言った後、机に置いてあった缶コーヒーを手に取るとそれを飲む私。
何はともあれ、これで荼毘の強化は成功した。
これは私の上司であるシュミット社長、そしてオール・フォー・ワンにとっては有益な情報であることに違いない。
それに.....彼は我々にとって、対エンデヴァー用の切り札になるかもしれない存在。
ならば、私は彼のことを死柄木弔同様に全力でサポートしなければ。
そう思いつつ、私はまるでダンスを踊るかのようにステップを踏む荼毘を見つめていると.....消し忘れていたテレビからとあるニュースが流れてきた。
そのニュースは雄英高校の入口が何者かによって破壊されたことによって、マスゴミ共が一斉に内部に侵入したというメディアの恥と言っても過言ではないニュースで、それを見た私・禿鷲くん・荼毘は一斉に死柄木弔の方を向いた。
......死柄木弔、お前そんなことをしていたのか。
「......何だよ?」
「いや、そういうことをするのなら私も参加したいと思っていたのだが......」
私がそう言うと、意外だなという顔になる死柄木弔。
.....私とてヴィランだ。
襲撃したくもなるだろう?
そう主張するような顔になると、死柄木弔は何となく私の言いたいことを察したのか.....こう言った。
「そうか、じゃあ今度の雄英の襲撃には来るんだよな?」
「えぇ、そのつもりですよ」
私のその言葉を聞いた瞬間、ニヤッと笑う死柄木弔。
その顔にはオールマイトに一泡吹かせるぞという意思が表れていて、それを見た私が彼と同じようにニヤッと笑ったのは言うまでもない。
なお、そんな私を見た禿鷲くんは相変わらず悪趣味な笑顔をしているなぁ.....と引いていたのに対し、荼毘は何で自分も連れて行かなかったんだ!!とプンプンした様子で怒っていた。
君、さては結構殺る気満々だな?
と、私がそう思っていたのを尻目に......荼毘は何かを思いついたのか、台の上から降りるとスタスタとどこかへ歩き始めた。
「.......どこに行くんですか?」
「どのぐらい強くなったのかをちょっと試しに行くだけだ」
なるほど、今の自分の実力の確認......か。
確かに今のお前ならやりかねないな。
それに......この様子だと、どこかの街で無差別殺人を今にも起こしそうな勢いであることには間違いない。
だが、かといって私は止めはしない。
何故止めないのかって?
......こんなにも嬉しそうな顔をしている奴を止めるなんて、酷いにも程があるじゃないか。
私はこれでも、良心な方の科学者なのでね。
「そうですか......では、そのついでにドーナツでも買ってきてくれませんか?」
「......俺をパシリに使うのか?」
何で?言わんばかりの顔になる荼毘に対し、私はニコニコ笑いながらこう言った。
「いえ....ただ」
「ただ?」
「どうせ虐殺をしに街に行くのなら、街に行く大義名分を作らないといけませんからね」
その言葉を聞いた荼毘はニチャアと笑うと
「余計なお世話、どうもありがとうなぁ!!」
狂ったような笑みを浮かべながらそう言った後、そのままラボを後にした。
「虐殺.......」
「おや、あなたも行きたかったのですか?」
「......別に」
「こんの恥ずかしがり屋め!!」
あぁ、そうだ。
念のために彼専用の装備も作っておかないとな。
荼毘、超人血清の力によってめちゃくちゃ強くなるってよ。
それに加えて、性格も悪い方に進化しちゃったってよ。
まさに絶望ってやつだぁ。