2041年、南米バルベルデ某所…
二人の男女がジャングルを駆けていた。
服はもうボロボロであり、疲労困憊の状態である。
少年の手にはアサルトライフルが握られており、追ってくる敵に対し引き金を引き発砲する。
やがて敵に命中するが、触手みたいなものに阻まれる。
その時、月明かりが敵の姿を照らす。
それは頭部に複数の赤い目、10本以上の機械の触手を持つ異様な機械。
それが複数存在する。
突如として基地を強襲し、基地にいた戦闘員は短時間で蹂躙され全滅。
捕虜兼少年兵となっていた少年と少女はこの襲撃に乗じて逃げ出したものの、それに気づいた機械が数機追ってきたのだ。
なんとか逃げてきたものの、依然として奴らは追ってくる。
既に疲労困憊であり、このままでは二人とも殺されかねない。
「レイ兄…」
少女は泣き出しそうに少年を見つめる。
それを見た少年はアサルトライフルを強く握り、覚悟を決める。
「クリス、俺が奴らを惹きつける。お前はその隙に出来る限り遠くへ逃げろ。」
「えっ…⁉︎」
少女は驚く。
その作戦では少女は助かるかもしれないが、囮となった少年は生きて帰る可能性が低い。
「それじゃあレイ兄は!」
「このままじゃ俺達はあのタコ野郎に殺される!俺が囮になるからお前は俺に構わず逃げろ!」
少年の非情ともいえる決断に少女は泣きじゃくる。
「嫌だ…!嫌だよ…!パパとママに続いてレイ兄も失うなんて……そんなの耐えられないよぉ………‼︎」
「甘ったれるな‼︎お前は俺達の分まで生きて父さんと母さんの夢を叶えろ‼︎」
そう言うと少年は機械に向けて何かを投げ、少女を反対方向に突き飛ばす。
次の瞬間、激しい閃光により機械のセンサーが一時的に麻痺する。
突き飛ばされた少女は転がり落ち、閃光を免れる。
やがて上を見上げると少年はアサルトライフルを連射し、敵を惹きつける。
「こっちだ、タコ野郎‼︎」
それに釣られるように機械は少年を追いかける。
思わず少女は叫ぶ。
「ま、待ってレイ兄‼︎レイ…!」
少女は固まる。
先程の機械がこちらを見ている。
あまりにも異様な見た目に恐怖を覚えた少女は逃げ出した。
《…ターゲットβ逃走中。シカシ、生存率ハ低イ為、ターゲットαノ捕獲ヲ優先スル。》
機械は少女を一瞥すると少年を追いかける。
機械を惹きつけた少年はアサルトライフルを撃ちまくり、やがて弾切れになると持っていた拳銃で応戦する。
しかし、遂に拳銃を弾切れになり触手の一振りによって大きく吹き飛ばされ木に激突する。
「がっ…クソッ……‼︎」
少年はダメージを負い、とてもじゃないが動ける状態じゃない。
その間に機械はどんどん少年の周りに群がる。
(父さん、母さん、ごめん…俺もそっちに行くよ………クリス、俺達の分まで生きてくれ………)
そう思い、少年は意識を手放す。
機械は少年を殺さず、触手で持ち上げて運び出した。
少女は一度振り返るものの、涙を流しながらがむしゃらに走り続けた。
それから三日間少女…
その一ヶ月後日本に帰国する事が出来たが、その直後行方不明になる………
「…ん?」
少年…
目を開けるとそこは病院の手術室…否、手術室にしては異様に暗く周囲には様々な機械が並べられていた。
さらに両腕や両足、胴体までもが金具の様なもので固定されており、身動きが取れない。
「何だ、ここは…⁉︎」
異様な光景に困惑していると、人の気配を感じ首を向ける。
そこにいたのは、黒いスーツを身に纏い頭部には髑髏を模した仮面を付けた男性…
異様な光景に続き異様な人物に戦慄していると、男が声を掛ける。
「おはよう、雪音レイジ。」
「誰だ…お前?」
「私はケイオスの
男はそう自己紹介をするが、レイジは何のことかさっぱり分からない。
「ケイオス…?」
「…我が組織について話す前に、少し雑談をしよう。雪音レイジ、君は南米バルベルデにて少年兵をやってたようだな。」
「……!」
「両親は南米バルベルデにおけるNGO活動の最中に内戦に巻き込まれて死亡。そのまま現地武装組織に捕まり、共に捕まった妹…雪音クリスの身柄保護を条件に少年兵として6年間戦いに身を投じた………そして2041年、我がケイオスの最新兵器【センチネル】数機の強襲により武装組織は壊滅、その隙に妹と共に脱出するがセンチネルの追跡に遭い、君は妹を逃すため囮となりセンチネル相手に数十分は粘るものの力尽き、ケイオスに捕獲された………」
ハデスは懇切丁寧にレイジの経歴を説明する。
その中に聞き捨てならない単語があった。
「ケイオスの…最新兵器だと⁉︎」
「そうだ、対ゲリラ用に開発された多脚無人機【センチネル】。15本の機械触手と電磁推進ホバーシステムによりありとあらゆる環境に適応し、多数の複合センサーで隠れ潜むゲリラを見つけ抹殺する
「……………」
「驚いたかね?センチネルの他にも我々は戦争・紛争を通じて最新兵器の開発・テストを行いその実績を元に各国に兵器を売り付ける。所謂武器商人としての一面を持つが、我々はただの武器商人では無い………ケイオスは人類の進化を促すという目的がある。」
「進化を、促す…?」
「人類の歴史とは戦いの歴史…時代と共に戦争はその形を変えてきた。人と人が陣形を組んでぶつかり合う時代、巨砲を積んだ軍艦が海を制する時代、航空機が軍艦に変わり戦場の主役となった時代、そして広島・長崎に投下された原子爆弾…遂に人類は自らの手で地球を滅せる終末兵器をもって互いを牽制し合う時代に突入した。人類は戦いを通じて文明を発展させてきた。だが、核兵器を実践投入したことにより人類は自らの愚行によって滅亡しかねない状態になってしまった。そこで人類が滅亡しないよう戦争を通じて世界を支配、人類の進化を管理してきた。」
「何を、言ってんだ…⁉︎」
「戦争をデザインし、操り、支配する…そこから得た富と知見を元に人類を次のステージへと進める……それが我々、ケイオスだ。」
「戦争をデザイン?人類を次のステージに?正気か?」
「正気だ。現に長年の研究の末、遂に人類の進化系を生み出すに至った。それがextra humankind…
ハデスは自信満々に語る。
「エクス…カインド……?」
「君は先史文明というのを知っているか?今ある文明とは比べ物にならない程発達した文明…2030年に国連が特異災害に認定したノイズも先史文明期に造られた兵器だ。我々は先史文明の遺産…聖遺物を発掘・回収し研究、そこから得た技術で新たな兵器を生み出した。そして遂に我々の手で聖遺物を生み出す事が出来た。それがナノマシン型人造聖遺物ケイオスマシン。人間に投与し適合すれば世界各地の神話の神・精霊・生物・英雄の名と力を宿す、まさに神産みの聖遺物だ。」
レイジは何を言ってるのか理解出来ず、ハデスが狂ってるとしか思えない。
混乱するレイジをよそにハデスは話を続ける。
「さてレイジ君。進化した人類を生み出した我々が次に向かう
「…狂ってやがる!」
「…まあいい、君もいずれ進化したことを誇りに思うだろう。そして君に投与するのはケイオスマシンの他にもう一つある。」
ハデスがそう言った瞬間、ある容器がレイジの目の前に現れる。
それは培養液みたいなものに満たされた何かの欠片だった。
「北欧神話における神々の最終戦争【ラグナロク】…その最終戦争に参戦した灼熱の国【ムスペルヘイム】より来たりし炎の巨人【スルト】…そのスルトが持っていた剣で敵対した神【フレイ】を殺し、その一振りで世界を焼き尽くした伝説の魔剣…そして今、ここにあるのが欧州の遺跡から発掘した聖遺物…
「レーヴァテイン…!」
「ケイオスマシンは聖遺物と融合することにより、絶大な力を発揮する。それに比例して適合率が下がるが、君は高い確率でレーヴァテインに適合する素晴らしい逸材だ…!」
次の瞬間、周りの機械類やアームが動き出し、酸素マスクみたいなものが展開される。
レイジはこの後何をされるかを悟ってしまう。
「や、やめろ!俺はそんなものになりたくねぇ!生きてクリスに会うんだ!」
「次に目覚めた時、君はもう
「やめろおおおおおっ‼︎」
レイジの抵抗も虚しく口元に酸素マスクが付けられ彼は意識を失う………
雪音レイジはどうなってしまうのか…
乞うご期待ください。
※尚、この世界ではスルトが所持していた炎の魔剣=レーヴァテインということにします。