燼滅絶唱シンフォギア   作:あーくこさいん

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第1話 混沌(ケイオス)からの脱出(前編)

「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」

 

雪音レイジは暗闇を彷徨っていた。

いつから彷徨っているか分からない…

 

もう随分暗闇を彷徨っているが、一向に出口は見つからない。

それでも彼は出口を求めて走り続けるが、突如として炎が上がる。

 

「うわぁ⁉︎」

 

彼は慌てて避けるが、辺りを見渡すと暗闇から火の海へと変わっていた。

 

「何だ、ここ…?」

 

異様な光景に混乱するレイジだが、目の前に立つ存在に彼は驚愕する。

それはレイジの何倍の背丈を要する巨人であり、身体の所々が燃えていた。

そして右手には炎の如く紅い大剣を持っている。

 

その巨人はこちらを見ると剣を構える。

そして剣を一振りすると、炎が噴き上がり業火がレイジに迫る。

 

「うわぁぁぁぁ‼︎」

 

迫り来る業火に対し、彼はなす術もなく焼かれてしまった………

 

 

 

 

 

「………ハッ⁉︎」

 

その瞬間、彼は目を覚ます。

目を覚ますと、そこは先程の異様に暗い手術室であった。

身体は拘束具で固定されており、身動きが取れない。

 

先程の光景にレイジが混乱していると、彼の脳内から声が響く。

 

聞こえるかね、雪音レイジ君。

 

「なッ⁉︎脳内に声が…⁉︎」

 

『今、脳内光量子通信端末にて話している。脳内から直接話している感覚になるのは無理はない。』

 

「誰だよ、アンタ⁉︎」

 

『私の名はエピメテウス。君と同じ超人類(エクスカインド)だ。』

 

脳内から聞こえてくる声に困惑するレイジだが、そんな事お構いなしにエピメテウスは話す。

 

『さて、レイジ君。君がハデスに眠らされてから一ヶ月の月日が流れた。』

 

「一ヶ月も⁉︎」

 

『ああ、その間に人造聖遺物【ケイオスマシン】を投与し適合に成功、そして聖遺物【レーヴァテイン】の移植を行い、ケイオスマシンとの融合が完了した。』

 

「それって…!」

 

『そうだ。君はもうただの人間ではない。超人類(エクスカインド)【スルト】になったのだ。』

 

エピメテウスから告げられた衝撃の事実に、彼はショックを受ける。

 

『…信じられないのも無理はない。試しに拘束具を引きちぎってみろ。』

 

彼に言われ、レイジは右腕に力を込める。

すると前はびくともしなかった金具がバキンッと音を立て、勢いよく外れた。

次は左腕に力を込め、先程と同じように金具を外す。

そして両脚にも力を込めたら、両足を固定していた金具が外れた。

最後に胴体を固定している金具を両手で掴み、力を込めて外した。

これにより彼は自由になる。

 

「嘘、だろ…?」

 

彼は驚愕する。

いくら自分が少年兵でも、素手で金具を破壊する程力は強くは無い。

何より身体から異様に湧き上がってくる膨大な力の感覚に、彼は嫌でも自分が人外になってしまったのだと痛感する。

 

『それが証拠だ。超人類(エクスカインド)になった事により、身体機能・反射神経・空間認識能力などが人間とは一線を画す程強化されている。』

 

「そんな…!」

 

『残念だが、ここまではハデスの…ケイオスのシナリオ通りだ。だが、ここからは違う。』

 

「どういう事だ?」

 

『このままでは君はマインドコントロールにより精神を徹底的に書き換えられ、ケイオスの一部となるだろう。だが、私が介入した事によりひとまず危機は去った。あとは君次第だ。このままケイオスの操り人形になるか、自由を得るかは…』

 

「でも、どうすれば…?」

 

『部屋の中にドレッサーがある筈だ。そこに装備が一式入っている。それを使え。』

 

エピメテウスの指示に従い、部屋を散策するとドレッサーらしき家具を発見する。

中を開けると戦闘服一式と黒一色のトレンチコート、二丁拳銃が備わっていた。

彼は試しに戦闘服を着る。

 

「おお…身体に丁度良くフィットする!」

 

彼が着た服は彼の身体に自動的にフィットする仕組みである。

服を着終わると、トレンチコートを羽織った。

 

『そのトレンチコートと戦闘服は量子を織り込んだ特殊繊維で出来ている。軽量ながら銃弾は勿論のこと砲弾や爆発物、さらにはレーザーの類を防ぐ事が出来る代物だ。』

 

トレンチコートを羽織ったレイジは続いて、隣に置いてある二丁拳銃を手に取る。

 

『それは二丁拳銃型アームドウェポン【ムスペルヘイム】だ。拳銃としても使える他、形状可変機能により重機関銃や対物ライフル、ミサイルランチャーなど様々な銃火器に変形する。使い方は追々説明するから、まずは部屋を出ろ。』

 

二丁拳銃を装備して部屋の扉を慎重に開けると、左右には薄暗い廊下が続いていた。

 

『部屋を出て左の方へ行け。』

 

エピメテウスに言われるがまま、左の廊下を進む。

しばらく進んでいると何かの気配がしたので、彼は急いで隠れた。

すると球体状の機械が浮かびながら、こちらに近づいてくる。

センサーを光らして、周囲を索敵しているようだ。

 

『…哨戒ドローンだ。まだこちらに気付いていない。このままやり過ごせ。』

 

彼は言われた通りに身を屈め、息を潜める。

ドローンは彼の目の前を通過していき、そのまま向こうに行った。

 

「…行ったな。」

 

『そのようだ。そのまま進み次の角を右に曲がれ。』

 

彼は廊下を進み、右に曲がった。

そのまま進んでいると、警報と共にアナウンスが鳴り響く。

 

『基地内にいる全部隊に通達!被検体Sが脱走したとの事!全部隊は直ちに警戒体制を取れ!繰り返す!被検体Sが脱走!直ちに警戒体制を取れ!』

 

『…どうやらバレたようだな。やむを得ん、こうなれば強行突破だ。』

 

「…了解!」

 

レイジは二丁拳銃【ムスペルヘイム】を取り出して走り出す。

しばらくすると前方から哨戒ドローンが複数現れ、機体両側から機関銃が迫り出し発砲する。

彼はムスペルヘイムを構え、ドローンに向け発砲する。

ムスペルヘイムは拳銃モードでも口径が15mmと大きい為、通常の拳銃とは一線を画す程の威力を誇り、命中したドローンは爆発四散する。

ドローンの機関銃も数発レイジに命中したが、トレンチコートのお陰で傷一つなく済んだ。

また、少年兵時代から培った射撃センスにより次々とドローンに命中し、突破していった。

 

そのままドローンを全て撃破していき、エピメテウスの誘導に従って走り続けた。

途中ドローンの襲撃があったが難なく切り抜け、もう間も無く脱出するだろう………その時だった。

 

「大分走ったが、まだ着かないんか?エピメテウスさんよ?」

 

『大丈夫だ、もうすぐ……待て、前方に大きな熱源反応……ッ!まずい、避けろ!』

 

「何……ッ⁉︎」

 

エピメテウスの警告通り、前方から高出力の光…レーザーが飛んできた。

レイジは咄嗟に腕をクロスしてガードする事によってレーザーを防ぐが、続け様に放たれたマイクロミサイルにより大きく吹っ飛ばされる。

 

「うわああああああッ⁉︎」

 

彼は素早く受け身をとり、体勢を立て直す。

すると前方から何かが現れた。

 

それは銀色のボディに怪物のような顔、口からレーザーモジュールを、両肩からマイクロミサイルを放つランチャーを備え、何より胴体に対して異様に長い腕を持つ戦闘兵器……

 

『あれは…【バンダースナッチ】!ケイオスが開発した最新式の人型戦闘兵器だ!超人類(エクスカインド)に匹敵するスペックを持っている、気を付けろ!』

 

「何ッ⁉︎」

 

彼が驚くのも束の間、バンダースナッチは右手の三本指のマニピュレーターを起動させ、レイジに急接近する。

すかさずムスペルヘイムを構え発砲するが、弾丸は何かに弾かれる。

 

「弾かれたッ⁉︎」

 

『プラズマスキン…つまりバリアを標準搭載しているぞ!とにかく避けろ!』

 

レイジは咄嗟に回避する。

バンダースナッチの攻撃は壁面を抉る程強力であった。

 

「おいおい…壁を抉ったぞ!」

 

『高周波振動クローだ…!当たれば超人類(エクスカインド)でも一溜まりもない、気を付けろ!』

 

「んな事言われても…!」

 

バンダースナッチの一撃を避けたレイジであったが、すかさず高周波振動クローによる連続攻撃をお見舞いする。

レイジは人間離れした反射神経でなんとか回避するが、このままでは埒が開かない。

 

「このッ…舐めんな!」

 

レイジは一瞬の隙をつき、バンダースナッチを蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされたバンダースナッチは壁に激突し、その隙に距離を取る。

ムスペルヘイムをグレネードランチャーやミサイルランチャーに変形させて大ダメージを与えようとするが………

 

『いかん!バンダースナッチ相手に距離を取るのは悪手だ!』

 

「えっ⁉︎」

 

彼が疑問に思うも束の間、なんとバンダースナッチの手が目の前に迫り、回避する間も無く彼を掴んだ。

 

「腕伸びるのかよ、コイツ⁉︎」

 

彼の言う通り、バンダースナッチの腕が伸びてレイジを掴んだ。

彼を掴んだバンダースナッチは彼を引き寄せ、壁に叩きつける。

 

「ガッ⁉︎」

 

叩きつけられダメージを受けるが、バンダースナッチは彼を何度も何度も壁に叩きつける。

何度も壁に叩きつけられた事で大ダメージを受け、彼はグロッキー状態となった。

 

「ガッ…うっ……」

 

『レイジ⁉︎大丈夫か、レイジ⁉︎』

 

エピメテウスが呼び掛けるが、反応はない。

バンダースナッチは彼を引き寄せトドメを刺そうと、もう片方の高周波振動クローを起動する。

このままでは絶体絶命だ。

 

(このまま…死ぬのか……?)

 

死を覚悟したレイジは走馬灯を見る。

世界的ヴァオリニスト雪音雅律(ぬきねまさのり)と声楽家ソネット・M・ユキネとの間で生まれ、2年後妹クリスが生まれた事…

NGO活動で南米バルベルデに訪れた際、内戦に巻き込まれ両親が死にクリスと共に現地武装組織に拉致された事…

唯一残った肉親であるクリスの身柄保護を条件に少年兵となり、6年間戦い続けた事…

武装組織が壊滅した際クリスと共に脱出、迫り来る追手からクリスを逃す為に囮となり、捕まった事…

そしてケイオスによって超人類(エクスカインド)に改造された事…

 

走馬灯の中で彼が思い浮かべたのは、妹であるクリス…

 

(いや…クリスに生きて会うんだ…!)

 

そう決意した彼は力を込め、脱出を図る。

身体の奥底から力が湧き上がり、バンダースナッチのマニピュレーターが軋みヒビが入る。

 

「クリスに…!会うまで…!死んで…たまるかぁぁぁ‼︎」

 

叫びと共にバンダースナッチのマニピュレーターが破壊された。

怯んだバンダースナッチだが、残った片腕でレイジを攻撃する。

 

しかし彼はそれを回避し、バンダースナッチの上に乗る。

バンダースナッチは口のレーザーモジュールを起動してレーザーを放とうとするが、彼はムスペルヘイムをモジュールに突っ込む。

 

「くだばれ…バンダースナッチ!」

 

彼はそのままトリガーを引き、バンダースナッチの頭部、そして胸部を破壊した。

胸部のパワーセルが破壊され、エネルギーを制御出来なくなったバンダースナッチは爆発した。

間一髪で彼は退避し、爆発から逃れる事に成功した。

 

爆発炎が収まり、レイジが瓦礫の中から出てくると、辺り一面が破壊され天井から一筋の光が入る。

 

『レイジ…!無事だったか!』

 

「…ああ、バンダースナッチは破壊した。」

 

『…良かった。とにかくもうすぐ脱出出来る。誘導するぞ。』

 

「…いや、そんなまどろっこしい方法よりも簡単な方法があるぜ。」

 

『ん?おい、まさか…』

 

そう言い天井のに向けてムスペルヘイムを向ける。

そして拳銃をキャノン砲に変形させ、発砲した。

それによって天井は破壊され、大きく穴が開いた。

 

「よーし、穴が開いた!ここから脱出する!」

 

『…ハァ、全く……』

 

彼の行動にエピメテウスは呆れ、ため息を吐く。

それをお構いなしにレイジは穴から飛んで脱出した。

 

地上に着地したレイジが辺りを見渡すと、そこには半壊した建物が建ち並んでいた………




施設から脱出したレイジ。
だが、外にもケイオスからの追手が迫る。
彼は超人類(エクスカインド)の力を駆使して脱出出来るのか…?

乞うご期待ください。
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