妹、とは何か。
俺は、護るべきものだと思う。守らねばならぬものだとおもう。
何よりも貴きものだと思う。
では、兄とは何か。
妹、弟。家族を守り、支え、次いでいく存在であると思う。
兄は妹を助け、守り、育てる。これはいたって普通のことである。
俺には妹がいる。
もちろん守らなくてはいけないし、大好きである。まだおにいちゃんって呼んでほしいとも思っている。俺もそうしているわけだし、これからもそれは続けていくつもりなのだが。
「おはよう、霊夢」
「……あぁ。」
どうにも、最近はうちの妹は反抗期である。
この世界には本当に幽霊や妖怪、更には神が存在している。
俺は元々別の世界の人間で、普通に病死した、と思えば今の体になっていた。と言っても記憶があるのは紫に拾われてからなわけだが…
話を戻すと、俺たちが今住んでいるのは世界に、人々に認識されなくなり、忘れ去られた存在が流れ着く最後の場所、幻想郷。
かつては当たり前に信じられていた妖怪や神が暮らす楽園。
そこの神社の神主的な何かを俺が、巫女を妹の霊夢がやってくれている。
妖怪といえばよく人を襲うと言われているが、今はそんなことはあまりない。
霊夢が巫女になる前、俺がこの世界を作った妖怪である紫にこき使われていたころは血気盛んな上に強い妖怪がその辺によく縄張りを持っていて、人里から出れば死は避けられない状況だった。
そんな治安を維持する暴力装置がある。
それこそがわが妹がやっている博麗の巫女。代々才のある少女が選ばれ、技をついで平穏と秩序を保つのだそうだ。
ちなみに霊夢は強い。13代目が霊夢なのだが、歴代最高、最強の実力らしい。紫にはよくやる気がないとか愚痴られているがあれは自分がやるべきことをわかっているからである。(と、思う)
実際、霊夢が継いでから妖怪が起こす異変と言われる傍迷惑な事件も減っている。
つくづく数少ない俺の誇りであると思う。
すこしここで霊夢について語ろう。
性格は怠惰ながら勤勉。いつも面倒くさがっているが、やることは求められる以上にやるし、天才でも努力を怠ったことはない。
多分努力が近道なことをわかっているのだと思う。
そして顔がいい。
俺はその辺にいる人と同じような顔だが、霊夢は町を歩けば皆振り返るほどの美人に育ってくれた。
何時も博麗の巫女装束を着ていて、本人の髪の色である黒によくマッチして霊夢の顔立ちの良さを引き立てる。
それに、人をよく引き付ける魅力がある。
霊夢も周りにはいつも人間や妖怪の仲間がいて、賑やかである。
肌もきれいで傷どころかシミ一つない。
たいていのことはできるが、特に博麗の巫女のメインである戦闘はすさまじい才能がある。
その辺にいる妖怪は俺のようにいちいち札だのなんだのを使わないで消し飛ばせる。
博麗の宝具だって完璧に使いこなす。
人間の力である霊力もピカ一で、おまけに戦闘センス、発想力も高い。
多分幻想郷の中でも最上位の実力がある。
紫にも気に入られていて、よく遊びに来ている。
そんな霊夢もいつの間にか大きくなって、近々反抗期に突入したようだ。
「一人で起きれたんだな、こんな寒いのに。また去年より成長したな。ま、昼に起きてるのはだめだけどな」
「…うん」
「今日は何かするのか?買い出しに行くなら手伝うか?」
「大丈夫。アンタはじっとしてて」
「もうお兄ちゃんとは呼んでくれないのか?寂しいなー?」
「……」
無視された。
反抗期は前世で自分もしたから気持ちはわかるが、こんなにもされる側がつらいとは。
今生ではそんな暇なかったからやらなかったなと。
「気をつけろよー」
鳥居をくぐって飛んでいく霊夢を見送る。
あんなぶっきらぼうでも、たまにデレてくれることがあるので、そういうところが魅力なんだなと思う。
…………。
なんだか落ち着かないのでその辺を散歩でもしてみようか、と腰を上げ、上着を着る。
こき使われていた時の弊害で動きが鈍い体も、たまには動かしてやらないと本当にさび付いてしまう。
俺は霊夢みたいに優秀じゃなかったので、体中傷だらけだし、手術の跡だらけだし、火傷の跡も少しあれば歩くので精いっぱい、走るのなんて無理である。
流石に子供に妖怪と戦わせるなんて、無理があるよなーと今でも思う。
帰ってくるたび死ぬようにぶっ倒れて寝ていたあの日々。
紫が治安維持をしていた先代が突然死んだから、と急いで俺と霊夢を拾って、やったことが即席戦力としての成長を求めた、俺への拷問的教育である。
内容はこうだ。
最初は低級の妖怪を紫の助けも何もなしに祓えといわれた。
普通にぼろ雑巾のようになるまで戦わされた。最低限の霊力の使い方しか教わらなかった。
次に中級と戦った。
次第に強さのレベルを挙げていって、最終的に縄張りを持つ大妖怪を祓えるくらいに急成長させられた。
ここまでで1月。
紫にとって俺は、即席戦力である。
ここでなんと俺への教育は終わり、安堵するのもつかの間各地の妖怪、指定されたやつを祓ったり、交渉したり、紫の手として足としてこき使われた。
その間あいつは霊夢を育てていた。
俺はまあ替えが効くので雑に育てたが、次の博麗となる霊夢は大切に育てられた。俺も大賛成である。
結果的に、それは正解。
俺が仕留めきれなかった大妖怪や、俺が勝てないと思われていた大妖怪を霊夢はボコしていった。
その時点で、俺の体はもうボロボロ。
地獄の教育で次第に髪は白くなるし、生気は消えるし。
傷も包帯も増える。
ただし睡眠時間は増えない。最悪の環境だけど、それでも欠かさないのが霊夢のご飯。
作っている時間は紫であろうと邪魔できない、癒しだった。
思い出にふけりつつもちゃんと外出準備を終える。
とりあえず棚から紙と筆をだして、霊夢に書置きをしておく。
神社を出て最初の難関が鳥居の先の無駄に長い階段である。
この階段が果てしなく長いように思えるし、面倒くさいおかげでうちの神社に参拝客はほとんどいない。
そのおかげで賽銭による収入は0である。
階段を前に少しため息をつきつつ足を動かし始める。
体が重い。
筋肉が落ちてるのか。はたまた年なのか。
両方だな。まだまだ若いんだけどな………
と、人が飛んでくる。
「あ、いたー!」
あちらも俺を認識したようで、飛んできて同じ段に着陸した。
霊夢と同じくらいの背丈、年齢。
この子もどんどん大きくなるな~と年を感じる。
「よ、伊織さん。霊夢がどこに行ったか知らないか?」
「おはよう、魔理沙ちゃん。霊夢なら買い出しに行ってくれてる。」
「魔理沙でいいっていつも言ってるだろ?ちゃんは少し恥ずかしいぜ。」
この金髪の子は霧雨魔理沙。
霊夢の友達でいつも明るくて元気な子だ。魔法使いで、俺の体が調子いいときは偶に、魔法の森の魔法の実験材料になりそうな珍しいキノコ集めをしてる。
キノコ料理もうまい。鍋の時には呼んでキノコを持ってきてもらう要員である。
普通の人間ながら、いろいろな道具をうまく使いこなし、霊夢とよく『弾幕ごっこ』という遊びで遊んでくれていて、たまに勝っている。
当たり前だが俺は勝ったことない。
毎回よくわからんまま負ける。
「ごめんごめん。今日は霊夢に何か用でもあるのかい?」
「新技を開発したから実験台に、な?」
「相変わらず熱心だ、若いってのはいいねぇ」
「伊織さんはまだまだ若いだろ。それに、私よりも努力してるだろ?」
魔理沙ちゃんはよく、魔法を開発しては、それを弾幕ごっこに組み込んで新しい技や戦術を開発する。
努力を怠らないいい子だ。
そして、それで霊夢とよく遊んでくれているのもありがたい限りだ。
霊夢はいつもはつっけんどんで、愛想がないから近寄りがたい。
内面は素直でかわいげがあるのを隠しているのだ。恥ずかしいのだろうか。もっとさらけ出しても………とはよく思う。
で、普通の人間は性格に相まって、天才肌と博麗の巫女という肩書のせいでほとんど話しかけない。
怖いもんね。わからなくもない。
まあそんなこんなで霊夢は同年代の友達が少ない。
だから兄としてはとてもありがたいのである。
できればこれからも霊夢をよろしくお願いします………。
「いやいや。最近の子には負けるよ。それで、どうする?一緒に霊夢を探しに行くかい?」
「そうだなぁ………今日は調子いいのか?いいなら人里まで行こうぜ?霊夢を見つけて、散歩もできて一石二鳥だ!」
「今日は結構よさげかな。じゃあ早速「その必要はないわよ。」
後ろから声。
霊夢である。
「おぉ、ちょうどいいところに。魔理沙ちゃんが遊びに来てるぞ」
「よ、霊夢。新技を作ったから試しに来たぜ。今日こそ私が勝ち越してやるからかかってきな!」
魔理沙ちゃんよ、負け越しているのにそっちが上なのかい。
「………………いや。今日は遠慮するわ、明日やりましょう。」
「ちぇ、今日は勝てる自信があったのによ。まあいいか…………霊夢、なんか怖いぞ?どうしたんだ?」
魔理沙ちゃんが言うとおり、霊夢がなんだか怖い。
買い物袋を片手にして入るものの、殺気というかなんというか、不機嫌そうな感じがする。
「じゃ、また明日な。昼くらいに行くと思うぜ」
「待ってるわよ。勝てると思わないことね。」
「はっ、明日その鼻を折ってやるのが楽しみだぜ!じゃあな!伊織さんも霊夢も体に気をつけろよな!風邪で負けた、は無しだぜ?」
そう言って魔理沙ちゃんは魔法の箒?で飛び去った。
後ろには話している間はいつも通りだったのに、また怖くなっている霊夢がいる。
何があったのか。
反抗期ってこんなに険悪になるものだったか。
なんか買い忘れたとかか?霊夢に限ってそんなこと…………。
「行くわよ」
有無を言わせぬ圧。
立派に育ってくれてうれしい限りである。
しかしこうも鬼のような雰囲気を出せるとは思いもよらなかったなぁ………
母親もこんななのだろうか。あったことないせいでわからん。
いったい誰に似ているのか……?
まさか紫とかか。
それはいやだなあ。
そんなことを考えつつ神社に戻る。結局散歩できなかったので、少し名残惜しい。
時刻は夕方。多分5時くらいか。南の空が赤く染まってくる頃合い。
「ん。」
手拭が差し出される。
風呂に入れということだろうか。
散歩できてないんだが。
「別に汗かいてないんだが……」
「入りなさい」
「いや、でも……」
「入れって言ってるのよ」
有無を言わせぬ圧力。
仕方なく手拭を受け取り、風呂へ向かう。
うちの風呂は間欠泉から湧き出る温泉なので、とても広々と入れる。
傷とか肩こりとか腰痛に効くと勝手に思い込んでいる。色々本当に少し楽になる気がするので、実際効果があったりするかもしれない。
はふぅ~と声を漏らしながら湯船につかる。
温泉だから少しぬるいが、熱いのは苦手だからそれもいい。
もう少し夜なら星がきれいな天気だな、と思いながら今日は長めにつかることにした。
私は博麗の巫女だ。
幻想郷の秩序を守らなくてはならない。
それが私と兄、伊織を拾い、育てた紫から頼まれた仕事。
紫に私たちは拾われ、育てられた。言うなれば母のようなもの。
本来なら感謝して、尊敬してもおかしくない。まああいつ、胡散臭いから無理もあるけれど。
でも、私はアイツが嫌いだ。
本当のことを言えば。
幻想郷の秩序を守る、のも嫌だ。
私は拾われたとき、赤子だった。
なら、私が成長するまで誰が戦ったか。紫は手を尽くしたが、手が足りない。そこをだれが埋めたか。
伊織だった。
私の一番古い記憶は、傷だらけでかえって来た兄の姿だった。
兄は私の為に紫に従い、弾幕ごっこという遊びではない、文字通り命のやり取りである殺し合いに身を投じ続けた。
そして、いつもボロボロになって帰ってくる。
けれど、どんなに傷ついてもつらくても、私の前では笑顔で、明るくふるまってくれた。
そんな伊織が大好きだった。
私も、伊織を助けたくて、強くなった。
けれど。
紫に稽古をつけられ、妖怪を祓えるようになって私が見たものは。
伊織の頑張りは何だったのか。
お風呂に入ろうと上を脱いでいる伊織をこっそり、ちらりとみる。
肌には無数の傷がある。
顔に傷がないのが奇跡なほどに、痛々しい爪痕や殴られた跡、刀傷がついている。
それを見るたび胸が締め付けられる。
つい最近、気づいた。
私は怒っているんだ。
兄さんを傷つけるだけ傷つけておいて。
そのくせ、自分たちはすぐに逃げた妖怪共にも。
小さい伊織を無理に戦わせ、限界まで利用した紫にも。
何より、何もできなかった私に。
今、私は強くなった。
次は私が伊織を守る。
そのためには何でもできる。
机の上に書き置きを見つける。
伊織が散歩に出るときに書いたらしい。
「……ふざけないでよ」
これ以上、傷ついてほしくない。
私の大切な兄さん。
危ない外に連れ出すだなんてもってのほかなのに。
妖怪はまだまだいる。
そのすべてが人を襲うわけじゃない。そんなのはごく少数。
それでも、もし。
もし、伊織に危険が及ぶと思うと。
恐ろしくてたまらない。
書き置きを破り捨て、霊力で擂り潰す。
「もう傷つけさせないから……大人しくしていてよ、兄さん」
じゃないと、何をするか……自分でもわからない。
たまに上げます忘れないでね
兄上の戦う頻度は?(この先の異変でどれくらい戦うか)
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進み続けろ、曇らせタグに報いるために
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少なくして
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お前がやりたいようにしろ