奇跡や………!
しばらく空くかもです
兄はいきたくない。
「おい霊夢!これは明らかな異変だろ?!解決しに行くぞ!」
魔理沙ちゃんが障子を勢いよく開けるのと同時に声をかけてくる。
あの赤い霧の異変………確か、”紅霧異変”という呼び名になったあの異変が終わり、少し時間が立った。
俺の手の傷もあの館の魔法使いパチュリーさんの協力もあって、あまり傷跡を増やさず治すことができてきたくらいの時間。
ある雪の降る4月の日。
本来ならば雪が降るのはせいぜい3月の始まりまでだというのに、今、幻想郷は今まで経験したことのない大雪に見舞われている。
4月に。
本来ならうちの庭桜が咲き誇り、魔理沙ちゃんは障子を開けて放つ言葉が宴会かお花見に固定されるというのに。
「もう四月も半分だっていうのに一向に冬が終わる気配がないんだぞ!どう考えてもおかしいだろ?!」
「おはよう、魔理沙ちゃん。もしかしたら、外の世界で冬が忘れられたのかな?気候変動や化学の進歩でまた変なものが幻想郷に増えるらしいし、その一つかもよ?」
紫は相変わらず容赦なく、管理者代理の仕事として幻想郷に落ちてきたものの中から危険なものやさすがに外にないとまずいもの、たまにいる妖怪の対応を任せてきた。
それはスキマで確認が速い紫がやれば速いのでは?と考えもしたが、どうやら冬眠に入るらしい。だから仕事の多くを藍さんに、余りを俺に振り分けていると。
紫の手伝いは正直気乗りしないというのが本音だが、藍さんは話が違う。
俺を鍛えてくれたというか、何度か命を助けられているというか。恩人であり、師であり、育ての親のような存在である藍さんの手伝いならば喜んでやるというものだ。
実際藍さんはあのやることのスケールが違いすぎる上に、現状一人で幻想郷の管理をしている紫の補佐として多忙。
藍さんの式神である橙もまだまだ妖怪になり日が浅く、頼れるとは言い切れない。
手伝えるのが俺しかいないのである。
なんだか冬が長いからそれを見越してさっさと冬眠しているような気がするが、紫の考えていることはよくわからない以上、諦めるほかにない。
「いや、季節を忘れるわけあるか?それに、最初に忘れられそうなのは秋だろ?」
「そうなのかねぇ………まぁ、ちょっとのんびりしていったら?寒いんじゃない、外。」
見れば、手の先や頬、耳が寒さによって赤くなっている。
マフラーを巻き、服を厚めに着ているようだが箒で空を飛び、自らの体で風を切っている以上寒さは想像しているよりもつらいだろうことは容易にわかる。
今俺と霊夢で入っているこたつの空いている側をたたき、促してみる。
「ああ、寒いぜ。だからこそ、その元凶を見つけてぶっ飛ばすんだろ?この間はいいとこなしだったからなー、私が直々にやってやるぜ」
寒いというのに元気な子である。
「魔理沙、いい加減うるさいわよ。……………其処まで害がある異変でもなければ、ただのたまたまって可能性もある。そんなことに首突っ込んでいられないわ」
「でも異変だったらどうするんだ?解決するのは博麗の仕事じゃないのか?」
「もっと簡単に言ってあげる、寒いのよ。そんな外に出たくないし、
霊夢が目を伏せて言う。
実際霊夢の言うことは正しくて、本当にただただ今年が珍しい年なのか、外の世界で冬が忘れられたのかという可能性もある上に、解決が早急に求められるようなことでもない。
異変だとしても、赤い霧のように人里に迷惑があるわけでもないのなら、まずは相手がどう出るかうかがうのも大切。
とりあえず魔理沙ちゃんは炬燵に入ったらどうだろう。
「おいおい、甘いな。今回は異変だってわかってるんだよ、実はな。聞いて驚くなよ?春告精が春だって言いまわってるのを見つけたんだ。とっちめて問い詰めたら、なんでか知らないけど春が来ているはずなのに一向に春が始まらない、だとさ。」
春告精。
それを聞いて、霊夢が少し反応する。
確かに、春を告げる専門の妖精が春を感じているのに、春が始まらないのはおかしい。
というか、魔理沙ちゃん既にその妖精を倒してるらしい。疑わしきは罰するというが、もはや疑わしくもない者だろうと取り敢えず関係している奴らは全員ぶっ飛ばすその姿勢が霊夢に似てきたなぁ、と思う。
すると、何か思案していた霊夢が口を開く。
「妖精って馬鹿なんだからそういうこともあるんじゃない?アンタにやられておかしくなったとかも考えられるし、あの妖精は妖精の中でも特に戦うのが好きだしね。それと、本当に誰かが春を止めているか奪っているかしたとしても、目的がわからない。」
「季節の力は確かに強大だし、人々に特に節目として意識されやすい春の季節はね。でも、そんなエネルギーどうするつもり、確実に持て余す。」
「それに、春も終わりは来る。それで夏が来ればどうせ暖かくなるし、桜も植物なんだから花ぐらい咲くわよ。あんたお目当ての花見はその時やればいいでしょ?」
バッサリと切り捨てた。
対して魔理沙ちゃんは、花見こそが目当てであるとばれていたのが恥ずかしいのか、図星だったのだろう、何とも言えない表情をしていた。
それはさておき。
春の力、か。
春の力は強大と霊夢が言ったが、それは本当のこと。
春は芽吹きと新しい始まりの季節。そう呼称されるように、春の力は生命を生み出し、樹木や草花を芽吹かせ、成長させて、生物に力を与える。
奪う季節である冬とは対照的な季節で、生命のエネルギーにあふれている春の季節を集めるとなると、考えられるのはいくつかある。
一つは、誰かがそのエネルギーで幻想郷のような世界を新たに生み出している。
生命のエネルギーは、対象が形あるものだけとは限らない。世界を生み出すエネルギーすらなりうる。
実際、紫も幻想郷を生み出すときは春のエネルギーで現世から切り取った空間を大きく成長させているらしい。他にも、妖怪の山や迷いの竹林など幻想郷に様々な地形を取り込む際の接着剤としても使われている。
二つ目に、新しい生命の創造。
これは正直薄いかな、とは思う。なぜならそれに最も適しているのは春の力ではないから。春の力は今あるものを成長させることが得意で、言うならば一から増やすこと。
創造とは零から一なので、最も適している力ではなくなる。では、その最も適している力は何なのかというと人の想像………………分かりやすく言うと、霊力だ。
神々や妖怪を生み出す元となる人の願い、恐れがそれに該当する。
想像力は、言い換えれば創造力とも転じる。自らが零から考えたものを実現するのが言霊のような形をとって生み出される、願いなのである。
三つ目は、藍さん。
春のエネルギーで紫の住処を拡張しているか、はたまた紫にぶつけてたたき起こそうとしているのか。あの主人に対してどこまでも従順でまじめなあの人に限ってそれはないと思うが……。
春を集め、その力を意のままに操ることができる確実な者、としては紫がいない今最有力候補だろう。
どれにせよ、荒唐無稽に近い。
改めてみると、春の力は強大で、使い方を誤れば最大の凶器となりうる。
ほかの季節と相殺でもすれば軽くこの星は滅ぶだろう。
霊夢は気が乗らないようだけど、これは万が一を考えればかなり危険な案件でもあるだろう。
「俺が行こうかな、魔理沙ちゃんと一緒に。」
いろいろと考えたうえで、同行することにした。
魔理沙ちゃんはこちらを見て明るい笑顔を浮かべ、「心強いぜ、伊織さんがいるならな!でも、親玉は私がやるからな?」と返してくれる。
さて、すぐにでも出発を………と思い、ゆっくりと立ち上がると。
「私が行く。」
霊夢がそういった。
一瞬ぽかん、としていた魔理沙ちゃんはすぐに復帰して霊夢をいじる。
「なんだよぉ~、結局のところお前も花見したいだけなんじゃないのかよ~?ま、いいぜ。私とお前の付き合いだ、それぐらいわかってたぜ!」
それに対して霊夢は何も言わず、眉一つ動かさないで無視を決め込む。
反抗期が出ていてちょっとつっけんどんだけどまだまだ子供な霊夢が微笑ましい。いい友達を持ててよかった、としみじみ思う。
障子の外の縁側に立つ二人と一緒に行こうと立ち上がる。
瞬間。
先程まで穏やかで静かだった霊夢の雰囲気が変わる。
「アンタはここでじっとしてなさい」
振り返ってこちらを見る瞳は戦っているときの冷たいそれ。
反抗期もまさかこれほどとは………
「おいおい、それはひどいだろ。心配なのはわかるけどよ……?」
「アンタには関係ないでしょ。行くならさっさと行って、さっさと終わらせる。ほら、ぐずぐずしないで行くわよ」
「どうせ心当たりはないんでしょう………片っ端から行くわよ」
「お、おう………そうだな、そう来なくっちゃな!悪かったな伊織さん、今回は休んでてくれ!私たちがビシッとすぐ解決してくるからよ、お花見の準備でもしててくれよ!」
魔理沙ちゃんのフォローも切り捨てられ、俺は家で待機となる。
片手を立てて謝罪した魔理沙ちゃんは「じゃあ、行くぜ」と言うとともに雲に向かって飛んでいった。
それを見た霊夢はこちらを一瞥し、そのあとを追う。
二人を見送って、炬燵に戻る。
一人になった寂しさを癒すかのようにこたつは暖かく、たまには霊夢の言うように何もせずボーっとしているのもありなのかもしれない。
ふぅ、と一息つく。
外はあいにくの大雪続きのせいでほとんど景色は見えない。
炬燵に少し深く足を入れて座り、手を台の上に出す。
先ほどまで温めていたおかげでまだポカポカする手。
見つめていると、やはりけがの跡が目立ってしまう。大きい傷であればこれがいつのー、とか嫌な思い出浸りで時間をつぶせるのだが、残念ながら手の傷はほとんどほかのところを大けがしたときに添加物としてついている。
胴体を見れば覚えているものなんていくらでもありそうだが、手には案外ないんだなー、なんて考える。
(…………まだ動かせるな)
握ったり、開いたりを繰り返して感覚を確かめる。
数回繰り返したら、手を台から下げ、炬燵の中に戻す。と、あることに気がついた。
花びらである。
しかも、桜色………つまり桜の花びらが一枚、いつのまにやら落ちていた。
それを手にとる。
摘み上げた花びらを不思議に思って眺めていると、花びらが光の粒子となって外へ流れていった。
その行先を視線で追う。
すると、縁側に人が立っていた。
「あ、ようやく気付いたの?結構遅かったのね、やっぱり炬燵は気持ちいいわよね。」
そういいながら何の躊躇もなく上がり込み、炬燵に入り俺の対面………先ほどの霊夢の位置につく。
その相手が知らない奴なら焦るところだったが、知人である。
桜色の髪に、どこかうつろな瞳、この世を生きるものとは思えない……というか実際に世のものではない白さの色の肌、見慣れた青の着物姿。
「久しぶりね、元気にしてる?」
「お陰様で」
冥界の主である、西行寺幽々子。
俺の頭の上がらない相手の一人であり、死者の魂の行きつく冥界の管理人がなぜかここにいた。まさか、俺ももう寿命だとでもいうのか。
おかしい、まだまだ残っているはず……!せめて霊夢が独り立ちするまで………!
「そんなに悲しい顔しないの、別にお迎えに来たんじゃないのよ?お迎えに来るのは地獄の死神、でしょう?」
「じゃあ、何の御用で?」
「あれ、そういえば妹ちゃんはいないの?博麗の巫女を継いだっきりまだ会えてないのよ、久しぶりに見てみたいのよね~」
相変わらず自分の思いのままに動く。
人の話を聞かないとかでない、驚きの自由さ。
霊になるとそういうところがふわふわするというか、曖昧になるのだろうか?
「霊夢なら、さっき出かけました。………そのためだけに来たんですか」
「いいえ?別に姿くらいいつでも見れるし。今日来させてもらったのは見せたいものがあるのよね。というわけで………」
「冥界にお迎えに来たわ」
やっぱり駄目じゃないか。
感想待ってま~~~~す☆
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兄上の戦う頻度は?(この先の異変でどれくらい戦うか)
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進み続けろ、曇らせタグに報いるために
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少なくして
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お前がやりたいようにしろ