妹に兄と呼ばれたい。   作:any

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兄は話したい

 

「本当に、申し訳ございませんでした………」

 

 

冷たい石段の上に正座し、傍に自らの二振りの刀を置き、深々と頭を下げる白髪の少女。

それの前に膝をついてなだめる俺。周りから見れば、明らかに俺が何かしてのだろうと思われる様な状況だが、ここは冥界。

 

そんな人間はいない。

 

それはそうとして。

 

 

「いや、俺は大丈夫だし、知ってたのに何も言わなかったのも俺だし。………さ、ほら、人に頭下げさせ続けるのも、ね」

 

 

「しかし、客人に刃を向けるという無礼………博麗様への多大なる無礼であるとともに、剣士である私の恥。例え博麗様が寛大な心でお許しになろうと、頭を上げることはできません」

 

 

確かに、この子は昔からこういう子だ。

あの庭師の爺さんに育て、剣士として鍛えられた以上、自らの恥でもあるわけで。本人の、剣士の誇りにかかわるということもわかる。

けれど、西行寺様のことだ。不機嫌になって滅茶苦茶なわがままをいうだろう。いつもなら紫が諫めるが今は不在、どうなるか分からない。

 

 

早く頭を上げてもらいたいものだが………

 

 

「いや、でも………西行寺様に呼ばれている客人としては、速く向かわないとあの方の不興を買うんじゃないかなと思って」

 

 

「う、それはそうですが………しかし………」

 

 

「妖夢ちゃんは庭師だ。だから、ここからの案内は容易い、違うかな?ここから白玉楼への案内で今回の件は水に流す、そうしておくれよ」

 

 

好機を得たとばかりにまくし立てる。

妖夢ちゃんは義理堅く、真面目だ。だからこそ、このように謝罪を貫く。しかし、彼女は白玉楼の今やただ一人の庭師。

その仕事にも誇りを持つとともに、責任も抱いている。

ならばその方向で言いくるめるのが最善であろう。

 

「しかし、罰も無しに………博麗様の優しさは素晴らしい美徳の一つで、人望の秘訣だと理解してはいますが、此度は些か度が過ぎています。信賞必罰、博麗様には更なる栄誉を得、多大なる事において他者を罰する権利があります」

 

 

妖夢ちゃんは顔を上げ、そう言い放つ。

その瞳は曇りなくまっすぐとこちらを射抜き、すべてを正しいことであるかのような口ぶりで言う。

実際のところ、俺に人望はあまりない。

妹は反抗期、魔理沙ちゃんこそ懐いているが……人里ではどこか避けられている。

 

まあそりゃ日夜戦ってばかりいる傷だらけの男だ。妖怪からの恨みも買っている。規則で人里の中で妖怪は人を襲ってはいけないといえど、人里のものからすれば厄介だろう。

俺もそうなると否定できないのだ。

 

 

「俺は別に優しくないし、人望があるわけじゃない。だからこそ、自分の大切な人を大切にするんだ。さ、行こう。俺みたいな出涸らしを案内するのが罰、ということでね。」

 

 

そう言うと、不満そうにこちらを見つめた後、ため息をついて立ち上がる。

刀を腰にさしなおし、こちらを向き直す。

 

 

「そのようなやさしさに私たちは何度も救われました。………しかし、幽々子様やあのスキマ、以前の鬼ようにその優しさで貴方に再び牙を向く者もいます。博麗様は”厳しさ”を持つべきと存じます。」

 

 

「忠言ありがとう。これでも厳しくしてると思ったんだけどね……」

 

 

これでも伊吹童子や西行寺様のような甘え上手、というべき者には厳しめに接しているつもりだ。紫に対しては親代わりでもある以上、なかなかそうできないが。

 

 

「行きましょう」

 

 

そういうと妖夢ちゃんは振り返り、浮かび上がって階段を上り始める。

妖夢ちゃんは仕事の時に出会ったときは堅い敬語を用いる。

それはどこか突き放すような、冷たい印象を感じさせるが本人の暖かい性格はそのまま。話を振れば、きちんと帰ってくる。

それどころか、自ら話しかけることも少なくない。

 

 

言うなれば素直な霊夢である。

 

 

顔が整っているところまでそう。

霊夢もこれくらい周りに友好的に接すれば友達が増えると思うのだけど。

 

 

「お聞きしたいのですが」

 

 

「うん?」

 

 

「先ほどの剣戟。いとも容易く防がれましたが、どうでしょうか」

 

 

どうやら先ほどの評価を聞きたいようで。

正直言って、死ぬかもな~、と思った。俺は妖怪のように切られても再生しない。だからこそ、俺がただの人間であると分かっての”あえて受ける”選択をつぶす必殺の初撃。

 

避けられた後も、俺に体制を直す余裕と自らの勢いを失わない攻めの姿勢。そして、段上からの一直線な攻撃でなく、一瞬視界から外れる真横に飛び加速しての一撃。

それをかわされてももう一度、速度を増したうえで交わされることを織り込み、燕返しを可能とする持ち手への瞬時の持ち替え。

 

 

加えて、飛んできた想定外の灯篭に対しての対応と、崩れた姿勢からの体を巧く使った鋭い燕返し。

 

 

正直死んでいない、ということに驚きだ。

ボロボロの体に染みついた動きで生き残ったというのが正しいのかもしれない。

 

 

「なんで死んでいないのか不思議かな。見事だったよ。強いて言えば、灯籠を体で受けるべきだったのかな?」

 

 

「ありがとうございます。しかし、あの灯篭を受けていれば中の火が魔法の媒体となってしまう、と判断しました。あのようなときはどうすれば?」

 

 

「うーん、そうだね。その通り、妖夢ちゃんが受ければ炎で固定できるしよければ軌道をそらせる。斬ったなら………っていうつもりだったね。何処かで囮をもう一つ入れる、のがいいのかな」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「でも、最初の殺気。以前と比べ物にならない、成長したね」

 

 

実際、囮をどこかで入れられていれば俺は死んでいただろう。

俺のように灯篭を投げるでも、鞘を用いた二連撃でもいい。効果的な囮は相手の手札を一枚、もしくは思考の時間と余裕を奪い、戦いを有利にする。

 

そう話していれば、いつのまにやら大きな屋敷にたどり着く。

 

 

そして、その後ろには大きな木が聳え立っており、かつてと違いその無数の枝に蕾をつけ、桜色を帯びている。

 

 

綺麗だ。

 

 

その桜色の美しさに、思わず手を伸ばす。

そして、次第に無意識のうち、桜へと向かって近づく。

 

白玉楼の屋根を超え、庭へと出る。

 

 

 

 

そしてそのまま木の根元へと吸い寄せられるように辿り着く。

伸ばした手を太く、黒い幹に触れさせる。

 

 

 

「………?!」

 

 

 

 

瞬間、反射的に手を離す。

手が幹に触れた瞬間に感じた、濃密な死の気配。………そして、もう一つの気配。

 

 

なるほど。

 

 

背中を流れる冷や汗の感覚が、次第に意識を戻していく。

荒くなった息を落ち着け、その場に立ち尽くし、思案する。

 

 

西行寺様が俺を呼んだ理由がわかる。

この木は、確かに異質だ。しかし、”自我”のようなものを持っているわけではない。植物としての生への本能で、人から生を奪う。

 

 

純粋な本能で突き動かされ人を死へと誘う。

だが、この木が冥界にあるということは、()()()()()()()()()()()()()。誰がどうやったのか。

この木はおそらく、人をその美しさで先ほどの俺のように呼び寄せ、取り込み、生の力を吸い取って生きている。

 

木を殺す方法である引き抜く、切り倒す、燃やす手段は取れないだろう。

 

 

この開花前の段階、蕾の時点であの強力さ。

全盛ならばどんな影響が出るか。

咲いてしまえば手遅れ。これだけの春の力が流れ込んでいる以上、ただでは止められない。春の力を通している裂け目を通り、人に限らずあらゆる意志あるものを糧としようとするだろう。

紫のようなレベルの大妖怪や霊夢のように自らの能力で影響を遮断できない者以外のすべてが死滅する。

封じる、封印をしようにもかつてそれをしただろう人物は不明で、死んでいるだろうことは容易に想像できる。

 

 

問題は、西行寺様はこれをわかっていないだろうこと。

本人はきれいだ、としか思っていないだろう。それは、妖夢ちゃんも同じことである。彼女達はすでに死んでいる亡霊であり、生の力を持たない。

だからこそ死と言う誘う先がない。

自分では脅威がわからないのである。けれど、あの桜は恐らく意思の力も吸い取る。人の思考や感情すらも吸い取る以上、魂すら吸収しかねない。

 

まさかこんな物がまだ残っているとは思わなかった。

 

 

今は紫を起こすのができるかはわからない。

かと言って、西行寺様を止めることもできないだろう。あの方はそういう方だ。

 

 

 

ならば、霊夢と協力して封印するか、霊夢が西行寺様を倒して止めさせるのが最善。

俺が異変解決に携わることができない管理者代理である以上、霊夢の到着を待つほかないだろう。できるだけ早い到着を願うことしかできない。

 

 

ため息をついて、白玉楼へと戻る。

 

 

背を向けて歩いているときにも、家族や古い知人が呼ぶような懐かしさを背中から感じ、振り返り、戻りそうになる。

いまさらその程度で振り返るほど甘くないが、恐ろしさを感じる。

 

中へと上がれば、西行寺様がいた。

 

 

桜が見えるところを食卓とするようで、変わらない優雅な笑みを浮かべている。

 

 

「遅かったわね。うちの妖夢はどうだった?前よりずーっと、成長したと思うのだけど」

 

 

どうやら、妖夢ちゃんと俺の戦闘が起きるのは織り込み済みだったらしい。

紫の友人である以上、やはり西行寺様にもこういう一面はあるし、紫と違ってたいていがその時その時の思い付きで突発的に始まる。

 

今回は妖夢、そして俺を試すのが目的らしい。

 

 

「死にかけましたよ………成長しましたね」

 

 

「ふうん。じゃあ、うちの子はまだまだみたいね。貴方からはまだ死の予感を前よりも感じないわ。ま、あなたが使わざるを得ないようであれば割り込むつもりだったし、危険にさらしたのはごめんなさいね。」

 

 

西行寺様の表情がふうん、と少し驚いているような表情からまた穏やかな笑みへと戻る。

扇子を開いて美しい所作で口元を隠し、目を伏せて謝罪を口にする。

それを見て俺も笑みを浮かべ、少し頭を下げる。

 

 

「成長していて何よりですよ。ーーそれで。」

 

 

顔に浮かべていた笑いを消す。

まじめな表情を浮かべた俺を見て、西行寺様も同じように真面目な表情を浮かべる。

 

 

「西行寺様」

 

目を合わせ、言葉を投げかける。

 

 

「何かしら」

 

 

「いえ、大したことでなくて。ただ一つだけ、約束してほしいことがあります」

 

 

「あら、貴方から約束なんて珍しいわね。いいわよ~、言ってみて?」

 

 

「今の幻想郷には春が来ない異変が来ています。その解決に霊夢が乗り出していて、おそらくここに………西行寺様のあの桜を咲かせようとしていることが原因だと突き止め、やってくるでしょう。

その時、西行寺様が負けたらあの桜を咲かせるのは諦めて欲しいのですが」

 

 

これは保険だ。

異変を起こし、博麗の巫女に負けた以上その原因を絶つのは決まり。

しかし、もしもはありうる。

 

だからこそ、約束させるのは大切である。

 

 

「あら、そんなこと?おかしな話ね、勝負するなら貴方でいいでしょう?私、あなたとの殺し合いでもう一度死ぬならいいのよ?死ぬのかわからないけどね」

 

 

恐ろしいことを冗談でいう人だ。

死人に口なしとは言うが、この人にそれは通じない。

 

 

「御冗談を。あと、これは異変で、もう当代の博麗の巫女が解決に動いています。管理者代理である俺は介入してはいけません。それに、人間である俺が西行寺様と戦って勝つ可能性はないでしょう」

 

 

「言ってるでしょう。確かに私の能力は生き物に無類の強さがあるけど貴方が、持てる全てを使うなら私の勝つ未来は潰えるでしょう、それは紫もそう分かっているはずよ。ま、約束はちゃんとするけどね」

 

 

確かに、全てを使うなら勝てるかもしれない。

しかし、それが今の体でできるかというのは別であり、おそらく不可能なのだ。勝てるわけのない殺し合いをするわけもない。

 

それをわかっていっているのかいないのか。

 

 

どちらにせよ、あとできることは霊夢を待って、いざというときに備えるだけ。

 

 

 

正座して目を伏せ、桜が放つ気配に気を配る。

 

 

すると間もなく、冥界の結界が破られた。

 

 

 

 

 

 

 

 




妖夢は、公私をきちんと分けます。

妖夢ちゃんが立ち上がるまでに宮浦選手はサービスエースを5本決め、この小説は1330文字を使いました。反省してください。


fight NIPPON!!!


伊織君のガチ戦闘シーン描くまで伊織上げは欠かさず行うので、しつこかったら感想とかメッセージで止めてね。

兄上の戦う頻度は?(この先の異変でどれくらい戦うか)

  • 進み続けろ、曇らせタグに報いるために
  • 少なくして
  • お前がやりたいようにしろ
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