「きゃぁ~」
ふわーっと、幽々子様が落ちてくる。
異変の首謀者として博麗の巫女と弾幕ごっこをして、コテンパンにされたわけである。
さすがの経験豊富な大妖怪も冥界では遊び相手もおらず、妖力を蝶の形にして飛ばすくらいしかできなかったようで、妖力にものを言わせた物量作戦に打って出た。しかしそれが俺ならまだしもあの霊夢に通用するはずもなく。
「その程度で余裕ぶってんじゃないわよ」
ずいぶんと怒り心頭の霊夢によって一撃で沈められた。
かなり逃げ回り健闘していた…が、そのせいで霊夢の怒りを買ってしまった。最初からあおり全開だったから仕方ないかもしれない。
しかし笑顔である。
服もかなりボロボロでありながら、楽しかったという気持ちが勝っているようだ。
あの人らしい。
「何へらへらしてんの?いいから春を返しなさい」
「ふふ、楽しかったんだから仕方ないでしょう?暇つぶしに付き合ってくれてありがとう。春はそこの桜を封印しなおせばいいわ。」
ふうん、と漏らしてから霊夢は桜に向かって行った。
縁で座っていた俺と目覚めた妖夢ちゃんの隣に腰掛ける。
「よろしいのですか?あの桜の下にいる人間を見たかったのでは?」
妖夢ちゃんが問いかける。
どうやら、西行寺様はあの桜を咲かせ、封印を解くことであの桜の下に封印されている何者かと会うことを目的としていたらしい。
ただ、それはあくまでできたらいいなという程度で、桜が咲いたところで出てくるという確信もなかったようである。
「いいのよ。少し期待はしていたけれど、出てこないかもしれないのだから残念でもないわ。それよりも、暇つぶしができたのだからいいのよ。紫にも少し我がまま通してもらっているわけなのだから、望みすぎはよくないわ。」
余裕のある笑みをまた浮かべる。
生きるという感覚から異なる以上、心情なんかは推察すらできない。ただ、あの桜の危険性を知っての上で俺が出向くこと、紫への伝言も通していたらしい。
幽々子様が表情を戻して、桜を眺めながら言う。
「しかし、不器用よね。あなたたち。」
呆れたような言葉。
諭すような色を孕んだその言葉の真意が読み取れない。
「俺と霊夢が、ですか?」
「どっちも自分の思いを伝えていないじゃない。理解した気になっているみたいだけど、それが本当だって保証はないのよ。」
「霊夢は確かに反抗期だけれど、俺は思ったことを伝えてますよ」
「そういうことじゃないのよ…思いやりや遠慮みたいな、静かな愛情は常に人を導き、通じ合わせるものではないわ。時には混じり気のない言葉が必要なのよ」
静かな愛情。
確かに最近の俺は反抗期の霊夢を尊重して積極的にかかわろうとはしていない。前に比べて、の話だが。
霊夢ももうただの子供じゃない。様々な面で守られるものから守るものへと成長しているのだ。
そろそろ独り立ちかと頭によぎり思わずさみしくなる。
「いろいろ悩んでるみたいね。じゃあいくつかヒントを上げるわ」
「ヒント、ですか。」
「お悩み相談みたいなものよ。一つ目は、霊夢は貴方のことを嫌っていないし避けてもいない。同時に、貴方も霊夢のことを愛していることに間違いはないわ。――ただ、どっちもまだ子供ね」
「…?」
よくわからない…。
霊夢が俺のことを避けていない、というのも気になるがなによりも、子供というところが引っかかる。
確かに西行寺様からすれば俺たちは赤子同然だが、俺も俺なりに考えている。
子供、か…
「わかってないみたいね。違う?」
「はい。確かに西行寺様からしたら俺たちは子供も子供ですが…」
「そういうわけじゃないっていうのはわかってる、そうでしょう?なら、一つ例を教えてあげる。…あなた、継承、教えてないでしょう」
「なっ…!」
言葉に驚いて反射的に口から漏れ出した言葉。
それを遮るように空気が揺れ、重くなる。
そして、あとからやってくる死の感覚が、背筋を、首筋をなぞり、魂をいざなおうとしてくる。
横を見れば、妖夢ちゃんも西行寺様も気づいている様子で、この重苦しさの源…桜を見つめている。
西行寺様は先ほどまで浮かべていた喜びと余裕の笑みを、別の性質のモノ……大妖怪としての威厳と妖しさを備えた、企みを孕んだ深い笑みへと変えている。
対照的に妖夢ちゃんは、何が起きたかわからない様子で桜と西行寺様をなんども視線が往復し、どう動くべきか何をすべきか測りかねている様子。
「何を…」
「ふふ、ただの”手助け”。貴方たちは一度ぶつかるべきよ。そうしたらお互い何かわかるでしょう?」
「ほら、待ってるみたいよ。存分に兄妹喧嘩、してきなさいな」
扇子で口元を隠しながら桜を見やる。
その視線の先には、こちらを見下ろす影。
霊夢だ。
おそらく、桜によって正常な判断能力を失っている。
桜の力の根源は、死そのもの。
それを操る権能を持つのは…
「兄妹喧嘩に、答えがあるんですか?」
本当に何を考えているかよくわからない方だ、と改めて思う。
この異変の目的が本当は何だったのかもはっきりしないし、こうすることであちらに徳があるとも思えないが、何かしらの目的はあるようで。
紫も知っている以上、これは本当に問題がない。
異変の解決ではなく、本当にただ兄妹喧嘩をする場として用意している。霊夢の意識も見たところしっかりある。
なんでわざわざとか、戦うのは本意でないとか、なんで継承のことをとかいろいろ疑問や不満は尽きないが、ひとまずは霊夢を収めるとしよう。
「あなたたちの問題はあなたたちで答えを出しなさい。答えを教えられるだけじゃ成長しないわよ?」
「…埋め合わせはしてもらいますよ。喧嘩はしたくないんです」
「ふふ、楽しみにしておいて?」
霊夢のもとへと飛び立つ。
何年ぶりの喧嘩かもわからないし、手合わせをすることもなかった以上、この先に西行寺様の言う”子供”の答えがあるのかもしれない。
「幽々子様」
「何?」
「無礼を承知で申し上げます。一体、何が目的だったのでしょうか?」
妖夢が珍しく疑問を投げかけてくる。
普段は言うことを二つ返事で了承し、邪推することもなくたいていのことをこなす素直な妖夢が自らの主の真意を問うことは非常に珍しい。
まぁ、わがままは聞いてくれないけれど…特にお菓子。
「言ってるじゃない。桜の下の人よ」
「そうではなく」
「ふふ」
顔を少しむっと膨らませる妖夢。質問の答えになっていない、と子供のように抗議してくる様子が年相応でかわいらしく、思わず笑ってしまう。
「幽々子様!」
「わかってるわよ、少し意地悪しただけ。…ただ本当に、お互いを理解しているようでできていない二人がかわいそうだっただけよ。それに、霊夢にも知る機会は必要だった、それだけよ。」
「…?」
首をかしげてこちらを見つめる妖夢の頭をなでる。
家族の問題を、知る必要のないことをこうもいろんな人に語るべきではないのだし。
実のところ、桜の下の人間も大方予想はついているのだから。
「難しい話だし、私たちが首を突っ込むことでもないわ。……ねえ、違う?彼らの問題を、こうも大人数には気が引けるもの」
先ほどまで伊織が座っていた位置に向かって声を投げかける。
妖夢がまたすこし呆けた瞬間、空間に裂け目が入る。
罅でもなく、鋭い刃物で切られたように薄い線が入り、そのままぱっくりと文字通り開いた。
そこから、見知った人物が出てくる。
「それもそうかもしれないわね。私が思うよりも血のつながりというのは大きいもの、ということは覚えておくわ」
瞬間、いつの間にやら刀を抜いた妖夢が切りかかる。
「無礼者…貴様、どこから入った!」
「どこからって、”スキマ”からよ。ありとあらゆるもの、事象の境界、その間…そのすべてが私の居場所よ。どこからも何も、扉の締まっていない家なんてどこからでも入れるでしょう?」
「妖夢、知り合いよ。…ここでくらい傘を閉じたらどう?」
刀を触れることすらせずに止められている妖夢を止める。
おそらくこの子はこれをまた気にするんだろう…と思いつつも、祖父から少しの失敗も敗北も許せない性質だった。
「あなたも優しいわね。お気に入りをとられるとへそを曲げているとばかり思っていたのだけれど。悩みを聞いて助言するだなんて、死にしか興味を示さない冥界の主も人間らしくなってきたじゃない?」
「心外ね、もともと人間よ。それに、お気に入りだからこそ、よ。私にはあのつながりはまぶしくて、重要なものというだけ。彼らの運命は変わらないのだから、その旅の途中くらい答えを知るべきよ」
「ふぅん、あの子にもあなたにも何か思惑があるってことね。…それが何かは知らないでおくけれど。」
紫もたいがい甘いじゃないか、と思ったけれど、心にしまっておくことにした。
それがあの二人の…伊織のためになる。
自分の旅の終わり方を決めるのは自分であるべきだし、大事なものは大事にしなければならない。当たり前のことだからこそ、それが当たり前であってほしい。
いろいろ楽しませてもらったし、これくらいのサービスはされてもいいだろう。
「それじゃあ、もう行くわね。」
「早すぎないかしら?もう少し話していけばいいのに」
「寝足りないのよ。どこかのわがままなお友達にたたき起こされたせいで今回は目覚めが随分と遅れそう。……それで、貴女から見て霊夢は合格?」
「もちろん。あれの次の代なら申し分ないと思うわよ。」
「それが聞けたら十分。」
そう言い残して神出鬼没のスキマ妖怪は姿を消した。
伊織と霊夢の戦いを見ても、実際に戦ってみた感想としても、霊夢は博麗を継ぐにふさわしい実力と素質がある。
紫も随分と焦っているみたいだけれど、伊織も進める気のようだし、そこまで悩むこともないだろう。
これを進めることが管理者の最も優先する責務なのだから気にかけるのも仕方ない。
「ふう」
そろそろ決着がつく頃。
あの二人が、どんな答えを得たかも、そもそも答えを出したかもわからないけれど。
それでも、残された時間を共に過ごしてほしい。
「分かり合えないままなんてかわいそうすぎるじゃない?」
家族はかけがえのないものであるのだから。
書きたいわけではない話書くの苦手すぎんか。
自分が何書いてんだかわかんなくなった。
読みづらかったら言って
あと訳あって、花映塚は飛ばします、ごめんね
兄上には死んでほしい?
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はい
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いいえ
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死にかけて