妹に兄と呼ばれたい。   作:any

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サブタイトル
泡影


妹も過保護である。

 

「霊夢」

 

 

 

朝目を覚ますと、いつも通りの兄さんの姿が目に入る。いつも起きない私を起こしてくれるが、今日はまだ外が暗いように感じる。焦点の定まらない視界に映る兄さんの表情は柔らかいように見えるが、どこか険しさもある。

 

こういう時、決まって異変が起きる。

異変はいつも妖怪やら神やらが、好きなように起こして迷惑をかける。その発生を知るすべを私たちは持ち合わせていないが、なぜかいつも兄さんは知っている。

 

 

 

 

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それをいつも、気づくことになる。胸の奥から形容しがたい、底知れぬ黒さを持った感情がのぞくのを悟られぬよう意識をぼやかす。

私が兄さんに抱いている感情を知るものは、誰もいない。かつて出会った悟り妖怪ですら、私の心を見れぬままだった。

 

それは愛のようで、悲しみと憐れみを帯びた、別の思い。

 

こうして無駄な時間を過ごすのも合理的でない。兄さんを害するものがあるなら、可能性があるなら、異変が起きているのなら。

つぶさねばならない。

そう言い聞かせて思考を打ち切ろうとする。

それでも、私の思考は止まることはない。

 

 

 

兄さんについて、私の知らない、知りえぬナニカがある。

 

 

許せない。

 

 

 

これ以上傷つけさせない。

 

 

 

とうに感情は、理性を振り切っているのかもしれない。

私や兄さんのような巫女など、神に近しい人間の扱える力、「霊力」。誰もが持っていて、ありふれていて、普遍的でありながら、未知数で、幻想的で、誰にも扱いきれぬ力。

私は、生まれつきその才能を持っていた。

私の霊力は、底が見えない、と言われる。

 

 

私に扱いを教えた紫が言うに、霊力は感情が原動力。何事にも興味関心をあまり示さない私が大きな力を扱えるのは、才能以外の何物でもないという。

でも違う。

私だけが知っている、私の力の源はこの止まらぬ思い。

 

兄さんへの感情すべてが、力になりうるのだ。

 

 

「なんだ、まだ寝ぼけてるのか?まだ子供だな」

 

 

 

そういいつつ、兄さんがまだ体を起こさない私のそばに腰を下ろした。

手を伸ばし、私の頭をなでる。

 

兄さんの掌の体温が温かい。こうしていつまでも、と願う。

 

 

「もう少し寝かせてあげたいが…異変が起きているんだ。行ってくれるか?」

 

 

予想通り、異変が起きている。

つくづく兄さんは甘いな、と思う。異変が起きている以上里の人間が危機にさらされているのに変わりないのを知っていて、私を無理には起こさない。

私を見守る。

その姿勢を貫くのだ。

 

その優しさが、どれだけ私を救い、自分を傷つけたか。

…………駄目だ。どうしても抑えられない。また思考の渦に入ってしまう。

 

 

掛け布団をはがし、体を起こす。

頭を振って前髪をどかし、まだ座っている兄さんを見る。

 

 

「おはよう」

 

 

 

それだけ言い放ち、部屋を出る。

顔を洗って、髪を最低限梳かしたら、きれいに畳んでおかれていた服を着替える。邪を取り除く模様が施された、赤と白の巫女装束。博麗の巫女が着る服だ。多少なりとも雑に扱おうといいものだが、兄さんはそれを良しとせず、丁寧に扱う。

その辺に放っていたお祓い棒や博麗に伝わる宝具を持ち、札をもって外に出る。

 

 

空が紅い。

いつも青く、太陽の照らす空が、紅く染まっていた。それも、ただの赤ではなく血のような、深く鮮烈な紅。

息を吸うと、その紅が混じって入ってくる。

 

 

 

その成分は、妖怪の力である「妖力」。

人を化かす、あやかしの力。その本質は変幻自在であり、妖怪はそれぞれで固有の力を持つことが多い。

その力は人の恐れから生まれ、穢れをはらむ。その穢れは人を害し、神の格すらも落とし、霊力によって浄化される正反の力。

 

主犯は妖怪。

 

 

この紅の主となる成分が人に有害である以上、兄さんにも多かれ少なかれ害が出ている。

 

 

 

 

空をにらみつけ、鳥居の前に立つ。

「弾幕ごっこ」などというルールさえなければ、この主犯である妖怪を「祓いたい(殺してやりたい)」、と思う。私は自分の感情を制御しようとするが、否定はしない。ただ、心の底からこう思う。

 

 

「兄さんのためなら、容赦はしない(皆殺しにする)。」

 

 

考えを打ち切り、目を閉じる。

体を意識で上に持ち上げるようにイメージを浮かべる。すると、体が浮かび上がる。

 

 

「空を飛ぶ程度の能力」

 

私が生まれつき持っていた能力。

文字通り、空を飛べる。人の身で鳥のように自由に空を飛ぶことができる。

 

 

空高く飛び上がる。

周りを見渡すと、遠くの湖の上に見慣れない紅い館が見える。空の色と同じ紅。そこが原因だろうか、とあたりをつける。

いつも、異変の解決方法はいたってシンプル、怪しいところすべてをたたくことだ。

私からすれば、疑われるほうが悪い、といえる。

 

 

 

そうして、紅い館へ飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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飛んでいる間に、羽虫程度の妖怪を一匹倒した。

聞き出せる情報がないかと期待していたが、話をしても人類がなんだの、ヒトの味がなんだの、十字架がなんだのと価値のないことを話すばかりだった。

 

話にならない、と切り捨てて弾幕をすべて弾き、打消してやれば、すぐに降参した。

 

 

そのまま紅の館の門の前に立つ。

 

 

 

門の前には、緑の服を着た赤い髪の妖怪が立っている……いや、立ちながら寝ている。

戦うか、話すか迷ったが、余計な時間を使うほどでもない。こいつがカギになるとしても、あとから叩き潰してやればいいだけのことと割り切り、先へ進もうとする。

 

その門番の横を通り過ぎ、門を開けようとする。

肩に手を置かれる。

 

 

「門番を無視して入ろうとするなんて、ずいぶん品がないことをするんですね。」

 

 

横に目をやると、直前まで眠っていた門番がこちらをにらんでいる。

 

 

「品の話をするなら、客人が来たのに門もあけずに居眠りをする貴女のほうが問題があると思うけど?」

 

「残念ながら、もう来るとわかっている客人はとっくにいらっしゃったのでね。博麗の巫女は来ませんでしたけど、貴方がそう、ということであってますよね?」

 

 

()()()()()()()()()()()()

博麗の巫女でない、誰かが。幻想郷に入ってくるものを迎える役割を持っているのは、この世に生きている者では二人しかいない。

管理者、八雲紫の代弁者として行動することが許されている人物。それは、八雲紫の式神である九尾のキツネ、八雲藍。

 

 

そして、兄さん。

 

 

「来たのは誰?」

 

 

「あなたが知ってどうにもならないでしょう?それより、この紅魔館にどんなご用件で?」

 

妖怪が構えをとる。どうやら、客人としてもてなす気はないらしい。

手に妖力をためるのがわかる。

 

 

こいつもか。

問い詰めれば、はぐらかされる。

苛立ちが募る。こんな雑魚、どうだっていいのだ。私の求めることを知らぬのなら、従えぬのならば死のうと関係はない。

そんなことより。

兄さんが私の知らぬ間に、また危険なところへ足を踏み入れている。

兄さんは、まだ私を子供だと思っているから、めったに頼らないし、心配かけさせまいと、私に黙って行動する。 

 

 

「私の用件?それはーーー

 

 

許さない。

 

 

「此処の主ーーーあんたの雇い主に用があるのよ」

 

 

そういうと同時に、距離を詰める。

目を見開いている妖怪の胴体に、宝具の一つである陰陽球を打ち込んでやる。霊力がこもった陰陽球は、妖怪の腕による守りをいともたやすく貫通し、胴体にダメージを与えた。

 

妖怪は両方の腕の先がなくなり、口から血を流している。

陰陽球は、弾幕ごっこという遊びにおいても使用が認められている以上、私はルールを違反していない。ただ、目の前の妖怪が弱すぎただけ。

加減していたからこれで済んだ。殺してしまってもよかったが、それは一応ルール違反だし、何より兄さんが悲しむ。

心配もかけるわけにはいかない。

 

 

それに腐っても妖怪なのだ。

腕なんてすぐに生えるし、その傷も治せるのだろう。

 

「あーあ、門をこんなにしちゃって……怒られるのは私なんですけどね。」

 

 

くだらないことをぼやく。

 

「客人は男?」

 

 

「またそれですか…あなたには関係ないでしょう。まあ、負けた以上答えますが。男ですよ、背丈は私より少し高いくらいの男性で、人間。八雲の使いだそうで。」

 

 

兄さんだ。

紫に頼まれてきたのだろうが、あいつが自分で行けば、兄さんはこんなところに来る必要はなかった。

少し目をやれば、もう腕が生え始めている。

 

「にしても、博麗はずいぶんおっかないですね。弾幕ごっこは遊びと聞いていたのに、ここまで容赦がないとは…」

 

「あんたら妖怪は、調子に乗りすぎたのよ。遊びじゃ命は脅かされないなんて甘い考え捨てなさい。もし、私の兄さんに危害を加えるようならーーー

                        殺す。」

 

 

門の横に寄りかかる妖怪に向けて言い放ち、中に入る。

門は先ほどの陰陽球の衝撃でひしゃげ、壊れていた。庭を歩いて、大きな扉を開ける。そのまま自分の勘に従って歩けば、すぐに大きく開けた部屋にたどり着く。

 

部屋の奥の、上にはステンドグラスがあり、その前に翼の生えた何かが浮いている。

 

 

「ようこそ、我が紅魔館へ。歓迎するわよ、博麗の巫女?」

 

 

こちらに振り向き、笑みを浮かべながら言葉を放つ。

その妖怪見た目は、少女であったが、妖怪である以上見た目は年齢を測る物差したり得ない。それに、翼からして吸血鬼だろうから、なおさらである。

 

ふと下を見れば、銀色の髪のメイドがたたずんでいる。先ほどまで気配を感じなかったため、少し警戒する。

 

 

「何をそんなに警戒してるのか知らないけど、何をしに来たのかしら?先ほどはずいぶんとうちの門番と遊んでくれたみたいね、派手な挨拶は好きよ?」

 

 

「ずいぶん饒舌ね、今から自分が祓われると思わない?」

 

 

「あら、心外ね。貴女が私に勝つだなんて、舐められやすい見た目なのかしらね?あぁ、申し遅れたわね、私はレミリア・スカーレット。かのヴラド公の子孫にして、高貴なる吸血鬼。この紅魔館の主よ。何をしにここへ来たのかしら?迷い込んだネズミさんなら、五体満足で返してあげるわ、今ならね」

 

 

「あっそ。夜にパタパタするしかできない蝙蝠風情が、ずいぶん自分に自信があるのね。私は博麗霊夢。13代目博麗の巫女よ。ここに来たのは空が紅くなってるから。あんたの仕業?」

 

 

言葉を交わしてわかる。

この妖怪…………レミリア、とやらはこの空が紅い異変の首謀者だ。吸血鬼は日光に弱い。その日光がうざったいから遮ってしまった、とかそんなくだらない理由だろう。

 

 

「あら、正解。太陽が邪魔なのよね。でも別に、貴方たちもそこまで太陽は必要じゃないでしょう?私たちの逆に、太陽がないと死ぬーっていうことでもないでしょう?」

 

「私が来る理由は必要?じゃあ、洗濯物が乾かない、とでもいえばいいのかしら。それとも、異変解決が仕事だから、のほうがいい?」

 

「野暮な質問だったかしら?まあいいわ、あなたは霧を消させたくて来たんでしょう?でも私は消したくない。残念ながら利害は不一致よ。」

 

 

 

そんなこと、長々話さなくても知っているというのに。

 

 

 

「ならどうするか、ここのルールはちゃんと学んであるわよ」

 

 

「最初からそのつもりなら、早くかかってきなさいよ。面倒だし、そこのメイドもまとめてかかってきなさいな。」

 

 

奥に立っているメイドを指さし、手招きをする。

すると、レミリア・スカーレットは笑いながら否定した。

 

 

「あなたこそ、ずいぶんな自信ね。私は高貴な吸血鬼よ?もちろん正々堂々一対一よ。…咲夜、貴女はパチュリーのほうに行ってあげなさい、最近運動してないでしょうしね、助けてあげて」

 

 

「かしこまりました。失礼いたします」

 

 

恭しく一礼した後、一瞬で姿が消える。

何らかの能力なのだろう。

 

 

「さあ、やりましょうか」

 

 

レミリア・スカーレットは自分よりもはるかに大きな槍を作り出し、即座にこちらへ投げる。

それを陰陽球で弾き、二つ目の陰陽球を前に打ち出す。弾幕を展開し、距離を稼ごうとするレミリアに、陰陽球を盾にして近づく。

 

一つ目の陰陽球を手元に戻し、近距離から打ち込むと、レミリアは即座に作り出した槍で弾き、そのまま槍の間合いで攻撃を仕掛ける。

自らの力で作り出した武器ならば、使用が許されている。弾幕がそもそも自らの力を玉としてかたどっているため、弾幕としての扱いになる。

振り回される槍はかすればグレイズ(当たった)判定になるため、余裕を持って回避する。幸いにも空中なため、横だけでなく縦も使って回避する。

 

「ずいぶん動けるのね、人間もまだ捨てたものじゃないわけね」

 

 

「棒を振り回すなんて子供でもできるわよ、それだけで私に勝つなんて言ってたわけ?」

 

 

「あら、言うじゃない。ふふ、私のグングニルを棒切れ呼ばわりなんて、そんな無礼者、はじめてよ?」

 

 

「それは光栄ね」

 

 

「さて……こんなに空も赤いことだし、本気で殺すわよ」

 

この会話を皮切りに、槍の合間合間に弾幕が飛んでくるようになる。

それも、密度が高い。すべてをよけきるのもできるが、それは面倒くさい。おとなしく自分の弾幕や陰陽球で消し飛ばし、空間を作る。

それに混ぜてこちらの弾幕も打ち込んでみるが、すべて槍で消される。

槍は先ほど投げたものと違い、本人からの力の供給があるためはるかに硬く、陰陽球では受けきれない。しかし、守る手段はある。

お祓い棒を一振りしてやれば、魔の力を打ち払うことができる。それには妖力も含まれるため、軌道をそらしてやる。

 

「ずいぶんいい玩具じゃない」

「でも、守りだけじゃ勝てないのよ?少なくとも、私にはね」

 

そういうとともに、さらに攻撃の激しさが増す。

攻撃が激しくなるということは、その分守りの意識が薄まる。打ち込んでいる弾幕が消される位置が、次第にレミリアに近づく。

それを確認して、あえて一瞬の攻勢に出る。お祓い棒を投げつけ、距離を詰める。投げたお祓い棒は突き刺さる寸前につかみ取られる。

そして、レミリアは槍をはじく手段のない私を槍で突き刺そうとする。

 

その瞬間に、お祓い棒と同時に投げた札がレミリアの槍を持つ手を空にしばりつけた。レミリアの思考がほんの数舜途切れ、弾幕が止まる。

それを確認し、陰陽球を二つとも打ち込む。その二つは先ほどの門番をうがった時のように、とっさにもう片方の腕に槍を持ち替え、防御をするレミリアを打ち抜いた。

 

「こっちの運命になったのね」

 

レミリアの小柄な体は陰陽球に押され、ステンドグラスを突き破って外まで打ち飛ばした。

そのまま私も追って外に出る。

空は紅い霧がかかってわかりづらいが、夜に差し掛かろうとしていた。

 

 

「残機は2つでいいのかしら?」

 

「あら、気が早いのね。それに、後がなくなってから勝つほうが格好いいでしょう?」

 

 

レミリアは手加減していたとはいえすでにダメージを回復し、さらに大きくした槍を握り笑みを浮かべていた。

それを冷たく見上げ、言葉を放つ

 

 

「棒切れを大きくしたところで、私には勝てないわよ」

 

「その棒切れに今からあなたは貫かれるのよ?」

 

 

レミリアが羽をはばたかせ、高速でこちらに突撃する。

陰陽球に霊力を込める。レミリアを槍ごと打ち抜いて、完膚なきまでにつぶしてやれば、素直に負けを認めるだろう。

残機が決められていない以上、戦闘不能か心が折れるまで、決着はつかない。

ならば、心を折るまで。

 

そう心に決め、多めに霊力を込めた陰陽球をレミリアに向け、打ち出す。

 

 

レミリアの槍と陰陽球が衝突するその時。

 

 

 

館から轟音が響き、爆発が起きる。

 

 

その爆発から飛び出る二つの影。

その影は、高速で飛び回りながら、攻撃をかわすものと、でたらめな攻撃をするものに分かれる。攻撃を続けるのは、翼のような、枝のような何かの生えた妖力を垂れ流す少女。

もう一人は……

 

 

 

「………兄さん?」

 

 

 

魔理沙を抱えている伊織。その表情は、ゆがんでいる。

 

 

「アハハ!逃げるばっかりじゃ、楽しくないでしょう?!」

 

 

「俺は、楽しくなくていいさ!」

 

 

そういいながら兄さんは攻撃を避け続ける。

服はところどころ焦げていて、傷がみられる。

 

「なんで、にいさんが、ここに、」

 

嗚呼、駄目だ。

感情があふれ出る。

追いつかない思考が黒く塗りつぶされていく。

傷ついている兄さんから目が離せない。

 

 

 

()()

 

 

 

体が、言うことを、聞かないーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ながいはやいてんぽわるい。
戦闘かけない。
れいむはよくわかんない。暴走する。

兄上の戦う頻度は?(この先の異変でどれくらい戦うか)

  • 進み続けろ、曇らせタグに報いるために
  • 少なくして
  • お前がやりたいようにしろ
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