妹に兄と呼ばれたい。   作:any

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幕間は次かもしれないし、書かないかもしれない。


兄と姉の落とし前

 

 

「なんで、止めるの」

 

 

止めを刺そうと夢想封印を発動した霊夢を制する。

うちのかわいい妹は今も相変わらず平常運転、反抗期だな………なんて、能天気なことを考える。親のような心持で霊夢を見守っていると、自然と笑みがこぼれてきた。

言葉をかけるのと並行しつつ、霊夢の前に出て発動され、宙に漂う夢想封印に刻まれた術を解いてゆく。

 

 

痛みが振り切れ、いよいよ感覚を失っている腕を空にかざし、練りこまれ、刻まれた霊力をゆっくりとほどき、霧散させていく。

それと同時に回転する弾を魔法によって風を用いて制御。

 

 

 

ふわりと包み込み、優しく落ち着けていく。

すると次第に、そのまばゆい光が薄れ始め、完全にいつもの姿に戻ると持ち主の制御を失った陰陽球が地面へと落下する。

無害化できたのを確認したら、吸血鬼とか霊夢に投げ飛ばされたメイドさんたちのほうへと向かう。

 

 

ただでさえ歩きづらい体だというのに、正直フランからのダメージでもはや足が動かない。普通なら受けて死んでいるような爆発、それも”破壊”の権能による一撃を数回食らっている。

直撃でないにせよこれくらいのまあ、死にはしない程度の傷で済んでいるのは、奇跡といって差し支えない。

おかげで足を動かすたびに全身が裂けるように痛み、軋みだす。あー、これどこか折れてるのかもしれないな。

しかしその痛みおくびにも出さない、無用な心配をさせないのが兄の務めでもある。

 

 

「伊織、処分の邪魔をしないで」

 

 

霊夢がこちらを鋭く睨み、強烈な殺気を放つ。

正直背筋を冷やしつつも気にも止めない風を装い、受け流す。まあ、大妖怪に比べればまだ場数の少ない人間だ。

まだまだかわいい範疇だ、と言い聞かせる。

 

これ以上何も言わないと自分まで攻撃されそうで怖いので、言葉を返す。

 

 

「彼女らは、俺を殺そうとしたわけじゃないさ、そうだろう。現に俺は死んでいない。吸血鬼である彼女等が本気で殺すつもりならとっくに俺は死んでいるさ」

 

 

「だから、彼女らは無罪だ。…………後始末は、俺と紫がやるよ。今回もお疲れ様、霊夢。」

 

 

霊夢の瞳の冷たさが増す。

 

 

実際のところ、弾幕ごっこは当たり所が悪ければ死人は出る。

それは紫も認めていて、実際妖怪相手もしくは妖怪同士での弾幕ごっこなら腕や足など、生やせるところは消し飛ばせる威力でいいらしい。

俺はあまり気が乗らないし、そもそも弾幕ごっこに対して苦手意識があるため、聞き流したが霊夢はこれを実践している。

 

 

まあ、プライドの高い相手ならそれで煽ってやれば激昂し冷静さを失うこともある。

俺自身、大妖怪相手は割とこの手段をとっていることもあった。

再生の時に時間ができるし、一瞬とはいえ行動制限をかけられるうえ、相手の体力を削ることもできる。

 

遊びで四肢が飛ぶのもどうかと思うが。

 

 

そんなことを思いながら、すぐ目の前で膝をつく吸血鬼……………レミリア・スカーレット、?に声をかける。

息を切らしていたレミリア・スカーレットははっとこちらを見上げ、下から睨みつけてくる。さすがの高潔さ、折れない精神に感嘆する。

 

 

その深紅の瞳と目があった時、その美しい瞳が見開かれ、レミリア・スカーレットは声を漏らした。

 

 

「、!貴方、一体、どんなことを………いや、どれだけのモノを………!?正気じゃ……!!」

 

 

「………バレました?」

 

 

「嘘、あり得ない、そんな……………いや、だからこそ、なの?でも、どうしてそこまで……?」

 

 

俯き、何かをつぶやくレミリア・スカーレット。

どうやらこちらも特別な能力もちで、しかも、こちらの情報を読み取れる系統らしい。

どうにも運が悪い……。

 

隠してたんだけど、霊夢には聞こえてないなら、いいか。

 

 

とはいえ、ばらされても困る。

 

 

「取引をしよう」

 

 

そう持ち掛けると、もう一度驚いたように顔を上げる。

 

 

「こちらの出す対価は、幻想郷への受け入れと、あなたたちへのこの場での応急処置、建物の修復。」

 

「…ずいぶんと虫のいい条件ね。貴方を傷つけておいて、ね。いいわ、条件を飲みましょう。それ以外この場で選択肢はないものね。」

 

 

予想通り素直に受諾してくれた。

しかしあちらからすれば求められる対価は未知数であり、そのせいでかレミリア・スカーレットはひどく緊張した面持ちで、唇をかみしめながらこちらの様子を伺っている。

 

 

「じゃあ、対価として求めるのは大きく分けて、三つ。一つ目は、ここのルールに従うこと。二つ目は、この霧を消すこと。三つ目は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「それだけでいいの?私にはもはや、あなたのような化け物に逆らう気力はないのだから奴隷にでもなんでもすればいいのに」

 

「それは、個人的に嫌だから、ね。じゃあ、取引成立、かな?」

 

 

レミリア・スカーレットはこちらを怯えと疑いの視線で見つめる。

怯えている理由はよくわからないが……疑いの視線は彼女の妹……フラン・スカーレット?についての処遇のことだろう。

 

最初に言った通りなのだけど。

 

 

「ええ………でも、一ついいかしら。フランは、あの子についてはどうなるの?」

 

 

心配そうに、懇願するようにこちらを見つめるレミリア・スカーレット。

安心させるように笑みを浮かべ、言葉を返す。

 

 

「”幻想郷はすべてを受け入れる”………それは残酷で、とても美しい、儚いものだ。最初にも伝えた通りのままね。ここで暴れたのは妹さん………フラン・スカーレット様?俺と、霊夢と、貴女と………あのメイドさんには無理があるから、パチュリー?様、ということで。」

 

「ええ、それでいいわ。ありがとう。それと、あの子はフランドール。フランドール・スカーレットよ。いろいろと迷惑もかけて、申し訳ないわ。いつか、返させてもらうわよ」

 

 

 

その言葉にうなずいて返し、彼女の前に跪く。

そうして、ぼろぼろの布切れとなり果てた袖を破り、血が滴る左腕を差し出すと、察したレミリア・スカーレットは腕にかみつき、俺の血液を吸い取る。

人間の力の源であり、妖怪を生み出す元ともなりうる霊力を常人よりも多くため込んだ血液を取り込み、レミリア・スカーレットは見る見るうちに回復する。

 

 

そして、腕から口を離し、立ち上がったレミリア・スカーレットは、最後に一つだけ、と口を開く。

 

 

「私の能力は”運命を操る程度の能力”。勝手にあなたの運命を覗いたこと、謝罪するわ。」

 

 

そう言ってまたもや頭を下げようとするレミリア・スカーレットを制する。

立場的にはあちらのほうが上なのに頭を下げられてばかりでは………………

 

 

「その上で、聞かせて。貴方の体の状態を見たの。貴方は一体……っ?!」

 

 

必死さをどこか感じさせる声色で聞いてくるレミリア・スカーレット。

その言葉を遮るように、人差し指を立てて自分の口に当て、口外厳禁であることを伝えると、レミリア・スカーレットは「そうね、無粋だったわ」と、謝罪し、引き下がってくれた。

 

そしてその後。

霊夢が不機嫌そうに空へ飛び立ったのを確認し、メイドさんに魔法による回復を行った後に、魔法使いのパチュリーとやらを回収。

伸びていたので治療しようとしたら、ただの運動不足とのこと。

 

 

 

そして最後に、フランドール・スカーレット。

霊夢によって壁にたたきつけられ、何枚かの壁を貫き、瓦礫のそばに転がっていた。

レミリア・スカーレットと同じように血を飲ませると意識が回復。

 

最初はぼやけていたのが、目覚めて少しすると突然頭を抑えて呻き始める。

先ほどまでの狂気はすでになく、そこには何かにおびえ、姉に縋り付く少女だけがいた。その姿を見ているのもいたたまれないため、大人しく退散。

 

 

経過については、後日報告とのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し日をまたいで。

幻想郷には、いくつか変な決まり事というか、伝統というか、恒例行事がある。

 

 

 

それは、異変解決後の宴会。

 

 

人間、妖怪問わず参加できる。

酒はそれぞれが持ってきたり、うち(博麗神社)へのお供え物を飲んだり。

 

少なくとも、今回のように新しく幻想郷にやってきたものを迎える行事である。

 

 

 

この時は、霊夢はさすがの人望で妖怪や人間が周りに集まっている。

 

 

紅魔館の住人たちはあいさつ回りをしているようで、フランドール・スカーレットも参加しているようだ。

 

それを縁側で遠目に眺める俺。

一人で静かに飲むほうが、個人的には好きだったりするわけではない。ただ、俺があの中に交じっても、といったところではある。

 

 

ふわり。

 

 

はぁ、とため息をつく。

面倒くさいのを押しこらえて、屋根の上へ向かえばそこには紫が当然であるかのように、いた。

 

 

 

「お疲れ様かしら?今回の解決は思っていたより早かったのね。霊夢が珍しくやる気を出したのかしら?」

 

 

「そんなとこです。………報告、いります?」

 

 

 

今回の異変の結果報告で呼ばれたわけだが。

この反応からして、どうせ見ていたのだ。たちの悪い事をする。

 

 

「報告はいいわ。………油断しすぎよ、貴方。あんな小娘にやられるだなんて幻想郷の管理者代理が聞いてあきれるわね。」

 

「はいはい、すいませんでした。」

 

 

仰々しく扇子をぱたぱたと煽ぎ、こちらを見る。

その視線に含まれた意図を汲み取り、空にむかって声をかける。

 

 

「ただ酒はおいしいかい、伊吹童子?」

 

「いつも言ってるだろ?………最高だよ、これ以上うまい酒はない」

 

 

黒い霧がどこともなく表れ、小さなつのの生えた少女をかたどる。

見た目は完全に幼い少女だが、そのうちに秘める妖力の質、そして量。それに加えて放たれる圧力と頭の血のような赤にまみれた角がその小さな少女が最強の種族の一つである鬼のうちの一人、その中でも上位であることを示す。

 

かつて人に伝説として伝えられた、”伊吹童子”。

 

 

またの名を”酒呑童子”。

 

 

「そうだ、今回の相手はどうだった?苦戦したんだろ、強かったか?」

 

 

ケラケラ笑いながら語りかけてくる様は無邪気な子供だが、そのうちに秘めたる暴威は想像を絶するものである。

そんな化け物の話を遮る紫。

こっちも同類だったな、と思い出す。

 

「伊吹萃香、本題に入らせてもらうわよ。………伊織、使()()()()()()()?」

 

 

「使ってませんよ。」

 

 

「なら、いいのよ。時期尚早なのよね、全てにおいて。」

 

 

安堵なのか憂鬱なのかわからないため息を漏らす紫。

それを見てつまらなそうな表情を浮かべ、再び霧となってどこかへと消える伊吹童子。

下で行われる宴会のにぎやかさと対照的に静けさが戻ってくる。

 

 

思案を終えた様子の紫が立ち上がり、よるというのに大きな日傘をさし、こちらを見下ろす。

 

 

「これからも、働いてもらうつもりよ。貴方の実力にあった期待をしておくわ。」

 

 

そう告げると、自らの力空間へとつながるスキマを通り、消えていく。

一瞬にして一人になる。

星空を少し眺める。

 

 

 

 

………寂しいし、下にでも戻ろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




未来、見えちゃったね?


何と二日連続。


褒めたたえて。



高評価、感想ほんとにお願いします。

兄上の戦う頻度は?(この先の異変でどれくらい戦うか)

  • 進み続けろ、曇らせタグに報いるために
  • 少なくして
  • お前がやりたいようにしろ
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