前回、ルキア、〈志波海燕〉扮するアーロニーロと戦闘…否、約束の修行開始。
あの日以降の鍛錬の成果を見せる事に成功した。
今回、茶渡、雨竜、恋次は十刃落ちと接触。
さて、どうなる?
茶渡泰虎の場合。
心身共に鍛えられる鍛錬系の課題ばかりをクリアしたおかげか、最後の課題、ザエルアポロなる人物の失敗作だという異形の破面の出来損ない20体と、かくれんぼしながら戦うを無事クリア。
結果、新たな能力〈悪魔の左腕〉をより洗練されたものへと進化させる事に成功した。
『立体迷路クリア1番乗りおめでとう!』
スパパパアァァァァン!(クラッカーを鳴らした音)
「はぁ…はぁ…はぁ…」
『いやぁ~、まさかココまで出来るなんてちっっっとも思って無かったよ!だって、この迷路のテスター達の中で、一度もやり直しにならなかったのなんていなかったもん!誇ってイイよ!!』
全く嬉しくない賛辞を背に息を整える事数分、スピーカーへと向き直った。
「…俺はこの後どうすれば良い?」
『んぁ?…あぁ、そこの?マークの箱から紙1枚取って読んでちょ』
ガサガサ…ピラッ
「…アフロからの招待状?」
『お~、中々イイの引いたねぇ~。じゃ、行ってらっしゃ~い!』
「は…?」
足元が光ったと認識した瞬間、何処かに飛ばされた。
飛ばされた先に居たのは、紙に書かれた通りのアフロ頭の男だった。
思わず身構えた茶渡だったが、制止の手を向けられた。
彼の名前はガンテンバイン=モスケーダ、ハウラとの出会いは距離感を間違えた所為で、横っ面を引っ叩かれて気絶させられた事、そしてあの立体迷路のテスターとして散々な目に遭わされた者の1人だという。
何だか親近感が湧いた茶渡は、彼の勧めた椅子に座って話を聞いた。
「あの立体迷路をたった数時間でクリアした時点で、お前は俺を超えている…何せ俺はあの迷路をクリアするのにまる3日かかったからな」
「…そんなにか?」
「あぁ、強くなる為に最適な鍛錬が出来ると聞いて参加したんだ…そう、確かに鍛錬にはなった。しかし、その合間合間に何の役に立つのか全く解らない現世の雑学クイズを突然やらされて…正解も解らぬままにスタートに戻されるを繰り返す事89回、何度挫折した事か…」
「大変だったんだな…そして、俺は今回運に恵まれたんだな」
「運も実力のうちと言うだろう。さて、そろそろ本題に入らせて貰う」
「む…」
思わず身構える茶渡に苦笑しながら、ガンテンバインは尋ねた。
「ホットケーキと小動物は好きか?」
「…どういう意味だ?」
「言葉の通りだ」
「…まぁ、ホットケーキは好きとまで言わないが普通に食べる。小動物は…まぁ、好きだな」
「ならちょうど良いな」
首を傾げる茶渡の前を素通りし、何処に繋がっているのか解らなかったドアを開けた。
「ミャ~ミャ~」
「ミュ~ミュ~」
聞き覚えのある鳴き声の子猫達がヨチヨチと入って来た。
「なっ…」
「コイツ等はハウラのご機嫌を取る為だけに造られた子猫型の破面だ。俺達十刃落ちはコイツ等の世話役も任されている。俺がホットケーキを作り終えるまで相手をしていてくれ。キッチンに来られちゃ困るからな」
そう言ってガンテンバインは部屋を出て行った。
呆気に取られた茶渡だったが、子猫達の愛くるしさに負けて、部屋の片隅にあった玩具で遊び始めた。
その後、ガンテンバイン特製のホットケーキ(フワモチタイプ)にホイップ、メープルシロップ、ジャム、そして紅茶を堪能した。
そして、此処虚夜宮における注意事項と禁止事項について何度も念を押されながら見送られた。
「…敵の筈なのに…これで良いのか?彼は叱られないのだろうか?」
そう心配しながらも、この宮の出口へと向かって走り出した。
『アイツってイイ人だね。ミヤとミユが直ぐ懐いたもん。イイなぁ~、一緒に遊びたかったなぁ~』
「無茶言わないでくれ。〈アンタ等〉が今出て来たら拙いんだろう?」
『むぅ~…ま、しょうが無いか…んじゃ、落ち着いたらまた遊びに行くね!』
「おぅ」
石田雨竜の場合。
『立体迷路クリアおめでと~!君は3人目だね!』
「…はぁ~…そうかい」
『そこの箱から1枚取って読んでくれる?』
「箱?…これか」
ガサガサ…
「…ツバメからの依頼書?」
『OK!んじゃ行ってら~!』
「ちょ、だから説明を…!」
有無を言わせず転移させられた先には、大きな作業机に椅子、そして彼にとって馴染みのある道具が揃った部屋だった。
「此処は…?」
ちょうど真向かいの椅子に足を組んで座っている、苛立たしげに此方を睨む派手なメイクをした女性破面が悪態を吐いて来た。
「ったくもう遅いったらないわね!待ちくたびれたわよ!」
「なっ…君は?」
「今時の人間ってのは、名を聞くなら自分からって事も知らないのかしら?」
「…石田雨竜、滅却師だ」
「チルッチ=サンダーウイッチよ。井上織姫…だったかしら、ハウラが世話してるって子から「っ彼女は無事なのか!?」」
「…セリフ遮らないでくれない?ハウラを怒らせるようなマネさえしてなきゃ無事でしょうよ。さっき少し話したけど、結構ご機嫌みたいだったし」
「そうか…で、この部屋は何なんだ?」
「はぁ?見て解らないの?被服室よ」
「それは解る!何故僕は此処に飛ばされたのかを聞いているんだ!」
「だから、それを説明しようとしたのを遮ったのはアンタなんだけど!?」
「う…す、すまない」
「ったく…ハウラが世話してる井上織姫って子からアンタの事を色々聞いたらしいのよ。アンタの事何も知らないからって」
「井上さん…君って人は…」
素直で天然な彼女が何を話したのか…明らかに戦闘に向かないこの部屋に飛ばされた事から、何となく予想が付いた。
「アンタ、服を作るのが得意なんだってね。それを聞いたハウラが物凄い興味持っちゃったのよ。しかも、そういうのに興味がある他の子達にも話広めちゃってね。で、これ注文書。作れるのだけで良いから作ってよ」
「…僕は侵入者であって、君達専属の服飾職人じゃ無いんだが?」
「知ってるわよ、そんな事。ハウラに興味を持たれたのが運の尽きね。さっさと作らないと此処から出られないわよ。勿論、私も」
「え?」
「私は依頼者代表として此処に居るの。そこのマネキンに依頼の服を着せたら出られるから、ブツクサ言ってないでさっさとやりなさいよ!」
「…っ」
声と黒崎達からの情報でしか知らないハウラという破面に振り回され続けるこの状況に不満を抱くものの、あの立体迷路で疲労が蓄積していたのは隠しようの無い事実。
趣味であり特技でもある服(しかもファンシーからクラシカルなものまで幅広い)を懐を痛める事無く作れるのは、疲労回復及び気分転換にはもってこいだった。
「…こんなものかな」
只管無心になって作り上げた服を全てマネキン達に着せた。
「…こんな短時間で…やるじゃないの」
恐らく自分が依頼したのだろうドレスを満足げに眺めている。
「…これで此処から出られるんだよな?」
「そうね。さっきカギが開いた音がしたから」
そう言ってチルッチは何かのスイッチを押した。
すると、彼が入って来た扉の直ぐ横に新たな扉が開いた。
「此処真っ直ぐ行けば宮を出られるわよ。あ、後これ渡しとくわね。此処での注意事項と禁止事項が書いてあるから、よく読んで守りなさい。無残に殺されたくなかったらね」
「…どういう事だ?」
「…此処虚夜宮の空はハウラの物なの。あの子は此処の空を飛ぶのが日課で大好きなのよ。その空に何かあったら、その原因を地獄の底に叩き落とすだけじゃ足りない。地獄の底を更に掘って掘って掘って掘りまくった穴に、散々嬲られた上で生き埋めにされるわよ」
彼女の必死過ぎる目が真実を語っていると解った。
「…わ、解った。みんなにも共有しておこう」
「そうしてちょうだい。これだけは本当に厳守して、本当にお願いだから!」
ハウラと言う破面をどれだけ恐れているのか、扉の向こう、姿が見えなくなるまでその懇願は続いた。
「…ハウラ=リベラシオン、一体、どんな破面なんだ?」
『ねぇねぇチルッチ、早くそれみんなに持って来てよ!凄く楽しみにしてるからさ!』
(滅茶苦茶ウッキウキな声)
「…この量を私1人で?冗談じゃないわよ!自分で取りに来なさいって伝えといて!」
『え~!?ケチィ~!』
「フン!」
この後、注文書を出した面々が衣装を取りに来て、見せたい相手の所へと去って行った。
阿散井恋次の場合。
『立体迷路クリアおめでとさん。4人目だね』
「…はあ…はあ…はぁ~…」
『疲れてるところ何だけど、そこの箱から紙1枚取って読んでよ』
ガサガサ…
「…黒ヒゲダンサーからの挑戦状だぁ?」
『お~、多分悪くない選択だと思うよ。んじゃ早速行ってみよ~!』
「ちょ、おい!」
パカッ…ウイィィン、ガシッ
「くそっ、離せっ…」
ウイィィン、ポイッ
「っだあああぁぁぁぁ…」
UFOキャッチャーの景品のように掴まれ、穴の開いた床へと無造作に放り投げられた。
ヒュルルルル………ドサッ
「いってぇ…あの野郎…!」
「待っていたぞ坊や」
「っ誰だ!」
「吾輩の名はドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオ!決して黒ヒゲダンサーでは無い!良く覚えておきたまえ!」
「…長くて覚えきれねぇよ、オッサン」
「んがっ!…ま、まぁ良い。坊や、君の名を聞いておこう」
「6番隊副隊長、阿散井恋次だ」
名乗りながらも放り込まれた部屋を確認した彼は、どう見てもこれから戦闘をする空間では無いと気付いた。
「…どうかしたかね?」
「どうもこうもねぇよ。何で部屋のど真ん中にあんなでけぇテーブルがあるんだよ!?布で隠してるモノは何だ!?」
「これから行う戦いに必要不可欠なモノに決まっているだろう?」
「テーブルでやる戦い…腕相撲でもやろうってのか?」
「ふっ…レフェリーも居ないのにそんな事をする訳が無かろう」
「じゃあ何すんだよ!?」
「それは…」
バッと勢い良くテーブルクロスを外した。
出て来たのは大量の2口くらいで食べられる小さな鯛焼きだった。
「鯛焼き早食い競争だ!」
「…出口は何処だ?」
半眼になった恋次、壁のあちこちを触っては扉を探し始めた。
「ちょちょちょ、待ちたまえよ!何だその反応は!?吾輩を無視するんじゃない!」
「何で敵陣に来て、わざわざんな競争しなきゃなんねぇんだよ!」
ごもっともな意見である。
「食べ切れないからに決まってるだろう!?」
「はぁ!?」
「これは元々、あの立体迷路で使われる予定だったモノだ!しかし、誰も用意された部屋に行く事無く終わったらしくてな。そうしたらあのワガママ娘、勿体ないから食べてね、これノルマだからと…吾輩の胃にはどう頑張っても入り切らんこの量を…頼む!受けてくれ!」
終いには土下座して頼み込んで来た。
流石の恋次も此処まで縋られて無視は出来なかった。
ハウラ=リベラシオンとやらは、相当の曲者らしい。
「…仕方ねぇな…勝敗はどうやって決めんだよ?」
「受けてくれるか!?うむ、勝敗は制限時間内により多くの鯛焼きを食べた方の勝ちだ!ちゃんと同じ皿に同じ重量の鯛焼きを盛ってある!競争後、そこの秤で残量を比較してより軽い方の勝ちだ!」
「まぁ、妥当だな」
「では、用意…スタート!」
ガツガツガツ…
「っ美味ぇなコレ!現世で食った○村屋の鯛焼きみてぇだ!」
「だろう!?何せ、ハウラは虚夜宮で1番料理、お菓子作りが上手い!奴の数少ない長所だからな!」
「普通、短所の方が少なくないか!?」
「ふっ…虚夜宮きっての問題児だからな奴は!」
「威張る事かよ!?」
何て軽口を叩きながら制限時間まで食べ続けた。
そして結果発表。
「…ぐぬぬ、85g君の方が軽い…!」
「よっしゃあ!」
立体迷路で出された料理やお菓子を警戒して食べずにいたから空腹だった事、そして自分の好物だった事に彼は助けられた。
「勝敗は決した。そこの回転扉を抜けた先に出口がある。行きたまえ」
「…なぁ、こんな事言うのも何だけどよぉ…こんな事やって怒られないのか?ドルドーニのオッサン」
「…これはあの忌々しい立体迷路をクリアしてくれた事への感謝の証だ…それに、藍染殿の計画には何の支障も無い…それはそうと、早く行かなくて良いのかね?」
「…言われなくても!」
恋次は出口へと走り去って行った。
『…ふ~ん、忌々しい…ねぇ?』
(平坦で感情の読めない声音)
「あ…いや、その…今のは…」
(冷や汗ダラッダラ)
『改良の予知ありかぁ…ねぇ、ドコに不満要素があったのか教えてよ?もう1回迷路に入ってさぁ…ね?』
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁ!」
ドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオはスピーカーに向かって、とても綺麗な土下座を披露する羽目になった。
ペッシェとドンドチャッカが居ない戦闘を上手く想像出来ず、それでも色々なシチュエーションを考えながら書いては消し、書いては消し…を繰り返していたら、こうなりました。
〈立体迷路被害者の会〉会員達からの賞賛或いは労いを受ける3人がふと浮かんだもので…。
ルキアとの温度差が凄過ぎる。
残るは一護だけだけど…上手く文章化出来るかな?
書けなきゃ先に進めないので頑張ります。