願いが叶った私は心のままに飛び続けたい。   作:如月雪見

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前回の続き。




勝負の結果そして…

 

 

「…う~ん、仕方ないかぁ…じゃ、第2ラウンド開始!」

「な!?何言ってんだよ!?もう勝負は着いただろう!?」

「でもカマキリは認めてないからね。実際まだ立ってるし。もうさっさと引導渡しちゃいなよ…此処はもうあの立体迷路じゃないんだからさ」

「…くそっ!」

 

動揺する黒崎の意見は却下され、戦闘は再開された。

 

ブンッ!ブンッブンブン…グラッ…ドンッ!

ブォンッ…ブンッブン…グォッ…グラッ、ドサッ

 

1対の腕と鎌を脚代わりに、時にふらつき、時に倒れながら、それでもノイトラは黒崎に立ち向かい、残る2対の腕に握っている大鎌を執拗に振るい続けた。

その決死の攻撃を避けながら、黒崎の動揺はドンドン大きくなっていった。

 

「…何でだよ…何でまだ立ち向かって来るんだよ!?そのままじゃ本当に「うるせぇ!!この俺が死神擬きに負ける訳にはいかねえんだよ!!例え、どんな出来レースだろうがなぁ!!」っ!」

 

そんな2人の遣り取りを見ているハウラは、苦渋の表情のまま両手を強く握り締めるテスラに声をかけた。

 

「行かないんだ?意外だね」

「来るな、黙って見てろ…とのご命令だ」

「あ、そ」

 

テスラは耳に着けているインカムに触れながら端的にそう答えた。

興味をなくしたハウラに今度はネリエルが尋ねた。

 

「…ねぇ、あの立体迷路で彼に何をさせたの?」

「んぁ?何って…色々」

 

ネリエルのジト目に肩を竦めながら、先程よりも具体的に説明した。

 

「ん~とね、先ずは基礎体力の向上と霊圧の制御を身体に覚えさせる目的でひたすらアスレチックさせて、その合間にインターバルのクイズ挟んで、スタートに戻させては色んな破面の劣化コピーと戦わせただけだよ。まぁ、劣化コピーとは言っても見た目と行動パターンは完コピしたけどね。顔はマネキンみたいな仮面で隠して、霊圧を本体から見て大体70~80%くらいに減らしたのと戦って、戦闘不能にしたら次に進めるよってルールでひたすら実戦させたんだけど…私達と違って、本体の性格とかは一切反映させなかったからなぁ…でもなぁ、ここまで動揺するなんて思わなかったなぁ…いっそ、戦闘不能じゃなくて確実に息の根止めろにした方が良かったかなぁ」

「貴女ねぇ…」

 

どうやら藍染からの命令(対価)は〈黒崎一護を可能な限り強くする事〉らしい。

契約に対する真摯さは、ハウラらしいと言えばらしいのだが。

 

「…クソッ」

 

ドサッ…ググッ…ベシャッ

 

そうこうしている間にまたノイトラが倒れ込んだ。

再び起き上がろうとするものの、もう上体を起こすのも難しい状態までに消耗したらしい。

 

「あ、もう限界っぽいね…んぁ?」

「煙…?」

「ノイトラ様!?」

 

ノイトラの斬られた両脚から大量の煙…ではなく、霊圧が漏れ出し始めた。

明らかな異常事態に慌ててノイトラに駆け寄ったテスラ、様子を見ていたハウラ、ネリエル、ペッシェ、ドンドチャッカそして黒崎までもが煙の中から現れた少年に唖然とした。

 

「え…あ、あれ?カマキリ?」

「こ、これは一体…?」

「ど、どういう事でヤンスか!?」

「な、何が起きたのでしょうかネリエル様!?」

「貴様!ノイトラ様に何をした!?」

「え、いや、それは俺が聞きたいんだけど…」

「ハウラ!」

「えぇ~?何でカマキリがショタ化したの~?意味解んないよぉ」

「嘘を吐くな!」

「いや、本当だってば!さっき食べさせたキュウリのハチミツかけとか、その前に飲ませたモロヘイヤ入りの青汁は食糧庫から持って来た材料で作ったし!みんな知ってるでしょ!?私が料理やお菓子に何かを仕込むとかはしないって!」

「では何故だ!?」

「だから解んないよぉ…とりあえず、ザエルアポロに診せてみるしか無いんじゃない?」

「くそっ!」

 

テスラは気絶したままのノイトラ少年を姫抱っこして、ザエルアポロのラボへと走り去って行った。

 

「「「「………」」」」

「…まぁ、この勝負は黒崎一護の勝ちに違いないから…約束通り姫に会わせてあげるよ」

 

何とも言えない空気の中、ハウラは約束だからと本体に連絡を入れた。

 

 

 

「黒崎君!」

「井上!」

 

コピーからの連絡を受けて、ハウラ本体とメノリ、そして織姫が到着した。

 

「大丈夫!?ケガは!?」

「あぁ、何ともね「何回か受け身失敗して背中とお尻メッチャぶつけてなかったっけ?」「そうそう、映像見たけど頭から落下もしてたね」「肩や腕の切り傷、血ぃ止まっててもそのままはバイ菌入るんじゃない?それと」オイコラ!余計な事言うな!」

「黒崎君!!」

「うっ…悪ぃ」

 

ぷりぷり怒りながら黒崎の手当てをする織姫を見たハウラ(本体&コピー)は揃って宣った。

 

「「黒崎の将来は嫁の尻に敷かれるの確定だね」」

「はぁ!?」

「「んでもって、姫は何だかんだ言って旦那を尻に敷くタイプっぽいね」」

「え!?」

「「うんうん、お似合いのカップルになりそ~」」

「ちょ、何言って」

「はわわわわ」

「止めなさい!」

 

ゴッ!!ガッ!!

 

2人の率直な感想に、アタフタする2人をニヤニヤしながら更に煽ろうとしたが、それまで黙っていたメノリの鉄槌を受けて強制終了となった。

 

「「…ったいってば~、メノリ~!」」

「2人で遊ぶからよ!やる事ちゃんとやりなさい!」

「「…は~い」」

「…あのメノリって奴…凄ぇな」

「あ、うん。ハウラちゃんの暴走を止められる唯一無二の子らしいよ?」

「へ、へぇ…」

 

 

 

黒崎の手当てが終わり、漸く彼の目的であるハウラ本体との戦いが始まった。

 

「んじゃ、行っくよ~!」

 

ヒュッ…スカッ

 

「ありょ?」

「はぁっ!」

 

ガッ…ギギィッ…ツゥ…

 

虚化した黒崎の目の前、一瞬でハウラの顔が超至近距離に迫り、彼の左肩を押そうとした。

しかし、黒崎はその手を躱して逆に斬り付けた。

以前は辛うじて引っかき傷だったのモノが、今回は確実な切り傷に加えて血も滲んで来た。

 

「っふぅ…」

「…ふむふむ」

 

顎に手を当ててハウラは素直に賞賛した。

 

「…うん、やっぱりLevelUpしてるね。先日なんて派手に吹っ飛んで終わりだったのにね」

「…そりゃ、どうも」

「うん、良し!んじゃ、次行くよ~!」

 

どうやら、小手調べが終わったらしい。

腰に挿していた刀を鞘ごと手にした。

 

「…待てよ」

「んぁ?何?」

「ちょっと聞きたい事がある」

「…何さ?」

 

黒崎の表情から何かを感じたのか、怪訝な表情になったハウラは取り敢えず話を聞く事にした。

 

「あの立体迷路で俺に戦わせた奴等…さっきのノイトラと…6番目の奴、それとアンタのコピーの事だ」

「…何か聞かれるような事あったっけ?」

「…6番目の奴はノイトラよりも強かった。当然だよな、8よりも6の方が上なんだから。なのに…」

「なのに?」

「なのに何で7番目のアンタのコピーは6番目の奴よりも‘強い’んだ?」

「…それも気付いたかぁ…で?」

「7番目のアンタがここまで強いなら、その上の連中はどんだけなんだって、ずっと考えながらあの迷路をクリアしたのに…解らなくなっちまった。その数字の本当の基準は何なんだよ?強さ順じゃねえのか?」

「情報与え過ぎたかなぁ…まぁいっか。君の言う通り強さ順だよ、基本的には。私ともう1人が例外ってだけ」

「ハウラ!」

「別にイイじゃんか。この情報あげたって、何の問題にもならないよ」

「…もぅ」

「私ってさ、面倒くさがりなんだよね~。特別な地位とか要らなかったし~。でも、藍染は私を十刃に入れたがってさ。で、妥協点で私は7番目になったって訳」

「じゃあ、アンタは本来なら何番目なんだよ?」

「さぁ?興味ないから解らないなぁ。もういい?そろそろ再戦しよ?時間も圧してるしさ」

 

話を強制終了したハウラは鞘付きのまま、黒崎の脳天目がけた一撃を繰り出して来た。

 

「くぅ…っ!!」

 

ガギギギィィィ…ガンッ!ガガンッ!ガンガンガン!ガギンッ!

 

何とか防げてはいるものの、ハウラのスピードは兎も角、怪力による攻撃を受け止める度に両腕への過負荷があっという間に蓄積して行く。

そして…

 

「くっ…ぐぅっ…くぅぅっ…うぁっ!?」

 

ギンッ…パシッ

 

「…あれ?」

 

黒崎の手からいとも容易く刀が飛んで行ったのを見て、首を傾げながらその刀を回収、黒崎に返した。

 

「もう疲れたの?早くない?」

「うるせぇ…その細っこい身体の何処にそんな力があんだよ…ってか、あのコピーは70~80%に制限したって嘘だろ?どう見てもあの倍以上の衝撃来たぞ」

「あ~、それも感じ取れたかぁ…うん、立体迷路の私のコピーはね、私の半分以下に抑えたんだよね」

「…はぁ!?」

「だって、それくらいにしないとあっちこっち壊しちゃうんだもん。仕方ないよね」

「…くそっ!」

 

立体迷路で苦戦して、どうにか無力化させたコピーを思い出し、仮面を被り直した黒崎はどうにか突破口を探そうとした。

 

「…うん、思ってたよりも鋭い君に特別に見せてあげるね。出血大サービスだよ」

「は…?」

「ネリエル、パス」

 

持っていた得物をネリエルに放り投げた。

 

「なっ!何のつも…り…だ?」

 

ネリエルに目を向けた一瞬でハウラは居なくなり、ハウラの居た場所には七面鳥が鎮座している。

 

「え…?アイツは?何処に行ったんだ?」

 

辺りを探すが何処にも居ない。

 

「ま、まさか…」

「黒崎君!ハウラちゃんは黒い生き物なら何にでもなれるんだって!」

「はぁ!?マジかっぶぁ!?」

 

ドンッ!…ズザザザザァァァ

織姫からの情報に驚く間もなく、飛びかかって来た七面鳥にタックルされて数m後退させられた。

 

「アハハ、オドロイタ?破面化する時に崩玉にお願いしたんだよねぇ…私はずっと空を飛びたいって。そしたらこんな変身能力をプレゼントしてくれたんだぁ~」

「っうぉぉぉお!!」

 

元の姿に戻り、とても嬉しげに語るハウラに思わず顔を引き攣らせた黒崎だが、これ以上厄介な何かに変身される前にカタを着けようと斬り掛かった。

 

「おっと…ほいっ」

 

パシッ、ビュゴッ!!

 

が、アッサリと真剣白羽取りして刀ごと明後日の方向に投げ飛ばした。

 

「くっ…」

 

着地した瞬間にはもう得物の鉈を手にしたハウラが、目の前で横薙ぎの姿勢を取っていた。

 

「遅いよ」

 

ガギィィッッッ!!

 

寸でのところで何とか受け止めたが、先程よりも遙かに重い一撃に勢いのまま吹き飛ばされた。

 

「ぐっ…」

「何してんの?早く体勢整えなよ」

「ぐぅっ…!」

 

ドゴォッッ

 

「カハッ…」

「黒崎君!ハウラちゃん!?」

 

突然、どんどん声音が無機質なモノに変わり、より速くより重くより冷徹になっていくハウラに、彼女では無い〈ナニカ〉が取り憑いているかの様な感覚を覚えた。

 

ドォォォンッ!…ドサッ

 

辛うじて刀を手放さずに済んではいるものの、一撃一撃は変身能力を見せる前とは比べ物にもならない威力だ。

柱にぶつかってそのまま落下、脳を激しく揺らされた影響で暫く立てそうに無い。

 

「…ふ~…ま、こんなもんかな?姫、手当てお願い」

「黒崎君!」

 

また今の今までとは打って変わって、気の抜けた表情を浮かべたハウラは呑気に織姫に黒崎を委ねた。

 

「もう一段階ギア上げよっかなぁ…」

 

そう呟きながら首のチョーカーを弄っている。

 

「大丈夫?黒崎君」

「あぁ…でもアイツのあの顔…まだ隠し玉持ってんじゃねぇのか?」

 

彼の懸念は大当たり。

本人だけでなく、彼女の得物にも変化能力が備わっており、最初は鉈だったのに、途中からレイピア、日本刀、カトラス、槍…と次々と武器を変えられて、完全に防戦一方になった。

そして…

 

ドォォォォン!

 

「…かはっ」

「…うん、反応はドンドン良くなってる。姫、もっかい手当てしてちょ」

「う、うん」

 

何度目か解らないが、また柱にめり込ませた黒崎を冷静に分析するハウラはまた織姫に手当てを頼んだ。

 

「…くそっ」

「直ぐに治すから動かないで」

 

ピピッ

 

「何?うんうん…げっ、マジ?…ほぼ藍染の予想通りかぁ…はぁ~、解った。じゃあさ…うん、Level?CHAOS MAXで」

 

心底嫌そうな表情を浮かべたハウラは、インカムの相手に何かしら指示を出しながら、黒崎と織姫に近付いて来た。

 

「…死神達到着したって連絡入ったから、とりあえず私達はココまでだね」

「は?」

「え?」

「んで、連れて来いって言われたから行かなきゃ」

 

ヒョイッ

 

「きゃっ!?ハウラちゃん!?」

「ちょ、井上!?」

「こっから見える…ね。私達あそこのいっちばん高い塔に行くからさ。じゃね」

 

ボシュシュッ!!

 

説明しながら織姫は俵担ぎ、メノリはコピーがしっかり抱っこして黒崎の目の前から消えた。

 

「なっ…おい!」

 

気付けば、ハウラとそのコピーは勿論、ネリエルとその従属官2人も消えていた。

 





ノイトラをどうするか悩んだ結果、原作ではネリエルが幼女化しましたが、代わりに彼に幼児化して貰いました。

一護から見て、初対面からずっとハウラの玩具、或いはサンドバッグ的な扱いをされているノイトラに思うところは多々あったでしょうし。
何だかんだチョコラテな子ですし。
彼がノイトラをヤル姿は、どう足掻いても思い浮かばなかったです。

そして一護は、ハウラがどれだけ手を抜いていたのかを思い知りました。






〈首のチョーカー〉
嘗て鬱陶しく付き纏ったノイトラに付けた霊圧制御装置の改良版。
20段階(5%ごと)の制御が可能。
自分で意識しての制御が面倒くさいからと付けていた結果、修行或いは鍛錬になっていたらしく、更に霊圧が上がった。





次回、藍染達は空座町へ、ハウラは何処に?
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