願いが叶った私は心のままに飛び続けたい。   作:如月雪見

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前回、炎の壁から出て来た藍染からお使いを頼まれてメノリと劣化コピー達、それにバラガン達を連れて虚夜宮に戻ったハウラ。

戻ったらクッカプーロ以外誰も居ない第5の塔。
ウルキオラに連絡したら、黒崎一護とヤミーが虚夜宮の外で戦闘中らしい。

兎に角、2人を止める為に虚夜宮の外へ。




暴走

 

 

時間は、藍染達が空座町(レプリカ)へと侵攻した直後に遡る。

 

「っだーもう!何なんだよテメェ等は!?」

「「「「…」」」」

 

ハウラ(本体)からの指示で、劣化コピー達が馬や猪、鹿の被り物或いは蝶々の仮面を被り、牛やシマウマ、キリン柄の全身タイツを着て、黒崎一護の行く手を阻んでいた。

 

「何か喋れよ!?無言で迫って来んな!!恐いっての!!」

「「「「…」」」」

 

 

 

 

黒崎一護が足止めを食らっている間、織姫は護衛の3体が用意したイスに座って、お茶を飲んでいた。

無理矢理座らされたウルキオラと共に。

 

「「…」」

 

無表情で、必要と判断した事以外余り話さないウルキオラを相手にどう接しようか悩んだ織姫はふと、トマト栽培の話を思い出し、話題を振ってみた。

 

結果、予想以上に盛り上がった。

 

「…そうか、お前も経験があるのか」

「うん!高校受験で忙しくなった時に止めちゃったんだけど…今住んでる家のお隣さんの趣味が家庭菜園で、時々お手伝いもしてるんだ~」

「…ならば、見に来るか?」

「え、良いの?」

「あぁ、お前も知っての通り、上手く実れば分けてやるとハウラと約束をしている。だが、生憎俺は既に収穫して相応の時間が経った物か、奴の調理済みのトマトしか知らん。一応、資料の写真で何となく収穫時期は解るつもりだが…確実にそれが解る奴はハウラしか居なくてな。だからと言っていちいち聞くのは奴の性格上、避けたかったからちょうど良い」

「う~ん…じゃあお言葉に甘えて見せて貰おうかなぁ「そうか、ならば…」…え?って、伝言書くの早っ!」

 

懐からメモ帳を取り出し、何かを書き付けて文鎮を乗せた。

 

「これで移動しても問題無い。行くぞ」

「え、あ、うん…」

 

テーブルに置いたメモ帳には、解りやすい地図と目的地である彼の自宮の目印らしいトマトが乗ったお城の絵が描いてあった。

 

…ウルキオラ君って、速記が得意なんだぁ

…うわぁ、絵も上手~!

…あ、私達も描いてくれてる

…トマトは凄くリアルなのに、人はデフォルメして描くんだぁ

 

何処か嬉しそうなウルキオラにおんぶされながら、そんな事を考える織姫だった。

 

 

 

ウルキオラ達が移動した数分後、昼寝から起きたヤミーがクッカプーロを連れて第5の塔にやって来た。

 

「何だぁ?ウルキオラの奴、自宮に連れてったのかよ…珍しい事もあるもんだな…あ?」

「無事か井上!?…っとぉ!?」

 

ガッ!…ズドォォォォン!!

 

漸くコピー達を振り切って来た黒崎一護が、かなりのスピードで階段を駆け上がりながらすっ飛んで来たものの、気が逸り過ぎて、最後の1段に足を引っ掛けて転倒、その勢いのままヤミーへと突っ込んだ。

 

「「う…うぉぉぉ…」」

 

グワングワンと目を回しながら、2人して起き上がった。

 

「何…しやがる…てめぇ…」

「…す…すまねぇ…井上が此処に居る筈なんだが…知らねぇか?」

「…イノウエだぁ?…あぁ、ハウラが世話してるあの女の事かぁ?」

「知ってんだな!?何処に居るんだ!?」

「…って事は…てめぇが黒崎一護だな!?」

「あぁ!?そうだけど、それが何だよ!?井上は何処か教えろよ!」

「…オイ、ウルキオラァ…黒崎一護が第5の塔に来たぜぇ…あぁ、良いんだな?良っしゃあ!」

「なっ!?」

 

目の前の大男は此方の質問には答えず、耳に手を当てて、聞き覚えのある名前を呼び、何か話をしたと思いきや、ニヤリと笑うのとほぼ同時に殴りかかって来た。

 

ブォンッ!ブォンッ!ブォブォンッ!!

 

その大きさ故に大雑把なヤミーの攻撃を黒崎は余裕を持って躱し続けた。

 

「チッ!オイ、見てんだろザエルアポロ!俺達をさっさと飛ばせ!」

『…それが人にモノを頼む側の態度かい?』

「…!?」

「ウルセェ!さっさとやれ!」

『やれやれ…』

 

ヒュッ…

 

何処からか知らない男の声が聞こえた次の瞬間、目の前の大男と共に何処かに転移させられた。

 

「な…はぁっ!?」

「此処でなら思う存分やれるぜ!」

「おい!俺は井上を「ウルセェ!テメェはもう俺と戦わなきゃ虚夜宮には戻れねぇんだよ!あの女の所行きたきゃあ、俺を倒してからだぁ!」…くそっ!」

 

此処に来てからずっと敵の都合に振り回されっ放しの状態が続き、全然目的を果たせない自分に苛立ちが募る黒崎一護。

ハウラに黒崎一護より弱い雑魚(其処まで言ってない/被害妄想入ってる)扱いされた怒りで襲いかかるヤミー。

 

ヤミーの八つ当たりによる、黒崎一護にとって理不尽な戦いが始まった。

 

 

 

その頃、ウルキオラはトマトだけでなく、手違いで入手した茄子についても織姫に色々と教えて貰っていた。

 

「…成程、同じナス科の野菜だから栽培方法も同じかと思っていたが…」

「うんうん、私も最初はそう思ってたんだよね~。でも、念の為にって調べて見たら違ったんだよね」

「…で、水と肥料はこれで良いのか?」

「うん、後は日当たりの良い所に置いて…と。この後のお世話の方法はさっき話したけど…大丈夫そう?」

「あぁ、メモを取った。確認してくれ」

「…うん!バッチリだよ」

「そうか…ん?ハウラ達が戻って来たか…」

「え?…うわぁ、結構な時間が経っていたんだね」

「少し待ってろ…何だ?」

『ねぇ、黒崎一護とヤミーの霊圧が全っ然感じられないんだけど?何か知らない?』

「…あぁ、以前の報告会以降、お前の発言に気分を害したヤミーが黒崎一護と戦いたいと喚いていたからな。俺が許可を出した」

『え~…』

「…ザエルアポロに連絡して、虚夜宮の外に送り出させた。詳細は奴に聞け」

『…ん、もぅ!』

「…其処には井上織姫も連れて行く。戦闘の如何次第で何方かを止めればいいだろう。俺とお前にバラガン、そしてお前の残りのコピー達が総動員すれば最悪の事態は免れる筈だ」

『それはそうだけどぉ…はぁ~…しゃぁないかぁ…でもなぁ~…ヤミーの奴、調子に乗ってやらかしてなきゃイイけど』

 

…流石のアイツも其処まで馬鹿では無いと思いたい

…が、望みは薄いだろうな

 

ザエルアポロに現在の居場所を聞いて、再び織姫を背負って現場に向かった。

 

 

 

ハウラ達が駆け付けた先では、体格差を活かしてヤミーの懐に潜り込んでは刃を振るう、無傷だが疲労が見え始めた黒崎一護と、あちこちに切り傷を負っているものの、どれも致命傷とは言い難い程度で済んでいるヤミーが対峙していた。

 

「居た!何してんのさヤミー!」

「あぁ?…チッ、もう帰って来やがったのかよ」

「黒崎君!」

「井上!無事みたいだな…良かった」

「何安心してやがんだぁ!?まだ終わりじゃねぇだろうが!!ブチ切れろ!《噴獣》!!」

「えっ…」

「ちょっ…!」

「馬鹿が…!」

「この阿呆めが」

 

まだお互いに全力を出していないのは明白だったとは言え、ハウラが戻って来た以上、戦闘を止めると思っていた黒崎は、ヤミーが帰刃した事に驚きながらも咄嗟に仮面を被り、刀を構え直した。

 

「下がってろ、井上!」

「きゃっ!?」

「「「こっち!もっと離れないと!」」」

 

コピー達は織姫を帰刃したヤミーの攻撃範囲外へと連れ出した。

 

「あ~もう!」

「手の掛かる奴じゃのう」

「完全に利かん坊状態だな。あぁなってはある程度発散させるしか方法は無い。取り敢えず、クッカプーロと共に避難しろ」

「う、うん!」

「クゥ~ン」

「「こっち!姫と一緒の方が守りやすいから!」」

 

メノリはクッカプーロを抱いて、護衛の2体と共に織姫達と合流した。

メノリにクッカプーロを託したウルキオラは、刀を抜いてヤミーと黒崎一護の戦闘に参戦した。

 

「あれはお前等の手には負えん、下がっておれ」

「「「「「「はっ!」」」」」」

 

バラガンもシャルロッテ達を下がらせて戦斧を手にヤミーへと立ち向かった。

 

「ちょっとヤミー!黒崎一護は藍染の試金石なんだよ!だから「ウルセェ!!」なっ…「テメェは黙って見てりゃ良いんだよ!!」ちょ、「この俺をこんなカスよりも弱ぇ雑魚呼ばわりしやがって!!」はぁ?何言っ「俺は“0”十刃ヤミー=リヤルゴだ!!誰よりも強ぇって事を解らせてやる!!」え~…」

 

全然、話が通じない。

肩を竦めながらウルキオラ達に向き直った。

 

「…ダメだありゃ。全っ然聞く耳ナシ。ってか私、ヤミーの事弱いとか雑魚呼ばわりした覚え無いんだけど?」

「…奴は何故か〈油断すれば黒崎一護に苦戦する可能性がある〉を〈お前じゃ確実に黒崎一護に負ける〉に変換した状態で記憶しているらしい」

「はぁ!?どこをどうしたらそんな解釈になるのさ!?」

「知らん。俺に聞くな」

「…ったくもう!面倒くさいけどアイツを止めなきゃ。焦がれろ《黒羽飛天》!」

「…世話の焼ける…鎖せ《黒翼大魔》」

「全くじゃな…朽ちろ《髑髏大帝》」

 

ヤミーを止める為の戦いが始まった。

 

黒崎一護に一時共闘する事とヤミーの能力と力の源が何なのかを説明し、自分達では対処出来ないサイズになられる前にケリを付けたい事を告げた。

 

「怒りが力の源って事は…ガス欠は余り期待出来ねぇって事かよ!?」

「そうだ」

「あれの暴走を止めるとしたら、汝を倒してハウラが悔しがる姿を見せるくらいしか無かろうな」

「なっ、冗談じゃねえ!俺はただ井上を」

「解ってるよそんな事」

「うぉあっ!?ど、どっからハウラの声が!?」

「落ち着けぃ、ハウラの能力のひとつじゃ」

 

天高くにいる筈のハウラの声が耳元で聞こえて、焦る黒崎に簡易的な説明をした。

 

「サポートやフォローが得意!?見えねぇ…」

「失礼だね。まぁイイや、幾ら単純思考のヤミーが相手でも、聞かれたら意味無いからね。君にコンディシオン《チャルラール/お喋り》を付与したから余りデカい声上げてヤミーに余計な勘繰りさせないでよ」

「お、おう、解った」

「何ゴチャゴチャやってやがる!!」

 

ブォッ!ドォォォォン!!

 

「っとぉ!!」

「チッ…」

「これ以上デカくなられたら、私のデバフ効かなくなるから一気にカタ付けたいんだよね」

「あぁ」

「うむ」

「解った。どうすれば良いんだ?」

 

ハウラの作戦は次の通り。

ハウラの羽根で黒崎の行動パターンを搭載した囮を作成。

黒崎本人と囮を交換する為に、ヤミーの視界から黒崎の姿を消す為の目眩まし役をウルキオラとバラガンが。

交換後、黒崎にコンディシオン《エル・エスコンディテ/かくれんぼ》を付与して織姫の所へ行って貰う。

織姫の所にはコピー達が居るから、その後のフォローは彼女達に任せる。

囮とヤミーを戦わせ、隙を突いてザエルアポロから転送して貰ったヤミー専用の鎮静薬(ハウラより少し小さいサイズの注射器に70%くらい入ってる)を投与して意識を強制的に奪う。

 

「「解った」」

「任せておけぃ」

「コンディシオン《セニュエロ/囮》作成完了。じゃあ…行くよ!」

「「あぁ(!!)」」

「うむ」

 

 

 

 

 

ズドォォォン…

 

「ぐぁ~…ぐおぉ~…かぁ~…ごぉぉ~…」

「クゥ~ン」(ペロペロ)

「寝てるだけだから心配無いよモグモグ」

(五目おにぎりを頬張りながら降りて来た)

「上手くいった…のか?」

「うん、もう大丈夫だよモグモグ」

(2個目食べてる)

「…にしてもヤミーの奴、派手にやったな」

「だね~…モグモグ《セニュエロ》、辛うじて原形留めてるけどさぁ…グロっ、モグモグ」

(4個目を口の中に入れた)

「ならサッサと消せ」

「ハイハイ」

 

5個目を取り出しつつ、ヤミーの様子を再確認してから指パッチンで消した。

 

「ってか、本当に良く食うな。この状況で」

「モグモグ…まぁね~…さてと、ザエルアポロ~」

『何をしてるんだ!止めろこの馬鹿!』

『駄目です!止めて下さいノイトラ様!』

『うるせぇ!!』

 

ガシャーン!バリンッ!!ガラガラガラ…!

 

「…ザエルアポロ?え?テスラ?…今の子どもの声は…まさか、カマキリ?」

 

…何が起きてるんだろ?

 

ヤミーを自宮へと転送して貰おうと通信を繋げた途端、何かが割れる音とザエルアポロの怒鳴り声やテスラの制止する声に知らない子どもの声が聞こえた。

次の瞬間、

 

チュインッ…

 

「「「「「え?」」」」」

「「「「「は?」」」」」

「「「「「なっ…」」」」」

 

ドサッ…

 

黒崎一護の胸を〈何か〉が貫き、そして私の左肩を掠めていった。

 






また長くなったので取り敢えず、此処まで。

ヤミーの思い込みによる暴走を一護とハウラ、ウルキオラにバラガンが協力して何とか止めました。

これでひと安心…かと思いきや、一難去ってまた一難の予感。



空座町(レプリカ)にはまだ戻れなさそうです。
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