前回、完コピ達と協力して四楓院夜一の無力化に成功した。
兎に角、今はメノリの溜まりに溜まったストレスをどうにかするのが最優先な〈本体〉。
しかし、まだ浦原達を無力化は出来ていない。
さて、どうなる?
時は少しだけ遡る。
浦原が出した猛禽類の目玉風船を全て割り、アフターケア(《アナリシス/分析》で異常が無いか確認、念の為《デシントキサシオン/解毒》と《ネウトラリザール/無効化(相殺)》)をした直後、上空の完コピの背後には、刀を構えた浦原の姿があった。
「起きろ《紅姫》」
「…ふんっ!」
慌てず重ね掛けした《バラェラ/障壁》で防ぎ、〈渦〉による転移で距離を取ろうとした。
しかし…
バチィッ!!
「えっ?」
〈渦〉に拒絶された。
よく見れば〈渦〉に薄い〈膜〉が張られている。
「…っアンタ!!」
「〈渦〉は他にもあるじゃないっスか。いやぁ~、〈端っこ〉とは言え分析を…したかったんですが、時間と道具が足りなくて…しかもこの量をどうにかするのは流石に…なので、近辺の〈渦〉の表面をコーティングするのがやっとでした」
「くっ…!《カニョン・デ・アイレ/空気砲》!」
「《縛道の四、這縄》」
直ぐに原因に気付いたが、奴はいけしゃあしゃあと宣うのみ。
兎に角距離を取ろうとした完コピを、瞬歩で回避しながら浦原は縛道で繋いだ。
「なっ…」
「逃がさないッスよ。《破道の八十八、飛竜撃賊震天雷炮》!」
「っ《ネウトラリザール/無効化(相殺)》!!」
ドォォォォォン!!
夜一がちゃんと眠っているのを確認した〈本体〉は、上空の状況に顔を顰め、メノリの護衛2体はそのままで《コンパルティシオン/共有》中の完コピ2体をフォローに向かわせた。
「っ!2人共、上のフォローをお願い!アイツはやっちゃって構わないから!」
「「OK!」」
「…アイツ、狙いは藍染なんだから、藍染に集中すると思ってたのに…!ってか、あれ?藍染は?」
「…っ、ハ、ハウラ…あれ…」
「「「え?…ぶふっ」」」
メノリが指差した所には、大量のトリモチ塗れになって藻掻く藍染らしき白い何かが居た。
どうやらハウラ達同様、あの風船に気を取られた瞬間にしてやられたらしい。
「お、おのれ浦原喜助…!くっ…取れない…!」
「ぶふっ、そ、それ以上動いちゃ、ぷっ、悪化しちゃうって…ぶふっ」
「「「アハハハハハハハ!」」」
「ハ、ハウラか…わ、笑って…ないで、どうにか…くそっ」
「ご、ごめっ…コンディシオン《トランスフォルマシオン/形状変化》《アリーナ/小麦粉》」
バサバサバサ――――――!!
大量の小麦粉をトリモチに揉み込み、大体のトリモチを引っ剥がした。
「う~ん…やっぱりまだベタ付くね。仕方ない…《トランスフォルマシオン/形状変化》《アセイテ・デ・オリバ/オリーブオイル》」
ドバドバドバ――――――!!
頭からオリーブオイルをぶっ掛けて残りのトリモチに馴染ませた。
「…顔とそこは自分でやるから、手の届かないところを頼もうか」
「OK~」
ベチャベチャベチャ…
「…ふぅ、こんなモンかなぁ~?んじゃ、仕上げにコンディシオン《デスカンタミナシオン・ウマナ/徹底洗浄(除染)》《セカード/乾燥》っと。どう?」
「…あぁ、ありがとうハウラ。本当に助かったよ」
「にしてもアイツ、本当に舐めたマネしてくれたよね」
「「ホントホント」」
「…ノイトラや東仙統括官へのイタズラにトリモチを良く使ってたのを棚上げしないの」
「んぁ?何の事?」
「…相変わらず、都合の良い記憶力ね」(呆れてる)
「んふふ~?でもって藍染、随分変わった姿になったね」
「…っ」
「…藍染?」
「…ぐぅっ…あ…はっ…はっ…浦原喜助め…これが本命だったか…!」
苦悶の表情を浮かべる藍染の体内の霊圧が急速に高まっている。
良く見れば、藍染の霊圧を放出する部位が無理矢理閉じられた状態になっている。
このままでは藍染は強制的に自滅させられてしまう。
「っ藍染!」
「…っ離れろ!!」
「「「くっ!!」」」
「きゃっ…」
ゴォアアアアア!!
咄嗟に響転で距離を取り、藍染の霊圧の強制暴走が止まるまで待った。
「…ふぅ…」
「…大丈夫?」
「…あぁ、崩玉との融合、そして同調がしっかりしていなければ危なかったかも知れない」
そう言いながら、藍染は両手首に仕込まれた装置を引っ張り出して破壊した。
「うわぁ…やっぱり見間違いじゃなかったかぁ」
「う~わ、腰んとこヒラヒラの全身白タイツとか…ヤバ」
「ちょ」
「…その言い方は止めようよ。何か藍染が変態になったみたいでヤダ」
「…進化の過程において、容姿が著しく変容を遂げるのは世の常というものだろう。まぁ、それも直に終わりを迎える。さて…この後の予定を考えると、そろそろ本当の空座町に向かいたいところだね」
「あ、そう?じゃあ、藍染はどうすんの?」
「…そうだね。随分と愉快な事をしてくれた御礼がしたいかな」
「んじゃ、私はちょっと〈気になる所〉を見て来るね」
「あぁ、頼んだよ」
「…ってな訳で行って来るね」
「うん、気を付けてね」
藍染は浦原喜助の所へ、ハウラはあさっての方へと向かった。
一方、上空では。
「…はぁっ…はぁっ…」
「…いやぁ~、流石は夜一サンを倒した方の完コピなだけはありますねぇ。手強い手強い」
…嫌味かこの野郎
何度も使用した《ネウトラリザール/無効化(相殺)》は多分、分析されている。
現に、効果は半減しているのだから。
…拙いなこのままじゃ
…仕方ない、遣りたくないけど
「《トランスフェリー/転移》」
「無駄っスよ…っ!?」
ヒュ、ズドムッ!!バキバキバキッ!!
「っごふっ…!?」
完コピは確かに《トランスフェリー/転移》を発動させた筈なのに、彼女自身は勿論、自分も誰も転移しない状況に困惑した隙を突かれ、ボディーブローをモロに食らい、仕込んでいた防具を砕かれた。
「もう一丁!」
「っ!」
パァァァンッ!!
(携帯用義骸を割った音)
「チッ!…逃がすか!」
「くっ…!」
ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!
浦原は携帯用義骸を使って逃亡したが、完コピは直ぐに発動中の《デテクタール/看破》《デスクブリール/見破り》《アジャスゴ/発見》で浦原を見つけ出し、虚弾で牽制しながら追い掛けた。
そこへ駆け付けた完コピ2体の挟み撃ちを受けたものの、浦原はまだ残っている携帯用義骸で撹乱し、何とか逃げ果せた。
「「「チッ…!」」」
「どんだけ持ってんだよ?ソレ」
「はぁ…はぁ…それは秘密ッス。それはそうと、先程の《トランスフェリー/転移》は〈貴女自身〉にしたんスね?」
「チッ…やっぱアンタ気持ち悪くて嫌いだわ」
「はは、酷い言われようっスねぇ…」
「「つか、そろそろ大人しくオネンネしなよ」」
「それはお断りッス」
カチッ…
ウゥゥゥーーーン
キィーーキキキ
キィィィー
ホーホー
ギィェェェーーー!!
「「「ひっ…!?」」」
「な、何コレ!?」
「うるさっ!?」
「…っしまった!」
浦原が懐から出した箱から突如、スイープ音に猛禽類の鳴き声、そして鴉の悲鳴をごちゃ混ぜにしたものが大音量で流れた。
猛禽類の鳴き声は兎も角、スイープ音と鴉の悲鳴は流石に反応せざるを得なかった。
その隙を突いた浦原はある鬼道の詠唱を終えていた。
後手に回された完コピ達は咄嗟に叫んだ。
「《縛道の六十一、六杖光牢》」
「「「っ《パサール・デ・ラルゴ/素通り》!」」」
「なっ!?」
完コピ達は確かに其処に居るのに、対象を失った六杖光牢はすり抜けて消えた。
「「「くたばれ!!」」」
浦原を改めて見つけ出し、響転で接近して取り囲み、それぞれ踵落とし、左右からの回し蹴りを放った。
しかし、
パァァァンッ!!
「「「っまたか!クソッタレ!!」」」
「危ない危ない…女の子がそんな下品な言葉を使うのは感心しないッスねぇ」
「「「ほざけ!!」」」
あの手この手で逃げ回る浦原を追い掛けるという、イヤな鬼ごっこをさせられている完コピ達の所に、鬼道が飛んで来た。
「《破道の六十三、雷吼炮》」
ズドォォォォン!!
「「「っとぉ!?」」」
「…もう動けるとは…参ったッスねぇ、これは…」
「御礼参りをさせて貰おうと思ってね…是非とも受け取ってくれないか浦原喜助!」
藍染は鏡花水月を手に、浦原に斬り掛かった。
「くっ…!」
「君達はハウラのフォローを頼むよ。燻り続ける〈違和感〉を拭いたいらしい」
「「「え~…解った」」」
物凄く渋々とした表情で、完コピ達は浦原を藍染に譲って〈本体〉の加勢に向かった。
所変わって、黒崎一心を無力化せんと立ち向かうハリベル達はと言うと。
途中でスタークとリリネットが抜けた後の、日番谷&乱菊との戦いによる疲労と怪我に加え、山本元柳斎の《炎熱地獄》からアパッチ達を守る為に放った霊圧が完全には回復仕切れていないハリベル1人だけならば、一心はそこまで苦戦する事は無かっただろう。
何せ相性最悪の炎VS水の対決とは言え、彼は大した疲労も怪我も無い状態で戦いは始まったのだから。
しかし、同じく疲労しているとは言え、従属官3人の妨害をいなし続けながらのハリベルの猛攻に少しずつ、だが確実に疲労を重ね始めた。
「くっ!この野郎…」
「しぶといったら無いな…!」
「いい加減、観念なさいな」
「…そうは…っいかねぇんだよなぁ…《炎月》!!」
「「「ちっ(くっ)!」」」
其処に藍染からの連絡が入った。
『…そろそろ本物の空座町に向かいたいから、早急に残りを無力化してくれないかな』
「…はっ」
4人はジリ貧の膠着状態になる前に、ハウラの〈羽根〉を使う事にした。
「…聞いたかアパッチ、ミラ=ローズ、スンスン」
「「「はい」」」
「ならば、温存していた〈羽根〉を使うぞ」
「「「はいっ!」」」
「「「「《アクティバシオン/発動》!」」」」
「何っ!?」
《ラ・レクペラシオン/回復》《メホラ・デ・トダス・ラス・カパシダデス/全能力向上》でハリベルは相応に、アパッチ達はほぼ完全な復活を遂げた。
「はぁ!?そんなんアリかよ!?」
「アリだから使ったんだろうが!」
「「そういう事だ(ですわ)!」」
「「「《アクティバシオン/発動》《デテンシオン/足止め(引き留め)》!!」」」
「うぉあっ!?」
動揺した隙を突かれ、突然、左足だけが縫い付けられたかのように動かなくなり、一心は危うく無様に転びそうになった。
「「「ハリベル様!!」」」
「任せろ…《カスケーダ/断瀑》」
「…っ!!」
ドドドドドドドドドドォォォォォンンンン!!!
瀑布に呑まれた一心の姿が消えた。
「…奴は?」
「…咄嗟に斬魄刀で威力を削ったように見えたが…ハウラのサポートのおかげで、本来の威力の倍以上の《カスケーダ/断瀑》を撃てた上に、念の為で渡された《コルテ・ポル・バシオ・デ・トルベジーノ/鎌鼬》も使ったからな…流石に無傷は有り得ないだろう」
残骸を押し流した水流が落ち着いた頃、彼方此方に傷を負って気絶した一心を発見した。
4人は無力化に成功した事を確かめたところで漸く警戒を解いた。
「…皆と合流するぞ」
「「「はい!」」」
そしてスタークとリリネットが塚菱を無力化するべく対峙しているところにハウラ達から連絡が入った。
『ヤッホ~、スターク、リリネット~!』
『藍染からの連絡聞いた?』
『ソイツはどんな感じ?強いの?』
『こっちは私達がどうにかするからさ、気にしないでソイツやっちゃえ!』
「…一遍に言わねぇでくれよ…ったく、藍染様の要望は聞いたさ。奴は間違い無く強ぇ。…でもって、やっぱり気付いてたか」
『まぁね~』
夜一を無力化した後、連中の転界結柱を避けたとある数ヶ所に奇妙な感覚を一瞬だけ覚えた。
直後、浦原をどうにかする為に完コピ達を仕向けたり、藍染のフォローをしたりと、やる事が出来て対応出来なかったが。
「…見付けた!!連中の結界と転界結柱に影響を与えない6ヶ所!《コンパルティシオン/共有》」
「「「…確認した!」」」
「散開!」
まだ発動を解いていない《デテクタール/看破》《デスクブリール/見破り》《アジャスゴ/発見》で得た情報を共有して、それぞれ近い所の〈装置〉を無効化するべくそれぞれ向かった。
「「「「…あった!」」」」
〈装置〉に触れる前に《プロテクトール/保護膜》を纏ってから《アナリシス/分析》して、この〈装置〉が私達破面を此処レプリカの空座町に閉じ込める為の物だと判明した。
安全に《デスモンタヘ/解体(分解)》を施してからもう一度《アナリシス/分析》で安全を確保して漸く力任せに引っこ抜いた。
「「「「…ふぅ~…」」」」
残り2つを今度は2人ずつで、Wチェックをした上で無効化した。
『こっちは終わったよ。スターク、リリネット』
「さっすがハウラだね!」
「…そうか、ありがとな。これで心置きなく終わらせられる」
『はいよ~。また後でね~』
「おぅ…さて、折角だし使わせて貰うか」
「だね!」
「ぬぅっ…!?」
「《アクティバシオン/発動》」
〈装置〉が気掛かりで牽制しか出来なかったが、懸念事項が無くなったスタークは、塚菱に響転で急接近して《アネステシア・ヘネラル/全身麻酔》と《パラリシス・トタル/全身麻痺》を付与して無力化に成功した。
「…うっ…あ…」
ドサッ…
「…さて、戻るか」
「うん!」
やる事をやったハウラ達はいち早くメノリの所へ戻って来た。
「「「「たっだいま~!!」」」」
「ハウラ!」
「「「「メノリぃ、疲れたよぉ~」」」」
グゥ~キュルルルルルル
「「う~わ、お腹空いて来たぁ~」」
「…補給、止められたものね」
「「うん…」」
「「…うっ…気持ち悪っ」」
「そっちは大丈夫?だいぶ無茶したでしょ?」
「「うぅ…何とか」」
「流石にずっと食べ続けるのはキッツいわぁ…」
「…浦原相手に帰刃解けたらヤバイからって、胃に直接ブドウ糖ブチ込んだからなぁ…おぇっ」
「あ~…しくったなぁ…《コンパルティシオン/共有》で弱点対策したつもりだったけど、不十分だったなぁ…死神達は戦闘不能にしたし、追加が来てもこれだけ居ればイケるって思っちゃったのがなぁ…藍染が警戒してる〈あの〉浦原喜助への対策をもっとしっかり考えるべきだったなぁ…そしたらちゃんとみんな隠したし…色々ともっと上手く出来たよなぁ…反省」
「…反省は大事だけど、取り敢えず今は食べなよ。ほら、バナナサンド。で、アンタ達はホットミルク」
「「わぁ~い!あ~む!…ん~!んまぁ~!…あ~メッチャ動いた後のスイーツ美味し~!」」
「「ありがと~…あ~…荒れた胃に染みる~」」
「全くもぅ…一先ず、お疲れ様」
「「「「「「うん!」」」」」」
「ちょ、ちょっと!もぅ!」
満面の笑顔でメノリに抱き付いた。
が、直ぐに引き離された。
「あんっ」
「変な声出さないでよ!…左手、大丈夫なの?ハウラ」
「…あ~…ちゃんと治癒はしたよ。ほら」
夜一の拳を受け止めた左手をプラプラと降って見せた。
※流石に瞬閧を纏った拳をマトモに受け止めた代償はそれなりにあった。
左手の平の骨にヒビが入り、手首に至ってはしっかり複雑骨折していた。
即座に、負傷に備えて用意していた《プリメロス・アウシリオス/応急処置》をしてから《レクペラシオン・トタル/完治》でどうにか元に戻した上で、お返しに夜一の拳を握り潰した。
「…なら良いの。前に骨にヒビ入れられたでしょ?それがあったから大丈夫なのか気になって…」
「心配性だなぁメノリは」
俯くメノリを改めて安心させる為に、抱き締めて背中を軽く叩いた。
取り敢えず此処まで。
切りの良いだろうって所まで書いたら、長くなりました。
何とか全員無力化に成功。
ハウラ達は補給その他が滅茶苦茶になった為、一旦休憩して立て直しを。
この後、スターク達が合流して藍染達が穿界門を開くまでの間、小休憩をハウラ達に取らされます。
次回は本物の空座町に向かうあたりから。
〈完コピが襲撃された件について〉
あくまでも、浦原達の目的は藍染の野望を阻止する事。
ならば、藍染を集中狙いするとハウラ達は仮定して動いていた。
自分達、特に〈渦〉担当を襲撃する可能性はそこまで高くないと計算していたのが甘かった。
〈渦〉担当は空座町(レプリカ)全体の監視も役目のひとつ。
塚菱に任せた〈装置〉を確実に設置して発動させるのには、彼女はどう考えても邪魔。
だから浦原は敢えて彼女にちょっかいをかけた。
あわよくば捕獲、討伐も視野に入れて。
まぁ、結果的に阻止されましたが。