前回、藍染VS黒崎。
超越者同士の戦い開始。
藍染とハウラの予想を遥かに超えた力を得た黒崎の《最後の月牙》により藍染は真っ二つにされてしまった。
ドサッ…
「「「「…っ惣右介!!!!」」」」
ガガガガガガガッッッ………ガシャッ!
凄まじい砂埃の中、黒崎一護の《最後の月牙・無月》によって真っ二つにされた藍染は地に墜ちて尚、崩玉の力で肉体は再生された。
「「「…あ~…ビックリしたぁ~…」」」
「惣右介、消えるかと思ったよぉ…」
「…っあれでもまだ再生するのかよ…っ!?…ぐ…ぁ…っ…!」
「「「「え?黒…崎…?」」」」
ホッとしたハウラ達とは正反対に、此処までしても尚、死なない藍染に戦慄した黒崎は突然呻き声をあげてその場に蹲った。
そして元の姿(大人ver)に戻り、急速にあの凄まじい力を失い始めた。
そんな彼の下へとふらつきながら再生を終えた藍染が歩み寄った。
「「「…惣右介?」」」
藍染が黒崎の所に辿り着いたと同時に、彼が手にしていた斬魄刀《鏡花水月》が粉々に砕けて姿を消した。
「…そうか…崩玉は…《鏡花水月》を…〈今の私〉に相応しい物に昇華してくれたという事か…」
「…くっ…」
「…黒崎一護…今のは実に素晴らしい一撃だった…やはり君は【資格】を持つ者…ん?」
「「「「…どしたの?…何?…え?マジ?」」」」
藍染とハウラ達が左耳に手を当てて怪訝な表情を浮かべた。
「…っ何だ?」
「…浦原の奴、もう空座町に来たってさ」
「あれだけ惣右介にズタボロにされたのに…」
「復活早過ぎない?」
「「「だよね」」」
「なっ…」
「…今直ぐ撤退だ。君達が奴に捕まる方が大問題だ。…王鍵の創生?それも中止だ。何故って…百聞は一見に如かずだ、来れば解る…え?…あ~もぅ…解った、解ったから。それが終わったら直ぐに此方に来なさい。良いね?」
藍染が此処まで感情を露わにした(まるで、聞き分けの無い妹を宥めるのに苦労しているお兄ちゃんみたいな)姿を初めて見た黒崎は目を白黒させている。
「確かに私達が捕まるのはヤバいけどさ…良いの?」
「…先程の一撃で、肝心の媒介がこの状態で何が出来る?」
「「「う~わ、粉々じゃんか」」」
「…って、そう言えばソレ私達の誰も触れなかったから惣右介が持ちっ放しだったっけ」
「あぁ…こうなってはもう王鍵の創生は不可能だ…」
「「「…て事は…」」」
「新しい媒介を見付けるまでは全部おあずけ?」
「そうなるね…はぁ」
「「来たよ~!」」
「さっき言った通り、そのまま撤退はムカつくから、ちょっとした嫌がらせして来たよ」
「そうか…時間稼ぎが出来るなら好都合だ…スターク、ハウラ3人を連れて虚夜宮の第一資料室の白いテープに赤ペンで〈持ち出し許可済〉と書いてある段ボール箱を全て持って来てくれないか。ハウラ達ならどれの事を言っているのか解るだろう」
「「「…あ~、アレね」」」
「はいよ」
「ハリベル達は通信室から携帯式通信機(トランシーバー)を一式頼むよ」
「畏まりました…立てるか?お前達」
「「「は、はい」」」
「ハウラ本人はメノリの守りに徹するだろうから…残りのハウラ達は浦原喜助の動向を監視していてくれないか?状況によっては、此処からなら妨害も遠慮無くやって構わないよ」
「「「了~解!」」」
指示を与えられた彼等は虚夜宮、空座町が良く見える上空へとそれぞれ行動を開始した。
「…何を…する気だ…?」
「…浦原喜助は何が何でも私を捕縛するつもりだろう。こんな鬼道を私に撃ち込んでいたのだからな…くっ…ぐぅっ…」
ザシュッ…ボトッ
左腕に〈何か〉を集結させ、右手の手刀で躊躇う事無く肩から斬り落とした。
切り落とした左腕からは、白い十字架の様な棒が無数に生えた。
「なっ…!?」
「…奴と戦っている最中に撃って来た鬼道の中に紛れていた、私の知らない…恐らくは拘束もしくは封印の類の縛道だろうな…だが《破道の五十四・廃炎》」
ボッ…サァァァァ…
斬り落とした左腕を燃やして灰にした。
「これで私を捕らえる事はほぼ不可能になった。後は…」
「…う…うぅ…ん…?…ここ…は…?」
「メノリ!!」
「…ハウラ?…あれ?…私…は…」
「大丈夫?吐き気とか眩暈とか無い?」
「…だいじょうぶ…って、藍染様は?あの黒崎って子も…」
「あ、それは…」
メノリが気絶していた間の事を説明した。
「…藍染様が…そぅ…」
「うん。で、今はスターク達待ちってところ」
目を覚ましたメノリが現状把握を終えた頃、浦原喜助を監視する為に上空に居るハウラ2人が満足気な笑みを浮かべ、自分達がして来た嫌がらせへの対応に苦戦しているらしい彼の様子に上機嫌に宣った。
「「わぁ~ぉ!」」
「流石の浦原喜助も、少しは手子摺ってるみたいだねぇ~」
「空座町を人質…じゃないや町質?にすれば行動も慎重にならざるを得ないかぁ~」
「っはぁ!?おい!ハウラ!!」
「あ、安心してちょ」
「あくまでも浦原喜助だけを狙ってのイタズラだから」
「手間だけど、起きた人達を寝かし付け直すついでにその辺の建造物の玄関に放り込んで来たから」
「勿論、君のお友達?にかけたコンディシオン《ポルタテ・ビエン/大人しくしてて》も解いて来たし」
「ってか、私達はアイツにやられた事をやり返しただけだよ」
「目玉風船で視界をメチャクチャ狭めたり」
「トリモチ爆弾責めしたり」
「アイツに効くかどうかは解んないけど、《ゴリオン・デ・ハバ/文鳥》モードの《エル・オトロ・ジョ/もう1人の私(分身体)》12体がこぞって東仙が不快に感じたり、過剰反応してた音を片っ端から大音量で流して追いかけ回したり」
「ついでに地面や建物の摩擦力をゼロにしたり」
「ザエルアポロが作った霊圧を撹乱する装置を散蒔いて足場を作りにくくしたり」
「《コサ・エスコンディーダ/隠し物》を付与した状態であっちこっちに隊長格の死神の霊圧にのみ反応する、何が起こるか私達にも解らない《カハ・デ・ソルプレサ/びっくり箱》を仕掛けたりしただけだからさ」
「…っ」
(口元を引き攣らせた)
「因みに、どのイタズラにも《アウトデストゥルクシオン/自爆》を付与してあるから、むやみに触ればドッカーン!!ってなるけどね」
「…っ!」
(俯いてプルプル震えてる)
「「まぁ早い話、思い付いたイタズラを片っ端からやって来ただけだからさ!」」
(とてもイイ笑顔でミートパイ或いはキドニーパイ丸1枚を食べながら)
「十分、タチ悪ぃ事ばっかしてんじゃねぇか!!頼むからこれ以上何もしないで大人しくしててくれ!」
「「えぇ~」」(物凄い不満顔)
「…取り敢えず、後はスターク達が戻って来るのを待つだけなのには変わらない」
倍返しをして来たらしいハウラ達に噛み付く黒崎を眺めながら、藍染はスターク達が戻るのを待った。
「…はぁ…はぁ…ふぅ~…」
「っ浦原さん!」
「どうもぉ~黒崎サン。いやぁ~、まさか此処まで入念な仕返し、しかも倍返しをして来るとは思いもしませんでしたよ。彼女達の執念を甘く見てました」
そう苦笑いを溢す浦原は全身ボロボロ、流石に相応の疲労を蓄積して来たらしい。
「…で、彼等は?」
「…あれを置いて虚圏に帰ったよ」
黒崎が指差す先には、何が入っているのか解らない大量の段ボール箱。
「あと…浦原さんと話したい事があるから渡してくれって」
そう言って渡されたのは携帯式通信機(トランシーバー)である。
「アタシに…?」
「聞こえるか?藍染、ハウラ」
『聞こえてるよ~』
『…奴が来たのだね』
「あぁ、今変わるから…はい」
「…もしもし?何の用でしょうか?」
『先ずは気になっているだろう結果を伝えよう』
藍染の野望に欠かせない王鍵の創生は、黒崎一護によって阻止された事。
よって、暫くの間(少なくとも王鍵の創生の目処が立つまで)は虚夜宮で大人しくしている事。
空座町には二度と手出し(王鍵の創生)をしない事。
ハウラ立ち会いの元、黒崎一護と複数の契約を交わした事。
きちんとその旨が書かれた契約書を藍染、黒崎、ハウラがそれぞれ保管している事。
黒崎はその契約書(ラミネート加工済)を浦原にしっかりと見せた。
「…これをアタシ達に信じろと?」
『…信用に足らぬと判断するならそれでも構わないさ。直に、それどころでは無くなるだろうからね』
「…それはどういう意味でしょうかねぇ?」
『…箱の中身を見れば、自ずと理解出来るさ』
「…話はそれだけッスか?」
『否…浦原喜助…お前に聞きたかった事がある』
「…何でしょう?」
『…私よりも優れた頭脳を持つお前ならば既に気付いている筈だ…なのに…なのに何故動かない?何故〈あんなもの〉に従っていられる?』
「…〈あんなもの〉…?…〈霊王〉の事ッスか…?…あぁ、そうか…アナタは見たんスね」
『…ギリッ(歯軋り)』
「…〈霊王〉の存在が無ければ尸魂界は分裂し、瓦解する…〈霊王〉は〈楔〉なんス…〈楔〉を失えば容易く崩れる…〈世界〉とはそういうモノなんスよ」
『…はぁ~(怒りを堪えたのだろう、物凄く深い溜息)…〈楔〉…そんな言葉で済ませるのかお前は…ならば尚の事、私は必ず成し遂げなければならない…例え、どれ程の時間が掛かろうとも』
「なっ…!」
『ねぇ、話終わった?そろそろメノリをちゃんと休ませたいんだけど』
『ちょ、ハウラ』
『あぁ、済まないねハウラ…浦原喜助があの様ならば、〈彼の者達〉もきっと…君の推測は当たっていると考えた方が良さそうだ…』
『あ~らま…なら、これからも〈しょうがない〉んだって言い訳し続けるのかな?連中は』
『残念ながら…ね』
グゥ~キュルルルルルル×6
『…っとぉ』
『『『『『『…お腹空いたぁ~…』』』』』』
『あれだけ食べたのにもうかよ…』
『相変わらずだなぁ~、ハウラは』
『そう言ってやるな。あんなに頑張ったのだから、空腹になりやすくもなるだろう』
『お爺ちゃんみたいにハウラを甘やかさないで、ハリベル』
『うわ、メノリってばヒドくない?』
『…話は終わった事だし、戻ろうか虚夜宮に』
『『『『『『うん!』』』』』』
「っおいちょっとブツンッ…ツーッ、ツーッ…アイツ等~!」
藍染の返答に思わず声を上げた黒崎だったが、メノリの体調を心配する余り、早く帰ろうと急かすハウラに会話を阻まれた挙げ句、彼女達の腹の虫で話を打ち切られた。
「…黒崎サン」
「…はぁ~…とりあえずこの契約書に書かれている事は勿論、藍染達が空座町で悪さをする事は二度と無いのは間違いねぇよ。絶対」
「…何故そう言い切れるんスか?」
「…ハウラはどんな時でもどんな小さな…それこそ口約束でも絶対に破らなかった…何でかは解らないけど…とにかく約束を破る事を凄ぇ怖れているのを感じたんだ…そんなハウラを友人だと言った藍染がハウラの怖れている事をするとは思えねぇ…」
「…黒崎サンらしいっスね…例えそれが真実で正しい判断だとしても、彼を捕まえない訳にはいかないんスけどね」
「…浦原さん…」
「…まぁ、潜伏先は解っていますし…直に待機中の隊士達が来ます…それまでの間、あの置き土産を確認していましょうか」
恐らく、藍染の人生の大半をかけて集めただろう情報と研究の結果が詰まったと思しき段ボール箱に向き直った。
取り敢えず此処まで。
藍染の処遇をどうするかで悩みました。
友人認定しているハウラの完コピが無茶して捕まるのは絶対に避けたい藍染。
自分のお気に入りや、仲間と認識している対象を奪われるのを黙って見ている訳が無いハウラ。
ふと、空座町に残っている完コピ2人が、大嫌いな浦原喜助にこれでもかと嫌がらせをしまくる姿と、浦原喜助に拘束される気は全く無い藍染が、その意識を別に向ける為の対策をしている姿が脳裏を過りました。
その結果、浦原喜助が来る前に藍染とハウラがトンズラかまして彼等の捕縛、封印を断念せざるを得ない状態にしました。
次回、虚夜宮に帰ったら…