生理的に、無理なものは無理と言うのは往々にしてあるものだよね…
しかも、めんどくさいのまで戻って来たぁ…
あ〜ぁ、逃げ切れなかったなぁ…
*不機嫌なハウラ、容赦無いです。
ついに藍染達が護廷十三隊を離反して来た。
ずっと狙っていた『崩玉』とやらを入手したとか。
それを使って私達の更なる強化を図りたいとか。
現状に満足してるのに、命令だからって再破面化を施させられた。
再破面化の結果、より高く、より理想通りに空を飛べるようになったのは嬉しかったけど。
「改めて正式に十刃を決めようと思う」
と言う藍染の言葉に沸き立つ周囲に対し、私には関係ないと今夜の夕食何にしようとか考えていた。
「…後はハウラ、君にも参加して貰うよ」
「………は?」
「今までは好きにさせて来たけれど、今回ばかりは必ず戦って貰うよ。これは決定事項だ。良いね?」
「…うぇ…は〜い」
…心の底から嫌だなぁ
「…ハウラ、その渋面そろそろどうにかならない?」
「無理…やりたくない事やらされるのいつぶりだろう…あ〜もう、本当にめんどくさいなぁ〜」
「アンタねぇ、藍染様がどれだけ目をかけて下さってるか解ってるの?」
「久し振りに会った友達に何て厳しい言葉をかけてくるの?ロリ」
「たまたま食堂で遭っただけでしょ」
「本当につれないよね〜。ね、メノリ」
「私に振らないでよ…でも、ハウラの戦ってるところ私も見たいかな」
「メノリまで〜…私、めんどくさい事嫌いだって言ってるじゃんか〜」
「どんなにくだ巻いたって、明日やらなきゃなんないんだから、ウダウダ言ってないでさっさと覚悟決めちゃいなさい」
「うー…チルッチまで〜…ぶ〜」
「「やれやれ…」」
「往生際が悪いわよ」
「まさか、約束破る気?ハウラ」
「…いやまぁ…確かに戦うのはめんどくさいけど…それ以上に戦う相手がイヤ。兎に角アレと戦いたくない。アレ以外ならここまでダダこねない…と思う」
「どんだけ嫌ってるのよ?ゾマリ」
ロリの疑問に私は思いっきり顔を歪めて吐き捨てた。
「だいぶ前にお仕置きしたカマキリがまだマシなレベル。ってか、姿形を視界に入れるどころか名前すら聞きたくない」
「そ、そこまで言う…?」
「ってか、生理的に無理。アレを視界に入れるとか何の拷問?あーぁ、明日が永遠に来ない魔法とかないかなぁ…」
「訳の解らない事言ってないで、残りのご飯早く食べちゃいなさい」
「…ママが厳しいよぉ」
「「「誰がママよ」」」
ゴネながらも食事を終えた私を、メノリ達3人がお風呂へと引っ張って行った。
お風呂に入った事で、少しだけ気分が落ち着いた私の機嫌を、チルッチの台詞が地の底まで落とした。
「…あぁ、今思い出したんだけどさ」
「んぁ?何を?」
「ゾマリからの伝言。見た目は全く好みではありませんが、貴女達を我が従属官にする日が今から楽しみですよ…だって」
「…え…」(物凄く嫌だと表情が言ってる)
「………」(表情そのものがどっか行った)
「う〜わ、身の程知らず〜。自分から死亡宣告するなんて」
「ね〜」
…パァァァンッ!!
ハウラが手にしていた彼女専用牛乳瓶(1.8リットル入り/つまり一升瓶、中のフルーツミルクは全部腹の中)が粉々に砕け散った。
「ちょ、ハウラ?」
「…明日と言わず今夜にでも不快な物体は消した方がイイかなぁ?」
「イヤイヤイヤ!駄目に決まってるでしょ!?藍染様から明日の午後って指示受けてるんだから我慢して!」
「…う〜…」
…何でアンタ達はあんなハウラ見て平気なの?
…不機嫌な時のハウラって、割とあんな感じだけど?
…昔から?マジで?
…大マジよ。此処に来るだいぶ前の事だけど、狩りの真っ只中に横槍入れられて獲物を逃した事があって、
「…あ〜ぁ、ご飯逃げちゃった。ねぇ、落とし前ちゃんと付けてくれるよね?」
って邪魔した連中を1体残らず叩き潰して食べ尽くした事だってあるもの
…勿論、私達の分はちゃんとくれるだけの思考能力はあったけど
…まぁ、それは仕方ないわね
…その後も怒り冷めやらずで、機嫌が治るまでずっと遭遇した他の虚を襲っては食べてたわ
…八つ当たりされた奴等にちょっと同情するわ
「…どしたの?みんな黙っちゃって」
「え?い、いや別に」
「アンタと遣り合うどっかの誰かに同情すべきかどうか悩んだだけよ」
「あ、そう?ロリって時々優しいよね。あんなのにまで」
「…時々って何よ…全く」
「まぁまぁ、折角、お風呂入ったんだから余計な事しないで寝よう!ね?」
「む〜…それもそっか。んじゃロリとチルッチ、お休み〜」
「「お休み」」
そして翌日の指示された時間。
本当に渋々といった表情を前面に押し出したハウラがゾマリと向かい合った。
「始める前に相手に何か伝える事はあるかい?」
藍染の台詞にハウラは左手を上げた。
「伝えるってか、確認」
「構わないよ」
「昨日のチルッチからの伝言、マジ?取り消す気は?」
「ふ…何故取り消す必要が?直ぐに現実と「もういい」」
シュパァァァッ………チンッ
「「「「「は?」」」」」
ハウラの右腕が見えなくなった瞬間、いつの間に触れたかすら解らない速さで自身の刀を鞘に収めた音がした。
そして…
「はい、お終い。あ、一応言っとくね。最低でも1時間はそのまま身じろぎひとつしないでいる事をオススメしとくね。最後の慈悲として」
「は?何を「あぁ、喋るのも止めといた方が」」
ドチャドチャドチャチャチャ………グチャッ
「イイって言うのが遅れたね」
ゾマリだったモノの肉塊が床に散乱した。
首から下は見事なブロック肉になっているのに、頭が無傷なのはハウラなりの慈悲なのか、それとも自分の半身である刀がその嫌いな顔に接触する事すら嫌だったのか…。
答えは解らないがこの瞬間、ハウラの十刃入りが決定したのは間違い無い。
「終わったから帰ってイイ?」
「…済まないね。まさかこんなに早く決着が付くとは思ってもいなかったからね。この後の戦闘がどのくらいかかるか解らないが、待機していて欲しい」
「え〜…」
「現世で入手した数量限定もしくは季節限定のお菓子詰め合わせとそれに合う飲み物のセット。そして君に与える宮は君の理想通りの物を誂えよう」
「…お風呂は?」
「勿論、含まれている」
「…なら暇つぶしに間取りでも書いてようっと」
フンフンと鼻歌を歌いながら隅っこでどんな宮にするかメノリと相談し始めた。
…何でコイツとやり合わなきゃならないのさ?
散々待たされた相手は前にお仕置きしたカマキリことノイトラだった。
話によると、テスラが頑張って掘り返した刀で帰刃して両手を元に戻し、再破面化をした奴は復活して早々、私との一騎討ちを願い出ていたらしい。
心底面倒くさがる私に、藍染はとてもイイ笑顔で引導を渡してやるのも慈悲だとか言って、ノイトラの怒りに火だけでなく、燃焼剤も遠慮なくぶち込んだ。
完全に冷静さを失い、逆上したアイツは確実に私を倒すつもりらしく、形を変えた刀を掲げて解号を口にして帰刃した。
「テメェは必ず殺す!祈れ!聖哭螳蜋!!」
…うーわ、本当にカマキリみたい
…どうしようかな
…取り敢えず
相手をしたくない私は、咄嗟に藍染の傍に居た東仙を盾にして一旦その場を離れ、メノリをネリエルに預けてそこから最長距離まで響転で移動した。
「くっ…!ハウラ=リベラシオン!貴様ぁ!!」
(当然、激怒)
「ちょ、ハウラ!?」(困惑)
「出来るだけササッと終わらせるから、そこでイイコにしてて」(頭ナデナデ)
「ハウラには言われたくないよ!!」(当然の反論)
「舐めやがって!!」(怒りにトドメを刺した)
脇目も振らずに私を追いかけるノイトラが目前に迫ったところで黒蠅に変化、大鎌は空を切った。
「テメッ」
大振りで細やかな調整が難しい大鎌が、小さな蠅に当たる事は無い。
チョロチョロと大鎌を当てにくい距離で、尚且つ奴の視界に必ず入る範囲内を飛んで更に煽ってやる。
「舐めんじゃねぇぇぇ!!」
ノイトラは大鎌では埒が明かないと判断、手にしていた大鎌を捨てて直接叩き潰す事にした。
…予想通り
フッ…
あれ程鬱陶しく飛んでいた蠅が消えた。
「なっ…しまっ「ホイッと!」」
ザシュッ…
「あれ?」
取り敢えず背後に回って右腕を肩から切り取ろうとしたが、予想の半分くらいにしか刃が入らず、切り落としに失敗した。
「…あー…前よりも硬くなってるのか」
「はっ!残念だったなぁハウラ!」
「…はぁ〜…めんどくさいなぁもう」
(頭をガシガシと掻き毟りながらバカデカい溜息)
「…あ?」
「1回で落ちてよ〜。何回も斬るのめんどくさいんだからさぁ〜」
「テ、テメェ…何処まで…何処まで俺を馬鹿にしやがるつもりだあぁぁぁぁぁ!!」
振り向きざまにハウラの首、心臓部、腹を刺さんと手刀を突き出したが、ハウラはノイトラの動きに合わせて背後を取ったまま、再び右腕の切り落としに取り掛かった。
ザクッ…ガシィッ
「あ」
「捕まえたぜ…テメェの武器は鉈かぁ…通りで鞘の幅が広いと思っていたが…ならご自慢の馬鹿力と速さでアイツを殺ったってぇ事か…あ?」
漸く判明したハウラの武器を前に、考察を口にしている間にノイトラが掴んでいた鉈が細いレイピアに変わり、手から抜けた。
「あ〜、危なかった。流石にコレで綱引きはしたくないからね」
そう呟くと同時に、ノイトラの側頭部に回し蹴りをくらわせて誰も居ない壁へと飛ばした。
ドカッ!!………ドゴォォォォン!!
「…っがはっ…」
「そう言えばさ、前にネリエルから聞いたけど、鋼皮が硬いのが自慢なんだってね。でも…中身はどうなのかなぁ?…ってちょっと気になってたんだよね」
「…あぁ?何言っふぐっ!?」
ノイトラが衝撃から復活する前にハウラはノイトラの左肩を押さえ込み、身動きしにくい状態を作り上げた。
そして、さも今思い出して、更に思い付いたと言わんばかりのハウラは、徐ろにノイトラの口に左手を捩じ込んだ。
「耐久テストといこうか?」
「ふがあっ…ガキィィッ…!?」
「痛っ!ちょっとぉ、人の手噛むなんて最低じゃない?」
…なら人の口に手を捩じ込むのは良いの(かよ)!?
見学者達のほぼ全員の心のツッコミは当然、ハウラには届かない。
…ヤバい!
そう直感したノイトラは咄嗟にハウラの左手を噛み千切ろうとしたが、鋼皮に阻まれて付けた歯形から僅かに血が滲んだだけだった。
それでも、左手をどうにかしようと自分のまだ無事な左手で抜き取ろうとしたが、ハウラの右手が邪魔をして上手くいかない。
そして…
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!
「…お…あ…ぇ…」
「…う〜ん…虚弾10連発でもまだ保つかぁ…ふ〜ん…鋼皮は本当に硬いんだね。だって大抵のヤツはこれで頭グチャグチャになるのに、原型残ってるし貫通しないんだもん」
「…ぁ…」(帰刃が解けた)
モザイク処理が必要な顔になったノイトラを、マジマジと見つめるハウラの全く好奇心の欠片も無い【無】の表情を目の当たりにして、普段の彼女との落差に絶句する面々を気にもせず、気絶したノイトラをテスラへと放り投げた。
「戦闘不能により終了…で、イイよね?」
「あぁ…ハウラ、君の勝ちだ。そして君には7(セプティマ)を託したいのだが。どうかな?」
「…イイよ」(無表情から不機嫌丸出しの表情に)
「では、7に決まりだね。新たな自宮の資料も渡しておこうか」
「は〜い」(やる気0の生返事)
今後についてひと通り話し合った後、此方を殺意マシマシで睨み続ける東仙を無視して、深呼吸を繰り返す事数回、いつものヘラっと抜けた表情に戻った。
「たっだいま〜!メノリ〜、カマキリに噛まれたし、引っ掻かれちゃったよぉ〜!」
「…手を噛まれたのは自業自得でしょ。ほら、医務室で診て貰おう」
「は〜いっ」
グーキュルルルググーキュルルルグー
「お腹空いたぁ…」
「ハイハイ、終わったら食堂ね。取り敢えずコレあげるからそのお腹の虫どうにかして」
「サンドイッチだぁ!わぁ〜い!モグモグ」
「全くもう…」
先程までのゾマリへの容赦無い仕打ちに、帰刃したノイトラを自分は帰刃しないで気絶させたハウラと、現在のメノリに甘えまくるハウラとの大き過ぎる差に、顔を引き攣らせたり、慄いたりしている他の連中を当の本人は見向きもせずに立ち去った。
何はともあれ、十刃が決定した。
ゾマリ、余計な事を言った所為で帰刃するどころか戦闘開始の合図すら無い状態で瞬殺されました。
ノイトラには〈嫌いな奴には何も教える必要は無い。だから手の内を見せる必要も無い〉と言うモットーがハウラにはあって、帰刃しないで虚弾の連射のゴリ押しで何とか気絶させて勝ちをもぎ取りました。
ハウラは心底嫌いな相手には基本的に容赦無いけど、その中でも一応判断基準があります。
それは自分が仲間認定している人達にとってどんな価値があるかです。
自分は嫌いだけど、仲間の誰かが気にかけているのであればその存在を消す事はしません。
ノイトラがその例ですね。
ネリエルが気にかけているから消さない。
ネリエルが気にかけなくなれば消す。
とてもわかりやすいですね。
対ノイトラ戦で帰刃させなかった本当の理由
ぶっちゃけると、ハウラの帰刃はまだ候補止まりで決定していないので、ノイトラの頭部に衝撃を与えまくって無理矢理気絶させて勝利をもぎ取らせました。