未来分岐 IF   作:タク-F

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木虎編の想定時系列は記者会見後〜ランク戦前です。

それでは本編にどうぞ


木虎藍
羨望と嫉妬と不明の感情(木虎藍)


 私はBORDERに於いて自他共に認めるエリートだ。広報活動に加えて運営・選考を含めA級5位【嵐山隊】に所属するエースだ。私の欠点はBORDERの定義で見てトリオンの数値が高く無いことだけど、今は戦い方も工夫出来て基本的には気にならない。

 

「そんな私が彼の事を気になってしまうなんて……」

 

 私が()()()()()()()()()()なんて……とは思わない。客観的に見れば私は初対面から彼……【三雲 修】君に嫉妬した。訓練生でありながら民間人を守る為にトリガーを使う発想に至る人は多くは無くても少なくはない。

 

「でも彼は自分がクビを宣告されると自覚した上でトリガーを使用した。私が彼と同じ立場で同じ状況に追い込まれれば私は恐らく逃げ遅れた民間人を見捨てた……はず。それはBORDERの規則に於いては正しい。訓練生は基地内以外でのトリガーの使用は認められない。それだけの筈なのに……」

 

 私が……()()()B()O()R()D()E()R()()()()()()である以上規則は破れないけど、後から聞いた話が私にもう1つの考えを浮かばせた。

 

『いやいやお前達全然間に合って無いじゃん。オサムがいなかったら何人も死んでたぞ?』

 

 あの時は気づかなかったけど空閑君の言葉は事実だった。仮に私達が到着するまで三雲君がトリガーを使わなければ何人の民間人が死傷していたかは未知数だけど少なく数では無かった筈だ。

 

「時枝先輩、嵐山さん……相談よろしいですか?」

 

「どうした木虎? 思い詰めた表情をして」

 

「悩みがあるんでしょ? 今回の大規模侵攻で序盤にトリオン兵に捕獲された事なら気にする必要は無いと思うけど?」

 

「いえ……あの時は敵の目的が分からなかったので悔いるとすれば、訓練生の避難をさせながら負傷した時点で3体と会敵以上緊急脱出(ベイルアウト)判断が遅れた事ぐらいですが、振り返ればあのトリオン兵の手の内が割れるまでにある程度の犠牲は出ました。恐らくですが他のA級隊員でも同様の被害を受ける可能性はあるでしょう」

 

「そりゃそうでしょ。聞いた話では崩されたとはいえ緑川も逃げざるを得ない状況に陥ったみたいですよ? 何人あのトリオン兵に緊急脱出したか」

 

「いえ佐鳥先輩……そうじゃないんです。私が悩んでいるのはもっと前……三門第三中学のモールモッド襲撃の時の事なんです。当時あの場にいなかった佐鳥先輩に話を振らなかったのは……」

 

「あ〜なるほどぉ〜」

 

 私の言葉に佐鳥先輩は怯んだみたいだけどその理由は明白だ。

 

「申し訳ありません。八つ当たりが過ぎました」

 

「いやまぁ俺がノンデリなのもそうだろうから別に良いけど?」

 

 この人は言動がふざけた時も多いけど真面目な人だ。非があれば頭を下げる事に躊躇いが無い。口に出したくない無いけどそれは1人の人間としては羨ましい側面もある

 

「三門第三中学……三雲君がモールモッドを撃退した日の事だな。木虎が思い詰める事って何かあったか? 三雲君の責任追及をしようとしたが充が諌めてすぐに引いたじゃないか。彼自身にも非があった以上あの場で三雲君を責めたくなる事そのものは人としては自然じゃないのか?」

 

「いえ……それもあるんですがそれ以上にあの日の私は()()()()()()()愚かな言葉を吐いてしまいました」

 

『木虎って俺がまだ隊にいた頃の嵐山がインタビューされた時の言葉って識ってるか? 記者の質問に嵐山はこう答えたんだ……

 

【家族の危機と任務が被った時貴方はどうしますか?】

 

 この質問に嵐山は、

 

【家族の無事を確認次第すぐに任務に復帰します】

 

 そう答えた。今回の嵐山は大規模侵攻の時に家族の元に駆けつけたかった筈だ。だが堪えた。アイツは……本当に凄いよな』

 

 嵐山さんの優しさが胸に刺さる。だからこそ柿崎先輩からの話を知った私は自分が情けない。あの嵐山さんも規則と命を秤にかけたら命を選択する。人がどうだから……と言うのはずるいがその決断に胸を張れる人を強い人と言えるのだろう。

 

「私はあの日間接的にですが逃げ遅れた人達に対して()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。後になって振り返れば広報部隊としての私の言葉はBORDERの言葉。受け手の感じ方次第ではBORDERへの非難もあり得た筈です。浅慮が過ぎました」

 

「なるほどね。難しい問題だ。木虎はその時の言葉に責任を感じてるって事?」

 

「それは事実です。特に今回の大規模侵攻を経てより強く感じ()()()。以前まではそう考えられなかったので特に……」

 

()()()?」

 

「私自身今回は小南先輩に救われました。救われて安堵して気付きました。あの日の私はこの立場の人を見捨てたのだと……」

 

 私の告白は静寂の時間を作り出した。この場の誰もが安易な発言を出来なくなってしまった。

 

「藍ちゃん……自分を責めずにはいられ無いのね」

 

 静寂を破ったのは綾辻先輩だった。そしてそこから空気が変わった。

 

「だから三雲君……か。あの日の彼は色々な物を秤にかけて行動した。自分が同じ立場になった時同じ行動が出来るとは限らない、だが自分の言動を振り返れば行動自体も自信が持てなくなった。だから苦悩したんだな木虎?」

 

「……はい。この際だから言いますがあの日の三雲君の行動は私がしたくてもできない事ばかりです。癪な言い方をすれば羨ましいんです。そんな彼が風間さんとの模擬戦や敵の遠征部隊退への貢献で実績を上げてる。比較するのはおかしいのに………ですよ?」

 

 私は何を言っているのだろう? いえ……わかっている筈なのに。

 

「取り乱しすぎましたね。今日は失礼します……」

 

 私は嵐山隊の隊室を出た。あの場にいても気まずさにいずれ退室しただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしてるのかしら……私は」

 

 私は1人ロビーにて考えに耽っている。誰かに聞いて貰いたいけど聞いて欲しくない。自分が分からないのがこんなにも苦しいなんて……

 

「おや? キトラじゃないか。どうしたんだこんなところで?」

 

「あら空閑君……貴方も1人じゃない。貴方が1人で過ごすのが自由なように私がどこで過ごすかも自由じゃないかしら?」

 

「ふ〜ん……つまらないウソつくんだね。悩みがあるなら相談すれば良いんじゃないのか?」

 

「貴方ねぇ……はぁ。空閑君と話すとどうも見透かされてる気がしてならないわ。いっそ貴方が相談に乗るとでも言ってくれるのかしら?」

 

「別に良いよ。だってオレ暇だし。別にキトラの事嫌いじゃないし」

 

「正直に言ってくれるわね。はぁ……あまり聞かれたくない話だから場所を変えるわ。ここじゃあお互い目立つでしょう?」

 

「ふむ……言われて見れば視線が集まってるな。それではお言葉に甘えて」

 

「奢るから好きな飲み物選びなさい」

 

 私は空閑君と個室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……つまりキトラはオサムが羨ましい。それだけの事じゃないのか? 長々と語ってたけどオレにはそう聞こえたぞ?」

 

「本当にはっきり言ってくれるわね。相談する相手を間違えた気さえしてきたわ」

 

「そもそもキトラはオサムの事を好きじゃないのか? なんか好きな相手に冷たく当たるアレ……よくわからんがオレにはキトラがアレに見えるぞ?」

 

 空閑君は遠慮も差別も無く断言した。嵐山隊では役職や役割における葛藤への理解もあったけど彼はそれが全く存在しない。ここまでで無遠慮だと清々しいとさえ思える程に。

 

「キトラはオサムみたいになりたいのか? やめとけやめとけ。オサムは馬鹿みたいに真っ直ぐだ。それもキトラと違うタイプの真っ直ぐさの。キトラがオサムを真似ても納得しないんじゃないのか?」

 

「そうね。なら参考までに空閑君にとっての三雲君を…………いえ、なんというか

 

『オサムはオサムだろ?』

 

 で終わるのでしょう? なら聞く必要が無いわ」

 

「よくわかってるじゃん」

 

「珍しい笑顔ね。でも三雲君の事を話す空閑君はいきいきしてるように見えるわ。本当に素直な貴方達を羨ましく思える程に」

 

 なんとなく話していると三雲君の事を話す空閑君は饒舌で明るい。恋愛漫画ならこぅ……キラキラしてるとでも言えそうな気がするわ。

 

「ついでに教えてくれるかしら? 空閑君にとって初対面の頃の私と今の私だったらどっちの私の方が話しやすいのかしら?」

 

「オレは今のキトラの方が良いと思うぞ。ツンツンしてるキトラよりもテレビで見るキトラよりも」

 

「ありがとう。参考にさせて貰うわ。それと相談に乗って貰って言うのもアレだけど最後に忠告よ。人の事を見透かす言動を繰り返すのあまりはオススメしないわ。人間はそういう人間を不気味に感じる事もあるのよ?」

 

「覚えておくよ」

 

 私はそれだけ告げて部屋を出た。どうにも今日の私は私らしく無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何度目かしらね……こういうのは」

 

 今……私の目の前には最も会いたく無い人間がいる。

 

「随分な言われようだな。僕は単純に空閑を探しに来ただけで……アイツは方向音痴なんだよ。そういう木虎はどうしたんだ? あまり調子良さそうに見えないけど」

 

「貴方のせいよ貴方の」

 

「??? どういう事だ?」

 

「知らなくても良いわ」

 

 何故かしら。三雲君といると憎まれ口を叩かずにはいられ無いのに心地よいなんて。本当に…………いえ、そうなのかもしれないわね。

 

「それと空閑君なら対戦ブースの個室よ。少し話をする為に連れて言ったわ」

 

「そうか。ありがとう。じゃあ僕は空閑を迎えに行くよ」

 

 三雲君はそれだけ告げて立ち去ろうとした。それは自然な事なのに……

 

「待ちなさい三雲君。少し世間話をしましょう? 聞きたい事がお互いにある筈よ?」

 

 三雲君を引き留めてしまった。ただこの何気ない時間が終わる事が残念に思えた。

 

「いやい「早く来なさい」ちょっと待ってくれ!」

 

 拒否する彼の抗議を無視して私は彼を連れ出した。それも対戦ブースから反対の方角に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その……何なんだ? 今日の木虎はおかしいぞ?」

 

「自覚があるから大丈夫よ。でも本題に入るわ。三雲君……貴方はどうしてそんなにも他人の為に動けるの? 貴方には見返りどころかリスクしか無い事も多いのに。今回だって死にかけて、記者会見にまで割り込んで……」

 

「僕がそうするべきだと思ったから。出来るかどうかは関係ないんだ。その時に動かなければ後悔する事を僕は識ってるから」

 

「例え自分が破滅するとしても?」

 

「後で悔いる事になるぐらいなら僕は行動するよ。例えどうなっても」

 

「そう言い切れる貴方が羨ましいわ」

 

 三雲君は拳を強く握っていた。その瞳の力は間違い無く私以上であり危うさを感じる。だから私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「貴方が無茶をすれば悲しむ人や傷つく人が必ずいるわ。その人達の事を忘れないでほしいわね」

 

「それは……そうかもしれないな……」

 

 三雲君が私の言葉に答えるよりも早く私は部屋を立ち去った。今の私と彼の関係はこのままで良い。私と対等の視点で見ているつもりの彼に知られたくも無いのもある。

 

「今は駄目だけどもしも貴方が私の隣に立てる程成長したその時は……貴方の守るモノの中に私も入れて……なんてね」

 

 彼が私の憧れる英雄(ヒーロー)になったその時は私がその隣に立ってあげるわ。だって貴方の背中を守れるのは私でありたい……そう思っているのだから。

 

 

 

 




木虎は【まだ】ヤンデレ化していませんが、自分が憧れた英雄が自分以外の女性と……となればどうなるでしょう?現状だと姉的な側面なのかな?

続編(の需要)があれば書くかもしれませんのでよろしければ評価や感想・お気に入り登録・アンケート回答よろしくお願いします!

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