財団Tale:≪財団神拳≫創設秘話 「君のその顔が見たくて」   作:深夜に食べるラーメンの味

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財団神拳創始者:インタビュー記録1

■ ■ ■

 

 

 

 

楽な仕事だったはずだろ!?

何も知らないガキを騙して儲ける、ボロイ商売だったはずだろ!?

それがいったい、どうしてこうなった!?

なあアンタらも信じてくれよお!

俺は何も知らなかったんだって! 本当だって!

財団っていうのも本当にあったなんて知らなかったんだよお!

しゃべる! なんでもしゃべるから!

 

俺はしがない元俳優。

そこそこ名が売れた頃に天狗になっちゃって、いろんな女の子に手を出しちゃったもんだから干されちまってさ。

酒とパチンコに溺れて毎日過ごしてたら、ある日黒スーツの奴らに声をかけられた。

 

ガキを騙して育てないか、って。

 

金持ちの人らは趣味の悪いことを考えるもんだね。

物心ついてないくらいのガキをどこかから連れてきて、そんでドラマのセットの中で育てるんだってさ。

するとガキは大きくなるにつれて、そのセットの設定を信じ込んで世界の全てだって思うようになる。

トゥルーマン・ショーっていう映画、知らない? あれだよ。

セットの中の世界で人を育てるんだ。

 

青銅器の中世時代のセット、あやしげな呪術を使う未開の地のセット、超能力研究所から保護されたガキとおっさんのヒューマンドラマのセット。

ああ、魔法世界のお姫様っていうセットもあったらしいな。そんな詳しく知らねーけど。本当だよ!

 

世界中にこんなセットがたくさんあるらしいぜ?

そんで俺が任されたのが、伝説の武術家とその弟子のセット、ってわけ。

一か月に一回か二回くらい、特殊メイクしてさ、中国の仙人みたいな恰好でさ。

そんでガキにてきとーなそれっぽいセリフ言って帰る。

それだけのお仕事。

たまにしこたま殴れって言われて、いや俺も嫌だったんだよ? でも金くれるっていうからさ、ガキを殴って。

すげー金もらえんの。しょうがないじゃん! できるだけ痛くないようにしたんだって!

 

武術とか適当なのでいいからそっちで考えろって丸投げだったからさ、昔かじってたカンフー映画の動きを元にしてさ。

いや、俺が主演だったんだけど、知らない? そう。

だからケガしないように、演出用の殺陣を元にしたナンチャッテ武術をガキに教えてたんだよ。

見てる側も全員素人だからわかんないって。むしろカメラ映りを意識してやったらバカウケ。そういうの得意だったんだよ俺。

 

いや財団神拳ってのは作りものだって! 本当だって! そういう設定にしろって台本渡されてただけだって!

全部人づてに書類だの小道具だの渡されてただけだから知らないよ!

ホントに財団ってとこがあったとかさ、知らなかったんだって!

動きは俺のオリジナルだけど、それだけだって!

知らねーよ、元博士で何かがあって足抜けして山奥で暮らしてた、とかいう設定にしろって言われてただけだって!

 

え、じゃ、じゃあ財団が本当にあったってことは、なんかやべーアイテム? スキップ? とかいうのも実在する、ってこと?

 

何も知りません! 何も! 何も考えてません言ってません!

続き! 続きしゃべります! 全部しゃべりますから!

 

えーとそれでガキを育てんだよ、セットの中で。

たぶん、それでえーと10年くらい。もう10年も。

 

今までは最後のネタバラシでさ、セットをコントのオチみたいにバタバターッて倒して。

ドッキリ大成功! って書いたプラカードを掲げてみんなでゲラゲラ笑うんだってさ。

 

やっぱ金持ちってのは悪趣味だよな。

そのガキたちにとっちゃ、今まで自分が信じてた世界が壊れんだよな。

いや、かわいそーだとは思ってたよ? でも金くれるって言われたからさ。

 

そんで、今回は初の野外ロケだったんだと。

ほとんど野生の中で暮らさせてたよ。

そこらへんにある岩だの木だのを殴らせて、必殺技だって教えたパンチやキックをさ、当たった瞬間にさ、いい感じのところで爆薬で爆破すんの。

するともうお目々キラキラよ。

すげーって信じちゃう。まあ自分の周りにそれしかないんだもんな。疑うことなんてねーよな。

最後にドカーンって爆発させて、クリームを顔面にべちゃーっ、はいドッキリでした!

そうやる手はずだったんだと。

 

世のため人のために武術を鍛えるんだって理由付けしてやれば、もうそのためだけに生きるようになる。

ろくな教育受けてねーからな。全部信じちゃうんだよな。

疑うことを知らないのは世間から隔離して生活させてたからかね。

 

だから俺がどんだけ苦労したと思ってんだ。

学校の先生でもないのに、元博士って設定だから、ちょっと勉強とか教えたりしてよ。

分数の掛け算とかすげー難しいんだよ。余計な知恵を与えるなって言われてたけど、現場に入っちまえばこっちのもんだからさ。

道徳も、スキップだかなんだか知らんオバケよりも、人が一番怖いって教えてさ。

いいことも、悪い事も、道徳っつーの? 俺が教えて。

独りで過ごす時に腹を空かさないように、食えるキノコや草をよ、月一に会う日までに調べて、自分の腹壊して覚えて、教えてやって。

多少は本当の武術でも教えてやるかって琉球空手だかムエタイだかの道場にかよったりして。

気づいたらあれだけハマってた酒もパチンコも、女もやめて。

 

こんな、俺みたいなクズを、師匠師匠って、すごいすごいって。

この子は俺を、本当にすごいって思ってて。

誰もいない山の中で、信じて待っていて。

 

あの子は俺が育てたんだ。

俺が育てたんだよ。

貰った金はもう使いきれなくなって全部寄付しちまった。

残った金であの子の教科書とか、服とか、そういうのに全部使った。

暖房器具だの家電を持ち込むのが禁止されてたから、山の中で冬を過ごすのがどんだけキツイか知らねーんだクソ金持ち共は。

あの子の足が凍えちまわないように俺は。

 

あそこは、あの山ン中は。

俺と、あの子の世界だったんだ。

 

ドッキリ? ネタバラシ? なんだそれ? 

あの子の誕生日に、その日をやるってことは台本に書かれてた。

 

だから、もう。

もういいって。

全部ぶっ殺してやろうって。

 

プラカード持ってる連中の場所はバミリで全部わかってたから、そこに爆薬を集めてさ。

もちろん、俺もあっち側だからさ、だから。

俺諸共、全部ぶっ壊してやろうって、思って。

俺は、金をもらってガキの人生を狂わせたクズだ。だからもう、よかったんだ。

 

へへへ、隠してたんだ、俺。

爆薬、これまでの全部隠してたんだ。

 

俺が俳優やめたのは、発破の失敗でケガしたからだよ。

だから俺は、爆破恐怖症になってたんだ。

俺がいた現場はそういう安全基準がクソだったからさ。もちろん書面なんて残ってない。

アイツらはそれを知らなかった。

共演者や監督の財布からいろいろ拝借してたの、全然バレなかったってこと。

アイツらは知らなかったんだよ。

 

最初の一回か、二回、俺が共振パンチだ奥義だって使う分だけ、爆薬を仕込んでさ。

そんで体がブルっちまったから、それ以降はもうやめた。

収容中の古傷がって言い訳して、あの子はそれを信じた。

あの子は震える俺の背中を撫でてくれたよ。

だからもう、よかったんだ。

 

アイツらは知らなかった。

でも知ってたことがあった。

爆薬の隠し場所くらいはな。そりゃそーか。

 

それで当日、俺だけが吹っ飛んだ。

でも俺は、こうしてかろうじて生きてた。

 

馬鹿だね!

発破の管理が適当なヤツは大嫌いだ!

番号でも振っておけば、あの日あの時、使われなかった爆薬だってことくらいすぐに分かったはずなのにな!

アイツら俺にプラカード振りやがって! 何がドッキリ大成功だクソが!

 

でもいいんだ、それでよかったんだ。

カメラ越しにしか世界を見てないから、俺たちが何をしてたか、本当のことは何一つわかっちゃいなかったんだ。

何がこどもリアリティ・ショーだ馬鹿がよ!

 

俺が引っ掛かっただけだ。

あの場にいて、何もウソがなかったのは、あの子だけだった。

 

俺は知ってた。

俺だけが知ってた。

アイツらは知らなかった。

アイツらは知らなかったんだ!

 

あの子が、財団神拳を使っていた時は、一切の爆薬なんて使ってなかったってことは!

 

あれは、なんだ? あの子のよくわかんない不思議なパワーは。

超能力か、気か、それとも別の何かか?

わからない、わからなかったが、初めて見たその時から俺は、隠し通すと決めた。

わかったからだよ。

あの子には、このクソみたいな世界を変える力があるってこと!

 

それで、こうだ!

血反吐吐きながら俺は言ってやったんだ!

アイツラを指さして、あの子に言ってやったんだ!

 

カオス・インサージェンシーの襲撃だ! って!

 

あとは財団の皆様方の知る通りですよ。

あの子が大暴れして、あなたたちがそれを見つけた。

俺がここにいるってことは、あの子は勝った。そうですよね?

 

へへへ、重火器がなんだってんだ。

あの子は財団神拳の使い手だぜ? 素手で制圧できるっての。

そういう存在に、金持ちたちがしたんだからな。

 

意識が消える寸前に、俺はアイツらに言ってやりましたよ。

 

サプラーイズ、ってね!

 

そこから先は、俺はたぶん、くたばってたから覚えちゃいないけど。

心臓が止まってた? 脳波も? ああ、そうですか。

ここで治療を受けてるってことは、まあ、生き延びることができてよかったですよ。

 

そんであの子も、ここで保護されたんですね?

よかった。

本当によかった。

 

俺が覚えてるのはここまでです。

さ、もう全部しゃべりましたよ!

後はもう何も知りません! 知りませんったら! 本当ですよ!

痛いのは苦手なので、何かするなら薬とかでお願いします!

 

え、もういい?

やったー! 助かった!

この後は? 記憶処理、とかいうのをしてたぶん解放される?

やったぜ! 大勝利だ! また文無しに戻るけど何とかならあな!

ここ出たらまた俳優でもやっかな!

 

もうあの子に会うことはない?

ま、そりゃそーか。そうですよね。そうだよなあ。

心残りはあるけど、心残りしかないですけど、そりゃあそうなりますよね。

しゃーない。

しゃーないわな。

 

あの、財団の皆さんに、お願いがあるんですが、いいでしょうか。

いや、俺なんかが口を挟むなってのはわかります。

でも、それでも言わせてください。

 

アイテムとやらが本当にあったとして。

別世界からの漂着者とやらも本当にいるんでしょう?

このリアリティ・ショーが一般に知られたら、もし本当に異世界から誰かやってきたら、対処が難しくなっちゃう感じですか。

だから隠してるんだな。

メディアに流したら、アイツらが証拠隠滅で子供たちを殺すからってのもあるんだろうな。

そんな財団さん方も裏で子供を犠牲にする何かをしたりしてんだろ?

財団は自分たちを捕まえられないって、アイツらは笑っていたよ。

だからあんな財団を舐めてたんだな。

あの時の俺は金のことしか頭になかったから、話半分で聞いてたから、クソっもっとちゃんと聞いておけばよかった。

 

お願いします、財団の方々。

どうか、どうかあの子に未来を上げてやってください。

本物の世界の、未来を。

あの子はちっぽけな世界を飛び出していった。

あの子なら変えられます。

この世界を、ほんの少しでも、いい方向に。

 

財団神拳なんてさ、アンタらを嘲笑うためだけに着けられた名前だろうぜ。

でも、それでも言わせてくれ。

 

俺の、俺とあの子の。

 

財団神拳は無敵だ。

 

最後に一言だけ、あの子に伝言を、出来たら伝えて頂けませんか?

たった一言だけでいいんです。

そう。

 

確保、収容、保護せよ――――――。

 

 

 

 

■ ■ ■

 

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