財団Tale:≪財団神拳≫創設秘話 「君のその顔が見たくて」 作:深夜に食べるラーメンの味
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「君、君! ダメだよ、ここは関係者以外立ち入り禁止だ」
「あ……すみません、俺、学校の宿題で演劇団の人たちにインタビューをしてこいって。どうしても話を聞きたくって来ちゃいました」
「でもね、困るよ。許可はとってるの?」
「はい、この通り」
「あー、聞いてなかったけど、まあ、しゃーない。しゃーないわな。じゃあ、見学する?」
「台本置き場とかありませんか? オレ、すごく興味があります」
「いいよ、こっちだ」
「ありがとうございます! お兄さん、歩きながら質問してもいいですか?」
「おう、いいぜ。なんでも聞きな」
「舞台を、演技をされていて、つらいなと思われたことはありませんか?」
「そりゃしょっちゅうさ!」
「ではなぜ、そんなつらいことを続けていられるのですか?」
「そうだなあ。怒られてばっかりだもんなあ。
若くて演技に重みがないだの言わればっかだし。若いってなんだよ、爺ってわけじゃないけどそれなりに年食ってるっての。でもさあ」
「でも?」
「俺の演技で喜ぶ観客の顔みてると、嬉しくってね。やっぱりさ、俳優だけが舞台作ってるんじゃないんだよな。観客も含めて、みんなが一個の世界を作らないとだな」
「そうですね。本当に、そう思います」
「ステージの上からだと観客席が良く見えるんだあ。驚かれたり、泣かれたり、笑われたり、なんていうのかな、心が動くっていうの? そんな顔がさ。
だから言葉にされてなくても、ウケてるかそうじゃないかってのがよくわかる。
一番ウケたのは爺さんの役だったんだぜ! そんで演技が若いってなんだっつーの」
「そうですね、見る目がない方だ。舞台監督さんですか?」
「そうそう! ちょっとやってやろうか?
アー、ンンッ!
だからお前はアホなのだ! この馬鹿弟子めが!」
「ああ、あ、し、ししょ、師匠……!」
「お、即興劇、エチュードだな? いいぜ、部屋に着くまで付き合ってやるよ」
「オレ、誕生日に胴着を授けていただけました。習得者を名乗っても、よいということでしょうか。段位クリアランスを……」
「アイヤーッ!」
「アイヤーッ!?」
「このアホ馬鹿間抜けめ! 何を不安がっておるか! まだまだ未熟よ。ムハ、ムハハ、ンモハハハ!」
「し、師匠!?」
「本来であれば演舞審査が必要であろうが、特例じゃ。おヌシに段位クリアランス2を授ける!」
「オレは、オレは! 師匠、オレは!」
「ええい、泣くな馬鹿弟子が! そんなことでおヌシの使命を果たせると思うてか! 自ら膝を着くなど! 立て! 立ってみせい!」
「うう、はい、師匠。はい!」
「見よ、あのトビラの先が、おヌシの行くべき道よ! ゆめ、理念を忘れるな。よいな!」
「はい!」
「ではサラバじゃ! 達者でな。ワシが認めたただ一人の弟子よ……」
「おさらばです、師匠。お達者で」
「はい、到着。いや君、すごいね。エチュードでそんな涙じょばじょば出る? 才能あるわ。才能マンだわ」
「ありがとうございます。本当に、本当に、心から……ありがとうございました」
「俺もやっぱ爺さんの役がハマり役なのかね? いやー役者冥利に尽きるよ。なんだろう、不思議だな。君とエチュードして、胸のつかえがとれたみたいな、そんな気がしてるよ」
「ええ、オレもです。思わず、すみません、涙が……もう少し泣いていてもいいですか?」
「もちろん。切り替え、難しいよね。
さっきの質問だけど、役者を続けられてる理由はさ、それだよ。
そう、俺を見て、ちょっとでも何か感じてくれたのなら、その人にとって俺は役そのものになるんだ。
戦隊ヒーローの役者さんが、ヒーローそのものになるみたいにさ。俺にとっての役者ってのはそうなんだ。だから、それを見るために役者を続けてるんだ。
うん、そうだよ、それだ。それが見たくて――――――」
――――――君のその顔が見たくて。