零崎数識の人間彼岸   作:アタリーメ3世

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零崎数識の食事法

 それは燕尾服を着た長身の男だった。昼下がりの公園にはおおよそ似つかわしくない姿の彼は唐突に語りだした。

「湿った土の上の石の裏には思いもしないほどに虫がびっしりといる。僕も子供のころにソレで泣いたクチでね。」

子供を連れた母親と思われる女性、制服を着た女子高生達、老後の余暇を楽しむ老夫婦、平穏で微笑ましく思う風景。

「この国も同じさ。表向きには清廉潔白のように見えても実際にはわからないものだ。」

本当に吐き気がする。

「要するに考えなおした方がいいと言っている訳だ。聞いているかい?」

このおかしな男を無視し立ち上がり女子高生の背に視線を合わせる。懐から包丁を取り出し振りかぶる。俺がこの腐った社会に鉄槌を下すんだ。俺は本当ならこんなものじゃないんだ。社会だ国だ世界が悪いんだ。

「もっとも愚かな選択だねぇ。」

これで俺も_________

 

 

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 うーん、やっぱりねぇ。ああ、先程の彼なら茂みに連れ込まれて殺されたよ。勘違いしないでくれたまえ、僕じゃない。犯人は彼女達さ。誰だよって?おいおいおいおいタグと原作の欄を確認していないのかい?

リコリス、それが犯人達の名さ。銃器を用い犯罪者を処分することを任務とする、国家公認の暗殺者集団。それが彼女たち。非常に怖いねぇ、悪いことはするモノじゃないよ、くわばらくわばら。だが、彼は少なくともまだ殺していない。罪に問えたとしても殺人未遂が関の山、言っては悪いがそうそう死刑になるほどの罪ではない。それを裁判もなく処理する。法治国家とは思えないよね。なぜ許されているかといえば、超法規的組織だからさ。彼女たちも、そのお上もね。おっ、撤収していくみたいだね。手を振ってあげよう。お仕事ご苦労様ですってね。

 

そろそろ手前は誰だといわれそうだし自己紹介と行こうか。僕は零崎数識、零崎一族が次弟にして、後詰役。ソレデハコンゴトモヨロシク

 

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「先輩!本当にいいんですか?あの男を処理しなくて。こちらに気が付いていたようですが。」

白い制服を着た少女が紺色の制服の少女に食ってかかる。

「あれには関わるな。無いとは思うが向こうから手を出されない限りな。」

 

紺の少女が諭すように語る。

 

「ナニモノなんですかあの男。」

「殺人鬼だ。それも理外のな。」

「なんですかそれ!尚更ヤらないとだめじゃないですか!」

「落ち着け。はぁ、これは本来セカンド以上にしか開示されていない情報なんだが…内密にしろよ。」

 

唾液を飲み込み喉を鳴らし白の少女が口を開く。

 

「了解です。」

「零崎一賊、それが奴らの名だ。10年も前に一度メンバーの一人をリコリスの総力を挙げて殺した。」

「その時の被害がばかにならなかったからの不可侵ってことですか?」

「それもある。だがそれだけでは無い。問題になったのはその後だ。殺されたんだよ。全てが。作戦に参加して生き残ったリコリス、当時の指揮官、DAの司令にその時本部に残っていたリコリスリリベル、その他の職員、観葉植物に熱帯魚。おおよそ殺せるモノ全てが殺された。零崎一賊に。」

「そんなの聞いたことないですよ。それに仮にそんなことがあったならDAが黙っているはずないじゃないですか。」

「箝口令が引かれているからな。言っただろセカンド以上にしか開示されない情報だと。もちろん当時のDAは即座に報復を行おうとした。だが止められたんだ、強制的にな。」

「それって時の政府がってことですか。」

「それはわからんが、恐らく違う。もっと上の、それも私らみたいな現場の下っ端が知ったら簡単に首が飛ぶような所からの命令だろうな。とにかく零崎には手を出すなよ。ろくな目に合わんぞ。お前も変に探ろうとするなよ。私まで消されたら敵わん。」

 

 

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「どうせ殺されるのならつまみ食いすれば良かったかなぁ。いやいや、ダメダメ。」

タハァーっとため息を吐き出した数識は公園を後にして歩き出す。

「彼も隣にいる僕を狙えばよかったものをさぁ、なんでリコリスのほうに行っちゃうかなぁ。」

誰でもいいといいながら自らが勝てる相手にしかその凶器を振り下ろさない殺人者の思考など想像もできないのだ。零崎一賊は本当に誰でもいいから殺すのだ。たまたま横を歩いたから、吐息の音が聞こえたから、目に入ったから、挨拶を返してくれたから、殺す。それが彼らの普通だから殺人鬼になれぬ殺人者の思考など理解の外なのである。

「おいおい、僕を他の家族と一緒にしないでくれよ。僕はグルメで専守防衛主義なんだ無闇矢鱈に殺さないよ。トキ兄さんの菜食主義に近いね。」

背後に突如影がかかる。先程の少女達とは別の紺色の制服を着た少女が拳銃を構え引き金を引く。

「死ねぇ零崎!」

血飛沫が咲く。少女の胸に。心の臓がある部分を傘の石突がつら抜いている。

「こんな風に……ね」

傘を引き抜き振るい血を落とす。紺色の制服を朱に染めた少女の息は濡れたような音を醸している。

「君を見た覚えはないな、友人か恋人でも殺人鬼に殺されでもしたのかい?」

温和な人の辺りの良さそうな笑顔を貼り付け、道を訪ねるかのように問いかける。

「お前は、お前が美結を...」

「美結ちゃんか、覚えているよ。確か2週間前、君たちの仕事を鑑賞している時に襲いかかってきた子だったねぇ。ダメじゃないか、ちゃぁんと組織内で不可侵とするなら、情報を与えた上で徹底させなきゃさぁ。特に僕は出されたモノしか殺さないんだから。」

クックッと思い出し笑いでもするように噛み締めながら語る。

「殺す。殺し...て...」

頭を踏み砕く湿った快音が快晴の空に響く。

「あっ、ごめん。素で殺っちゃった。もう少し恨み言を聞いてからにするつもりだったんだけどねぇ。」

あちゃーっと頭に手を当て反省でもするかのように項垂れている。

「まっ、しょうがないね切り替えていこうか。」

 

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「また...か。やはり零崎の、ひいては殺し名の情報を末端にも開示するべきか...。」

リコリスの本部その司令室にて赤毛のボブヘアの女性、楠木がボヤいている。

「だが今回に関してはセカンドが殺されたのであったか。まったく不合理なことだ。」

斜線制限(ボーダーライン)零崎数識。専守防衛の殺人鬼。まったく頭が痛くもなる。その趣向から態々狙われようと我々の前に姿を現す殺人鬼か。」

 

生まれた瞬間より殺人鬼であることを強制された存在、dllrシンドロームあるいは殺傷症候群と呼ばれる精神疾患。辺り構わず誰彼構わず。とにかく殺してしまいたくなる、そういった生理的欲求といえるほどの欲求に苛まれる。似たような境遇を持ち家族が居ない、家族に受け入れられないといった人間たちの共同体それが零崎一賊。曰く【この世で最も敵に回すのを忌避される醜悪な軍隊にして、この世で最も味方に回すのを忌避される最悪な群体。】理由なく殺す《殺人鬼》集団。血の繋がりではなく、流血で繋がる一族。

 

「こちらから手を出さなくても向こうから手ぐすねをひいて迎えられてはな...勝手に犯罪者同士(殺し名)で殺しあっていればいいものを。」

頭を抱え書類を机の端に放り投げる。ストレスは皺の源になりますよオバサン。

「銃取引事件にラジアータのハッキング、問題は無数にあるというのに...。」

 

 

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東京某所喫茶店リコリコ

「本日よりこちらに異動になりました、井ノ上たきなです。よろしくお願いします」

 

世界は動き出す。

 

 

 

 

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