貞操逆転世界に転生する→ハーレムができる→しかし身体は闘争を求める。   作:よろしい、ならば闘争だ。

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俺より強い奴に会いに行く。

 

「う……そっ……こんな……!!―――」

「シグルイ!返事をしろ!シグルイ!」

 

 俺の目の前で、その胸を鉄の様に強靭で、ムチのように撓る尾で貫かれた人型の機械(ゴーレム)がゆっくりと倒れていく。

 

 俺は何度も立ち上がろうとしたが、俺の身体も、俺の機体(ゴーレム)も満足に動けない。動けたとして、両腕を破壊された俺の機体に何ができるのか?

 

 俺は必死に機体の内部(コクピット)にいるはずの仲間に声を掛ける。だが、帰るのは冷たい静寂だけだった。

 

 

 今、俺達の目の前に立つのは、4本の脚を地に着ける、翼こそ退化しているが、その見た目当にファンタジーに現れる西洋のドラゴンだ。

 

 後ろには、同じ様に全身をズタズタにされた機体が居た……中の彼女達はまだ生きているが、このままでは全員が死ぬことは確実だった。

 

「ぐっ……シグルイ……さんっ!」

「こんの……野郎ォッ!」

 

 後方支援型のゴーレムに乗った彼女の声が響く。巨大な砲を背負ってたゴーレムが立ち上がり、その銃口に魔法陣と光が灯る。

 

「トルク!?待てっ!」

「待てるかァッ!撃つ!!」

 

 荒々しいのは、彼女の……トルクの困った所だが、丸腰でレーザーを溜めてぶち込む気の様だ。

 

 だが、俺達の目の前の脅威は、そんな溜め時間なんて暇は許してくれなかった。

 

「吹き飛―――!!」

 

 彼女の砲撃が繰り出されるよりも前に、目の前のヤツは、その口から白色の熱線をほぼノータムで打ち出してきた。

 

 打ち出された熱線は、トルクのゴーレムの砲身を貫き爆散させる。その爆炎と衝撃は、当然トルクの機体にも届き、その背中が大きく焼け焦げてコクピットが剥き出しになる。

 

 トルクのゴーレムはバタリと倒れて、ピクリとも動かなくなる。

 

「ひっ……トルクさっ……」

 

 次に狙われるのは、ランスを持った一番被害の少ない新米聖騎士のヘテロだった。

 

 俺が動いて護るなんかよりもはるかに早く、その剛腕を持って、ドラゴンはヘテロのゴーレムへと襲いかかる。

 

 ゴーレムに完全なマウントポジションを取ったドラゴンは、その剛腕で只管にヘテロのゴーレムを叩きつけた。

 

「ひゃっ!!………!!!アマトさん!逃げ―――」

 

 ヘテロ自身が一番恐怖でどうにかなりそうなのに、彼女は意地で俺だけも逃げる事を望んで来る。

 

 それは、『男の俺を逃がそう』と言うこの貞操世界における女性特有の意地なのかもしれない。

 

 だが、こんな土壇場でそう言い放てるだけ、彼女はとても強い女性だ。だからこそ、このまま俺だけ逃げ応せるつもりはない。

 

「ヘテロ!?ヘテロ!!……あぁっ!!クソッ……!!」

 

 俺は舌打ち混じりに声を荒げ、コクピットでもあるその空間から立ち上がる。身体中が痛みに貫かれても、このまま座り込んでみているよりかは云千倍もマシだ。

 

 俺のゴーレムは既に両腕が破壊され、残っているの武器はこの脚と何故か頭部についているクラッシャーぐらいなものだが、それでもやるしか無い。

 

 それに……こんな地獄の様な戦いを楽しんでる俺が居る。……いや、そんな訳がない。気のせいだ。

 

「ガァァァァァ!!!!!」

 

 閉じかかっていた俺の瞼が開くと共に、俺のゴーレムの瞼も開き、その目からルビーのような赤い閃光が迸る。

 

 俺のゴーレムは、俺の動きと連動して、まるで手足のように動かせる。次の瞬間、ゴーレムは地面蹴り上げ空を舞い、目の前のドラゴンへ突撃する。

 

 何故か、ここまできて。ここまでのピンチになって、何故か頭の中がクリアになった感覚がする。ゾーンに入ったって奴だろうか?

 

 目の前に迫るドラゴンの尾が、とてもゆっくりに見える。迫りくるその顎が、万力を動かす様に鈍く思える。

 

 俺は、俺のゴーレムを動かしてドラゴンの尾を弾き、その頭へと回し蹴りを食らわせてやる。そうすれば、ゴーレムの脚に仕込まれたパイルバンカーがその脳天にぶち込まれる。

 

 ドラゴンの角が折れ、その鱗がパラパラと砕けていく。

 

「ハァ……ハァ……ヘテロ!無事か!?」

 

 ……彼女の機体から返事はない。だが、彼女の生命反応は、ゴーレムが感知している。ショックで気絶しているだけの様だ。だが、どの道時間は掛けられない。

 

 俺は再度ドラゴンを視界へと入れる。

 

 突然の割り込みに、ドラゴンは怒り、その口から熱線を吐き出すが……俺はその熱線を避けずに、逆にあえてドラゴンの懐に飛び込み、その頭へ膝蹴りを打ち込む。

 

 只管に動き回り、蹴り上げ踏みつける。腕がなくてもここまでやれるのは想定外だ。俺の動きは冷静でありながらも、心では慌てふためくものがあった。、

 

(あぁ!畜生ッ!ヤベェ……クッソやべぇ!このままじゃ全員死ぬ……!!)

 

 そうだ、皆死ぬ。死んでしまうんだぞ?これまで旅を共にしてきた仲間が……なのに、それなのに。そんな暇があって言い訳が無いのに。駄目なはず無のに

 

(何だよ、この()()は……っ!!)

 

 楽しい?違う。楽しいわけじゃない。

 辛い?違う。だったらもっと泣き叫んでる。

 逃げたい?違う。寧ろこの場が心地よく感じている。

 

 わけのわからない感覚に襲われ続け、もう何が何だかわからない。だが、動きだけは正確にできている。今も、目の前に迫り貫かんとする尻尾を避け――――

 

「ッッ!!」

 

 次の瞬間、俺のゴーレムに衝撃が襲う。ドラゴンにその巨大で飛びかかられたのだ。まさかフェイントを掛けられるとは思わなかった。

 

 あぁ……なんだ、気分が高揚してくる。

 心臓の音が上がってくる。

 

 今まで味わったことのない高揚だ。

 

 俺は、そんな感覚を胸に抱いて目の前のドラゴンと戦い続ける。

 

「ッッッ!!!」

 

 ……正直、俺は良い気になっていたのかもしれない。ある日理由の変わらない内に、いつの間にかこのゴーレムのコクピットの中にいた。

 

 これが、所謂異世界転生だというのは容易に想像できた。おまけに、この世界は何故か男が大事にされる貞操逆転の世界だったのだ。

 

 俺は兎に角元の世界に戻る方法を探し求めて旅をしていた。その間に色々な人々と出会い、中には共に旅をする仲間になってくれた子達もいた。

 

 俺の事をゴーレムと共に最初に見つけ、この世界の常識を俺に叩き込んだトレジャーハンターのシグルイ。元々山賊だったが、色々あって改心し俺についてきてくれたトルク。立派な聖騎士になるために、俺と同じく修行の旅をしていたヘテロ。

 

 いつの間にか大所帯になって……言わば、なろう系でありがちなハーレムの様なものにもなってきた。正直、男なら憧れない者は居ないし、俺もかつては憧れていた。

 

 だが、いざハーレムが出来てもこの世界に来てから、何処か満足できないでいた。前世では縁のなかった女からの友愛に、俺だって悪い気分はしていなかったはずだ。だが、俺の中の空白は日に日に存在感を強めるばかりだった。

 

 満足できないで居るからこそ、俺は尚更元の世界に戻りたいのだと思っていた。

 

 

 

 

 でも、それは違った。

 

 俺はこのぽっかりと空いた空虚さがほんの一瞬だけ満たされる時があった。

 

 この世界特有のロボット(ゴーレム)に乗り込み、魔物や敵と戦う時。その闘争の場でこそ、俺の空白は満たされていた。

 

 

 

 

 

 あぁ、そうだ。

 そうなのか、俺は……ずっとそうだったんだ。

 

俺の魂は、ずっと戦いに惹かれていたんだ。

 

「ここが!この戦場が!!俺の魂の場所だ!!」

 

 思わずに口からでた雄叫びと共に、俺のゴーレムのアギトがドラゴンの首元へと喰い付き……噛み潰した。

 

 ドラゴンは喉を噛み潰され、最後の雄叫びも上げずに、アレほど脅威だった存在は……ダランと力なく倒れるのだった。

 

 

 

 

 最後に地面に立っていたのは、俺一人だった。

 

 

 

 

 


 

 それから暫くして、俺や仲間のシグルイ、トルク、ヘテロは近場の街の病室で療養中だった。意外にも、皆ケガは深くなくすぐにでも退院できる様になっていた。

 

 この世界が剣と魔法とロボットのファンタジーで、医療魔法が普及しているのもあるのだろうが。

 

 寧ろ、最後まで立っていた俺のほうが全身ボロボロだったらしい。なんかゴーレムとシンクロしすぎて適合率とダメージフィードバッグが云々とか言ってたが、よくわからなかった。

 

 病室で、シグルイ達が話している。

 

「まさか、あんな場所でドラゴンと出会うとは……不覚だったな。皆生きて帰れてよかった。」

「全くだぜェ〜。オマケに男のアマトに手間かけさせちまうなんてなぁ……女の名折れだぜ。」

「で、でもっ……ぐすっ、皆無事で本当に……よ゛か゛た゛っ゛て゛す゛!!!」

「あぁ!ヘテロ!泣くな泣くな!」

 

 ドラゴンと言えばこの世界では最大の危険度を持つ魔物だ。

 

 普段はもっと過酷な環境で一匹の根城を構えているのだが……俺達がドラゴンと出会ったのは、至って普通の森林の中だったのだ。

 

 ドラゴンどころか、劣等種のワイバーンにだって会うことのないような土地だ。

 

 それに俺達はろくな準備もなしにドラゴンと戦った。そして誰一人として欠けずに勝てた……それだけで誇るべきものだろう。

 

 そして、俺は俺自身の中にある物に気づけた。それだけで、俺のこの怪我はして良いものだと言える。

 

「……アマト?」

「んっ?」

「いや、なんか……様子が変だぞ?」

「そうか?」

 

 様子が変……たしかに清々しい気分ではあるが、変と言われると若干心外だ。っと……そんなことより。

 

「それより、あんまに起きてると傷口に悪いぞ。早く寝ようぜ。……俺は寝る、()()()()、おやすみ。」

「えっ?あっ……うん……」

 

 俺はそう言って、皆に目を配ることもなく布団の中に潜り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、アマト様子が変じゃないか?」

「何処か、危なっかしい感じがしますよね……」

「前々から変なやつだったが……特に何事もなければ良いんだが……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はその日の夜、少し前からこっそりしていた荷造りを終えて、一人旅の準備をしていた。

 

 最後に俺の大切な仲間達へ、()()()()()を含めた一つ書き置きを残した。余計な文面は残さず、ただ一文だけを乗せた物を。

 

 

――俺より強い奴に会いに行ってくる――

 

 どうやら、俺の身体は未だに闘争を求めているらしい。

 

 

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