剣道少年ビターエンドアフター ~後日談はデンドロで~   作:砂漠谷

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原作キャラ二人目、北玄院碧乃の活躍です。
なお、強力な特典武具はまだ持っていない模様。


下剋上! 親殺しと化した先輩

 ここでさらに、北玄院家嫡子、北玄院碧乃という女の話をしよう。

 

 彼女は、嫡子ではあるが、北玄院家当主、北玄院藍牙の実孫ではない。

 彼の、養子である。才の無かった実の息子を見限って、才能ある養子から嫡子を選んだのだ。

 

 彼が彼女に求めた嫡子としての能力は、高い武の才、そして適度な自律心である。

 

 適度な、というのは、反骨心には至らない程度に従順で、しかし指示が無くても動ける程度には我がある、ということである。

 藍牙の見立ては、当時は正しかった。義理とはいえ、碧乃を愛しているように振る舞っていたのだから。反骨心に至る理由がなかった。

 

 厳しくとも優しく、知略に長けた藍牙を、碧乃は尊敬していた――それは、かつての話だ。

 

 北玄院家の運営に携わるにつれ、謀略にかまけ、部下を犠牲にし、自分の権威の維持を計る側面を知り、藍牙に対する不信感、疑念がずっと、首をもたげていた。

 

 そして、その不信が極限に達した瞬間。彼女は、薙刀を振るっていた。

 自分にも敬意を向けてくれる忠臣を殺し、小さな目先の利益を得る。それは――

 

「み、碧乃……何をする!」

 

 藍牙の【救命のブローチ】を砕いた北玄院碧乃は、薙刀を構え、自らの義父に問いただす。

 

「黒羽家の当主。これを謀って陥れるのは、いいでしょう。しかし、あなたが今、生き人形に貶めようとしているのは――、あなたが藤山の姓を与えた、断佐ですよ!?」

 

「何を愚かな……! 碧乃よ、そのために断佐を重用したのだと、なぜ分からぬ!? そこまで青かったか、我が娘よ!」

 

 冷や汗をかきながら、糸を手繰るように手を繰る。すると、二人の間に黒羽影宗、その生き人形が肉壁として立つ。

 

「っ、~~!! お爺様! 仁義を軽んじ、謀略を旨とするあなたのやり方は――これからの、<マスター>が到来する時代には、到底合わない。当主の座、そしてお命。頂戴する!」

 

 火縄銃を構える生き人形を一刀に切り伏せ、返す刀で、義父、藍牙の頚を断とうと薙刀を振り上げ――そこに、身体を挟んだのは。

 

 <マスター>、ミルキーウェイ・アンティプライドだった。

 

 

 

【刀巫】ミルキーウェイ・アンティプライド

 

 目の前の内輪もめに乗じて、ここから逃げようと断佐に進言し。

 彼は、首を横に振った。

 

「藍牙様と、碧乃様。どちらも個人戦闘型ですが――このままでは碧乃様が勝ち、藍牙様は死ぬでしょう。僕の主君、藍牙様を、どうか助けてください」

 

「だけどよ、あの爺さん明らかにお前を殺そうとしてたぞ!?」

 

 断佐は、まっすぐに俺の目を見つめて、答えた。

 

「……いいんです。僕の、恩人ですから。救われた命を落とされようと、構わない。幸せな日々を贈ってくれた彼が死ぬのは――耐えられない!」

 

「っ~! わぁったよ! 俺が、あのジジイを、助けてやる!」

 

 

 

 【大将影】が切り捨てられる直前、俺はあの老爺を守るために駆け出した。

 

 【クロサワ】を構え、薙刀持ちの女、碧乃が振るう刃に身体を挟みこみ、防ぐ。

 

「断佐の護衛か。何故ここに来た?」

 

 背後から、老爺、藍牙に尋ねられ。

 

「背中ァ刺すなよクソ老人。戦友の願いだ。お前が断佐を殺さない限り、俺はお前を助けてやる。約束、守れるか!?」

 

 正面の碧乃は、黙って俺に刃を振るってくる。――一刀一刀が、重い! これでも小手調べというのが、刃から伝わってくる。

 

「――承知した。決して、藤山断佐に手は出さぬ」

 

「破ったら、お前を地獄の果てまで追いかけてやる。不死身の<マスター>舐めんな!」

 

 そう吐き捨てながら、碧乃の重い一刀の連撃を受け続ける。

 その情報は、【クロサワ】に蓄積されていく。

 薙刀と太刀。形は違えど、<上級エンブリオ>となった【クロサワ】は、戦士の本質を捉え、適切な(アート)として出力する。

 

 空間ではなく、自他の把握と技法の翻訳に特化した武器――TYPE:デーモンカリキュレーター・アームズ。

 【再録示剣 クロサワ】。その本領を――『発揮します!』。

 

 刃からの、声。それを聞いて、俺はより強く【クロサワ】を握り、《動は静ほど物を言う(レディアクション)》の発動と発動の間を、隙間なく繋ぐように踊る。

 

 俺と【クロサワ】、二人で一つの身体を共有し、舞うように剣を振るう。

 一撃、碧乃はそれを受けただけで、その舞の意味するところを理解した。

 

「っ、猿真似が、随分とお上手だな!」

 

 何か癇に障ったのか、こちらを罵りながら、跳び引いて大きく薙刀を振りかぶる。

 

「それは、読めてるぜ。『技法の癖から読めました』。飛ぶ斬撃、『でしょう?』」

 

「はぁっ! 《空燕》」

 

 《悪魔のように細心に(クロ)》。薙刀が振られ、草原の草を斬り飛ばしながら高速で迫るが、比例してこちらのAGIも高まっていく。

 この斬撃を躱すと、背後の藍牙が傷を負う。なら――『防ぎます!』。

 銃弾を切り落とすより、遥かに困難。銃弾は点で、太刀は線だ。線で点を防ぐのはそこまで困難ではない。

 だが、飛ぶ斬撃は線。線に線を、少しのズレもなく重ねるのは難しい。

 

「――やってやる!」

 

 一度納刀し、延長させた刀身による抜刀で迎撃する。【延刃善壊 クレグレ】にSPを注ぎ込み、怨念は刃に変わる。

 

 刃先を、斬撃に沿わせて、逆位相で相殺――!

 

「まだ、ぁ! 《空燕・群旅》」

 

 成功した。だが、返す薙刀で、連続で斬撃を放つ碧乃。

 複数への対処は困難だ。

 ――助け船を出したのは、背後の老人。

 

「守られるだけとは行かぬ。《遊泳糸蟲》」

 

 老人の袖の内側からするりと飛び出したのは、細く金属のように光る糸が数百本。

 糸が生き物のようにうねり、斬撃の軌道にぶつかって切断される。

 それでも、斬撃を乱すには十分だった。相殺防御を、なんとか続けていく。

 

「《悪魔のように細心に(クロ)》、《天使のように大胆に(サワ)》ァ!」

 

 飛ぶ斬撃を数百ほど相殺し切っただろうか。薙刀が、一瞬だけ止まった。

 

 その瞬間を、俺と【クロサワ】は見逃さなかった。必殺スキルの二段階目を発動し、飛ぶ斬撃を再現する。

 攻守逆転。だが、自らの技術のコピー故か、悠々と飛ぶ斬撃を弾き返す碧乃。防御だけでなく、《空燕》を交えて攻撃もしている。

 飛ぶ斬撃の撃ち合いは、純粋な技量によって、碧乃に天秤が傾いていき――ついに斬撃が俺に届こうという時に、背後の老人はほくそ笑む。

 

「馬鹿娘よ、その命貰うたわ! 《縛道千里》!」

 

 碧乃の足首に結ばれた、銀にきらめく紐が地面に生えていた。

 そこから、地面に足首がめり込む碧乃。その隙は、コンマ一秒が勝敗を決する戦いにおいて、あまりにも大きかった。

 

 一瞬で納刀、そして、抜刀。【クレグレ】のスキルを利用して、刀身を延ばし。

 

「<刳昏>」

 

 相手の首を刎ねるように、勢いのままに剣を振るった。




やだ、ウチのオリキャラ(原作キャラの養父)屑過ぎ……?

こんなんでもショタの臣下には慕われているという。
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